ホンダ・GL
GL(ジーエル)とは、かつて本田技研工業が製造販売していたオートバイの型番である。
本項ではウイングとして発売されていた初期型車両を中心に記述する。
目次
概要
GLは国内において同じ仕様のエンジンを搭載していたオートバイに用いられていた型番であり、当時はWING(ウイング)シリーズとして発売していたが、現在は型番を車名として扱うことが多い。排気量やタイプ別に数車種が生産されていたが、すでに全車種とも販売終了している。
なお海外ではすでにGL1000が発売されていた関係で、国内で「GL」として発売された車種は、輸出仕様では型番のみ「CX」に変更されていたが、後に全て「CX」に統合された。(後述)
GL系初期型エンジンの特徴
ホンダの量産二輪車として初めてのV型2気筒である。バンク角は後のフォーミュラ2用エンジンRA260Eと同様の80度である。
- 縦置きに搭載された水冷Vツインエンジンは1万回転まで回る高回転型のOHVであり、給排気方向にクランクシャフトに対して22度のひねり角が加わっているなど、外見もさることながら機構的にも特異なエンジンである。(同様の縦置Vツインエンジンはモト・グッツィが有名)
- たとえば、このエンジンはOHVながら、気筒あたり4バルブのセンタープラグ方式を採用し、そのボア・ストロークはホンダの第一期の3リッターのフォーミュラ1用エンジン(V型12気筒3000cc)と同じ(GL500)であることが有名であり、プッシュロッドには潜水艦の潜望鏡に用いられる金属を採用してその高回転を実現したと言われている。
- 縦置きエンジンであるため、シフトペダルの軸も縦方向である。
- 重い重量や外見的な重圧感とは裏腹に、エンジンは高回転域までスムーズに回りGL400でも40馬力/9500rpmをたたき出す。GL500(国内向け)は48馬力/9000rpm。
- ラジエータはエンジンに直付けされ、乗用車の縦置きエンジン同様にクランクから動力を得るクーリングファンを備えていた。
- このエンジンの排気量を730cc以上に上げるとともに90度向きを変えて専用フレームに搭載し、チェーンドライブとしたダートトラックレーサー、NS750、別名サイドワインダーが存在した。ライダーはF.スペンサー。
WING GL400・GL500
GL500は1977年、GL400は1978年に発売された。発売された時の商標は共にWING(ウイング)である。特徴としては前述した水冷縦置きV型2気筒とメンテナンスフリーのシャフトドライブ、コムスターホイール、などである。この車種のデザインは「10年後でも色褪せない」ものを狙ったと言われ、航空機が飛翔するように前方が持ち上がったラインを有する。メータ類はライトケース一体のパネル上に水温計を備えた3連メータを備えた。国内向けはアップハンドルを装備したが、ヨーロッパ向けはコンチネンタルタイプのハンドルを装備している。
エンジンは10000rpm近い高回転までスポーツ車と異なりまろやかに回る事から、ツアラーにふさわしいものであった。縦置きエンジン特有のフライホイール・マスによる車体の横方向への揺れやシャフト・ドライブによる発進時のリア・リフトなどの数々の特徴を持ち、独特な車両であった。
この車両は、主に輸出用として500ccモデルが先に発売されており、国内向けのGL400は翌年に販売開始となった。400ccクラスではホンダ初の本格的ツアラーマシンであり、座り心地の良いシートとライディングポジションとエンジンの特性から、乗る者にストレスを与えず長時間の運転を可能にさせたことや、大型の車格(車両重量218Kg)がもてはやされ、価格的には10万円ほど高価になるにもかかわらず、GL400の国内販売台数はホンダの社内ライバルであるCB400T HAWK2を向こうに回し、一時は年間トップに立つベストセラーモデルとなった。免許制度の関係で売れ行きが鈍かったGL500は、後に輸出専用車になっている。400と500の外見はほぼ同一であり、エンジンのクランクケースに張られた「GL400」「GL500」のプラーク(ただし、輸出向けは500がメインのためかプラークは「HONDA」)で違いが分かる程度であるが、排気量が大きく違う事からエンジン特性はかなり異なる。
後の1981年4月22日にはホンダウイングカスタム(GL 400/500)の発表とともにマイナーチェンジされ、デュアルピストンキャリパー+軽量孔あきフロントダブルディスクプレートのフロントブレーキシステム、フロントのセミエアサスペンション、ハロゲンヘッドライト、メーターバイザーなどを装備した。
WING GL400-CUSTOM・GL500-CUSTOM
GL400-CUSTOM・GL500-CUSTOM(ジーエル-カスタム)は共に1979年発売。GL400・500のアメリカン仕様として販売された。 この際、500はホイールを裏コムスター化して、さらにリアを16インチとしたが、400は1981年のマイナーチェンジまでGL400とおなじサイズのままで発売された。
400は1983年にCXカスタム(42PS/9500rpm)にモデルチェンジした。
WING INTERSTATES
WING INTERSTATE(ウイング インターステート)は1983年に発売された。型番車名はGL650Iであるが、GL700としても通ずる。CX650ターボのエンジンからターボを外して搭載し、前面に巨大なカウルを装備した本格的なツアラーモデルである。国内向けはGL700インターステーツ(800台限定)、一部の輸出向けはGL650 SILVER WING(いずれも673cc)。
後継車種
- GL系エンジンは後に改良が加えられてCX系エンジンに発展し、ターボを装着したCX500ターボ・650ターボが発売された。
- GL400は後にモデルチェンジしてCXユーロ(外見をCX500ターボ風にしている。輸出仕様はCX500E)に、GL400カスタムは後にCXカスタムにモデルチェンジした。
- GLの商標は、国内でも後に発売されたゴールドウイングシリーズに統合されているが、ゴールドウイングのエンジンは別仕様のものが搭載される。
外部リンク
- ホンダ製品アーカイブ・GL/CX
- ホンダプレスインフォメーション・ウイング インターステート - 1983年6月16日