シカクワガタ属
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
シカクワガタ属 (Rhaetulus) は昆虫綱甲虫目クワガタムシ科に属する分類群。大アゴは根元で大きくL字型に湾曲し、先端は二股に分かれる。前胸背板の側面がぎざぎざになっていることも本属の特徴である。系統的にはノコギリクワガタやフタマタクワガタ類に近く、生態面や、脚部の構造に類似点が多く見受けられる。
奇抜な大アゴと背中の模様から、そこそこ人気があり、流通がある。
東南アジアの大陸部に広く分布するが、南のものほど背中の鼈甲色の模様が明瞭になる傾向がある。
寿命は半年から1年で、産卵から羽化までは1年程度。地表部の朽木に産卵し、幼虫には菌糸ビンを使うこともできる。 しかしクヌギは好まず、ブナやコナラをベースとしたオオヒラタケの菌糸ビンで大きくなる。
種類
日本
1種のみが確認されている。
- アマミシカクワガタ Rhaetulus recticornis
- 奄美大島と徳之島に生息する。日本に生息する唯一のシカクワガタ。シイを好む。野生下では小型の個体が多い。
- シカクワガタの亜種から独立した。大アゴの発達もそこまでではなく、海外種程の奇抜さはない。
世界
3種が確認されているが、分布や差異が連続的であり、まとめるべきだとする考え方もある。
- シカクワガタ テンプレート:Snamei (Westwood, 1971)
- 中国からインドまで生息する、本属の基準種
- タイワンシカクワガタ R. c. crenatus原名亜種
- 台湾
- スペキオススシカクワガタ R. c. speciosus
- タイ。背中の模様が濃い。最も大型になり、他のいくつかの亜種R. c. kawanoi(ベトナム北部に生息)、R. c. boileaui、R. c. lehmanniとともに独立種とすることがある。
- ボイレアウシカクワガタ R. c. boileaui Didier, 1925
- ラオス
- R. c. gardneri Didier, 1930
- ミャンマー。1997年にスペキオススシカクワガタのシノニムとなった。
- カワノシカクワガタ R. c. kawanoi Maes, 1996
- 中国広西チワン族自治区、ベトナム北部。背中の模様が存在する。
- レーマンシカクワガタ R. c. lehmanni Baba, 1997
- ミャンマー南部
- チュウゴクシカクワガタ R. c. rubrifemoratus Nagai, 2000
- 福建省。脚が赤みを帯びるが、模様は見られない。独立種とすることがある。
- フキヌキシカクワガタ R. c. fukinukii Nagai, 2002
- インド北部
- ツツイシカクワガタ R. c. tsutsuii
- ベトナム南部。今まではR. c. ssp.とされていたが、2009年7月に記載された。
- ディディエールシカクワガタ R. didieri (Delisle, 1970)
- マレー半島。大アゴ基部の尖った突起が発達する。9cmにもなるシカクワガタ属最大の種。背中の後方部に模様が見られ、また脚の腿節が赤くなる。
- メイシカクワガタ R. maii (Maeda, 2009)
- ベトナム中部。2009年2月に記載されたばかりの新種で、形態はディディエールシカクワガタに似る。
近縁な属
シカクワガタ属以外にも、「シカクワガタ」とつく属がいくつか存在し、いずれも近縁な属である。
上記以外では、フタマタクワガタ属との類似点が指摘されている。