中生動物

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中生動物(ちゅうせいどうぶつ,Mesozoa)とは、後生動物としての体組織を完全には備えていない動物である。かつては、1つのにまとめていたが、現在ではここに含めていた群には、互いに系統関係関係がないと考えられている。そのため、中生動物という用語は、分類学的にではなく記述的に用いる。

特徴

中生動物門という名称は、1876年ベルギーの Van Beneden が定義した。ニハイチュウという生物が、原生動物 (Protozoa) と後生動物 (Metazoa) との中間に位置をすると考えたからだ。Mesozoa とは、ギリシャ語の mesos(中間)と zion(動物)からの造語。

ニハイチュウは、体長は1mm-10mmの蠕虫(ぜんちゅう)様の動物である。頭足類タコイカなど)の腎臓中に生息する。現在では約90種類が発見されている。ニハイチュウは通常、1個の軸細胞と20個程度の体皮細胞からなる。筋肉組織、消化器などは備えておらず主要器官は生殖腺だけで、細胞数の最も少ない動物の部類に入る。

ただし、生活環は複雑である。生殖形態に無性生殖有性生殖があるからだ。無性生殖の場合、無性生殖する成体と蠕虫型様幼生でサイクルを形成する。有性生殖の場合は、菱型無性虫から滴虫型幼生が発生する。

このように、多細胞動物の体裁は持ちながら、組織や器官が区別できないものが中生動物に含められてきた。かつてはセンモウヒラムシサリネラも一度はこの門に所属させた。これらは自由生活のものであり、後にそれぞれ独立門と見なされた。他にもいくつかこの門に所属させられたものがあるが、この門の中核をなしてきたのは上記のニハイチュウ類と、もう一つ直遊類である。これらはいずれも細長い蠕虫的な動物でありながら、細胞数がごく少なく、内部に組織や器官を持たない。またいずれもが寄生性である。

他の群との関係

他の動物と比較すると、扁形動物プラナリアなど)や脊索動物ホヤ脊椎動物など)などのような三胚葉ではなく、二胚葉に見える。他に刺胞動物クラゲサンゴなど)と有櫛動物クシクラゲなど)が二胚葉だが、これらの生物が放射相称であるのに対し、中生動物は左右対称的である。また、同様に器官の分化が見られない動物に海綿動物があるが、これは他の動物と比較するのが難しいほど独特である。

板状動物は以前は中生動物に含めたこともあり、同様に体制が単純だと言える。しかし自由生活であり、その点でその体組織は過不足がない。

系統

中生動物の系統的位置については、はっきりとした共通見解が得られていない。 分子生物学的な系統解析では、中生動物は三胚葉動物に属すると示唆する結果が得られている。この結果は扁形動物等の三胚葉動物が寄生生活によって特殊化したためとする説、原始的な三胚葉動物とする説に分かれている。いずれにせよ、中生動物は多系統との考えが認められるようになっており、中生動物はニハイチュウを含む菱形動物門 (Rhombozoa) と直泳動物門 (Orthonectida) という2つに大別されるようになりつつある。

中生動物として扱われた群

参考文献

  • 片倉晴雄・馬渡峻輔『動物の多様性』,(2007),シリーズ21世紀の動物科学2(培風館)