T-4 (練習機)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:Redirectlist テンプレート:Infobox 航空機 T-4は、日本航空自衛隊で使用している中等練習機で、プロペラ機による初等訓練を終えたパイロットがつづいて訓練する中等練習のために製作された亜音速ジェット機。「ティーよん」や「ティーフォー」と呼ばれるほか、正式な愛称では無いが、他の航空機に比べ小型で丸みを帯びた姿から「ドルフィン」(イルカ)と呼ばれる。エンジンを含めた日本の純国産ジェット練習機はT-1Bについで2機種目である。

開発

航空自衛隊では、経年による老朽化が始まっていたT-1A/BT-33A練習機の後継機を必要としていたため、防衛庁1981年昭和56)4月に、国産方針とした次期中等練習機計画(MT-X)を発表し、国内企業を募った。同年9月に川崎重工業の設計案を採用、川崎を主契約企業(分担率4割)、協力企業を三菱富士(同各3割)として開発が始まり、エンジンはIHI(旧称:石川島播磨重工業)製の国産ターボファンエンジンF3-IHI-30を2基装備することとして、完全な純国産機となった。

計画開始の1981年(昭和56)度は基本設計が行われ、1982年(昭和57)度に細部設計、1983年(昭和58)度には実機製作に取り掛かる異例のスピード開発で、1985年(昭和60)7月29日には試作XT-4の1号機が初飛行した。以後、試作機は4機が進空し、防衛庁技術研究本部および空自の航空実験団で試験が行われた。1988年(昭和63)7月28日に防衛庁長官の部隊使用承認を受け、9月に量産初号機が納入された。以後、15年にわたって量産体制が敷かれ、2003年平成15)3月6日の最終号機(36-5812)引渡しまでに、量産機は208機、試作XT-4の4機も含めて212機が生産された。

機体

ファイル:T4 601.jpg
飛行開発実験団のT-4(試作1号機)
ファイル:T4RedDolphin.jpg
レッドドルフィン

中翼・後退翼を持ったタンデム複座機である。

設計段階からコストコントロールに力を入れ、低い開発費と量産価格、経済的な飛行運用コストパフォーマンスを目標とした。同時に、高い整備性と信頼性を確保する為、装備品には積極的に新技術を導入し、点検窓の最適化、エンジン着脱の容易化を追求した。安全性の観点からエンジン双発、油圧・操縦系も2重になっている。

プロペラ機からジェット機への機体変更がスムーズに行えるように、素直な操作性と抜群の安定性を誇る。亜音速での飛行特性を重視し、高速訓練が可能なように遷音速翼を採用、機体形状も工夫を凝らし、各部が丸みを持った形状にまとめられている。低速から高速まで安定した飛行特性を持つよう設計された。機体重量の4.5パーセントは炭素系複合材などの新技術を採用しており、軽量化に貢献している。脱出装置はAV-8B ハリアーIIなどと同様のキャノピー破砕方式を採用、機上酸素発生装置を備え、非常時の信頼性も高い。

操縦性の高さから、それまでT-2高等練習機で行っていた高等訓練の一部をT-4で実施できるようになり、さらに訓練体系の変更によってT-2後継機を開発する必要が無くなった。

同世代の海外の練習機では練習機といえども有事の際には武装も施せるように出来ており、実際にT-4も試作機XT-4時代に武装ポッドによる軽攻撃試験が行われた。しかし、試験の結果、12.7mm重機関銃程度では改修の手間に対し、大した攻撃力にならないことや防衛環境の違いもあり、T-4量産機は練習用に特化されることとなった。ただし、トラベルポッドや曳航標的、集塵ポッドなどの運用は可能であり、2006年10月の北朝鮮による核実験の際、集塵ポッドを搭載したT-4による大気浮遊塵のモニタリングは大きく報道された。

カラーリングは、ほとんどの機体はT-2よりも濃い灰色で、主翼や尾翼の端は視認性向上のため蛍光オレンジで塗装されている。また、F-15J/DJに似た制空迷彩を施した機体もある。過去にF-1を模した迷彩塗装を施した機体もあった。

曲技飛行チーム「ブルーインパルス」(下記)の機体は白地に青のラインをあしらったもので、F-86F時代の塗装のイメージを引き継いでいる。

芦屋基地第13飛行教育団の機体は、上空での視認性向上を目的として、白地に赤のラインが入る独特の塗装を施しており、所属隊員達は「レッドドルフィン」と命名し称している。また、2007年度より飛行教育カリキュラムの改正により、第13飛行教育団のT-4の定数が削減され、その分が浜松基地第1航空団へ移動したため浜松基地においてもその姿を見ることが出来る。

運用

量産機の部隊配備は、1988年(昭和63)10月より浜松基地の第1航空団に対して開始され、翌1989年平成元)にT-33Aに代わって基本操縦課程教育が始められた。以後、各飛行隊のT-33Aを置き換えながら全国へ勢力を伸ばした。3代目「ブルーインパルス」としても採用され、1994年(平成6)より第4航空団第11飛行隊へ引渡され、1995年(平成7)度からT-2に代わって運用を開始、長野オリンピック開会式で展示飛行を行った。1998年(平成10)よりT-1A/Bの置き換えが始まり、2000年(平成12)までにほぼ完了した。2007年(平成19)8月からは第1航空団でT-4による戦闘機操縦基礎過程(FTB)教育が開始された。

戦技研究仕様機

ファイル:Blue impulse.jpg
T-4練習機、66-5745号機、戦技研究仕様機(ブルーインパルス仕様機)、第11飛行隊所属

T-4は飛行訓練や各基地の連絡用などにも用いられる他、3代目『ブルーインパルス』の使用機としても活躍している。ブルーインパルスで使用されている機体は正式には戦技研究仕様機とよばれ、現在まですべて新造機として取得されている。戦技研究仕様機における改修点は、ウインドシールドなどの強化やHUD透明表示板の材質変更(バードストライク対策)、ラダーリミッタの制限角度変更、低高度警報装置の追加、コックピット内の一部機器追加やレイアウト変更、スモーク発生装置の追加などである。

配備

練習機としてだけでなく連絡機としても使われているので、飛行場のある基地には概ね配備されている。

  • 千歳基地:第2航空団 - 第201飛行隊・第203飛行隊
  • 三沢基地:第3航空団 - 第3飛行隊・第8飛行隊・北空支援飛行班
  • 松島基地:第4航空団 - 第11飛行隊(ブルーインパルス)・第21飛行隊
  • 百里基地:第7航空団 - 第302飛行隊・第305飛行隊、偵察航空隊 - 第501飛行隊
  • 入間基地:航空総隊司令部飛行隊
  • 小松基地:第6航空団 - 第303飛行隊・第306飛行隊
  • 浜松基地:第1航空団 - 第31教育飛行隊・第32教育飛行隊、第1術科学校(整備教育用)
  • 岐阜基地:飛行開発実験団
  • 芦屋基地:第13飛行教育団
  • 春日基地:西空支援飛行隊
  • 築城基地:第8航空団 - 第6飛行隊・第304飛行隊
  • 新田原基地:第5航空団 - 第301飛行隊、飛行教育航空隊 - 第23飛行隊、飛行教導隊
  • 那覇基地:第83航空隊 - 第204飛行隊・南西支援飛行班

派生型

ファイル:Bi at rjnk.jpg
展示飛行するT-4「ブルーインパルス」(2005年 小松基地
XT-4
試作機(飛行試験機4機[1]+地上強度試験機2機[1]・後に飛行試験機は量産化改修を経てT-4に編入)
T-4
量産型
T-4戦技研究仕様機
ブルーインパルス用の特別仕様機

スペック

テンプレート:航空機スペック

事故

2000年(平成12)7月4日、第11飛行隊(ブルーインパルス)所属の2機が松島基地から25kmの牡鹿半島上空でレーダーから消失、金華山に墜落し、乗員3名が死亡した[2]。この年の3月22日には同基地所属のT-2も同空域で墜落しており、至近の女川原発へ衝突する可能性を合わせ、地元自治体や日本共産党などに非難された[3][4]。再発防止策が自治体に受け入れられるまで1年あまり曲技飛行の訓練が凍結された[5]

登場作品

コンピューターゲーム
同シリーズの全ての作品で登場。1作目ではブルーインパルスのパイロットとして、実際にブルーインパルスが演じている科目をプレイヤーが行い、隊長機を目指す。
小説
夏見正隆の小説。水無月忍が教育課程で搭乗する。
漫画・アニメーション作品
清水としみつの漫画およびオリジナルアニメーション作品。
  • 『レスキューエンジェル』
トミイ大塚の漫画アニメよみがえる空 -RESCUE WINGS-」を原作とする漫画(現、題名・『航空自衛隊小松基地救難隊RESCUE WINGSゼロ』)
吉岡平の小説およびオリジナルアニメーション作品。
同名のコンピューターゲームのTVアニメーション化作品。第3話のコンサートシーンにアクロバット機として登場。「コークスクリュー」や「ヴァーティカルキューピッド」等の展示飛行を行う。
実写作品
最終話に登場、所属は不明であるが航空総隊司令部飛行隊(入間基地)の機体である可能性が高い。
東京ビッグシティマラソンの開会式の際に、ブルーインパルス所属機が登場。
原作の小説及びTVドラマに、ブルーインパルス所属機を始めとするT-4が登場。

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

テンプレート:Sister

テンプレート:Mil-aviation-stub
  1. 1.0 1.1 世界航空機年鑑1988 酣燈社 1988年 P110-111
  2. テンプレート:Cite web
  3. 平成十二年十月十九日提出 松島基地所属の自衛隊機墜落事故等に関する質問主意書 松本善明
  4. 平成十二年十一月十日 衆議院議員松本善明君提出松島基地所属の自衛隊機墜落事故等に関する質問に対する答弁書
  5. テンプレート:Cite web