土間
土間(どま)とは日本建築に於ける家屋内の一部を構成する間取りである。
概要
日本の伝統的な民家や納屋の屋内空間は、人間の生活面が柱によって地面より高くしつらえられ、木の板などが敷かれた「床(ゆか)」という装置が敷かれた部分と、地面と同じ高さの部分とに分けられる。この後者が土間である。土間の仕上げには、三和土(漆喰を塗り固めた床)、珪藻土、コンクリート・タイルなどが用いられる。
地面とほぼ同じ高さで、生活空間である廊下・居間・寝室といったようなその他の部屋よりも一段低くなっており、屋外と連絡するための・人が出入りする、大きく開く扉ないし引き戸が必ず設けられている。以下に述べるが、現在では縮小化されたものが同じように呼ばれているが、本来は「地面と同じ扱いの屋内の部屋」という性格があった。
用途上、防水性があるものが使われることが多い。現代では旧家などに伝統的な形態のものが多く保存されている。日本の民家は古来柱に支えられた高床式の床敷き部分と、土間の部分が対等な存在であり、この二つの要素が一つの建築物として結合した形態が基本となっている。両者の結合部位の要の部分にある柱が大黒柱である。
現代の民家建築では、土間は単なる屋外と屋内の境にある玄関の狭小な空間に縮小しており、単純に靴を脱ぐための場所と位置付けられ、伝統的な土間の重要な機能であった生業の作業空間という要素は、生活家屋内から排除されていることが多い。現代では農家や手工業者のように、伝統的に土間で行われていた作業を家内産業として営む者は、庭など屋外の別空間を簡易的な屋根で覆うことにより、その役割を代替する事が多くなっている。
旧来のものは作業場として十二分な広さを持つ場所であったが、現在のものでは広くて半畳程度(住宅規模によっても異なる)の玄関の付帯物扱いである。
主な用途
土間は戸外と屋内の中間的な場所にあたり、日本家屋では「屋内では靴を脱ぐ」という生活習慣があるが、土間に限っては土足のままでもかまわない。このため現代住宅でも「靴を履いたり脱いだりする場所」という位置付けで存続している。日本家屋の玄関、学校の昇降口も、土間の一種と考えることも出来る。土間は基本的に戸外と同じ扱いであるため、一時的に土間に下りる場合でも、突っ掛けなど簡易的な履物をはく。
作業場
雨天などの際に農機具や漁具の手入れを行う作業場として活用される。数畳から十数畳程度の広さを持ち、ござやすのこを敷いて座ったり、あるいは靴を脱いでそれらの上に立ったりもする。
ごみや埃の出易い作業をする上で、掃除の簡単に済ませられる土間を利用したと思われるが、その一方で古い農村部の日本家屋では、板の間がそのまま生活居住空間で作業場所は特別に設置しなかったため、汎用性のあるスペースとして利用されていたようだ。また、伝統的農村家屋では用途によって板をはめて板の間として使用したり、板をはずして土間として使用したりするスペースが設けられていることもある。
炊事場
調理では火や水を多く使うことから、床が腐る心配がない・燃え移るものの少ない土間が必然的に利用された。また竈など火を使う設備を設置する上でも、土間の方が設置がし易く、火災予防の観点からも有効である。この為旧家などは炊事場が土間となっている事が多い。
伝統的な農村家屋では、便所や風呂は母屋から離れた別小屋になっていることが多いが、炊事場に関しても、母屋の中ではなく外に設置し、屋根をかけて作っているケースも少なくない。構造的には軒下の一種であるが、風雨を避けるための簡易的な壁を回しているため、屋外なのか屋内なのか、判断が難しいところである。こうした構造から、炊事場を釜屋(かまや)と呼ぶ地方もある。
軍艦島の集合住宅
軍艦島(長崎県)の集合住宅は密集した団地であるが、作られた時代を反映して玄関に土間に相当する広い空間をもつものがある。また、ビルであるにも関わらず地面から床面までの段差を大きくしてあるなど、過渡期の姿をとどめている。