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'''能格動詞'''(のうかくどうし、ergative verb)とは、[[自動詞]]にも[[他動詞]]にも用いられる[[動詞]]のうち、自動詞として用いた場合の[[主語]]と、他動詞として用いた場合の[[目的語]]とが同じであるようなものをいう。能格動詞の他動詞用法の主語を'''能格的主語''' (ergative subject) という<ref>Halliday 1967: 44f., Lyons 1968: 352.</ref>。 たとえば、[[英語]]の ''open'' は能格動詞である。下の(a)は自動詞、(b)は他動詞の例である。自動詞の主語と目的語は ''the door'' で、同じである。 : a. The door opened.「ドアが開(ひら)いた」 : b. John opened the door.「ジョンがドアを開(ひら)いた」 和訳から分かるように、[[日本語]]の「開(ひら)く」も能格動詞である。 ==例== 英語では次のような動詞がある: *状態変化を示す – break, burst, melt, tear *料理に関する – bake, boil, cook, fry *移動を示す – move, shake, sweep, turn *乗り物に関する – drive, fly, reverse, sail 日本語では次のような変化を表す動詞がある: *基礎的な動詞:「開(ひら)く」(「ドアを開く」「ドアが開く」の両用法がある)、「閉じる」、「終わる」などがあるが、比較的少ない。 *[[漢語]]に由来する[[サ行変格活用|サ変動詞]]:「閉鎖する」(「工場を閉鎖する」「工場が閉鎖する」)、「生成する」、「連続する」、「停止する」などの変化を示す動詞。 日本語では能格動詞が多くない代わりに、「建てる」と「建つ」のような、他動詞と自動詞が対をなす動詞(有対動詞)が数多くあるので、これらを利用して「誰かが家を建てる」を「家が建つ」のような[[自発 (文法)|自発]]表現に言い換える方法(脱使役化)がよく用いられる。 [[ロマンス語]]では他動詞を[[再帰動詞]]にして自動詞的に用いることが多く、このような再帰動詞を能格動詞と言う場合もある。 ==「能格」という名称== このような動詞を「能格的 (ergative)」と称することに反対する意見がある。[[能格言語]]の記述で用いられてきた「能格」という用語の定義とは異なるからである<ref>Dixon 1994: 20.</ref>。 能格言語において「能格的である」とは、「自動詞の主語と他動詞の目的語が同じように標示され、他動詞の主語が異なる標識を持つ」ということである。 一方で能格動詞の場合、たとえば日本語の「開(ひら)く」の例では、自動詞用法の主語「ドア'''が'''」と他動詞用法の目的語「ドア'''を'''」は異なる標示を持ち、他動詞用法の主語「ジョン'''が'''」は自動詞用法の主語と同じ標示を持つ。 つまり、他動詞用法の主語は、能格言語のようには「能格的」ではない。 ==他の意味== 動詞によって表される行為が、動詞の目的語よりも主語に影響を与えるような動詞(つまり被動者が主語である)を指して、能格動詞ということもある。これは[[非対格動詞]]に等しい。 最初に述べた意味の能格動詞における自動詞用法も、この非対格動詞に含まれる。 なお、think、see、understand、experience、eat などの動詞は * I ate. (食事する) * I ate a hamburger. (ハンバーガーを食べる) というふうに自動詞・他動詞両方に用いる(自他動詞 Ambitransitive verb)が、これらは他動詞の目的語を省略して自動詞にしただけであって、ふつう能格動詞とは言わない。ただし * This eats crisp. (これは食べるとパリパリする) という言い方(食べ物が主語になっている)はある。しかしこれはその食べ物の'''性質'''を述べるもので、能格動詞のような'''変化'''を述べるものではない。この言い方は[[能動態]]と[[受動態]]の中間的なものという意味で[[中間構文]](Middle construction)と言う。 ==関連項目== *[[自動詞]] *[[他動詞]] *[[二重他動詞]] ==脚注== <references /> ==文献== *Dixon, R. M. W. (1994) ''Ergativity''. Cambridge: Cambridge University Press. *Halliday, M. A. K. (1967) Notes on transitivity and theme in English ,part 1. ''Jouranal of LInguistics'' 3: 37-81. *Lyons, John (1968) ''Introduction to theoretical linguistics''. Cambridge: Cambridge University Press. [[Category:動詞の種類|のうかくとうし]]
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