たけしの挑戦状
テンプレート:Infobox 『たけしの挑戦状』(たけしのちょうせんじょう)は、1986年12月10日にタイトー(現・スクウェア・エニックス)が発売したファミリーコンピュータ用ゲームソフトである。タレントのビートたけしが監修した作品。「ポリネシアンキッド 南海の黄金」というサブタイトルも付けられている。
2009年3月31日よりWiiのバーチャルコンソールで500Wiiポイントで配信されている。バーチャルコンソールにおいて実在タレントをモデルにしたタレントゲームを、タレント本人または芸能事務所より許諾を得たうえで配信するのは本作が初である[1]。
概要
当時ファミコンに夢中になっていたビートたけしの「今までにない独創的な発想を入れたい」という意図が反映され、数々の斬新な内容が盛り込まれている。キャッチコピーは「謎を解けるか。一億人。」で、ソフトのパッケージ表面には「常識があぶない。」(販促用のポスターでは「あぶない」の「あ」の字が鏡文字になっている)と称し、裏面ではビートたけし自ら「今までのゲームと同じレベルで考えるとクリアー出来ない」とコメントしている。また広告には「成功確率 無限大数分の1」と書かれていた。
CMは、たけしが『雨の新開地』を歌うシーンと、たけしがIIコンのマイクに向かって「出ろ!」と言い、宝の地図が出てくるシーンの2パターンがあった。どちらのCMもゲーム攻略のためのささやかなヒントになっている。しかし、本作の発売前日に、たけしおよびたけし軍団による「フライデー襲撃事件」が発生。本作は予定通り発売されたが、放送されていたテレビCMは打ち切られた。
パッケージには「ビートたけし、ファミコンソフト第1弾!」と書かれており、のちに第2弾の『たけしの戦国風雲児』が同社より発売している。
ゲーム内容
うだつの上がらないサラリーマンがある島に眠っているという財宝を探しに行くという内容。ゲームシステムはサイドビューのアクションゲームだが、ストーリーはアドベンチャーゲームのように選択肢によって進行していくため、ジャンルとしてはアクションアドベンチャーゲームと言える。また一部シーンにはシューティングゲームも含まれている。
世界観は極めて退廃的であり、主人公は薄汚れた町並みの中に住む世帯持ちのしがないサラリーマンである。台詞は罵言暴言など汚い言葉遣いが多い。店の看板は極道的な内容で、路上にはヤクザが蔓延り、否応なしに主人公に殴りかかってくる(また、これを逆に攻撃して倒すこともできる。これに限らず、敵味方なくすべての登場人物を殴ることもできる)。
日本にいる時はテキーラを飲むこと、ひんたぼ島では宿泊することによって体力が回復する。
クリア条件
ふとしたことから宝探しの情報を聞き出し、本格的な宝探しに行くためには、まず身の周りのしがらみを取り払い、周到な準備をする必要がある。「離婚届を出す」「退職届を出す」「恩人を倒す」「カルチャークラブで技能を修得する」などがこれである。
他にも「パチンコの最中にIIコントローラーのマイクで叫ぶ」「宝の地図を出す際に『5分経過後から10分経過する前にIIコントローラのマイクに向かって叫ぶ』か『1時間待つ』」など通常では思い付き難い操作が要求される上に、ハンググライダーを使う場面では、上に自由に移動できないなどの独特の操作性のため難易度の高いシューティングゲームとなる(セスナなどの他の乗り物では着陸が出来ず結局クリア不可能である)。
カラオケで実際にIIコントローラーのマイクを使って歌い高評価を得ないと進めないイベントがあるが、ニューファミコンではマイク機能が削除されている。マイク機能を使用した謎解きを入れた他のゲームでは、セレクトボタンを用いることでマイク機能の代用としたものが多いが、本作に関しては、IIコントローラーの下とAボタンを押す(バーチャルコンソール版ではWiiリモコン裏側についている「B」ボタンで代用できる)ことでマイク機能を使用しているのと同じ判定がなされる。これは旧型のファミコンでもマイク機能を使わずに同様の操作を行えばマイク機能を使用しているのと同じことになるためである。なお、マイクで音を判別しているとはいえ、後のゲームのように音声認識であったり、音程を判別する機能はないために、実際に歌唱力がなくともメロディの部分で息を吹きかけるだけで歌ったことになる。
パスワードなどのゲームクリアに必要な情報が解析本(攻略本)以外の形でもリークされていた。しかし、インターネットなど普及していない当時では、そのリーク情報も限られた範囲にしか伝わらなかったようである。代表的なものとして「すきすきすきすきすき すきすきすきすきやき」がある。また、オープニング画面でパンチを2万回繰り出せばエンディング直前の状態からスタートし、エンディングを見られるようにもなっている。
ひんたぼ語
このゲームには、「ひんたぼ語」という言語が登場する。ひんたぼ語とは、このゲームに登場するひんたぼ島の住民が操る言語で、例えば「あ→い」「そ→た」というように日本語の仮名を一文字ずつずらすというように、シーザー暗号をかけたような言語である。ただし、濁点および半濁点も一文字と数え、数字についても1ずつずらす。また「ん」以降は「ん→っ→ゃ→ゅ→ょ→?→゛→゜→×→ー→あ」の順になる。「ぁぃぅぇぉ」「ゎ」「ゐゑ」はゲーム中に文字が存在しない。インターネット上に存在するひんたぼ語変換ツールでは便宜上変換しないように処理されている。
例1:たけしのちょうせんし゛ょう → ちこすはつ?えそっす゜?え 例2:ひんたほ゛こ゛ → ふっちま゜さ゜ 例3:ひゃっかし゛てん → ふゅゃきす゜とっ 例4:はつねみく → ひてのむけ 例5:えーけーびーふぉーてぃーえいと → おあこあふ゜あへぉあとぃあおうな 例6:ふし゛わらのりか → へす゜をりはるき
カルチャーセンターでひんたぼ語を習ってからひんたぼ島に行くと普通の日本語で表示されるため、上記の文章にはお目にかかれない。
開発
たけしが希望したにもかかわらずハードウェアの制約や子供向けのテレビゲームには向かないという理由で、不採用になったり当初の意図より無難に改変されたりしたものが多数あった。
これらの要素や設定、ストーリーはビートたけしが飲み屋で酔っ払った勢いで言った内容がそのままゲーム化されたもの、などとテレビ番組などでは解説される[2]。本作は当初は「痛快なりゆき番組 風雲!たけし城」のゲーム化作品と発表されており、ゲーム雑誌にも「(仮称)風雲!たけし城」と記載されていた。だが、たけしが「やりたいネタがある」と開発スタッフに依頼、開発にも携わり、そして「たけしの挑戦状」という題名に変更され発売となった。後に関係者が語ったところによると、売上はおよそ80万本と当時の『ドラゴンクエスト』並の売り上げを記録したという[2]。
当時、タレントやアイドルの名を冠したソフト(タレントゲーム)は複数あったが、本人が制作に参加したり、スタッフと本人が直接打ち合わせることはまずなかった。 ビートたけし司会のテレビ番組「ビートたけしのこんなはずでは!!」2003年7月12日放送分では、「1時間放置する」行為をクイズ問題にしたりするなど、ゲーム内容を深く掘り下げた形で紹介された。この放送の中で、たけしは「太田プロの近くの喫茶店で一時間話しただけのゲームだぜ」などといい加減な企画だったことを語り「どうも失礼致しました」などと述べている。 後にたけしは2009年に発売した自著『漫才』の中で、相方であるビートきよしが「攻略法を教えてくれ」と電話してきた事を明かしている。
しかし、チーフプログラマの森永英一郎によると、本作ではたけしは積極参加しており、「ビートたけしと新宿の有名ホテルの最上階で何度も頭を突き合わせて作りました。大学ノート一杯にかかれた彼のアイディアはとても印象的でした」と自身のサイトで語っている[3]。「こんなに難しくしたらゲームバランスが崩壊する」と忠告はしたもののたけしはそれを受け入れなかったため、「とにかくビートたけしさんが言っているのだから」と許す限りのアイデアを片っ端から盛り込んだ結果、プレイヤーを困惑させる不条理なゲームとなり、後述の記事にあるように「ビートたけし」のネームバリューでソフトを買った購買者の期待を突き落とす出来となった。ただし、「さすがたけしさん。一筋縄ではいかない」と絶賛、評価する声もあった。なお、アイデアをまくしたてた当のビートたけしは「(打ち合わせ当時の)詳細を全く覚えていない」と語っている。
また開発者のひとりである福津浩[4]によれば、当時のたけしがゲームに「ハマっていた」ということもあり、「たけしが作ったゲームだが、たけしが出てこない」などと、構想を熱く語ったと言う。通常この様な企画では打ち合わせなど一回も行われないものであったのであるが、ホテルの部屋を借り切るなどして3回行われ、やはりたけしも積極的に介入していたとのことである。開発陣もたけしのアイディアを次から次へと盛り込んでしまった結果、規格外のゲームに仕上がる結果となってしまった。開発陣としては、このまま発売してしまってはまずいことになるとの自覚もあったが、引くに引けない所に来ていた[5][* 1]。
評価
- パッケージどおりのとても常識では考えられないような仕様や謎解きなど不条理ともいえる内容が多く、雑誌『ファミコン通信』でのクソゲーランキングでも1位を獲得しており、雑誌『ゲーム批評』やクソゲーを取り上げた書籍などでクソゲーの代表格とされることが多い。一方で結果として印象深い作品ともなり、2007年の東京ゲームショウの「レトロゲーム・アワード2007」では「ゲーム秘宝館・殿堂入りゲーム」となる。また、不条理さは意図的に組み込まれたものであり、現在では「北野映画に通じるところがある」「早すぎたグランド・セフト・オート」など、ゲーム内容を再評価する声もある[6]。
- ファミリーコンピュータMagazineの読者投票による「ゲーム通信簿」での評価は以下の通りとなっており、30点満点中15.97点となっている[7]。また、同雑誌1991年5月10日号特別付録の「ファミコンロムカセット オールカタログ」では「ビートたけし作の超難解AVG」、「現代社会を風刺したAVG。パチンコ、カラオケ等ゲーム的にはバラエティーにとんでいる。しかし、奇想天外というよりも突拍子もないゲーム」であると紹介されている[7]。
項目 | キャラクタ | 音楽 | お買得度 | 操作性 | 熱中度 | オリジナリティ | 総合 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
得点 | 2.76 | 2.44 | 2.34 | 2.64 | 2.62 | 3.17 | 15.97 |
備考
- 後年『たけしの戦国風雲児』も同じくタイトーより、また『ファミリートレーナー 突撃!風雲たけし城』(これは元々当時のテレビ番組名から取ったもの)がバンダイより発売される。
- バーチャルコンソール版ではひんたぼ島で住民の家が「どじんのいえ」から「げんちのいえ」に修正されている。ただし、住民の外観を始めとするグラフィックに変更は無い。
- たけしのネームバリューから当時の子供にも人気があり、わんぱっくコミック(徳間書店)でコミカライズされたり、『ファミコンロッキー』で対決テーマのソフトに選ばれたりしたこともあった。
- 街の映画館の看板には、「やくざ VS やくざ」と、後の『アウトレイジ』シリーズの発表を予言したかのようなタイトルが書かれている。
- ゲームセンターCXでは、当番組のパーソナリティである有野晋哉がこのゲームソフトに2回挑戦し、いずれもクリアしている。また、当番組のメインコーナーである「ゲームセンターCX 有野の挑戦」、関連ソフトである『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』ならびに『ゲームセンターCX 有野の挑戦状2』の作品名の由来は、このゲームに由来する。このソフトのエンディングから長時間待つと、有野が当ソフトにちなんだセリフを言ってくれるなどの特典がある。他にも、ゲームセンターCXの関連書籍は、当ソフトの攻略本の出版を行った太田出版から発売されている。
- 『劇団東京ミルクホール』は2012年に当ソフトにちなんだ『たけしの挑戦状』という公演を行っている。ポスターは当ソフトのパッケージがモチーフとなっている。
関連作品
- 攻略本
関係者インタビュー[2][5]によると、当時本作の攻略本を制作した太田出版には、「攻略本を読んでも解けない」との苦情電話が、問い合わせのものと合わせて一日400件も殺到したという。対応に追われ辟易した当時の編集者は、「担当者は死にました」と虚偽の回答をしていたそうである。 1冊目がほとんど攻略本として役に立たなかったことから「攻略本の攻略本」として2冊目が出版される。この本の後書きで、たけしが「これで解けないからといって、間違っても傘と消火器を持って太田出版に殴りこまないように」と書いている。
脚注
出典
注釈
参考文献
- テンプレート:Cite book ja-jp - 「『たけしの挑戦状』一二年目の懺悔」 開発者である福津と攻略本の苦情対応を担当していた大田出版編集者へのインタビュー
関連項目
外部リンク
- バーチャルコンソール - たけしの挑戦状
- ↑ 「あんなクソゲーをまただすタイトーはえらい!」、『たけしの挑戦状』再リリースにビートたけしから愛のこもった賛辞!(ファミ通.com、2009年3月26日)
- ↑ 2.0 2.1 2.2 フジテレビ721『ゲームセンター「CX」』第1シーズン第1回
- ↑ 自己紹介
- ↑ 「れとろげーむまにあ」、福津浩氏インタビュー(2010年02月06日)
- ↑ 5.0 5.1 引用エラー: 無効な
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」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません - ↑ 「“北野映画”に通じる先見性があった」伝説のクソゲー“たけ挑”制作秘話(ORICON STYLE、2009年8月8日)
- ↑ 7.0 7.1 引用エラー: 無効な
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