自由貿易協定

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:更新 テンプレート:国際通商 自由貿易協定(じゆうぼうえききょうてい、テンプレート:Lang-en-short、FTA)は、物品の関税、その他の制限的な通商規則、サービス貿易等の障壁など、通商上の障壁を取り除く自由貿易地域の結成を目的とした、2国間以上の国際協定である。

地域経済統合の形態の中では、緩やかなものとされている。2国間協定が多いが、北米自由貿易協定等の多国間協定もある。

またFTAには自由貿易地域(じゆうぼうえきちいき、テンプレート:Lang-en-short)として、自由貿易協定を結んだ地域を指す場合がある。「自由貿易地域」の略語として用いる国が場合が多いが、日本では「自由貿易協定」の略語として用いられる。

自由貿易協定の規定

2002年6月末時点で、130以上のスキーム(計画)がGATT/WTO(世界貿易機関)に通報されている。この他に、途上国間のFTAには、WTOの「授権条項(enabling clause、1979年GATT決定)」に基づいたものがある。これは、先進国が途上国に対し、他よりも低率な関税を適用することを認め、途上国間の自由貿易協定締結を容易にすることを認めるものであり、GATT第24条の厳格な要件は適用されない。ただ単に通商上の障壁を取り除くだけでなく、両経済領域での連携強化・協力の促進等をも含めたものは、経済連携協定(EPA)と呼ばれている。

FTAとEPAの違い

FTAは「自由貿易協定」と呼ばれ、特定の国や地域とのあいだでかかる関税や企業への規制を取り払い、物やサービスの流通を自由に行えるようにする取り決めのこと[1]

EPAは「経済連携協定」と呼ばれ、物流のみならず、人の移動、知的財産権の保護、投資、競争政策など様々な協力や幅広い分野での連携で、両国または地域間での親密な関係強化を目指す協定[1][2]。通商政策の基本ともいわれる[2]

地域間の貿易のルールづくりに関しては、過去WTOを通した多国間交渉の形が取られていたが、多国間交渉を1つ1つこなすには多くの時間と労力が取られるため、WTOを補う地域間の新しい国際ルールとして、FTAやEPAが注目されている[1]

日本は東南アジアインドとの経済の連携協定を進めてきたように、FTAだけでなくEPAの締結を求めている[3]。その理由は、関税撤廃だけでなく、投資やサービス面でも、幅広い効果が生まれることを期待していることによる[3]

自由貿易地域の一覧

ファイル:Free Trade Areas.PNG
現在の自由貿易地域

主な多国間協定

メリットとデメリット

自由貿易協定には、経済的利益のみならず、政治的利益が期待される。

経済的メリットとしては、自由貿易の促進拡大により、スケールメリットや、協定国間における投資拡大の効果も期待される[4]。また、地域間における競争促進によって、国内経済の活性化や、地域全体における効率的な産業の再配置が行われ、生産性向上のメリットも期待される。

政治的メリットとしては、協定国間の地域紛争や政治的軋轢の軽減や、地域間の信頼関係の熟成が期待され、また貿易上の問題点や労働力問題なども、各国が個々に対応するよりも協定地域間全体として対応をすることができる。

一方でデメリットも憂慮される。協定推進の立場の国や人々は、地域間における生産や開発の自由競争や合理化を前提にしていることが多く、自国に立地の優位性がない場合、相手国に産業や生産拠点が移転する可能性がある。このため、国内で競争力があまり強くない産業や生産品目が打撃を受けたり[5]、国内消費者が求める生産品の品質を満たせない製品が市場に氾濫するなど、生産者にとっても消費者にとってもデメリットが生じる可能性が存在する。国外から入ってきた製品が独特のニーズに応えられるかどうかは未知数であり、他の自由貿易協定(FTA)地域で起きたメリットと同じことが、また別の国家間で結ばれたFTAにおいても起こるとは限らず、むしろ国民が望まない方向へ経済的にも政治的にも進む可能性もある。

ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・E・スティグリッツは「自由貿易協定は『自由』な貿易協定ではない。実際の貿易協定の批准書は何百ページとある。そんな協定は『自由』貿易協定ではなく『管理』貿易協定である。こうした貿易協定は、ある特定の利益団体が恩恵を受けるために発効されるものであり、特定の団体の利益になるように『管理』されているのが普通である。アメリカであればUSTR(アメリカ合衆国通商代表部)が、産業界の中でも特別なグループの利益、とりわけ政治的に重要なグループの利益を代弁している」「二国間の貿易協定が発展途上国に多大な犠牲を払わせている。実際に自分が関わったケースでも、二国間の貿易協定で途上国に大変な犠牲を強いることがよくあった」と指摘している[6]

ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンは、国際貿易に無知な人ほど自由貿易の効力に幻想を抱きがちであると述べており、自由貿易が経済にポジティブに作用するかのような神話がつくられやすい傾向があるが、貿易を専門とする経済学者はそのような仰々しい見解(grandiose view)を自由貿易に抱いているわけではない。また、一般論として、輸出増で増えた分の雇用が輸入増での雇用減によって相殺されてしまうため、自由貿易は雇用創出をもたらさないとしている[7]

東・東南アジア地域におけるFTA締結の動き

東・東南アジア地域では授権条項に基づくバンコク協定などを除き、FTA締結の動きは遅れた。ASEAN諸国は、ASEAN自由貿易地域(AFTA)を1992年に締結し、段階的な貿易自由化を行い始めた。ASEAN域内での関税非関税障壁(NTB)の引き下げを行い、貿易の自由化、それに伴う経済の活性化、発展を目的とするものである。しかし、東アジア諸国がFTA締結に取組始めるのは、1990年代末以降である。また、中国や台湾はそれぞれ、2001年、2002年までWTOにも加盟しておらず、WTO加盟国とのFTA締結はできない状況にあった。

この地域において、FTAに最も積極的なのは、シンガポールである。AFTAにおいても、提唱国のタイと並ぶ推進者であった。AFTAだけではなく、域外国とのFTA締結にも熱心であり、2000年11月にニュージーランドとの間でニュージーランド・シンガポール経済連携緊密化協定(ANZSCEP[8])に調印した。その後、日本、EFTA(2002年)、オーストラリア、アメリカ(2003年)、ヨルダン(2004年)、インド、太平洋4カ国(チリ、ニュージーランド、ブルネイ)FTA、韓国、パナマ、カタール(2005年)などとの間で締結済みである。

今日の東アジア経済統合において、ASEANは事実上中核的な位置を占めている。中国や日本、のちに韓国はASEAN諸国全体とのFTA(ASEAN+1FTA)をそれぞれ締結し、それをまとめたものをASEAN+3FTAとして事実上の東アジアFTAを構築するのが既定路線になっている。2002年に日本の小泉首相がASEAN+5構想を提唱し、オーストラリアやニュージーランドも含むべきだと主張したが、これもASEANを中心とする枠組み構築に沿ったものであった。オーストラリア、ニュージーランドはすでにANZCERTA[9]を締結し、このCER[10]とAFTAの間のFTA構想も交渉が行われている。

また、ASEANでは広域FTAの中核となるだけではなく、域内経済統合の深化を模索する動きもある。2003年に、第9回ASEAN首脳会議はASEAN経済共同体と他2分野における共同体の創設を目指す「第二ASEAN共和宣言(バリ・コンコード II)」を採択した[1]。ただし、このASEAN経済共同体はFTA+αとして議論されており、ヨーロッパにおける経済共同体 (EEC) やEC市場統合などと比較できるレベルのものではない。

日本のFTA戦略

テンプレート:Main2 日本は、テンプレート:要出典範囲FTAを推進する方針に転換した。しかし、韓国とのFTA交渉は遅れ、その間に日本はシンガポールとの間で交渉を進め、2002年に日本初の経済連携協定日本・シンガポール新時代経済連携協定)が発効されるに至った。その後、ASEAN諸国それぞれとの二国間交渉に乗り出し、またメキシコとも経済連携協定を締結した。2007年4月以降日豪FTAの交渉が始まっているが、農業・酪農に関する関税が撤廃されれば日本産の農作物や乳製品が圧倒されると予想され、北海道などで反発が相次いでいる。

以下は作業中の協定である。

その他FTAの動き

テンプレート:Main

脚注・参考資料

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

テンプレート:地域統合

テンプレート:経済統合vi:Hội nhập kinh tế#Hiệp định thương mại tự do
  1. 1.0 1.1 1.2 「EPA/FTAって何?」 外務省 FTA広報動画
  2. 2.0 2.1 「通商政策 知財・人の移動もカバー」 朝日新聞 2010年5月27日
  3. 3.0 3.1 「EPA/FTAのメリットとは?」 外務省 FTA広報動画
  4. WTOと、EPA/FTA等 の推進による国際事業環境の整備 経済産業省
  5. 自由貿易協定 【FTA】 経済/金融用語辞典
  6. ジョセフ・E・スティグリッツkotoba(コトバ) 2013年6月号
  7. Macro Trumps Micro Paul Krugman, New York Times 2012年12月7日
  8. テンプレート:Lang-en-short
  9. テンプレート:Lang-en-short
  10. テンプレート:Lang-en-short