坪郷實
坪郷 實(つぼごう みのる、1948年 - )は、日本の政治学者。 博士(法学)(大阪市立大学)。早稲田大学社会科学部・社会科学総合学術院教授。 日本比較政治学会理事。
専門は比較政治、環境政策の政治学、環境社会論、新しい社会運動、EU地域研究、『緑の党 (ドイツ) 』研究。
ドイツの政治状況に詳しい[1][2][3]。 また、日本における「緑の党 (ドイツ) 」研究の草分け[4][5] [6]。
略歴
1948年山口県下関市に生まれる。大阪市立大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。博士(法学)(大阪市立大学)。北九州市立大学教授を経て、1994年より早稲田大学社会科学部教授・大学院社会科学研究科教授。
研究
1980年代中頃より、当時ドイツ連邦議会に進出し始めた《環境政党》・『緑の党 (ドイツ) 』に注目し研究をはじめる[4] [5]。その後、西ドイツ「緑の党」は、『エコロジー』や『生活主義』を掲げ、東西ドイツの統一にも影響力を持つまでに台頭した。環境政党「緑の党」の経験から、新時代の政党のあり方や、「新しい時代の市民活動」のあり方を模索する研究を行っている。
ドイツでは、緑の党などが加わる連立政権により、世界に先駆けて「エコ税制改革」が行われ、第二次産業・製造業の占める割合が高いなかで、主要国に先駆けて環境税が導入されるなど、大きな政策転換が進められた。こうしたドイツにおける一連の『環境政策』を、比較政治・政治過程・社会政策・経済政策・地方自治(市民自治)の各側面から『統合的環境政策』として有機的に捉え、21世紀における「持続可能な産業社会」への転換とその政策的手段について、学際領域の研究を行っている。
役職
その他
日本における「緑の党」の可能性
日本版『緑の党』のような「試み」は、これまで何度か為されてきたものの、いずれも消滅するなど「失敗」に終わっている。その理由について、以下のような分析を行っている。
ヨーロッパと日本では「政党の在り方」が異なる。ヨーロッパの場合は、政党によって「政治理念」が明確に分かれており、そのため、ヨーロッパで「緑の党」が現れた際には、『新しい争点』として有権者に受け入れられた。一方、日本の場合、「緑の党」が唱えるような政策は「既存政党」の議員が既に訴えており、こうした状況下では、埋没する可能性が高いと指摘する。
日本の場合、政権交代を何度も経験した先、「政党の在り方」が変容していった場合には可能性があるものの、現段階では、特定の政策を訴えるこうした小政党が力を持つのは容易ではない。[6]
また、ドイツの政治状況に詳しく、日本との比較を含め、新聞でコメントを求められることがある。[1][2][3]
著書
単著
- 『新しい社会運動と緑の党 ―― 福祉国家のゆらぎの中で』 (九州大学出版会、1989年)
- 『統一ドイツのゆくえ』 (岩波書店 [岩波新書]、1991年)
- 『ドイツの市民自治体-市民社会を強くする方法』 (生活社、2007年)
- 『環境政策の政治学 ―― ドイツと日本』 (早稲田大学出版部、2009年)
編著
- 『新しい公共空間をつくる ―― 市民活動の営みから』(日本評論社、2003年)
- 『参加ガバナンス ―― 社会と組織の運営革新』(日本評論社、2006年)
- 『比較・政治参加』(ミネルヴァ書房、2009年)
共著
- 『比較・選挙政治 ―― 90年代における先進5カ国の選挙』 (梅津實・森脇俊雅・後房雄・山田真裕) (ミネルヴァ書房, 1998年)
- 『比較・選挙政治 ―― 21世紀初頭における先進6カ国の選挙』 (後房雄・大西裕・山田真裕・梅津實・森脇俊雅) (ミネルヴァ書房, 2004年)
共編著
- 『EC経済統合とヨーロッパ政治の変容 ―― 21世紀に向けたエコロジー戦略の可能性』 (住沢博紀・長尾伸一・阪野智一・長岡延孝・伊藤公雄) (河合文化教育研究所, 1992年)
- 『連立政治 同時代の検証』 (山口二郎・新川敏光・後房雄・伊藤光利) (朝日新聞社, 1997年)
- 『ポスト福祉国家とソーシャル・ガヴァナンス (ガヴァナンス叢書) 』 (山口二郎・宮本太郎) (ミネルヴァ書房, 2005年)
- 『ヨーロッパ・デモクラシーの新世紀 ―― グローバル化時代の挑戦』 (高橋進) (早稲田大学出版部, 2006年)
- 『市民が描く社会像 ―― 政策リスト37 (CiViCS叢書)』 (生活社, 2009年)
- 『分権と自治体再構築 ―― 行政効率化と市民参加』 (縣公一郎・ゲジーネ フォリャンティ=ヨースト) (法律文化社, 2009年)
訳書
- H-U・ヴェーラー 『近代化理論と歴史学』 山口定との共訳 (未來社, 1977年)
- Ph・C・シュミッター, G・レームブルッフ編 『団体統合主義の政治とその理論』 (木鐸社, 1984年)
- ウーテ フレーフェルト 『ドイツ女性の社会史 ―― 200年の歩み』 (共訳) (晃洋書房, 1990年)
- サミュエル・P・ハンティントン 『第三の波 ―― 20世紀後半の民主化』 (三嶺書房, 1995年)
論文
- 「戦後ドイツの極右主義と共和党」 『思想』 第833号(岩波書店, 1993)
脚注
- ↑ 1.0 1.1 朝日新聞 「ドイツ、進む多党化 総選挙の結果確定 2大政党の退潮際立つ」 2005年10月4日
- ↑ 2.0 2.1 読売新聞 「『大連立』打診 現実味薄い日本 理念を明確に」 2005年12月14日
- ↑ 3.0 3.1 毎日新聞 「大連立の行方:’09ドイツ総選挙 混迷の中の選択(中) 中道右派政権、誕生へ」 2009年9月29日
- ↑ 4.0 4.1 「西ドイツ『緑の党』の支持者像について(上・下)」 北九州大学法政論集 1985・1986年
- ↑ 5.0 5.1 「新しい社会運動と緑の党 ― 福祉国家のゆらぎの中で ― 』 九州大学出版会 1989年
- ↑ 6.0 6.1 東京新聞 「【こちら特報部】― 『緑の党』日本に根付くか ― 《野党との差別化、具体策カギ》 ― 識者の見方」 2011年11月15日