クーロンズゲート
『クーロンズゲート』(KOWLOON'S GATE -九龍風水傳-)は、1997年にSMEが発売したPlayStation用ゲームソフト。
概要
この世と対なす別世界「陰界」から突如出現した「九龍城(クーロンじょう)」。その風水を正し、世界の崩壊を防ぐことを命じられた「超級風水師」を主人公とするアドベンチャーゲーム。
PlayStation初期タイトルとして、PS発売以前からプロモーションムービー等が公開されていたものの、開発の遅れによって発表から発売までに4年以上の歳月を費やした。
2010年4月14日から2013年4月10日の間、PSP/PS3用ゲームアーカイブスとしてPlayStation Storeで配信。PlayStation Vitaには非対応。
作品メモ
- 初回限定版と通常版
- 本作には「初回限定版」として、紙製の特製ボックスに108ページのハードカバーブックレットが付属したものが存在する。ブックレットの内容は主にゲームの世界観、メイキングについて紹介したファンブック的なものであるが、一部にストーリー上のネタバレも含まれていた。尚、「通常版」との違いはこの「箱」及び「ブックレット」の有無と、背オビデザインのみ。
- SME版とアートディンク版
- 2000年に本作の発売権が開発元のSMEからアートディンクへ移行し、同年アートディンクの自社製廉価版である「ARTDINK BEST CHOICE」シリーズ中の一作として、新価格で再発売された(詳細はテンプレートを参照のこと)。パッケージデザイン等の細かい部分以外に大きな変更はない。
- その他
- 本作の主要メンバーは後に有限会社「是空」を立ち上げ独立した(現在は解散)。
ストーリー
テンプレート:不十分なあらすじ 時代設定は1997年、中国返還前の香港。主人公は香港最高風水会議の超級風水師である。物語は陰界[1]の九龍城が陽界に姿を現したことを発端とする。
どうやら原因は陰界においては四神獣の見立てが行われていないことにあるらしく、そのため気脈の流れが乱れ、最も邪気に歪んだ九龍城が陽界に姿を現すこととなったようだ。陰と陽が不用意に交わるようなことがあると世界の存在自体に大きな影響をもたらすこととなるため、主人公は陰界の九龍城に潜入する。
世界観
妄人と鬼律
クーロンズゲートの世界で最も重要なファクターは「妄想」である。 気脈の流れが乱れ、邪気に満ちた九龍城では妄想にも邪気が取り付き異常な事態を引き起こすことが多々存在するようである。その最も極端な形が「妄人(ワンニン)」と「鬼律(グイリー)」である。
- 妄人(ワンニン)
- 人間の妄想に邪気が取り付いた結果が妄人である。妄人は「物」に執着しすぎたあまりに、その「物」自体になってしまった人間のことである。例えば、鍵穴からのぞくことに喜びを感じていた男が「鍵穴男」に、ボイラーが好きだった男が「ボイラー男」に……など。そして、ほとんど「物」となってしまった彼らにとって唯一人間らしさを保ち続けることができる行為が「妄想すること」。そして、妄想することをやめたとき、彼らは完全に「物」となってしまう。それを自覚しており、完全に「物」となってしまわないようにするために、彼らは妄想することをやめることができない。そんな存在が妄人である。
- 鬼律(グイリー)
- 鬼律は妄人とは逆に、物に邪気が入り込み意思を持ったものである。日本で言うところの「付喪神(九十九神)」というものがこれに相当する。大切に使われた道具や、長い間使われた道具には命が篭るといわれているが、クーロンズゲートにおける鬼律はそれが最も奇天烈な形で具現化した代物であろう。鬼律は邪気を放ち、それに当たることで「気力」を完全に失った人間は妄人になってしまう。
- 鬼律は、鬼律になる以前の物であったころの姿の面影を残している。彼らを物に還す方法は、宿った邪気に相克する邪気をぶつけるか、邪気そのものを吸い取ることである。
双子と鳴力(ミンリー)
妄想と並ぶ大きなファクターとして双子の存在もある。日本においても古来から双子の間には不思議な共鳴があるとされ、お互いの居場所を感じあえたり、片方が怪我をするともう片方の同じ部分に痣が現れるなど、不可思議な話が多く存在する。クーロンズゲートにおいてはその力を鳴力(ミンリー)と呼び、奇跡を起こす不思議な力として人工的に双子を作るようなプロジェクトも存在している。
陰界
龍城路(リュウジョウロ)
主人公が最初に足を踏み入れる陰界の町。九龍フロントに比べると狭いが物語が進むと地下道へ入る事が可能となったり、また最も多くの胡同があるところである(ただし各胡同は全体的に繋がっているために胡同内部のマップは同一)。主人公に協力をしてくれる鏡屋や錠前屋、エビ剥き屋の子供がおり、体験版ではここと重慶花園の探索がプレイできた。
- 重慶花園(チョンキンガーデン)
- 龍城路のエビ剥き屋奥から入ることのできる胡同。順列的に最初に主人公が入り込む胡同となる。
- 富善苑(フーシンコート)
- 龍城路地下の奥から入ることのできる胡同。
- 庇利路(バイレイロード)
- 龍城路の水銀屋奥から入ることのできる胡同。
- 沙角(シャーコック)
- 龍城路の鏡屋とビン屋の間にある胡同。なんでも金で解決する場所。
九龍フロント
陰界の中心地のような風情がある比較的巨大な町。中央には巨大なネオン塔があり、良く見ると各店の看板内容まで読み取ることができる。双子屋、龍城飯店、陰陽師のラボなど物語でも重要なポイントがいくつかあったり、小黒やウェイらとの出会いの場でもあったりと実質的な陰界及び物語の中心部となる。この九龍フロントと繋がる胡同は妄人路のみだが、他の街への入口がいくつか存在する。
- 妄人路
- 九龍フロントの龍城飯店の先のT字路を左に、階段を降りたところにある。入口には番人がおり通常は入ることができない。
- ここは馬山童(マーシャンタン)という老人の頭の中にある世界でそのために妄想が尽きることが無い場所。妄人が多数集っており妄人路と呼ばれている。ここに来た人間は中に住む妄人たちのために妄想のネタを仕入れる役目を担わされる。妄人路の深部には妄人中心がある。
清朝(シンチョウ)
物語が進む中で登場する昔の中国。年代としては1850年となる。乾清宮(ケンセイキュウ)には道光帝(ドウコウテイ)と呼ばれる人物がおり、城下を治めている。
龍津路(リュウシンロ)
陰界ながら華やかな町。劇場を中心として繁栄しているために人々の心は他の陰界の住民と比べると活気がある。二つの劇場が存在するがどちらも胡同と化してしまい、龍津路の人々は「オガクズ」を集めて胡同内部にある封印石を崩してしまえば鬼律は消え去るというこの町の風水師であるスイジェンの言葉を信じて協力し合っている。
- 天堂劇場(ティントンシアター)
- 龍津路の地下にある劇場だが現在は胡同になってしまっている。また天堂劇場の奥では得利会館(ダクレイホール)という古い劇場とも繋がっている。
西城路(サイジョウロ)
中央に巨大な麗虹(ライフン)という川が流れている町。川と共に生きている人々が住んでいる。昔は大井路と繋がっていたらしいが現在は塞がっている。住民がブリッジと呼んでいる鵲橋(ジャクキョウ)という橋が架かった先は海明大廈(カーメルマンション)という大きなマンションがある。今は行く事ができないが、麗虹のほとりにはモルグへの入口がある。
- 気海・黄堂・泥丸
- 総じて一つの西城路の胡同。それぞれの胡同は複雑に絡まっている。この名前は人の身体の部分を意味したものになっているらしい(事実、いずれも丹田の名称である)。
大井路(オオイロ)
町は大井路と小姐路(シウジェロード)とに分かれており、二つは「妖精さんの転送小屋」にてワープして行き来することができる。大井路は様々な医者がそれぞれの医院を開いており、小姐路では小姐窟(シウジェクツ)という夜總会(ヤソウカイ。ナイトクラブの意)などがある。この二つの町それぞれに入口がある巨大胡同も存在する。
- 維多利亜大廈(ビクトリアマンション)
- 大井路からは二つの入口から入れる胡同。規模だけではなくその階層も地下地上共に複雑で入り乱れ、ナビの助けがなければ全て踏破する事はほとんど不可能。この維多利亜大廈はさらに奥にある美羅花園(メトロガーデン)という建物と繋がっている。
上海
物語が進む中で登場する昔の中国。年代としては1920年となる。妄想の島という名前のこの島では階段が複雑に絡まり合うエッシャー的空間が見もの。胡同は存在しないが、繊細で狂気的なJPEGダンジョンを堪能できる。
登場人物
香港最高風水会議
- 主人公(超級風水師 - ちょうきゅうふうすいし)
- 香港最高風水会議に召喚され、陰界の風水を正すことを命じられた超級風水師。プレイヤーの分身であり、物語は終始彼の目を通して語られる。作中のテキストからは少なくとも男性であることが読み取れるが、実際にどんな風水師像をイメージするのかは、プレイヤー各人の手に委ねられる。
陰界の住人達
- 小黒(シャオヘイ)
- 声 - 野中希
- 本作のヒロイン的存在。2年前ひょっこり九龍フロントへやってきて、リッチの手伝いをしながら暮らしているが、その出自は誰も知らない。最近、これまで逢ったこともない「姉」が自分の夢に出てくることについて何かを感じている。その理由を求めるなかで、陰界の風水を巡る物語に巻き込まれていく。ちなみに、「小黒」とは本来男児に付けられるべき名前である。
- リッチ
- 声 - 鈴木英一郎
- 九龍フロントの「龍城飯店」一階にあるバーでマスターをやっている男。左目に眼帯をしている。小黒を妹の様に思っており、「姉の夢」について調べまわる彼女を心配している。現実的で冷静な態度を取る。
- ウェイ
- 声 - 小杉十郎太
- 九龍フロントで気功塾を営む男。実はオールド・スネークに対抗するレジスタンス「是空」のリーダー。「紅頭(ホントウ)」と呼ばれる特殊な能力を持った少年達を率いている。
- ゲームキッズ
- 声 - 佐々木るん
- 九龍フロントのゲームセンター「遊戯中心」のゲーマー少年。神出鬼没で機械やネットに詳しい。
オールド・スネーク
- 双子師(ふたごし)
- オールド・スネークの下層構成員。青白い顔の不気味な仮面をつけ、双子の力(鳴力)を集めるべく暗躍する。「双子屋」での双子登録受付など事務的な作業のほか、街なかの不穏因子を脅して回るなどチンピラじみた仕事もこなす。
- ミスター・チェン
- 声 - ケン・サンダース
- スネークの手下で、九龍フロントの裏を仕切る男。鳴力を強制的に覚醒させるための強力な麻薬、「ブルー・クロウ」を製造している。
- 老師(ラオシ)
- 声 - 国井修
- 双子師四天王のひとり。皺深い。
- 霊師(リンシ)
- 声 - 東地宏樹
- 双子師四天王のひとり。美形。顔の右半分を前髪で隠している。
- 仙師(シャンシー)
- 声 - 天祭揚子
- 双子師四天王のひとり。虚ろな表情の仮面を被っている。
- 巫師(ウーシ)
- 声 - くじら
- 双子師四天王のひとり。派手なメイクと装飾を施している。
案内屋(クーロン・ナビ)
- リトル・フライ
- 声 - 福士恵二
- 龍城路のナビ。小型のフライビーグルを自在に乗りこなす小男。自分の身長にコンプレックスを抱いているのか、背の高い帽子を被っている。アヒルのクチバシを思わせるマスクをしており、かったるそうに喋るが意外に協力的。
- ハニー・レディ
- 声 - 五十嵐麗
- 龍津路のナビ。昆虫をモチーフにしたセクシーなコスチュームに身を包み、アクロバティックな動きを見せる。隻眼。大人の女性を感じさせる冷静で的確な助言を与えてくれる。
- ミスター・ドープマン
- 声 - 龍田直樹
- 西城路のナビ。筋肉増強剤で作り上げた強靭な体で、豪快に壁を割り、床をぶち破って現れる。その本体は頭部についた小さな人形で、肉体に見える部分は彼が操縦する乗り物の様なものであるらしい。
- バンブージー
- 声 - 町田義人
- 大井路のナビ。緑色の覆面を被った男。左手に装備した鉤爪と竹の棒を駆使して身軽に飛び回る。以前は香港の建設現場で高所鳶だった。自分のことを無口だと言いながらよく喋る。
システム
本作は大きく分けて「JPEGダンジョン」、「リアルタイムダンジョン」と呼ばれるふたつの探索パートと、「戦闘(バトル)」パートから構成されている。JPEGダンジョンでストーリーを進め、情報が集まる(フラグが立つ)とリアルタイムダンジョンに潜り探索、というのがおおよその流れで、その過程で任意もしくは強制的な戦闘が挟み込まれる。
基本的にゲーム全編を通じ主人公の主観視点で描かれる。イベントシーンでは三人称的なカメラアングルも存在するが、その場合も主人公の外見は一切描かれない。また物語は50程度のクエスト(エピソード)に分かれており、それぞれにタイトルが付けてある。しかしクエスト名は演出的に明示されるということはなく、セーブする際に進行状況の目安として確認できる程度の扱いである。
探索パート
- JPEGダンジョン
- 定点から定点を移動していく、いわゆるウォークスルー方式のオーソドックスなアドベンチャーパート。街中を彷徨い、人々の話を聞いたりしながら話を進めていく。移動の際はプリレンダリングの移動ムービーが流れるが、視点が上下左右に蛇行し浮遊感のある特徴的なカメラワークであるため、プレイヤーによっては非常に3D酔いしやすい[2]。一部例外を除き戦闘は発生せず、まずゲームオーバーにはならない。
- リアルタイムダンジョン
- リアルタイムポリゴンで描かれた「胡同(フートン)」という3Dダンジョンを探索するパート。「JPEGダンジョン」とは異なり自由に移動できる。胡同の中に潜む敵(鬼律)の居場所を特定、撃退することで扉の鍵を開けたり、仕掛けを動かしたりしつつ進んでいく。プレイヤーに大きな段差を乗り越えたり、ジャンプして別の足場へ移るなどといった能力はないが、柵の無いマップの一部分から一方通行的に“飛び降りる”ことは可能となっている。
- ほとんどの胡同は非常に複雑な構造をしており、道に迷うのは必至であるため、要所要所でクーロン・ナビが現れ主人公(プレイヤー)に助言を与えてくれる。そのクエストでの目的を遂げると、多くの場合その場からナビに連れられる形で街(JPEGダンジョン)に帰還できる。敵との戦いで気力がゼロになる、もしくは主人公の所持する邪気が五属性全て揃ってしまうとゲームオーバー。
戦闘パート
戦闘パートは更に2種に分類される。鬼律退治を目的とする通常戦闘的な「風水バトル」と、ボス戦的な性格を持つ「アイテムバトル」である。戦闘パートでは状況に関わらず風水師が一定確率で「行動に失敗」することがあり、極稀に失敗が重なって何も出来ないままゲームオーバーとなってしまうことがある(バグというより仕様の問題)。
- 風水バトル
- プレイヤーは胡同内の鬼律を視認できない。鬼律と戦うには、それに接近することで生じる画面上の「揺らぎ」(鬼律の発する邪気)を頼りにして居場所を特定する必要がある。鬼律と遭遇した場合、その鬼律の持つ属性と相克する属性の邪気をぶつけるか、鬼律の持つ邪気を全て吸収することで鬼律を退治することができる(一般的なRPGに見られる戦闘システムとは、大分異なったものになっている)。鬼律の攻撃で気力がゼロになるか、邪気吸収によって五属性全ての邪気が揃ってしまうとゲームオーバー。
- アイテムバトル
- ボスクラスの敵と戦う場合、邪気の代わりに弱点となるアイテムを使用する特殊な戦闘方式になる。通常はターン方式だが、この場合アイテム欄を開かない限り一定時間毎に攻撃を受け続けるセミリアルタイム方式に戦闘システムが変わる。ボスは正しいアイテムさえ使用すれば容易に倒すことが可能で、“正解”となるアイテムのヒントは探索パートなどで得られる様になっている。
関連商品
攻略本
- 『コンプリート クーロンズ・ゲート(COMPLETE KOWLOON'S GATE)』
- 1997年4月 - ソニーマガジンズ
- 分かり易いマップとフロチャート攻略。製作スタッフへのインタビュー記事、コラム等。
- 基本を押さえつつも充実した作り。
- 『KOWLOON'S GATE PARANOIA クーロンズゲート公式ガイドブック』
- 1997年6月 - アスペクト
- 詳細なゲームシナリオのノベライズ。袋綴じのマップ付き。テキスト重視。
- 攻略本としてはやや扱い辛いが、マニアックな執筆陣によるコラムが充実し読みごたえがある。
音楽
- 『クーロンズゲート サウンドトラック』
- 蓜島邦明:1997年4月21日 - SONY RECORDS (SRCL-3784) ¥2,718円(税抜)
- クーロンズ・ゲート
- 香港最高風水会議
- 歓楽の街
- リ・トライ
- 妄人路
- 海鮮中心
- アイテムバトル
- Happy Hour
- 水郷の街
- 山高帽男
- 陰陽師のテーマ
- 九龍フロント
- 香港的大廈(龍城路)
- 占い部屋
- 清朝
- エンディング・テーマ
- 『element』
- 蓜島邦明:1999年12月9日 - COLUMBIA RECORDS (COCP-30725) ¥2,800円(税抜)
- M12に「クーロンズゲート」(メインテーマのリアレンジ版)を収録
漫画・小説
- 『陰界伝』
- 作:神崎京介/原作:木村央志 1997年9月 - 講談社 マガジン・ゲームノベルズ
- 『クーロンズ・ゲート外伝 九龍幻境風水傳』(上下巻)
- 原作:高田むつみ/協力:木村央志 1998年6月 - 角川書店
派生サービス
Second Life
『クーロンズゲート』の発売10周年を記念して当時のクリエイターが再結集し、本作の世界観を再現した kowloon というエリアが Second Life 上で2007年7月23日に公開された[3]。(2013年7月時点でまだ継続中。)
脚注
関連項目
- プラネットライカ:本作のスタッフが製作に大きく関わっている。
外部リンク
- Kowloonet:オリジナル版の開発元・販売元であるSMEの公式サイト
- キムラナカジオフィス (旧『是空』):本作の企画・脚本・監督を務めた木村央志の事務所
- ジェットグラフィックス:本作の企画・製作を行った。キャラクターデザイン担当の井上幸喜が代表を務める。