クレサラ問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クレサラ問題(クレサラもんだい)とは、クレジット会社(販売信用)やサラ金(高利貸し、消費者金融)、信用保証会社(信用保証)による多重債務、過酷な取りたて、高金利、違法業者の増加、過払金の返還を巡るトラブルなどを中心とした問題の総称である。クレジット・サラ金問題。
また、商工ローンに関する問題を含めて、クレサラ・商工ローン問題ということもある。
関連用語
テンプレート:独自研究 テンプレート:出典の明記 ここでは、クレサラ問題の他に商工ローンを含めた関連用語を説明する。
- 事務ガイドライン
- 金融庁が作成した「金融監督等にあたっての留意事項について」という事務ガイドラインのこと。事務ガイドラインの第三分冊が金融会社関係となっている。
- クレサラ
- クレジットカード(信用販売)とサラ金(消費者金融)をいう。
- これらに対する批判的・侮蔑的意味を伴うこともある。
- 多重債務
- 多数の業者から債務があること。特に、借金の返済のために別の貸金業者等からさらに借り入れて借金が増え続ける状態のこと。
- 商工ローン
- 貸金業を参照。
- 押し貸し(押し付け融資)
- 貸金業者(「闇金融」の方が適切か)が、勝手に銀行口座などに入金し、その後、高金利を付けて返済を要求することをいう。勝手に入金されたものであるから、金銭貸借契約は成立しておらず、金利は一切支払う必要は当然ない。加えて、このような入金行為は、ほとんどの場合、その後の金銭喝取の手段に過ぎないと評価できるから、法的には不法原因給付に当たり、入金された金員を返還する必要もない(日本弁護士連合会見解)。
- 弁護士が介入した場合、「入金された金員は不法原因給付だから返還しない。不満があるなら業者側から返還を求める訴訟を行うように」という趣旨の通知をしたり、すでに業者に「返済」している場合は「不法原因給付なので、業者側に押し貸しされた人への金員の返還請求権はない。返還請求権がないから、すでに業者側が返済を受けたと称する金員は法律上の原因なく取得した金員であり、不当利得となる。よって、押し貸しされた人への返還を求める。」という趣旨の通知をする場合が多い。このような対応をしたからといって、闇金融業者が裁判所に提訴することなどまずないし、まして勝訴することなどあり得ない。
- しかし、弁護士が介入しない場合、警察や消費者センターに相談の上で、入金された金額のみ返還するという処理が多い。
- 弁護士のような確たる法的知識がない事が原因、もともと闇金融系である事から様々なトラブルを避ける意味合いもある、などが考えられる。
- 買取屋(換金屋)
- 債務者にクレジットカードや契約書型ショッピングクレジットで換金可能な商品を買わせ、その商品を安く買い取る(換金する)業者のことをいう。業者は、その商品を他へ転売し利益を得る。債務者が買取屋と取引きしても、一時的に現金を得るだけで決して債務が減ることはない。そればかりか、詐欺罪に問われたり、自己破産した場合の免責が認められなくなったりする可能性がある。商品は、パソコン、ビデオカメラ、プラズマテレビ、液晶テレビといったデジタル家電や、新幹線の回数券などのチケット類が多い。ビー玉のもある。このような業者は「クレジットカードの枠を現金化」などと広告していることがある(クレジットカード現金化)。
- 整理屋
- 多重債務の整理をするといって、高額な手数料を取る業者のことをいう。弁護士以外はこのような行為を行うことができないので(非弁行為。弁護士法72条、77条3号により最高2年の懲役又は最高300万円の罰金)、弁護士と提携している整理屋もある。
- 弁護士が非弁行為を行う者と提携することも犯罪である。弁護士法27条、77条1号により最高2年の懲役又は最高300万円の罰金。名義貸しも禁止されている。このようなものを“提携弁護士”と呼ぶことがある。
- 弁護士が行う債務整理と異なり、利息制限法などを用いた適正な処理がなされないことが多く、債務者は必要以上の不当な負担を負わされることになる。なお、2003年の法改正により、(認定)司法書士もこのような業務(債務整理)を行うことが認められているが、訴訟代理権などに一部制限がある。
- 紹介屋
- 多重債務者に「まだ借りられる業者を紹介する」などといって、高額な紹介料を取る業者のことをいう[1]。出資法では紹介料は契約額の5%以下に規制されており、それを超えるものは違法である。紹介屋と紹介された金融業者は、提携していることもあるが、無関係なこともある。
- 年金担保金融
- 年金証書、印鑑、通帳を担保(年金の受給権が担保ではないことに注意されたい)に貸し付けを行うこと。また、印鑑と通帳を使って、「返済」と称して債務者の年金を勝手におろしてしまう業者もある。2004年12月28日より「貸金業の規制等に関する法律」の改正により、これらを担保に取る行為は罰則付きで禁止となる(それ以前は、金融庁の「事務ガイドライン」で禁じられていたのみ)。
- また、年金の受給権を担保にすることも原則禁止であり(国民年金法第24条、厚生年金保険法第41条など)、例外的に担保にできるのは福祉医療機構などのように法律(独立行政法人福祉医療機構法第3条 第2項)で定められたものだけである。このため福祉医療機構と類似した名称を称したり、福祉医療機構を紹介すると称して紹介料を請求する業者もある。
- 空貸し
- 金を貸していないにも拘らず、「貸した」と主張して返済を要求すること。或いは、債権を譲渡されていないにもかかわらず、「譲渡された」と主張して返済を要求すること。架空請求詐欺の一種である。
- チケット金融(金券代金後払い)
- 高速道路や新幹線の回数券などの換金性の高い金券の売買を利用した実質的な貸し金行為で、次のようなものである。
- 業者は、顧客に対して金券を後払いで正規の価格で販売する。顧客は、そのチケットを所定の金券店で換金して金を受け取る。その後、顧客は業者に金券代金を支払う。
- 業者と金券店が共謀しているので(あるいは実質的に同一であるので)、顧客からみると、金券店での換金額が元金に、正規の金券の代金が返済額に、金券を換金した日から後払いで金券代を払った日までが借入期間、「正規の金券代金-金券店での換金額」が利息に、それぞれ相当することになる。
- システム金融
- 複数のシステム化された業者による次のような行為をいう。
- ある業者が個人事業者や零細事業者を相手に小切手や約束手形を担保として高金利の貸し付けを行う。借主の返済が滞ると、最初の業者が別の業者を紹介したり、別の業者からダイレクトメールや電話での勧誘があり、今の借金を新たな借金で返済するように勧められる。これに応じると、借主は借金と返済を繰り返し、急激に債務が拡大してしまう。しかし、借主は小切手や約束手形を担保に取られているので、不渡りを恐れて業者の言いなりになる。
- 家具リース金融(家財リース業者)
- 債務者の家具等の生活必需品を買い取ったとし、それを「リースする」と称して「リース料」を要求する行為をいう。
- 「リース料」が滞ると家具等が持ち去られる。実質的には、家具等は担保でありリース料は利息に相当する。貸金業の登録はせず、古物商の許可を得ている業者が多い。
- パンスト金融
- 物品販売の業務委託を装った金融で、次のようなものである。
- まず、債務者と債権者が物品販売の業務委託契約を結ぶ。債権者は、安物のパンストなどの商品と業務委託手数料といった名目の金員を債務者に渡す。債務者は、1週間程度後に商品代金を支払うというもの。
- 実質的には、業務委託手数料が元金、商品代金が返済額に相当する。商品は、1足1万円のパンスト、1パック2万円の塩などで社会通念上、とうてい考えられない価格である。
- 根保証
- 定義は保証を参照。
- 次のようなことが、商工ローンで問題となることが多い。
- 保証人が根保証契約する場合、業者から十分な説明を受けないままに(あるいは、契約書にわかりにくく記載されていたりする)、借主の以前の債務や将来の債務までが保証の対象となっていることがある。例えば、借主が100万円の借入をするにさいして、十分に理解せずに限度額1000万円の根保証契約をしたとする。保証人は100万円分だけの保証をしていると理解しているかも知れないが、その後、借主が借入れを増やした上に返済不能となってしまうと、保証人は最高1000万円もの思いもよらない責任を負わされることになる。
- 悪質な業者によっては、根保証の限度額のことを「借主の融資限度額」などと虚偽の説明を行うこともある。
関連判例
- 極めて高金利の貸主に対して、借主が不法原因給付により元金も含めて返済義務なし、すなわち債務不存在確認の請求を行なったところ、請求が認容された事件
- 平成15年2月13日 東京簡易裁判所 平成14年(ハ)第13266号 債務不存在確認請求
- 家具リース契約を金銭消費貸借契約とし、その上で違法な金利のため利息全体を無効とし、利息を不当利得として借主への返還を認容、あわせて弁護士費用の請求も認容した事件
- 平成13年9月27日 大阪地方裁判所 平成12年(ワ)第9065号 不当利得金返還等請求
- みなし返済(貸金業法43条)が厳格適用され、書類が完全でない場合はみなし返済の要件を満たしていないとされ、差戻された事件。
- 最高裁判所 平成15(受)390号 不当利得返還請求事件
- 最高裁判所 平成15年(オ)386号 不当利得返還請求事件
- みなし弁済(貸金業法43条)が厳格適用され、利息制限法以上の金利の支払いについて、「期限の利益喪失条項」などで事実上の強制・明確な強制がなされた場合、みなし弁済の要件を満たしていないとされ、差し戻された事件。
- 平成18年1月13日 第二小法廷判決 平成16(受)1518号 貸金請求事件
- SFCGが貸付に際し主債務者及び連帯根保証人から共同振出させている私製手形に係る手形金請求の手形訴訟が、手形制度及び手形訴訟制度を濫用するものとして不適法とされた事例
- 東京地方裁判所 平成15年(手ワ)第168号,同第169号,同第180号約束手形金請求
脚注
- ↑ 廃棄物・悪質商法・ヤミ金 - 石川県警サイト