六師外道
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テンプレート:Sidebar 「六師外道」(ろくしげどう)とは、ゴータマ・シッダッタとおよそ同時代のマガダ地方あたりで活躍した6人の思想家たちを、仏教の側から見て異端だと見なし、まとめて指すための呼称。
概要
古代インドには様々な思想家、諸教派が存在したが、その中でも有数の教派を、仏教側から見て、まとめて指すための呼称、総称である。 仏教の視点であるので、仏教以外の宗派の教説を異端だと見なし「外道」と呼んでおり、仏教を「内道」と呼んでいる。
釈迦と同時代のインドには、バラモン教ヴェーダ学派を否定する自由な思想家が多数輩出し、ヴェーダの権威を否定する諸学説を提唱して盛んに議論していた。原始仏典ではその諸学説を六十二見にまとめ、その中で主要なものを「六師外道」と総称した。
波斯匿王は、彼ら六師を年長者と呼び、対して釈迦を年少者と呼んだ。
後に、各六師にそれぞれ16人の弟子がいるとし、これらを総称して「九十六種外道」とも言うようになった。
六師一覧
- アジタ・ケーサカンバリン(Ajita Kesakambalin 阿耆多翅舎欽婆羅) - 順世派および後世のチャールヴァーカ(Carvaka)の祖。唯物論者で、人間は地・水・火・風の4元素から成ると考えた。
- パクダ・カッチャーヤナ(Pakudha Kaccayana 迦羅鳩駄迦旃延) - 七要素説(地・水・火・風・苦・楽および命)。
- プーラナ・カッサパ(Purana Kassapa 不蘭那(不蘭)迦葉)) - 道徳否定論者。悪業というものもなければ、悪業の果報もない。善業というものもなければ、善業の果報もないという考え。
- マッカリ・ゴーサーラ(Makkhali Gosala 末迦梨瞿舎利) - 裸形托鉢教団アージーヴィカ教(邪命外道)の祖。決定論者。
- サンジャヤ・ベーラッティプッタ(Sanjaya Belatthiputta 刪闍耶毘羅胝子) - 懐疑論者
- マハーヴィーラ(ニガンタ・ナータプッタ Nigantha Nataputta 尼乾陀若提子、本名ヴァルダマーナ) - ジャイナ教の開祖。相対論者。
仏教外の視点
なお、「六師外道」というのはあくまで仏教側からの表現であり他宗では、異なった視点で区別しており、結果として同一の思想家が全く異なった位置づけになっている場合がある。例えばヒンドゥー教においては、仏教も含めたこれらヴェーダの権威を否定する諸派閥を、そのなかでもとりわけ仏教とジャイナ教のほうを「ナースティカ」(非正統派, 異端)と呼び、それに対し六派哲学(シャド・ダルシャナ)を「アースティカ」(正統派)と呼び区別している。
また、例えばジャイナ教の信者から見ればマハーヴィーラ(尊称。本名ヴァルダマーナ)は外道ではなく、あくまで開祖である。