「ホトトギス」の版間の差分
(→天下人とホトトギス) |
(相違点なし)
|
2014年7月2日 (水) 13:40時点における最新版
テンプレート:Mboxテンプレート:生物分類表 ホトトギス(杜鵑、学名:Cuculus poliocephalus)は、カッコウ目・カッコウ科に分類される鳥類の一種。特徴的な鳴き声とウグイスなどに托卵する習性で知られている(「ホトトギス目ホトトギス科」と書かれることもあるが、カッコウ目カッコウ科と同じものである)。日本では古来から様々な文書に登場し、杜鵑、時鳥、子規、不如帰、杜宇、蜀魂、田鵑など、漢字表記や異名が多い。
目次
形態
全長は28cmほどで、ヒヨドリよりわずかに大きく、ハトより小さい。頭部と背中は灰色で、翼と尾羽は黒褐色をしている。胸と腹は白色で、黒い横しまが入るが、この横しまはカッコウやツツドリよりも細くて薄い。目のまわりには黄色のアイリングがある。
分布
アフリカ東部、マダガスカル、インドから中国南部までに分布する。
インドから中国南部に越冬する個体群が5月頃になると中国北部、朝鮮半島、日本まで渡ってくる。日本では5月中旬ごろにくる。他の渡り鳥よりも渡来時期が遅いのは、托卵の習性のために対象とする鳥の繁殖が始まるのにあわせることと、食性が毛虫類を捕食するため、早春に渡来すると餌にありつけないためである。
生態
日本へは九州以北に夏鳥として渡来するが、九州と北海道では少ない。
カッコウなどと同様に食性は肉食性で、特にケムシを好んで食べる。また、自分で子育てをせず、ウグイス等に托卵する習性がある。
テンプレート:Sound オスの鳴き声はけたたましいような声で、「キョッキョッ キョキョキョキョ!」と聞こえ、「ホ・ト・…・ト・ギ・ス」とも聞こえる。早朝からよく鳴き、夜に鳴くこともある。この鳴き声の聞きなしとして「本尊掛けたか」や「特許許可局」や「テッペンカケタカ」が知られる。
日本文化の中のホトトギス
古典文学
日本では、激情的ともいえるさえずりに仮託して、古今ホトトギスの和歌が数多く詠まれ、すでに『万葉集』では153例、『古今和歌集』では42例、『新古今和歌集』では46例が詠まれている。鳴き声が聞こえ始めるのとほぼ同時期に花を咲かせる橘や卯の花と取り合わせて詠まれることが多い。
他にも夜に鳴く鳥として珍重され、その年に初めて聞くホトトギスの鳴き声を忍音(しのびね)といい、これも珍重した。『枕草子』ではホトトギスの初音を人より早く聞こうと夜を徹して待つ様が描かれる。
平安時代以降には「郭公」の字が当てられることも多い。これはホトトギスとカッコウがよく似ていることからくる誤りによるものと考えられている。松尾芭蕉もこの字を用いている。
宝井其角の句に「あの声で蜥蜴(とかげ)食らうか時鳥」がある。ホトトギスは美しい声で鳴くが醜いトカゲなどの爬虫類や虫などを食べる、すなわち「人や物事は見かけによらない」ということを指す。
伝説・迷信
ホトトギスに関する伝説・迷信は、漢文の古典に由来するものが多い。
ホトトギスの異称のうち「杜宇」「蜀魂」「不如帰」は、中国の伝説にもとづく。古代の古蜀国の帝王だった杜宇は、ある事情で故郷を離れたが、さまよううちにその魂が変化してホトトギスになった。そのため、ホトトギスは今も「不如帰(帰るにしかず)」と鳴いている、という。
江戸時代から日本各地に伝わる「厠(かわや)の中にいるときにホトトギスの声を聞くと不吉である」という迷信の出典も、『酉陽雑俎』および『太平広記』である。夏目漱石が西園寺公望におくった有名な俳句「時鳥(ほととぎす)厠(かわや)半(なか)ばに出かねたり」も、この迷信をふまえる(加藤徹『怪力乱神』ISBN 978-4-12-003857-0)。
近代文学
音楽
- 『ほととぎす』(山田流箏曲) 文化初年頃、山田流の流祖・山田検校作曲。ホトトギスの忍音をたった一声でも聞くため、船に乗り隅田川を徹夜でさかのぼる様が詠われた曲。
- 『時鳥の曲』(箏曲) 1901年、楯山昇作曲。明治時代に大阪で活躍した盲人音楽家・楯山の数多い作品中、代表作。古今和歌集の「我が宿の池の藤波咲きにけり 山ほととぎすいつか来鳴かむ」「今更に山に帰るなほととぎす 声の限りは我が宿に鳴け」の2種を歌詞とし、ホトトギスの声を描写した手事(てごと - 長い間奏器楽部)を持つ。この作曲のため楯山は関西中のホトトギスの名所を巡り、また何日も山にこもって声を研究したと言う。
- 『夏の曲』(箏曲) 幕末の安政・嘉永頃、吉沢検校作曲。「古今組」5曲の一つ。古今和歌集から4首を採り歌詞とした中に「夏山に 恋しき人や入りにけむ 声振り立てて鳴くほととぎす」がある。
- その他、『四季の眺』(松浦検校作曲)、『里の暁』(松浦検校作曲)、『夏は来ぬ』(小山作之助作曲)など、曲中一部にホトトギスを詠んだ曲は少なくない。
天下人とホトトギス
鳴かないホトトギスを三人の天下人がどうするのかで性格を後世の人が言い表している(それぞれ本人が実際に詠んだ句ではない)。これらの川柳は江戸時代後期の平戸藩主・松浦清の随筆『甲子夜話』に見える(q:時鳥#川柳)(以下「 」内に引用とその解釈を記す)。
- 「なかぬなら殺してしまへ時鳥 織田右府」(織田信長)
- この句は、織田信長の短気さと気難しさを表現している。
- 「鳴かずともなかして見せふ杜鵑 豊太閤」(豊臣秀吉)
- この句は、豊臣秀吉の好奇心旺盛なひとたらしぶりを表現している。
- 「なかぬなら鳴まで待よ郭公 大權現様」(徳川家康)
- この句は、徳川家康の忍耐強さを表している。
- 「鳴け聞こう我が領分のホトトギス(加藤清正)
- この句は、加藤清正の配慮を表している。
なお、松下電器(現:パナソニック)の創業者である松下幸之助は生前、これらの句に対して「鳴かぬなら それもまた良し ホトトギス」と詠んだことで知られるが、織田信長の七男・織田信高の系統の旗本織田家の末裔に当たるフィギュアスケート選手の織田信成も、テレビ番組のインタビューにおいて、信長を詠んだ句への返句として「鳴かぬなら それでいいじゃん ホトトギス」と、奇しくも上記の松下と同じような句を詠んで話題となった。
ちなみに、家康の句にある郭公(ホトトギス)とは前田利家のことを指していると考える説もある(家康は利家が死ぬのを待っていたとする説)。
関連人物
切手
3円普通切手
- 1954年(昭和29年)5月10日発売
- 1971年(昭和46年)7月15日発売 刷色変更、”NIPPON”追加
- 2010年(平成22年)11月29日書体変更の発表
1988年(昭和63年)5月22日発売 60円 国土緑化運動 屋島とホトトギス
県の鳥
岡山県は1964(昭和39)にホトトギスを県の鳥に指定したが、托卵性のイメージの悪さ等を理由に1994年2月に県民投票で「県民の鳥」としてキジに変更した。
脚注
参考文献
テンプレート:Sister テンプレート:Sister テンプレート:Sister
- 山渓ハンディ図鑑7『日本の野鳥』 山と渓谷社 ISBN 4-635-07007-7
- 真木広造、大西敏一 『決定版 日本の野鳥590』 平凡社、2000年 ISBN 4-582-54230-1
- BirdLife International 2004. Cuculus poliocephalus. 2006 IUCN Red List of Threatened Species. Downloaded on 24 July 2007.