全日本合唱コンクール

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全日本合唱コンクール(ぜんにほんがっしょうコンクール、National Choral Competition)は、社団法人全日本合唱連盟朝日新聞社が主催し、毎年開催する日本合唱大会である。1948年より開催されている。当初の部門編成は、「学生(高校大学)」「職場」「一般」の3部門であったが、出場団体の増加や多様化により部門を細分化し、現在の総合合唱コンクールへと発展した。NHK全国学校音楽コンクール(Nコン)と並んで二大コンクールと呼ばれる。Nコンとの区別から、一般的に「朝コン」または「連盟」と呼ばれる。規定などはNコンに比べると緩和されている部分が多い。

コンクールの形態

出演資格

出演資格のある合唱団は、各都府県(北海道は地区)の合唱連盟に加盟している、8名以上[1]の合唱団である。合唱団の構成により以下の5部門に分けられる。

  • 中学校部門
  • 高等学校部門
  • 大学部門
    • いずれも同一校に在籍する学生・生徒で構成される合唱団、もしくは複数校の合同で構成される合唱団[2]。ひとつの学校から複数の合唱団が出場できる。
    • 中高一貫校は、中学生・高校生合同で高等学校部門に出演できる。この場合、当該校の中学生は、規定上高校生として扱われる。
    • 出演団員は同一種別(混声・男声・女声)に1回に限り出演できる。
  • 職場部門
    • 同一の企業、官公庁等に属する役員、従業員等で構成される合唱団。
  • 一般部門
    • 上記4部門のいずれにも属さない合唱団。
    • 規定上、少年少女合唱団(小学生が混じるなど)、おかあさんコーラスやシルバーコ-ラス等もこの部門に含まれる。

さらに中学校部門は混声合唱同声合唱[3]に、高等学校・一般部門は32名以下のAグループと33名以上のBグループに分けられ[4]、それぞれ別個に審査が行われる。出演資格に違反したときは、出演停止もしくは入賞の取り消しがなされる。

指揮者伴奏者独唱者の出演資格は問わないので、コンクールのために外部からプロの指揮者等を招聘することも可能である。ただし、中学校部門・高等学校部門では、指揮者・伴奏者・独唱者は、当該校長が認めた者に限られる。また、指揮者・伴奏者・独唱者が合唱メンバーに入って歌う場合は、当該部門の出演資格を満たさなければならない。

平成25年度規定改正

平成25年度(第66回)より、大学部門、職場部門、一般部門を統合し、登録している部門にかかわらず以下のいずれかを選択して出演することとなる[5]

  • 大学ユース合唱の部
    • 出演人数が8名以上で、出演するメンバー全員が、当該年の4月1日現在28歳以下である合唱団。
  • 室内合唱の部
    • 出演人数が6名以上24名以下である合唱団。
  • 混声合唱の部
    • 出演人数が25名以上である混声合唱団。
  • 同声合唱の部
    • 出演人数が25名以上である男声合唱団もしくは女声合唱団。

なお、中学校部門、高等学校部門については、平成25年度も従来どおりの規定で行われる。

演奏規定

出場団体は、当該年度の「合唱名曲シリーズ」から任意の一曲を課題曲として全員で演奏しなければならない。ただし、中学校部門には課題曲がなく、自由曲のみの演奏である。「合唱名曲シリーズ」は、前年の12月ごろに曲目が発表され、当年3月に主にカワイ出版より出版される。課題曲に演奏時間の制限はないが、近年はおおむね3分から3分30秒程度の曲が多く選出されている。

自由曲は、演奏時間が定められており、中学校部門は8分00秒以内、高等学校部門は6分30秒以内、大学・職場・一般部門は8分30秒以内で演奏しなければならない[6](演奏時間とは、楽譜上に記載されている第1拍目(楽譜上の1拍目が休符であっても、指揮者がそれを振り始めるとカウントはスタートする。予備拍(いわゆる数取り)は含まれない)から、最後の曲の余韻が終わるまでである)

演奏時間内であれば曲目、曲数に制限はないが、曲間も演奏時間に含まれ、演奏時間を1秒でも超過した場合は、審査の対象外となる(止められることはない)。舞台裏と審査員席近くにストップウォッチを持った計時係が存在する。

伴奏楽器は自由であるが、主催者が用意する楽器(ピアノ1台)以外を使用する場合は使用団体の責任において用意し、これにかかる費用は使用団体が支弁しなければならない。

演奏順は、課題曲、自由曲の順とする。都府県大会・支部大会・全国大会を通して、演奏曲目・曲目順・伴奏楽器を変更することはできない。

コンクールの審査

審査員は、作曲家、指揮者、声楽家、合唱連盟の役員などが務める。全国大会では審査員は9人以上と定められている。都府県大会及び支部大会では、参加団体数や規模によって、3人~7人と、地域によってばらつきがある。

全国大会の審査は、新増沢式採点法で行われる。都府県大会及び支部大会でも、全国大会に準じて新増沢式採点法を採用している大会が多いが、一部地域の大会では、独自性を出すために別の審査方式を用いている。 総合順位に基づいて、審査員の合議により、全国大会では全団体に、都道府県大会及び支部大会では音楽的に特にすぐれた演奏をした団体に、金・銀・銅の各賞が贈られる。また全国大会では以下の特別賞が贈られるほか、都府県大会・支部大会でも独自の特別賞が存在する。

  • 文部科学大臣
    • 中学校・高等学校・大学・一般の各部門において第1位の合唱団に贈られる(参加団体数により異なる)。
  • 厚生労働大臣
    • 職場部門において第1位の合唱団に贈られる。
  • (開催地の)都道府県知事賞、市長賞、教育長賞
    • 各部門において第2位もしくは第3位の合唱団に贈られる(年度や開催自治体の意向により異なる)。
  • 日本放送協会賞
    • 大学・職場・一般の各部門において第2位もしくは第3位の合唱団に贈られる。
  • カワイ奨励賞
    • 課題曲もしくは自由曲に邦人作品を歌った合唱団の中から1ないし2団体に贈られる。河合楽器製作所からグランドピアノ1台が賞品として贈られる。
  • コンクール大賞(1995年度限りで廃止)
    • 全部門を通して1団体に贈られる。

コンクールの実施

全国大会までの道のり

全国大会の予選にあたる都府県大会及び支部大会は、全日本合唱連盟の地方支部組織である各地域の合唱連盟が主催する。都府県大会、支部大会(北海道・東北・関東・東京・中部・関西・中国・四国・九州の9支部)ですぐれた演奏をして審査員に推薦されると、全国大会に出場することができる。ただし、北海道支部、東京支部の全部門と、関西支部の大学・職場・一般部門は支部大会のみが行われる。全国大会に出演できる団体数は、都府県大会の参加団体数によって支部ごとに決められる[7]

大学・職場・一般部門においては、前年度の全国大会で各部門の上位2団体に、全国大会へのシード権が与えられる。シード団体は、審査を受けることなく全国大会に出場することが出来るが、都府県大会及び支部大会では、審査の対象外で演奏しなければならない[8]。またシード団体は、前年度の全国大会に出演した出演区分を変更することはできない。このほか、前年度の全国大会の成績に応じて支部大会へのシード権を与え都府県大会で審査を受けずに支部大会に出場することができる扱いを、各支部ごとに基準を設けて行っている。

全国大会

全国大会は毎年会場が異なり、全日本合唱連盟の理事会で開催地が決定されるが、原則として9支部の持ち回りである。これはNHK全国学校音楽コンクールの全国大会が、毎年東京・渋谷のNHKホールで開催されるのと対照的である。

中学校部門が創設された1991年度より前は、1ヶ所の会場で全部門を開催していたが、1991年度から1995年度までは10月末に中学校部門、11月下旬に連続した3日間で高等学校・大学・職場・一般部門と2ヶ所の会場に分かれて開催するようになった。1996年度より現行の開催日程となり10月末に中学校・高等学校部門、11月23日頃に大学・職場・一般部門を開催している。中学校・高等学校部門は、団体移動に配慮して、新幹線沿線地域で開催するのが慣例となっている。

課題曲一覧

全日本合唱連盟ウェブサイト、過去の課題曲を参照。

音源・映像

  • 全国大会出演団体の演奏は、いずれもレーベルはブレーン株式会社が以下の取り扱いをしている。
    • 当日の大会会場で1団体ごとに収録されたカスタムCD等が演奏終了後15分程度で販売される。
    • 各部門ごとに複数団体が収録されたCD「ハーモニーの祭典」が後日発売される。中学校・高等学校部門は全団体の課題曲と自由曲全曲、大学・職場・一般部門は、金賞受賞団体が課題曲と自由曲、銀賞受賞団体が自由曲のみ収録されることが多い。
    • DVDは、1団体収録のカスタムDVDの他、課題曲全12曲(演奏団体があった場合)と各部門の第1位団体の自由曲を収録した「ベストハーモニー」、各部門の金賞団体を集めた「金賞スペシャル」が販売される。 
    • CD、DVDとも、好みの複数団体を組み合わせた特注品も、要相談で作成してくれる。
  • 都道府県大会・支部大会においても、地元業者がカスタムCD等の販売を行っている大会がある。上記のブレーン株式会社は、本社が広島にあることから全国大会のほかに中国支部大会のCD等も扱っている。
  • この他、携帯サイト「みんなの合唱 着うたフル」にて、過去の各部門の演奏を聴くことができる。ただし、聴くためには月額315円の会員になる必要があるほか、ダウンロードは月2曲(繰越での最大は4曲)しかできない(ダウンロード不可の「視聴する」なら15秒程度なら聴くことができる)。

脚注

  1. 2002年度以前は12名以上。
  2. 複数校による合同合唱団は、常時活動し、所属する都道府県合唱連盟理事長が認めた合唱団に限られる。「常時活動」とは、「おおむね月1回以上の活動をしている」と解釈されている。
  3. 同声合唱とは、男声合唱及び女声合唱を指すが、実際には参加団体の大半が女声合唱である。
  4. 1997年度から2007年度までは大学部門もA・B両グループに分けられていた。
  5. 全日本合唱コンクール全国大会開催規定平成24年5月19日改定。
  6. 1995年度までは、課題曲の演奏開始から自由曲の演奏終了までとする演奏時間の制限であった。高等学校部門は10分00秒以内、大学・職場・一般部門は12分00秒以内。しかし課題曲軽視の風潮が強くなりすぎたため、課題曲と自由曲の演奏時間を切り離し、現在の規定となった。
  7. 金・銀・銅の各賞は、演奏の「質」に対して贈られるものであり、一方上位大会への推薦枠は参加団体の「数」によって決められる。従って、必ずしも金賞=推薦、ではない。
  8. つまり、シード団体といえども、都府県大会から参加しなければならないのである。ここで言う「審査の対象外」とは、演奏規定違反でのそれとは異なり、上位大会に出場するために審査を受けることがない、という意味である。その取扱いについては、審査員を退出させて審査を受けないことを明確にする支部と、他団体と同様の出演順で演奏し審査員からの講評も受けるが審査の段階で審査から除外する支部とがあり、取り扱いは一定していない。


関連項目

外部リンク