ホアキン・フェニックス
テンプレート:ActorActress ホアキン・ラファエル・フェニックス(Joaquin Rafael Phoenix、旧姓:ホアキン・ラファエル・ボトム/Joaquin Rafael Bottom、1974年10月28日 - )は、アメリカ合衆国の俳優。かつてはリーフ・フェニックス(Leaf Phoenix)の芸名で活動していた[1]。役者一家として知られるフェニックス家の次男で、早世した映画俳優リバー・フェニックスは兄、女優レイン・フェニックスは姉、女優サマー・フェニックスは妹にあたる。また妹がベン・アフレックの実弟であるケイシー・アフレックと結婚した事から、アフレック家とも一族関係にある。
『スペースキャンプ』への出演から子役としての経歴を積み始める。26歳の時に出演した『グラディエーター』でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、若手の個性派俳優として注目を受けた。その後も『サイン』『ホテル・ルワンダ』などの話題作に出演を続け、2006年に『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』でゴールデングローブ賞主演男優賞とグラミー賞を受賞、俳優としての名声を確立した。2008年10月27日には歌手への転向を宣言してアメリカの映画界を騒然とさせたが[2][3]、後にモキュメンタリー作品の為の芝居であった事が公表された[4]。
2012年、復帰作となる『ザ・マスター』で主役のフレディ・クィエル役を演じ、ヴェネツィア国際映画祭男優賞をフィリップ・シーモア・ホフマンと共同受賞した[5]。
生い立ち
プエルトリコのサンフアンにて生まれる。父ジョン・リー・ボトムはカリフォルニア州フォンタナ出身[6]の元カトリック教徒[7]で、宗教団体「神の子供たち(Chidren of God)」の宣教師であった[8]。母アイリン・シャローンはニューヨーク州ブロンクス出身の東欧系ユダヤ人(ハンガリー系とロシア系のハーフ)で、同じく宣教師として活動していた。
1969年、両親は結婚時に「神の子供たち」に入信し、熱心な信徒として活動した。ホアキンがプエルトリコという土地で生まれたのも同団体のコミュニティが南米に形成されていたからで、特に祖先の出自などとは関係ない。後に兄のリバー・フェニックスは幼少時に目撃した同団体の腐敗と異常性を告発しているが、1978年に両親も信仰心を失って団体を離脱した。一家は新しい生活の為にフェニックスという名字に改名してアメリカに戻り、まだ4歳だったホアキンは生まれ故郷から引き離されている。
俳優一家として
アメリカから戻った一家だったが、生活基盤を失った状態では貧困に苦しむより他になかった。両親は共働きで生活費を工面しようとしたが5人兄妹を育てるのは苦しく、兄妹も街頭に出て歌や演奏を行って金銭を恵んで貰う日々を送った。そんな折に兄妹の一人が子役を探していたスタジオの社員からエキストラとして雇われ、CMに出演する機会を得た[9]。これを契機に兄妹はそれぞれ子役から芸能界への道を進むが、ホアキンは子役に進む兄弟達と距離を置いて父と南米を回る旅に出ており、この経験から現在でもスペイン語を流暢に話す事ができる。
キャリア
1982年、自らも俳優の道に進む決意を固め、兄が出演していたテレビシリーズで初演を果たしている。当初はリーフ・フェニックスという名義で活動していたが、15歳の時から本名と組み合わせたホアキン・フェニックスを使用するようになった[10]。映画出演は1986年の『スペースキャンプ』で、翌年には『ラスキーズ』で初主演を務めている。1980年代後半から1990年代後半にかけ、映画やテレビで子役として出演を重ねていった。
1993年に兄リバー・フェニックスとジョニー・デップの所有するナイトクラブを訪れたが、そこで兄が麻薬の大量服用で死亡する事件が起きる。事件現場にも居合わせていたホアキンが平静さを失って救急隊員に電話している通話記録が繰り返しテレビで放映され、マスコミの過剰な取材攻勢に嫌気が差して一時的に映画界から距離を置いた。翌年に友人の薦めで俳優に復帰し[11]、ガス・ヴァン・サント監督の『誘う女』(1995年)やオリバー・ストーン監督の『Uターン』(1997年)などで憂鬱な雰囲気を持った青年を演じた。また『秘密の絆』(1997年)では再び主演を務めた。
『グラディエーター』(2000年)ではリドリー・スコット監督から主役の宿敵であるローマ皇帝コモドゥス役に抜擢され、主演のラッセル・クロウに一歩も引かない演技を見せた。同作でアカデミー賞やゴールデングローブ賞など名立たる映画賞の助演男優賞にノミネートされ、個性派俳優としての知名度を確立した。その後も『サイン』(2002年)、『ホテル・ルワンダ』(2004年)、『ヴィレッジ』(2004年)などの話題作に出演を続ける.[12]。またその間には『ブラザー・ベア』(2003年)で声優にも挑戦している。
そして『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(2006年)でカントリー歌手のジョニー・キャッシュを劇中歌も自ら担当して演じきり、ゴールデングローブ賞主演男優賞とグラミー賞を同時受賞し、二度目のアカデミー賞ノミネートを受けた[13]。同年、映画芸術科学アカデミーからアカデミー会員に推挙された[14]。
突然の歌手転向
2008年10月、ポール・ニューマンのチャリティーイベントに出席した際、俳優業を引退してミュージシャンの道を進むと発言[15]。当初はゴールデングローブ獲得に繋がったカントリーミュージックとの関連が噂されたが、ジャンルがラップであった事から一層に世間の話題を集める事になった。
歌手転向の動機については「俳優活動は疲れた」という趣旨の発言を行った。義弟ケイシー・アフレックが撮影しているドキュメンタリー映画の為の演技ではないかとする説も囁かれたが、本人は一貫して否定した。2009年3月13日に多くの噂が飛び交う中でラッパーとして最初のコンサートを開催、以前からは想像できない髭だらけの風貌で即興のラップを披露した。しかし途中で野次馬の罵声に激怒してステージをおり、観客につかみ掛かる騒動となった。
2010年9月8日、ドキュメンタリー映画の主演として監督のケイシー・アフレックとベネチア国際映画祭に出席する。映画祭でアフレックは作品の真偽について曖昧な返答を行っていたが、帰国後の9月17日にニューヨークタイムスで作品がモキュメンタリーであり、歌手転向も演出であったと語った。俳優復帰を受けてクリント・イーストウッド監督の『J・エドガー』への出演など、複数のオファーや憶測が飛び交った。
復帰
2011年、ポール・トーマス・アンダーソン監督の次回作『ザ・マスター』への出演を発表、翌年に公開された。新興宗教が題材の同作で戦争後遺症に苦しむ退役軍人を演じ、2012年に三大国際映画祭の一つであるヴェネツィア国際映画祭で最優秀男優賞(ヴォルピ杯)を授与された。2013年、第85回アカデミー賞とゴールデングローブ賞にノミネートされた。映画界への完全なカムバックを果たし、同年には『裏切り者』『アンダーカヴァー』『トゥー・ラバーズ』に続いて四回目となるジェームズ・グレイ監督とのタッグで制作された映画『エヴァの告白』が第66回カンヌ国際映画祭で上映された。
2014年、スパイク・ジョーンズ監督の新作『her/世界でひとつの彼女』で人工知能と恋愛する男性を演じ、ゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートされた。同年にはポール・トーマス・アンダーソン監督がトマス・ピンチョンの小説『LAヴァイス』の映画制作で、同作の主人公ラリー・"ドック"・スポーテッロ役にホアキンを起用した[16]。
エピソード
- 兄同様、厳格なベジタリアン(ヴィーガン)で[17]、撮影にどうしても必要だと納得しない限り、毛皮や皮も身につけないという。
- 自分の出演した映画は見ないと語っている[19]。
- モキュメンタリーでの演技が話題を集めたが、元々変わり者としての部分はあったことも真実味を増す理由となった。
- 菜食主義の一方でアルコール中毒を患っており、2005年には病院で中毒克服の治療を受けている.[20]。
- 2006年に運転中に横転事故を起こして、たまたま通りかかった映画監督のヴェルナー・ヘルツォークに助けられている。この時、車からはガソリンが漏れるなどかなり危険な状態にあったが、ホアキンは車中で煙草を吸おうとした。ホアキンが動転していると思ったヴェルナーは「落ち着け(Just relax)」と叫んでライターを奪ったが、ホアキンは平然と「ええ、落ち着いてますよ(I'm fine. I am relaxed.)」と答えたという。
- 2013年、『ザ・マスター』でアカデミー賞主演男優賞ノミネートが確実視された際、賞レースを嫌うホアキンは「アカデミー賞なんかただの出鱈目(bullshit)だよ」と発言して話題になった。
- 賞を否定する発言にも関わらず、映画芸術科学アカデミーは同年の主演男優賞にホアキンをノミネートした。
- 役者だけでなく、プロモーション・ビデオの監督やテレビ番組の企画編集など多様な活動をしている。
- 復帰作となった『ザ・マスター』への出演は、共演したフィリップ・シーモア・ホフマンの推薦によるもの[21]。
- 『ゲーム・オブ・スローンズ』でジョフリー・バラシオン役を演じたジャック・グリーソンは、同役を『グラディエーター』におけるコモドゥス帝に影響を受けながら演じたと述べている[22]。
主な出演作品
公開年 | 日本語題 原題 |
役名 | 備考 |
---|---|---|---|
1984 | Backwards: The Riddle Of Dyslexia | ロビー・エルスワース | 全米青年芸術祭最優秀俳優賞ノミネート テレビ映画 リーフ・フェニックス名義 |
1986 | スペースキャンプ SpaceCamp |
マックス | リーフ・フェニックス名義 |
1987 | ラスキーズ Russkies |
ダニー | リーフ・フェニックス名義 |
1989 | バックマン家の人々 Parenthood |
ゲイリー・バックマン=ランプキン | 全米青年芸術祭最優秀俳優賞ノミネート リーフ・フェニックス名義 |
1995 | 誘う女 To Die For |
ジミー・エメット | |
1997 | Uターン U Turn |
トビー・N・タッカー (TNT) | クロトゥルディス映画祭助演男優賞ノミネート |
秘密の絆 Inventing the Abbotts |
ダグ・ホルト | ||
1998 | 8mm 8mm |
マックス・カリフォルニア | |
ムーンライト・ドライブ Clay Pigeons |
クレイ・ビッドウェル | ||
リターン・トゥ・パラダイス Return to Paradise |
ルイス・マクブライド | ||
2000 | 裏切り者 The Yards |
ウィリー・グティエレス | |
クイルズ Quills |
クルミエ神父 | ||
グラディエーター Gladiator |
コモドゥス帝 | 放送映画批評家協会賞助演男優賞受賞(2000年度の三作品に対して) ナショナル・ボード・オブ・レビュー助演男優賞受賞(同上) サンディエゴ映画批評家協会賞助演男優賞受賞(同上) サウスイースタン映画批評家協会助演男優賞受賞(同上) ブロックバスター・フェイバリット・ヴィラン賞受賞 アカデミー助演男優賞ノミネート ゴールデングローブ賞助演男優賞ノミネート 英国アカデミー賞助演男優賞ノミネート | |
2001 | 戦争のはじめかた Buffalo Soldiers |
レイ・エルウッド | 英国インディペンデント映画男優賞ノミネート |
2002 | サイン Signs |
メリル・ヘス | |
2003 | ブラザー・ベア Brother Bear |
キナイ | 声の出演 |
アンビリーバブル It's All About Love |
ジョン | ||
2004 | 炎のメモリアル Ladder 49 |
ジャック・モリソン | ティーン・チョイス・アワードノミネート |
ヴィレッジ The Village |
ルシアス・ハント | ||
ホテル・ルワンダ Hotel Rwanda |
ジャック・ダグリッシュ | ||
2005 | ウォーク・ザ・ライン/君につづく道 Walk The Line |
ジョニー・キャッシュ | ゴールデングローブ賞主演男優賞受賞 グラミー賞サウンドトラック映画賞受賞 ハリウッド映画祭主演男優賞受賞 アカデミー主演男優賞ノミネート 英国アカデミー賞 主演男優賞ノミネート |
2006 | Earthlings | ナレーター | 声の出演 |
2007 | アンダーカヴァー We Own the Night |
ボビー・グリーン | ピープルズ・チョイス・アワード受賞 |
帰らない日々 Reservation Road |
イーサン・ラーナー | ||
2008 | トゥー・ラバーズ Two Lovers |
レナード | オンライン映画批評家協会主演男優賞ノミネート |
2010 | 容疑者、ホアキン・フェニックス I'm Still Here |
ホアキン・フェニックス | |
2012 | ザ・マスター The Master |
フレディ・クィエル | ヴェネツィア国際映画祭男優賞受賞 ロンドン映画批評家協会主演男優賞受賞 ロサンゼルス映画批評家協会主演男優賞受賞 サンフランシスコ映画批評家協会主演男優賞受賞 サンディエゴ映画批評家協会主演男優賞ノミネート アカデミー主演男優賞ノミネート ゴールデングローブ賞 主演男優賞 (ドラマ部門)ノミネート |
2013 | her/世界でひとつの彼女 Her |
セオドア・トゥオンブリー | ゴールデングローブ賞 主演男優賞 (ミュージカル・コメディ部門)ノミネート |
エヴァの告白 The Immigrant |
ブルーノ・ウェイス | ||
2014 | Inherent Vice | ラリー・スポーテッロ |
脚注
外部リンク
テンプレート:ヴェネツィア国際映画祭 男優賞 2010-2029
テンプレート:Normdaten- ↑ Contemporary theatre, film, and television, Gale Research Co., 2002, p. 213
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- ↑ テンプレート:IMDb name
- ↑ http://movies.about.com/od/awards/a/oscars013106.htm
- ↑ Academy Invites 120 to Membership(2006年7月6日時点のアーカイブ)
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- ↑ http://blog.livedoor.jp/news_rumor/archives/6530255.html
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- ↑ [1]
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