フォーミュラ4

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フォーミュラ4(Formula 4、F4)は、モータースポーツの一カテゴリーである。

2013年現在は日本フランスイギリスで同名称のレースが行われているほか、2014年からは国際自動車連盟(FIA)が同名のシリーズの発足を計画しているが、中身はいずれも全くの別物である。以下国別に解説する。

日本

日本のF4は、日本独自のミドル・フォーミュラの一つである。運営はエンジンチューナー・レーシングカーコンストラクター及びサーキット等の代表者で構成される日本F4協会が行っている。

概要

FJ1600F3の間を埋めるカテゴリーとして1993年に創設(当初の名称はFJJ)。当時F3への参戦コストが高騰し、FJ1600からF3へのステップアップが非常に困難になっていたことが背景にある。同カテゴリー出身の有名選手には道上龍荒聖治らがいる。現在は日本自動車連盟(JAF)の地方選手権として、東日本・西日本の2シリーズが行われている。

マシン

エンジンは、現在は排気量が最大2,000ccの量産L4エンジンを改造したもので、価格はレギュレーションで最高220万円(2011年より[1])とされている。

シリーズ発足から2009年までは排気量の上限は1,850ccだった。当初はトヨタマツダ及び日産のエンジン等も使われていたが、後にパフォーマンスや入手性から戸田レーシング製のホンダB18Cエンジンの事実上ワンメイクになった。このエンジンもベースエンジンの入手が困難になったため、2010年からエンジン排気量の上限を2,000ccに拡大[2]。2,000ccエンジンについては、戸田レーシングがホンダのK20Aトムスがトヨタの3ZRをベースとしたエンジンを供給している[3]。2012年現在はこれに加え日産・SR20やホンダ・B20C、さらに従来のホンダ・B18Cを独自にボアアップしたエンジンも使用されている[4]

レギュレーション上は従来の1,850ccエンジンと2,000ccエンジンの混走が認められており、性能の均衡化を図るべく、2,000ccエンジンについてはリストリクターによる出力制限が設けられている。規定改正後暫くの間は実際に混走状態が続いていたが、2012年のF4コンストラクター日本一決定戦では全車が2,000ccエンジンを搭載し、移行がほぼ完了した[4]

シャシーも価格がレギュレーションで最高680万円(2011年より[1])とされ、かつては東京R&D製なども存在したが、後にウエストレーシングカーズの事実上のワンメイクになった。2010年よりカーボンコンポジットモノコックの使用が認められたため[2]日本自動車レース工業会(JMIA)がF4への積極参入を図る姿勢を表明し[5]、新型シャシーが東京R&D・ムーンクラフト・ZAP SPEEDなど複数のコンストラクターから発売された。なお従来マシンの使用も引き続き可能だが、最低重量が変更されたためその分の調整が必要である[2]。また後述するように、2014年からは旧フォーミュラチャレンジ・ジャパン(FCJ)のマシンも参戦している。

タイヤはワンメイクで、シリーズ発足から2011年まではADVAN横浜ゴム)が指定されていたが、2012年よりダンロップ住友ゴム工業)に変更になった[6]

運営改革

近年は、F4においても参戦コストの高騰や支援企業の減少等によりエントラントは減少傾向にあり、2000年代後半にはシリーズ全戦に参戦する台数が10台を割っていた。FJ1600及びF4のエントラントを支援するジャパン・スカラシップ・システム(JSS)は、2006年より「F4日本一決定戦」と題し、FJ1600と同様に優勝者にF3などへのステップアップチャンスを与えるシステムを導入するなどの改革を行ったものの、2006年より発足したほぼ同格のカテゴリーであるフォーミュラチャレンジ・ジャパン(FCJ:トヨタ・日産・ホンダの自動車メーカー3社が支援)に近年エントラントの人気が集まったことなどから、参戦台数の減少が続いた。

これに対し前述したように、2010年よりエンジン排気量の拡大・新しいマシン規定など、カテゴリ発足以来の大規模なレギュレーション変更が行われた結果、参戦台数は増加する傾向を見せており、今のところはレギュレーション変更が成功したといえる。

さらに2013年限りでFCJがシリーズを終了。これに伴い2014年からはトヨタ・ホンダの両メーカーがF4にて若手ドライバー育成活動を行う方針を明らかにしており、カテゴリーの重要性は高まりつつある。

クラス分け

F4では2012年より、使用するマシン種別や年齢等に応じて、総合チャンピオンとは別に以下の3つのクラスを設けている[7]。2014年に「FCクラス」が新設されたことで、クラスは全4クラスとなった。

Aクラス
アルミニウムを主要構造体とするマシンによるクラス。
Cクラス
カーボンコンポジットモノコックを主要構造体とするマシンによるクラス。
ジェントルマンクラス
満40歳以上かつ自らF4協会に登録を行ったドライバーを対象としたクラス。本クラスのみ東西シリーズを通算した成績で表彰する。
FCクラス
2014年新設。旧FCJ用のシャシーをF4用にモディファイしたマシンを使用する[1]。なお本クラスは選手権ポイントの対象外となるほか、性能調整が行われている関係で本来のF4用マシンよりも1周2秒程度遅い[8]

国土交通大臣杯

国内でも数少ない、日本国内の複数のシャシーコンストラクターが鎬を削るカテゴリーであるという点から、2010年よりF4に「国土交通大臣賞」が設定され、東西シリーズ及び日本一決定戦を通じて最も優勝回数の多いシャシーを製造したメーカーに国土交通大臣杯が授与されることになった[9]。過去の結果は以下の通り。

  • 2010年:ZAP SPEED(F108)
  • 2011年:B-MAX(RK-01)
  • 2012年:B-MAX(RK-01)
  • 2013年:ZAP SPEED(F108)

フランス

フランスF4French F4 Championship)は、フォーミュラ・ルノーの下位カテゴリーであるフォーミュラ・ルノー・キャンパス(Formula Renault Campus)を2011年に名称変更したものである。

元々はフォーミュラ・ルノーへのステップアップカテゴリーとして1993年に創設。2010年にはF4 ユーロカップ1.6(F4 Eurocup 1.6)と名称を改めワールドシリーズ・バイ・ルノーの下位カテゴリーとなったが、同年限りで同シリーズから離脱。2011年より主催者であるフランスモータースポーツ連盟(FFSA)が「若手ドライバーの育成アカデミー」として同カテゴリーを再編したことから現在の名称に改められた。

その名称からもわかるように、マシンはルノー製1.6リッターエンジンを搭載したワンメイク。また若手ドライバー育成を目的とするため、「1月1日時点で満15歳から23歳までのドライバー」に参加資格を限定している。

イギリス

イギリスではブリティッシュ・レーシング・ドライバーズ・クラブ(BRDC)の主催で、2013年よりBRDC Formula 4en:Formula 4)の名称でレースが行われている。

元々は2006年より同国の750 Motor Clubが主催していたレースが前身。2013年にBRDCとモータースポーツ・ビジョン(MSV)が主催を引き継ぎ、Ralph Firman Racing(RFR)[10]が製造するシャシーに2リッターエンジンを搭載したワンメイクレースである。

FIA F4

FIAでは2014年よりFIA F4(FIA Formula 4)の名称で、新たなシリーズを立ち上げる意向を明らかにしている。

FIAの想定では、F3と同等レベルのシャシーに約160馬力程度のエンジンを搭載したワンメイクレースのシリーズで、原則として国ごとに当該国のモータースポーツ統括団体(ASN)の主催で開催される。シャシー・エンジンは国ごとに別々のものを使用することを想定しているものの、性能的にはほぼ同程度になるようにFIAのホモロゲーションによって調整が行われるとしている。FIAではレーススケジュールやポイントシステム等を「FIAヨーロッパF3選手権に準じたものとする」よう推奨している。レースには15歳から参戦可能とすることが求められる。なおFIAの基準に従い行われるF4シリーズについては「FIA Certified」の認可が与えられる[11]

2014年はまず先駆けとしてイタリアでFIA F4規格の選手権が発足し、同年6月にシリーズが開幕している[12]。同シリーズではタトゥース社製シャシーにアバルト製1.4リッターターボエンジンの組み合わせが採用された[13]

日本では、SUPER GTを主催するGTアソシエイション(GTA)が、FIA F4規定に従った新シリーズの立ち上げを検討している[14]。また日本自動車レース工業会(JMIA)が同シリーズ用マシンの開発を計画しており、シャシーを童夢、エンジンをトムス、ギアボックスを戸田レーシングが担当する方向で調整が進められている[15]。トヨタもトヨタテクノクラフトを通じてFIA F4用のシャシー・エンジンの開発支援を行う方針が明らかにされている[16](JMIAの動きと関係があるかは不明)。

FIAで本構想を主導するゲルハルト・ベルガーは、最終的に前述のフランスF4・BRDC F4やフォーミュラ・ルノーなどの入門カテゴリを本カテゴリに集約することを狙っていることを明らかにしているが[17]、既に同様のレースを開催しているプロモーター達からの反発も予想されている[17]

脚注

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参考項目

外部リンク

日本

フランス

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  1. 1.0 1.1 1.2 F4 2014年 レース車両解説 - TOYOTA Racing
  2. 2.0 2.1 2.2 2010年F4規則に関して - 日本F4協会・2009年9月28日
  3. 2010年に登場する2つのJMIA 2リットルF4エンジン - 日本自動車レース工業会・2009年12月2日
  4. 4.0 4.1 F4 Paddock News Vol.4
  5. 日本自動車レース工業会は、来期よりのF4への参入を推進します。 - 日本自動車レース工業会・2009年9月28日
  6. JAFモータースポーツ公示・2012年1/2月号の「公示No.2012-006」を参照。
  7. 「2013年度のF4レースの賞典・表彰」について - 日本F4協会・2013年3月3日
  8. F4 PADDOCK NEWS 2014 Vol.1 - オートスポーツ・2014年6月9日
  9. F4 レースシリーズに「国土交通大臣賞」が交付されることになりました。 - 日本自動車レース工業会・2010年3月5日
  10. 代表のラルフ・ファーマン・シニアはヴァン・ディーメンの創業者の一人で、元F1ドライバーのラルフ・ファーマンの父親。
  11. http://www.fia.com/sites/default/files/basicpage/file/FIIII_plaquette_full_formula4.pdf
  12. 笹原右京、代役出場のイタリアFIA-F4で優勝 - オートスポーツ・2014年6月9日
  13. http://www.f4championship.com/pdf/F.4ITALY_TATUUS2014.pdf
  14. GTA、将来FIAフォーミュラ4をプロモートか - オートスポーツ・2013年11月3日
  15. JMIA、FIA F4車両開発へ。15年からマーケット投入 - オートスポーツ・2013年11月28日
  16. トヨタ自動車、2014年のモータースポーツ活動および支援計画を発表 - トヨタ自動車・2014年1月30日
  17. 17.0 17.1 FIA reveals Formula 4 plan - AUTOSPORT・2013年3月21日