火の鳥 (漫画)

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テンプレート:Sidebar with collapsible lists火の鳥』(ひのとり)は、火の鳥不死鳥)を物語の中心にした一連の編より成り立つ手塚治虫による漫画作品である。また、それを原作とした映画アニメラジオドラマビデオゲームが作成されている。手塚治虫の代表作の一つである。

概要

手塚治虫が漫画家として活動を始めた初期の頃から晩年まで手がけられており、手塚治虫がライフワークと位置付けた漫画作品[1]古代からはるか未来まで、地球宇宙を舞台に、生命の本質・人間の業が、手塚治虫自身の独特な思想を根底に壮大なスケールで描かれる。物語は「火の鳥」と呼ばれる鳥が登場し火の鳥の血を飲めば永遠の命を得られるという設定の元、主人公たちはその火の鳥と関わりながら悩み、苦しみ、闘い、残酷な運命に翻弄され続ける。

雑誌「COM」以降の連載作品では過去・未来・過去・未来と交互に描き、手塚本人が死亡した瞬間に作品が完結するという構想が練られていた[2]

この作品に多くの漫画家が影響を受け、数多くの映像化・アニメ化・ラジオドラマ化が行われた。

作品の構成

火の鳥は「〇〇編」と名の付く複数の編から成り立っている。

最初に連載されたのは1954年(昭和29年)、学童社の『漫画少年』の「黎明編」だったが、学童社はその後約1年ほどで倒産、この「黎明編」は未完に終わる。 その後、1956年に雑誌『少女クラブ』に「エジプト編」・「ギリシャ編」・「ローマ編」が連載された、そこから期間を空け1967年に雑誌『COM』に新しく書かれた「黎明編」から複数の編が連載され雑誌COMは休刊になる。その後1976年に雑誌『マンガ少年』で「望郷編」から「異形編」が連載されマンガ少年も休刊、1986年に『野性時代』で「太陽編」が連載された。

基本的には多数ある「〇〇編」はどれも一つの物語として完結しているため、朝日ソノラマ出版版や角川版などの一部では、どの作品から読んでも楽しめるように第一巻・第二巻のように「〇〇巻」と付けずに「〇〇編」とだけ付けて販売している。主人公・時代もそれぞれ異なる。そのため短編作品として捉えることができるし、人類の誕生から終焉までを描いた壮大な長編作品として捉えることもできる。「〇〇巻」と巻数表記されてない単行本については過去から未来まで順番を並べ替えて読むこともできる。順番を入れ替えると過去だと思っていた編が全て未来になり、未来だと思っていた編が全て過去になる仕掛けが施されている。

手塚本人が描いたものとしての火の鳥は野性時代の「太陽編」が完結したことにより終了しているが、実際には太陽編の後も構想が練られていた。火の鳥は過去、未来、過去、未来、と交互に「現代」に近付いて描かれるが、手塚は「自分の死亡時刻」を現代と置いており、「現代編」を死ぬ瞬間に1コマ程度描くと公言していたが[2]、手塚は死ぬ直前に何かを描こうとするも実現には至らなかった。

しかし、火の鳥を一つの長編作品として捉えた場合の最終的な結末は「未来編」で先に全て描かれており、NHKでアニメ化された時は最終的な結末を「未来編」で見せ物語が幕を閉じる。 また「未来編」は物語の始まりである「黎明編」に続くため作品自体が無限に繰り返すような作りになっている。 (この「未来編」は一番過去としても受け取れ、一番未来としても受け取れるため、最初に読んでも最後に読んでも物語が繋がるというあまり他の漫画には使われていない特殊な形態をとっている。巻数表記のない単行本を入れ替えて読む場合は第一巻にも最終巻の役割にもなる。)

1980年の手塚存命中に手塚が手がけた映画に「火の鳥2772 愛のコスモゾーン」が存在する。これは漫画の映像化ではない個別に完結した物語であり、火の鳥全体を総括するような内容になっている。本作は火の鳥の世界の結末の一つが描かれている。

手塚死去のため描かれなかった内容はセガから発売された2003年のゲーム「ASTRO BOY・鉄腕アトム -アトムハートの秘密-」や2006年の「ブラック・ジャック 火の鳥編」などに一部着想が生かされている。

手塚治虫の代表作の一つに『ブッダ』が存在するが、これは雑誌COMの休刊時に「火の鳥 東洋編」として出版社から企画されたものであった。[3]そのため作風・テーマ性が共通し、鼻が大きな人物(猿田彦)など共通の登場人物が数人出てくる。

さらに漫画作品ではないが、手塚治虫が死を目前にした病院のベッドの上で彼自身が手がけたものに舞台劇「火の鳥」が存在する[4]。これは西暦2001年の時代設定であり、個別に完結したストーリーである。本作は1989年2月8日にスペース・ゼロにて公開されたが、皮肉にも翌日である2月9日に手塚が亡くなったため公開二日目にして追悼公演として上演されるようになった[5]。手塚の訃報を知ったスタッフが午後7時の公演時間に合わせてお悔やみの場内アナウンスをすると、観客席からの嗚咽が漏れ、舞台の最中にも止まらなかったという。現在この舞台劇版「火の鳥」は講談社から発売されている「手塚治虫漫画全集 386巻 別巻手塚治虫シナリオ集」や朝日新聞社から発売されている「ぜんぶ手塚治虫!」、樹立社の「手塚治虫SF・小説の玉手箱」等でシナリオ原稿を読むことができる。この舞台劇「火の鳥」は手塚存命中に発表された作品としては最後の作品であり、手塚の遺作の一つになった。

登場人物

ここでは複数の編にまたがり登場する人物等を紹介する。

火の鳥
人智を超えた存在である超生命体。炎をまとった鳥の姿をしている。100年に一度自らを火で焼いて再生(幼くなる)する事で永遠に生き続ける。人語を解し、未来を見通す。火の鳥の血を飲めば永遠の命を得る事ができるため、多くの人間がその生き血を求める。呼称は鳳凰・火焔鳥・フェニックス・不死鳥などとも呼ばれる。時空を超えて羽ばたく超生命体として描かれる。その身体は宇宙生命(コスモゾーン)で形成されており、関わった人々の魂をも吸収して体内で同化し生かし続ける事も可能。話によっては人間との間に子供をもうけていたりもする。『エジプト編』の設定では元々は天上界にいたが人間界に降りたことになっている。火の鳥は一羽だけではなく、『ギリシャ編』ではチロルと呼ばれる火の鳥の娘が登場する。チロルはややわがままな性格をしており、他の編の火の鳥がチロルかどうかは不明。
手塚治虫はストラヴィンスキーのバレエ「火の鳥」を見て、その中の火の鳥の精を演じるバレリーナの魅力に心を奪われたのが本作の漫画「火の鳥」を描くきっかけだったとしている[6]。また手塚は旧ソ連の映画「せむしの仔馬」のファンでもあり、この映画にも「火の鳥(フェニックス)」は登場する。
猿田
『黎明編』から『未来編』まで多くの物語に関わってくる共通の特徴を持つ人物の総称。作品ごとに猿田彦、猿田博士、我王(鞍馬天狗)、八儀家正(八百比丘尼の父)など個別の名前が付けられていることが多い。共通して大きな鼻の持ち主と運命づけられているが、性格や何ゆえにそのような大きな鼻を持ったのかの由来が少しずつ異なる。猿田彦、八儀家正は「元々醜い顔で、さらに鼻が大きくなった」、猿田博士は「元よりそのような顔と鼻」、我王は「病で醜くなると同時に鼻も大きくなる」、宇宙編の猿田は「元より鼻は大きく、さらに醜くなる」、生命編/太陽編の猿田は「鼻が大きいだけ」など、作品ごとで異なる。鼻が大きい理由も、猿田彦は蜂の群れに刺されたことによるもの、八儀家正は鼻癌であるが、それ以外は原因不明。
始祖である猿田彦の犯した数々の悪行を清算する為に酷い目に遭う宿命にある。「鳳凰編」では我王が「未来編」の猿田として生まれ変わり人類の最期を看取ることが描写されている。基本的には猿田の人物の殆んどはその醜さから女性との縁が無い事が多いが、一部にはその容姿とは関係無しに純粋に正反対の美女に惚れられた者もおり(例えば、猿田彦はウズメに惚れられた)、その女性は後の猿田の名がつく者に繋がるとされる子孫を身籠っている。この事も含めて、猿田と名が付く者は先述の女性と縁がない一方で何らかの形で子孫は受け継がれているとみられる(生まれ変わりとする説もある)。ただし未来編の猿田博士のみは、その容姿ゆえに女性に縁が無い事が描写された。歴代の猿田は才能を持つ者が多く、科学者や指導者といった立場にいる者もいる。
ムーピー
いかなる厳しい環境にも耐えうる生命力を持つ不定形宇宙生物。変身能力を有し、人型をとり人間の社会に溶け込むことができるが、その能力から人気が高く人に狩られてしまうため、どこかの星でひっそりと暮らしている。「未来編」では一種のテレパシー能力を用いた「ムーピー・ゲーム」が人類を堕落させるとして、保有を禁止されたペットであり、メガロポリスヤマトでは1匹残らず殺すよう命令が出されている。「未来編」の主人公山之辺マサトの恋人タマミがそのムーピーだった。寿命は人間より遥かに長く、500年位は生きられる。「望郷編」では人間とムーピーのハーフが登場する。ハーフ達は視力と耳朶(聴力)が無く、代わりに触角が生え、これで感覚を認識している。
ロック
「未来編」などに登場。「未来編」では35世紀における都市国家メガロポリスヤマトの中央本部に勤務する1級人類戦士。エリートで、同期でありながら総合審査によって自分の部下となった「未来編」の主人公マサトに対して辛く当たるが、戦争を嫌い「未来編」において人間の愚かさを見事に演じ切ったキャラクターでもある。試験管ベビーとして誕生したので両親はわからず、強いて言えば自分を生み出した精子卵子を選んだ中央コンピュータ「ハレルヤ」が親である。「火の鳥2772」では科学センターの長官として登場。1989年の舞台劇「火の鳥」では主人公の兄であり、恋敵の設定。 未制作の映画「火の鳥(第二部)」では地球連邦の移民局の長官として登場予定だったことがシナリオで残されている。プロットのみの「大地編」では主人公の一人として登場する予定だった。
ロビタ
初出は「未来編」。同時代には人間、あるいは自然動物と何ら変わらぬ外見のロボットも存在するが、ロビタは二本指で、足もなく臀部で滑って移動するなど、構造は非常に単純で「旧式ロボット」とされるが、まるで人間のように感情がこもった会話をし、猿田博士にしばしば諫言するなど、ロボットらしく無い行動を取る。
「復活編」において、その誕生と理由が描写される。主人公のレオナとチヒロが結ばれて誕生したロボット。電子頭脳が大きくなりすぎて重心が頭部に偏ってしまったためバランスが悪く、二足歩行を断念し両脚は取り外され、「摩擦よけの車」と表現される臀部のベアリングで滑るように動く事となった。一方でレオナの精神と記憶を受け継いだ為、普通のロボットと違い人間臭い感情を持つ。稼動限界の後に業者が引き取って、その構造を模して記憶をコピーした物が量産される。その後、技術の発展でより精巧なロボット(ロビタや前身のチヒロと違い、人間に極めて近い構造)が作られても、ロビタはその人間臭い感情によって多くの人間に好まれ数世紀に亘って量産される。その一方でロボットを人間の道具と考える人間にとっては極めて不快な存在でもあった。
31世紀頃、ある子供が親や家政婦よりも懐いているロビタに会いに放射能農場に迷い込んだために死亡。ロビタが殺したという冤罪を受けるが、数十年間裁判を繰り返しついに、裁判官が個体ナンバーを特定できなかったという理由から、事件発生時に農場で働いていたロビタ全員が溶解処分される。同胞をそのような形で失った世界中のロビタは集団自決を行い、稼動可能な物は全て溶鉱炉に身を投じる。しかし月面にいて集団自決に参加できず、エネルギー切れによる自決を選んだ最後の一体のロビタは、35世紀に猿田博士に救助され、「未来編」へとつながる。
牧村五郎
「宇宙編」「望郷編」で登場するアストロノーツ(宇宙飛行士)。生まれた時からアストロノーツとなる事を宿命づけられ、外宇宙に地球由来の細菌を持ち込まないために、無菌室で成長する。初恋の女性に裏切られた事がトラウマとなり、女性に手が早くかつ冷酷である。その初恋の女性の幻に惑わされる形で異星人を虐殺し、その罪により火の鳥から、若返っては赤ん坊に戻り、再び成長して大人に戻っては若返るというサイクルを繰り返し、永遠に生き続けなければならない罰を受けている。赤ん坊に戻っている間は、「ケース」と呼ばれる自身の姿を模した等身大の人型ロボットに乗り込み操縦をしている。時系列的に見て恐らく罰を受ける前である「望郷編」において、地球に帰郷する途中のロミと出会う。映画「火の鳥(第二部)」のシナリオでは主人公の名前が「牧村壮吾」であるが関連性は不明。
山之辺マサト
「未来編」の主人公。猿田と共に人類の最期を見届け、なお数十億年の時を経て新たな人類の誕生を待つことを運命づけられる人間。「劇団わらび座」によるミュージカル「火の鳥 鳳凰編」では「鳳凰編」に登場する茜丸がその生まれ変わりとする解釈をした。ただし、これは「鳳凰編」中において茜丸が死亡するシーンで「茜丸は二度と人間に転生することはない」と火の鳥が告げていることと明らかに矛盾している。手塚の遺作である1989年の舞台劇「火の鳥」では主人公の名前がこの「山辺マサト」と同姓同名である。
チヒロ
精密機械局で作られた量産型の事務ロボット。2545号は「望郷編」にて地球に不法侵入したロミとコムを助け、61298号は「復活編」でチヒロが美少女に見える主人公レオナと出会い愛の感情を得る。「望郷編」時のチヒロ2545号の発言によれば、チヒロ型の仲間は13,692,841体、他の型も合わせると世界に1,277,554,539体の仲間がいる。映画「火の鳥(第二部)」のシナリオでは同名の人間が登場しており、レオーナと言う男性と娘(ヒロイン)をもうけている。二人は「エデン17」という惑星で暮らした。
八百比丘尼
「異形編」「太陽編」に登場。戦国時代、数々の残虐行為を行ってきた成り上がりの領主である父・八儀家正から、男性として育てられていた女性・八儀左近介である。父が致死性の鼻の病にかかった際、その治療を行わせないため八百比丘尼を殺害するが、その罰として、無限に繰り返す時間の中に閉じ込められ、八百比丘尼として永遠に若い頃の自分に殺され続けるという宿命を負わされる。「太陽編」で、霊界の戦いで傷ついた神々の手当てを行っているのは、負った罪を清算する方法であると語られている。

火の鳥の各編のあらすじ

執筆された作品

黎明編(漫画少年版)
  • 初出:『漫画少年』(1954年7月号 - 1955年5月号)未完
主人公のナギは父親が病気にかかってしまったため悩んでいた。もし上空にある「血の星」という星が沈むまでに父の病気を治すことができなかったら、村のしきたりにより父親は村人たちに食べられてしまうからである。悩みぬいたナギは長老に相談すると父親の病気を治すには「火の鳥」という鳥の生き血が必要と教えられる。それを聞いたナギは火の鳥に会いに行き、運良く生き血を貰う。しかし、ナギが村に帰る頃には「血の星」は沈んでおり、父親は既に食べられてしまっていた。行き場を失った火の鳥の生き血は仕方がないのでナギと妹のナミが飲むことになった。やがて村はさらに豊かな土地へと引越しするために船を出すが嵐のためナギとナミは難破し知らない島国に流れ着く。その知らない土地は原住民が住んでおり、火の鳥の生き血を飲んでいて死なない体の二人は彼らに神様と崇められる。主人公のイザ・ナギと妹のイザ・ナミは原住民から天照大御神の名前を貰う。その後、二人は原住民の長である卑弥呼に出会うが卑弥呼が岩戸の中に入るところで雑誌休刊のため未完に終わった。
エジプト編
  • 初出:『少女クラブ』(1956年5月号 - 10月号)
紀元前1000年頃。主人公のエジプトの王子クラブは父親の命令で飲めば3000年の命が貰えるという火の鳥の血を求めて旅に立つ。しかし、その間に王家を乗っ取ろうと考えていた王女(クラブの継母)は王と王子を殺そうと計画する。旅に出たクラブはもう一人の主人公である奴隷のダイアと出会う。ダイアの国はクラブのいるエジプト軍に滅ぼされ奴隷として育てられていた。やがてクラブとダイアは恋に落ち火の鳥を探す旅を続ける。そして二人は火の鳥の卵を洪水から救い、代わりに火の鳥の生き血を貰う。しかしクラブは王女の部下に殺され、ショックを受けたダイアも後を追って自殺する。
ギリシャ編
  • 初出:『少女クラブ』(1956年11月号 - 1957年7月号)
エジプト編の続き。
クラブとダイアの死体は300年経ちナイル川に流され、ギリシャの海を彷徨っていた。そしてダイアの死体はトロヤ軍の船に引き上げられ、クラブの死体はスパルタの海岸に打ち上げられた。火の鳥の血を飲んでいた二人はそこでそれぞれ目覚める。クラブとダイアはスパルタの宮殿で偶然出会うが、二人は記憶をなくしていた。しかし、二人の心は何故か惹かれ合い「きっと前世では兄妹だったのだろう」と決め兄妹として愛するようになった。やがて二人はトロヤとスパルタという敵同士の国に運命を引き裂かれ戦争に巻き込まれる。そして悲劇が起きトロイの木馬によってダイアは潰され死亡する。クラブは悲しみのあまりダイアの死体を抱え海に飛び込み死亡する。
ローマ編
  • 初出:『少女クラブ』(1957年8月号 - 12月号)
ギリシャ編の続き。
海に飛び込んだ二人はユリシーズによって死体を回収され長い間ギリシャの宝物庫に保管されていた。しかし、300年経ちローマのシーザーがギリシャを制圧すると、アンドロクレスによって二人の死体は引き取られた。二人の死体はローマへと渡り、火の鳥の生き血のおかげで生き返りアンドロクレスに兄妹として育てられた。二人の暮らしは平和そのものであったが、そんな暮らしも長く続かず、ダイアはローマの暴君ネボケタスによって無理矢理、妻にされそうになる。二人は抵抗するが、代わりに死刑を宣告される。
黎明編
  • 初出:『COM』(1967年1月号 - 11月号)
3世紀の倭(日本)。主人公のナギの姉ヒナクは破傷風にかかり、生死の境をさまよう。ヒナクの夫であるウラジは妻を助けるため火の鳥の生き血を求めて火の山に入るが、火の鳥の炎に包まれ死んでしまう。困っていたところ、村の海岸に漂着した異国の医師グズリが現れ最新の医学知識でヒナクを救う。やがてグズリとヒナクは恋に落ちる。ところが婚礼の夜、グズリの手引によって、多数の軍船から猿田彦率いる防人の軍団が上陸。グズリはヤマタイ国のスパイであった。村人は虐殺され、猿田彦は抵抗するナギを奴隷として北の国に連れ帰る。ヤマタイ国がナギのいたクマソを侵略した裏には、老いた卑弥呼が火の鳥の血を欲していたという事情があった。
本作は未完に終わった「漫画少年」版の黎明編を基に大幅に内容を変え連載したもの。大和朝廷の成立については、定説ではなく本作品執筆時に話題になった江上波夫騎馬民族征服王朝説を採用している。その後何度か描き直されており、後年の版では主人公たちを襲う様々なスタイルの狼の中に、「ファミコン型」や「赤塚不二夫型」等も登場する。また日蝕の場面では太陽の欠け方が間違っており、手塚本人によって単行本では正しい日蝕の欠け方へと修正されている。TVアニメ版では子供の頃の猿田彦のシーンが追加され、どうして卑弥呼に忠誠を誓っていたのかが分かるようになっている。
未来編
  • 初出:『COM』(1967年12月号 - 1968年9月号)
西暦3404年。時間軸で考えた場合の火の鳥の結末にあたる作品。人類は25世紀を頂点として衰退期に入り、文明も芸術も進歩が少しづつ停止、人々は昔の生活や服装にばかり憧れを抱くようになり、すでに30世紀には文明は21世紀頃のレベルまで逆戻りしていた[7]。地球人類は滅亡の淵にあり、他惑星に建設した植民地を放棄し、地上に人間はおろか生物は殆ど住めなくなっていた。人類は世界の5箇所に作った地下都市“永遠の都”ことメガロポリスに移り住み、超巨大コンピュータに自らの支配を委ねていたが、そのコンピューターも完璧な存在ではなく、コンピューター同士で争いが起き、メガロポリス「ヤマト」と「レングード」の対立から核戦争が勃発、地球上のあらゆる生物が死に絶える。生き残ったのはシェルターに居た主人公の山之辺マサト達の数人であった。そこで山之辺マサトは火の鳥に永遠の命を貰う。仲間達が次々と死んでいく中で山之辺マサトは死ねない体のまま苦しみ、悶えながら生き続ける。途方も無い時間をたった一人で過ごす中で、マサトは地球の生命の再生を求め続け、やがて一つの答えにたどり着く。
本作は結末が黎明編へ繋がるような展開となっており、読む順番を最初にしても、最後にしても問題が無いような作りになっている。なお、NHKのアニメでは尺の都合及び倫理的理由のため内容が大幅に削除・変更されている。マサト達がドームに入る以前の物語はカットし、後半も大幅に内容を変更し、ナメクジ文明のエピソードも全面的にカットされた。
ヤマト編
  • 初出:『COM』(1968年9月号 - 1969年2月号)
4世紀頃の倭(日本)。古墳時代。主人公のヤマト国の王子、ヤマトオグナは父である大王からクマソ国の酋長川上タケルを殺すことを命じられる。その理由は川上タケルが真実を書いた歴史書を作ろうとしているからであった。大王は、自分たちは神の末裔であるとする嘘の歴史書を作ろうとしていたため、川上タケルがやろうとしていたことは不都合であった。オグナは川上タケルの妹であるカジカと出会い恋に落ちるが、迷いながらも父の言いつけ通りに川上タケルを殺す。タケルは死に際に「わしの名前をやろう。これからはヤマトタケルと名乗るがいい」と名前を譲る。愛したカジカに、仇として命を狙われる事となったタケル。二人の愛はやがて悲劇へと向かって行く。
本作は『古事記』・『日本書紀』の日本武尊伝説と、日本書紀の垂仁紀にある埋められた殉死者のうめき声が数日にわたって聞こえたという殉死の風習と埴輪にまつわるエピソードを下敷きにしている。殉死者が死ななかったのは火の鳥の血の効果であるとし、期間も1年にわたっての事とした。石舞台古墳造営にまつわるエピソードがあるが、史実ではもっと後代の古墳であり、殉死者が埋められているという事も無い。オグナは神話のヤマトタケルがモデル(『倭男具那命』-『やまとをぐな』はヤマトタケルの別名)で、川上タケルは川上梟帥がモデル。本作に登場するクマソの国の長老は黎明編の最後で崖を登り切った青年であり、彼の子孫が繁栄しクマソ国へと発展している。
雑誌掲載版と単行本版では、手塚により細かな修正が行われている。ヤマト編は時事ネタが多かったため単行本ではセリフの手直しが多い。作中で川上タケルは、"長島"なる部下に「王」と呼ばれている。これは初出時には川上タケル=川上哲治として、クマソを巨人に見立て、その部下の長島=長嶋茂雄という洒落であったが、川上が監督を引退したので、川上タケルを王貞治に見立てる内容に改稿したためである。雑誌版では川上タケルがオグナを出迎えた場面で、手塚の学生時代の体験談である「日本とアメリカが都合のいい様に相手国を中傷していた」という2ページに渡った内容があったが単行本時に省かれている。
宇宙編
  • 初出:『COM』(1969年3月号 - 7月号)
西暦2577年。主人公達4人はベテルギウス第3惑星から地球へ向かうために宇宙船で人工冬眠を行いながら針路を移動していた。しかし宇宙船は操縦者である牧村五郎の自殺によって事故に遭う。事故により船は修理ができず、乗員は今すぐに宇宙船から離れないと危険な状態であった。乗員は人工冬眠から目覚め宇宙救命艇で脱出する。しかし、救命艇は一人乗りの小さな緊急用の物で4人はバラバラに宇宙に投げ出されるような形になった。救命艇にはそれぞれ無線通信機が付いており、彼らは宇宙に漂いながら会話を始める。その内容は過去に起きた、自殺した牧村五郎に関するものであった。やがて彼らの乗る4つの救命艇に謎の救命艇が近づいていく。はたしてその救命艇には誰が乗っているのか。
本作では、どうして猿田が過去から未来へと延々と苦しみ続けているのか、その理由が語られている。また本作がOVA化された時には、牧村とナナと奇崎が出会うシーンが追加され、隊長の死亡理由の変更、牧村がラダを殺す動機の変更、牧村が不老不死になる過程の変更など、全体的にストーリーは変えないまでも細かな演出がより現実的になっている。
鳳凰編
  • 初出:『COM』(1969年8月号 - 1970年9月号)
奈良時代。主人公の一人、我王は誕生直後に片目と片腕を失っており、心に影を持ちながら殺戮と強奪を繰り返しながら生活していた。もう一人の主人公である仏師の茜丸は我王に襲われ、彼に片腕を切られ、仏師としての生命の危機に追い込まれる。その後、我王は速魚という女性と出会い、愛を知るが、彼女を信じることができず殺してしまう。しかし彼女の正体を知った時、激しい後悔に襲われることとなった。一方、茜丸もまた、我王に腕を切られたことから少しずつ、その心と運命が変化していく。
本作は、生まれながらに苦しみ続ける我王と権力の庇護を得て慢心に陥ってしまった茜丸の対比、東大寺大仏建立の真相、輪廻転生といった深い題材を取り上げている。火の鳥は茜丸が鳳凰の像の作成を命じられることで物語に関わってくる。しかし、史実では橘諸兄によって重用されている吉備真備が政敵として対立する、良弁僧正が即身仏となるなど、史実と改変された点も多々見られる(良弁については作中でギャグ的にフォローがなされた)。一方で作中で我王と茜丸が作った鬼瓦は、同じ意匠のものが東大寺に実在する。
劇場アニメ化された時は60分という尺の短さから大幅に内容を短縮され、我王は速魚を殺した後は最後の対決までほとんど登場しない。また原作では比重の大きかった良弁僧正が一切登場せず、二人の心理変化もあまり描かれず、主人公の一人がもう一人の主人公のお墓を彫る(弔う)というラストシーンもカットされている。雑誌掲載版では、我王が泥を壁に投げてヒョウタンツギの絵を作るというお遊びのシーンがあったがストーリーに無関係なため単行本では手塚本人により省略されている。
復活編
  • 初出:『COM』(1970年10月号 - 1971年9月号)
西暦2482年。主人公の少年レオナはエアカーから墜落した。レオナは科学の治療で生き返るが、人工細胞で脳を補うという方法のため認識障害を起こす。具体的には、有機物(生命体)が無機物(人工物)に見え、無機物(人工物)が有機物(生命体)に見えるようになった。そのため、彼には人間が奇妙な無機物の塊にしか見えなくなってしまった。そんな中である日、レオナは街で美しい少女を見かける。彼にとって唯一生き生きとした人間に見えるその少女に心ひかれ、追いかけるが、彼女の正体はロボットであった。やがて認識障害は改善されていき、過去の記憶を辿るうちに、墜落死の原因がアメリカにおいてレオナがフェニックス(火の鳥)の血を入手したという過去がからんでいる事も判明した。だが、ロボットのチヒロを人間の女性と認識し愛する事に変わりは無く、ついにはチヒロと駆け落ちしてしまう。そしてレオナはある決断をする。
本作では「未来編」に登場するロビタの誕生が描かれ、ラストシーンにおいて繋がるようになっている[7]
NHKのテレビアニメ版では大幅に内容を変更し、舞台を月に移し、主人公の設定を変え、新キャラヒロインを登場させ、ロビタが登場するパートを全カットして、ほぼ別物語に仕立てている。雑誌掲載版と単行本版では2484年から3009年、さらに3030年へと行戻りする物語の順番が手塚により一部修正されている。
羽衣編
  • 初出:『COM』(1971年10月号)
10世紀三保の松原。主人公の漁師のズクは家の前にある松の木に、薄い衣が引っかかっているのを見つける。すぐさまそれを手に入れ売ろうとするが、衣の持ち主である女性「おとき」が現れ、ズクは彼女を天女だと思い込む。ズクは衣を返すことを引き換えに3年間だけ妻として一緒に暮らすことを約束させる。
本作は天の羽衣の伝説が元になっており、舞台で演じられる芝居を客席から見たような視点で描かれている。また羽衣伝説を基に描いているが、「おとき」の正体は天女ではなく未来人であり、羽衣の正体は未来の技術で作られた謎の物体である。最後はこの物体を数千年後の未来へと託すために地面に埋めるところで終わっている。短い作品であるが、「放射能の影響で奇形で生まれた赤ちゃんを嘆いて殺そうとする」という表現についての問題や作者の意向があり、1980年まで描き直されるまで単行本化されなかった。(作中では放射能とは断言されてないが"毒の光"を浴びてしまったために奇形児が生まれたとする表現がある。)本来は「望郷編(COM版)」と関連する話であるが、1980年に単行本化される際、全ての文章を手塚が書き直し独立した話になっている[8]。そのため、本来ならば最後に埋めた物体の正体がCOM版「望郷編」で語られたはずがそのままになっている。
望郷編(COM版)
  • 初出:『COM』(1971年12月号)・『COMコミックス』(1972年1月号)
城之内博士は人類の歴史をやり直すため、人間も植物も動物も全てクローンでまかなわれた「第二の地球」を創りだした。城之内博士の娘「時子」は戦争から逃れるために4次元航空装置で「羽衣編(COM)」の時代へ逃げていた。時子の正体は実は羽衣編の「おとき」であり、本作は彼女が未来へと戻ってくるところから始まる。時子には放射能(作中では毒の光と表現)のせいで奇形で誕生した赤ちゃんがいた。しかし、時子に恋心を抱いていたジョシュアという男は城之内博士を殺し、4次元航空装置を奪い、奇形の赤ちゃんを池に投げ捨て、時子を連れ本当の地球へと旅立つ。赤ちゃんは生きており、クローン動物から「コム」と呼ばれるようになる。
本作はCOMの休刊によって[9]、未完のまま中断される。放射能障害を描いたCOM版「羽衣編」を前提としているため、「羽衣編」改稿に伴い、構想を新たに関連のない物語として『マンガ少年』版「望郷編」が描かれ[10]、この版は未完のままで長く単行本に収録されることがなかった。前後を大幅にカットした短縮版が『マンガ少年』に掲載されたこともあるが、そちらの短縮版はまだ一度も単行本化・書籍収録されたことはない。
乱世編(COM版)
  • 初出:『COM』(1973年8月号)
平安時代末期。主人公である猟師の「まきじ」は実の妹である「おぶう」と体も心も愛しあう関係であった。ある日、まきじは山で死にかけていた一匹の猿を救った。それはまきじが普段「赤坊主」と呼んでいたボス猿であった。どうやら赤坊主はハンニャとよばれる猿と争って負けボスの座を奪われたようである。まきじは瀕死の赤坊主を手当する。まきじは体の治った赤坊主と一緒に京都へ仕事に行くと、赤坊主をめぐり路上で役人と衝突。あやういところで名僧である明雲に助けられる。明雲の忠告もあり、まきじは赤坊主を山へ返そうとする。
本作は後の「乱世編」の元となる話であるが、『COM』が再び休刊したことにともない連載中断している。主人公の「まきじ」は後の「マンガ少年」版の弁太の原型であるがほっそりしている。また、まきじとおぶうは兄妹でない設定に変わった。猿と子犬のエピソードは「マンガ少年」版に流用されているが、二匹の名前が変えられており、天狗に育てられた話になっている。
望郷編
時代は宇宙時代。自然が失われ続ける地球に絶望した、主人公のロミと恋人のジョージは、強盗で得た金で宇宙不動産会社から小さな惑星、エデン17を買い、移住する。しかしそこは地震が頻発し、荒廃した惑星であった。悪徳業者に置き去りにされ、ジョージは事故で死に、ロミは残された息子と結ばれることで、生命を繋ぐ決断をする。しかし近親婚の影響で女児を得ることができず、ロミは唯一の女性として、息子と結婚して子供を産んでは冷凍睡眠を繰り返す事となった。やがて小さいながらも、ロミと息子たちのコミュニティが築かれていくが、兄弟同士の諍いから恐るべき計画がもちあがり、それを聞かされたロミは絶望して睡眠装置に閉じこもってしまう。彼女を憐れんだ火の鳥は、ロミの夢に呼びかけ、異星人との混血をすすめた。火の鳥の働きかけによりムーピーがエデン17へ訪れ、ムーピーとの混血の新しい種族が繁栄していく。ロミが数百年にわたる眠りから目覚めた時、エデンには心優しく素朴な人々の住む、平和な文明が育っていた。ようやく心の平安を得たロミは、エデンの女王として人々に慕われ、静かに老いていくが、次第に地球への望郷の想いを募らせ、コムという少年と共に地球を目指す旅に出る。
本作は『COM』版の「望郷編」(未完)との関連はほとんどなく、唯一、被爆した少年コムだけが、ムーピーと地球人との混血児という設定で再登場している。
手塚本人により何度も描き直されており、雑誌掲載版朝日ソノラマ版・講談社版、角川書店版の各単行本では大きく内容が異なる。雑誌版では地球到達までのロミの顔は老婆ような状態だったが、朝日ソノラマ版の際に若く描き直されている。単行本ではフォックスと呼ばれるブラック・ジャックに似た男がロミを自然が残った場所へと連れて行くシーンが追加された。また雑誌版ではロミは牧村に撃ち殺されるが、単行本では若返りの副作用のため死んだことになっている。ラストシーンも牧村がロミのために星の王子さまを読むという場面が追加された。ロミとジョージの声が最後に聞こえるシーンも単行本で加筆されたもの。また角川版ではロミとジョージの出会いのシーンを冒頭に移動し、展開を早くするため宇宙船に他の宇宙人が搭乗する場面を省き、地球に向かう途中に立ち寄る星に違うものがあったりするなど内容が異なる。また、本作は火の鳥全シリーズ中で最も手塚による加筆・修正が多い編であり、雑誌掲載版、角川書店版、朝日ソノラマ版・講談社では上記以外でも100ページ以上の変更がある。特にムーピーと人間との混血が生まれる場面はそれぞれ設定が異なる。
乱世編
  • 初出:『マンガ少年』(1978年4月号 - 1980年7月号)
西暦1172年。平安時代末期。主人公の木こりの弁太とその恋人おぶうは田舎で愛を育んでいた。しかし、弁太が薪と猪の皮を売りに京都へ行くと役人の暴行を受ける。いざこざの後、弁太は高価な櫛を拾い、おぶうへとプレゼントするが実はこれは藤原成親の櫛であった。その櫛が原因となり弁太の家は焼かれ、家族は死に、おぶうの父も殺害された。おぶうは美しかったため殺されず都へと連行される。弁太はおぶうを追って都へと出向く。
本作は源平の抗争に巻き込まれた二人のすれ違いの運命を追っていき、源平の抗争や源頼朝義経兄弟の相克には、火の鳥の争奪が関わっているという筋立て。弁慶伝説を下敷きとする。「鳳凰編」の我王も義経の師匠鞍馬天狗として登場している。英雄として名高い義経が、本作では目的の達成のためには何ものをも犠牲にして憚らぬ残虐非道な人物として描かれる。この乱世編では手塚の実の先祖でもある手塚太郎光盛が手塚の自画像と似せて登場する。
手塚により何度も描き直されており、雑誌掲載版、角川書店版、朝日ソノラマ版・講談社版では大きく内容が異なる。特筆すべき大きな変更は犬と猿のエピソードは本編の途中(天狗が死ぬ場面)に存在したが、朝日・講談社版ではラストに移動し、犬と猿が義経と清盛の転生後という設定になっている。その中では犬と猿が人間だった頃の思い出(義経と清盛だった頃)を思い出すという内容が追加された。また角川版では犬と猿のエピソードは冒頭に移動され、物語の序章として扱われている。さらに弁太が義経を丸太で顔を潰し、殺す場面は角川版では敵の弓矢で死ぬ場面に変えられている。この他、細かな変更も多い。
生命編
  • 初出:『マンガ少年』(1980年8月号 - 12月号)
2155年。主人公のテレビプロデューサー青居はクローン人間を使った殺人番組を考案する。クローンを使えば法律の抜け穴をついて合法的な殺人が行え、それを番組にすれば視聴率が取れると考えたためである。青木はクローン技術の工場があるペルーに向かうが、なんと自分自身が大量生産されてしまう。そして日本に連れて帰られた大量の青居は、皮肉なことに自分自身が企画した殺人番組の材料にされることになった。どれが本物の青居かも分からなくなり、「本物」の青居もあっさり殺される。その中で一人の青居が番組の追手から逃げ出し、逃亡中に出会った少女と生活を始める。
本作は雑誌掲載版と単行本では、手塚による修正が入っている。まずサイボーグのおばあちゃんは雑誌掲載版では本当に生きたおばあちゃんであったが、朝日・講談社版では見るからにロボットの姿へと変更された。また鳥の顔をした女性は雑誌掲載版では、本当に火の鳥の顔をしていたが、単行本版では人間と火の鳥の中間的な顔つきへと修正されている。エンディングも全く異なり、雑誌掲載版では青居はテレビ番組内で殺されるのに対して単行本版では青居はクローン人間培養工場を爆破するエピソードが追加されている。
異形編
  • 初出:『マンガ少年』(1981年1月号 - 4月号)
戦国の世室町時代)。主人公の左近介は本来は女であったが、幼少の頃より父に男として育てられた。左近介の父は応仁の乱の功績で名をあげた残虐非道の男であり、左近介は父を憎んでいた。ある日、左近介の父の鼻に「鼻癌」と思わしき症状が現れ苦しんでいたところ、それを治せるという尼「八百比丘尼」が現れた。左近介と父は、まるで老いた左近介のような八百比丘尼の姿に驚く。父に恨みを抱いていた左近介は、治療を阻止するために、寺を訪れ八百比丘尼を殺す。だが、殺害を終えた左近介は不思議な力に阻まれ、寺から出られないようになる。八百比丘尼の治療を求める近隣住民たち、さらいは人外の異形の者たちが次々と寺を訪れ、心ならずも身代わりとして左近介は治療に従事する羽目になるが、そこから恐ろしい因果応報が左近介に巡ってくる。
本作は八百比丘尼伝説を下敷きにしている。雑誌掲載版と単行本とでは結末に大きく加筆がされ、主要登場人物が最後に切られるという大事な場面は単行本で追加されたもの。その他にコマの入れ替えやページの組み換えなど細かな修正が多い。雑誌版と初期の単行本では、治療に訪れる異形の患者は宇宙人(火の鳥が他の星の生き物である事と、その理由を説明する)だが、後の版では「太陽編」へと繋げるために、治療される対象は妖怪に近いデザインに改められている。
太陽編
7世紀と21世紀(2009年)の2つの時代を交互に描いた物語。西暦663年、主人公の一人ハリマは百済の王族の血を引く存在であったが、白村江の戦いで敗れ、顔の皮を剥がされ、その上に狼の顔を被せられた。狼の皮はハリマの顔に張り付き、本来の皮膚と同化して取れなくなってしまった。ハリマが倒れているところを占い師のオババが助け、逃げるために将軍・阿部比羅夫と共に倭(日本)に渡る。ハリマは倭では犬上宿禰(いぬがみのすくね)と名乗り、狗(ク)族の少女マリモとの出会いを経て、やがて壬申の乱に巻き込まれてゆく。壬申の乱は世俗での権力闘争であると同時に、外来宗教である仏教と日本土着の神々との霊的な戦いでもあった。
一方、21世紀の日本は「火の鳥」を崇拝する宗教団体「光」一族に支配されていた。もう一人の主人公である坂東スグルは幼い頃から「光」によって地下街に荒廃した環境で生活させられ、スグルはその中の反「光」団体「シャドー」に属したテロリストとして冷酷な人殺しを繰り返していたが、ある作戦に失敗したことによって「光」のメンバーに捉えられ洗脳するための施設に入れられ、狼の頭に似た洗脳ヘルメットを被せられる生活を送ることになる、そしてかつて任務で同い年という理由から殺さなかった少女兵士・ヨドミと施設で知り合い、惹かれ合っていく。
本作はハリマがスグルになった夢を見て、スグルはハリマになった夢を見るというように交互に物語が入れ替わる。過去と未来の宗教は双方とも火の鳥自身がご神体となっている。
単行本化の際は手塚自身により未来側のストーリーが大幅に変更され、火の鳥が登場したり、猿田が罰を受ける描写などかなりのカットがなされている。雑誌掲載版では回想シーンに猿田の兄として鉄腕アトムのお茶の水博士が登場する。また、NHKのテレビアニメ版では尺の都合で大幅カットされ未来側の物語は描かれなかった。
休憩 INTERMISSION
  • 初出:『COM』(1971年11月号)
他の編と異なり手塚自身が登場するエッセイ風短編漫画。「なぜ火の鳥を描くのか」といったテーマになっている。
二種類が存在し、一つはCOMに掲載された『休憩 INTERMISSION 火の鳥 またはなぜ門や柿の木の記憶が宇宙エネルギーの進化と関係あるか』と、もう一つは1978年マンガ少年11月号に再録された『休憩 INTERMISSION 火の鳥 というタイトルでなくともよいというわけ』である。
後者は前者の「再録」という形ではあるが、前者は6ページあるのに対し、後者は3ページに削られた上、文章が全て書き換えられている。なぜ後半3ページが削除されて、文章が全て書き換えられたかは不明であるが、削られた3ページには「火の鳥の正体(火の鳥とはどういった存在か)」など核心を突く内容が描かれていた。

このほか、手塚以外の作家によって執筆された作品ではアニメ映画「火の鳥2772」をコミカライズした御厨さと美による漫画(初出:『マンガ少年』(1980年2月号 - 4月号)がある。詳細については当該項目を参照。

執筆されなかった作品

大地編(シノプシスのみ)
西暦1938年(昭和13年)の1月。日中戦争時の上海を舞台に、関東軍の戦意高揚のため、中国大陸に伝説の仙鳥の探索を計画する。シノプシスには間久部緑郎(ロック)、その弟の間久部正人、猿田博士が登場。
1989年の舞台劇『火の鳥』の原作として、上記内容で新作描き下ろしを連載をする予定だったが、よりSF的な内容にとの希望があったためペンディングとなった。『野性時代』に1989年春から掲載されるはずだったとも言われるが[11]、手塚が病に倒れたことから執筆されることはなかった。ただし、『野性時代』の編集部は『火の鳥』の続編ではなく『シュマリ』の続編を望んでいたという。シノプシスの内容はナツメ社から発売されている「火の鳥公式ガイドブック」や朝日ソノラマから出版されている「太陽編・下(B5版)」などで確認できる。文章量は原稿用紙2枚と5行の簡易的なもの。
また『野生時代』に連載予定だった大地編は日中戦争が舞台ではなく、シュマリに合わせて幕末から明治維新を舞台に構想されていた。手塚プロダクションの松谷孝征社長は「構想など手塚が残した骨子はあるので、次作が実現すれば、手塚プロ出身者など“身内”の誰かに描いてもらいたい」「舞台は幕末から明治維新。シュマリみたいな主人公が大陸に渡る話です」と語っている[12][13]。 
再生(アトム?)編(構想のみ)
  • 初出:『雑誌「COM」火の鳥黎明編第5回』(1967年5月号)、その他にも証言複数あり。
火の鳥に鉄腕アトムが登場するという構想が存在し、複数の証言が得られている。
火の鳥黎明編の雑誌掲載版では猿田彦の鼻が大きくなる所のナレーション解説が入る場面で「この物語の中では、猿田彦は、ただの防人ではあるが、お茶の水博士の先祖ということになっている」と書かれてあった。単行本では「この物語の中では、猿田彦は、ただの防人ではあるが、彼の子孫は、物語全体を通じていずれも重要な役割を持つようになるのである」に変更された。
1974年の新聞「赤旗」の1月22日のコラム中に手塚は「火の鳥は、太古から、超未来までえんえんと運ばれる叙事詩です。(中略)じつは、これはまだ先の話ですが、二十一世紀の部分のエピソードで、アトムの物語がでてきます。アトムもじつは火の鳥の一挿話だったというオチです。」と語っている[14]
また連続ラジオ小説「火の鳥 乱世編」(NHKラジオ第1放送 1980年3月21日)でもその内容が語られている[1]。本編OA後に手塚治虫自身が21世紀が舞台であるので『鉄腕アトム』の外伝を描いてみたいと構想を語っている。具体的な構想があったわけではないが、断片的なアイデアとして、「アトムはロボットであり、不死の存在と言える。その魂は、最終的には、火の鳥に救われるのではないか」と言うことと、「意識していたわけではないのだが、お茶の水博士はその容貌からして、猿田の血を引いていると思う。彼はアトムの最期を見届けることになるだろう」と語っている。(このことからアトムの最後の物語は火の鳥で語られた可能性が推測できる。)
長く手塚のチーフアシスタントを務めた福元一義によれば「(手塚治虫は)日中戦争を扱った大地編というのをやりたいと。それからアトムのオールキャストみたいな格好で火の鳥を締め括ろうというお話でした」と語る[15]
手塚治虫の息子である手塚眞はある時、火の鳥の最終話について編集者にそっと耳打ちしたという。編集者は「あれは過去、未来と話が行ったり来たりして、最後に現代に近いところで終わるんだよ。そう、アトムが誕生する頃にね。」と語ったという[16]
火の鳥が連載していたマンガ少年の編集者である松岡博治は「あの完結編の話でしょ?直接、先生から聞いていました。過去未来、過去未来、過去未来ってきてですね、2003年、アトムの誕生の年に過去と未来がクロスして完結するという。アトムも、ブラック・ジャックも、三つ目も、先生のキャラクターが何もかも出てきて・・・」と雑誌のインタビューで語る[17]
(ただし、上記の証言では再生編(仮)を火の鳥の完結と語っているが下記で解説する現代編の内容とは異なる。手塚は最終作である現代編を上記の後、死ぬ直前に描くことを生前にほのめかしていた。)
現代編(構想のみ)
  • 初出:『「火の鳥」と私』(1968年12月)、その他にも証言複数あり。
手塚治虫は雑誌「COM」以降の火の鳥の全体構成を、黎明編と未来編を発表した後、過去、未来、過去、未来、と時間を現代に収束させる予定で描いた[18]。(太陽編は2つの時代が描かれているが最終的に過去側は未来側の物語に組み込まれる)
1968年の虫プロ商事から発行された火の鳥未来編の単行本のあとがきでは手塚は次のように語っている「私は、新しいこころみとして、一本の長い物語をはじめと終わりから描き始めるという冒険をしてみたかったのです。」「最後には未来と過去の結ぶ点、つまり現代を描くことで終わるのです。それが、それまでの話の結論に結びつき、それが終わると、黎明編から長い長い一貫したドラマになるわけです。したがって、そのひとつひとつの話は、てんでんばらばらでまったく関連がないように見えますが、最後にひとつにつながってみたときに、はじめてすべての話が、じつは長い物語の一部にすぎなかったということがわかるしくみになっています[18]。」
後に『ニュータイプ100%コレクション 火の鳥』(角川書店/1986年刊行)の角川春樹との対談の中で、手塚治虫自身が「現代編」の構想を明かしている。手塚は「現代」というものの解釈を「自分の体から魂が離れる時」だとしていた(それ以降の未来がなく、そこから以前は全て過去であるため)。
そして、その時こそ「現代編」を描く時だと語った。
それを聞いた角川は手塚に対して「死ぬ時ですからね。描けませんよ(笑)」と語り、手塚は「いや、僕は描いて見せますよ」「一コマでもいいんですよね。それが一つの話になっていればいいんですから」と死ぬ直前に一コマでも物語を描くことを約束している[19]
毎日新聞デジタル(2012年07月23日)でのインタビューにおいて聖悠紀は「手塚先生は『火の鳥で、過去の話を書いたら、未来の話を書いて、次の過去の話と、だんだん時代の間隔が短くなって、最後は原稿を書いている自分の部屋で終わりたい』とおっしゃっていた」と述べている[20]
雑誌COM版の「火の鳥 休憩 INTERMISSION」の後に削られた3ページには、火の鳥はどういう存在かを語り、火の鳥の結末はいつ発表するかを語っていた。具体的には「火の鳥は生命から生命へと媒介するエネルギーのようなもの」「火の鳥の結末はぼくが死ぬ時に発表する」という内容等であった。また角川との対談で「僕の中にあるエネルギー体が"羽化"するときに現代編を描く」ということも語っている。削られた「休憩」の最後の一コマでは布団に頭から足まで包まれて横になった手塚からこの漫画を象徴する存在が手塚と重なるように描かれていた。

火の鳥「現代編」との関係は不明だが、手塚は胃癌で死ぬ直前の昏睡状態の時でも「鉛筆をくれ・・・」とうわ言を言っており[21]、手塚の死に立ち会った手塚プロの松谷孝征社長によると手塚の最後の言葉は「頼むから仕事をさせてくれ」であったという。この時、手塚が死ぬ直前に何を描こうとしていたかは不明であるが、死ぬ直前に何か描こうとしていたということに関しては火の鳥「現代編」に関係している。手塚は息子である手塚眞がペンを渡すと握りしめるという動作までは行っている。

手塚が胃癌中の病院のベッドで手がけた作品「舞台劇 火の鳥」が存在するが本作は2001年を時代背景にした作品であり、上記で語られた「大地編」「再生編(仮)」「現代編」などの内容とは異なる。偶然かどうかは不明だがこの舞台劇が公開された1989年2月8日の翌日に手塚は亡くなっている。

単行本

2012年3月現在、入手可能な単行本は以下の通り。

また2011年2月から7月にかけては、秋田書店と朝日新聞出版の共同企画で、コンビニ用のB6判コミック全7巻が発行されている。

手塚治虫はいつも単行本を出すたびに内容に手を加えており、現行の単行本でも大きく分けて3つの種類がある。朝日ソノラマ(現・朝日新聞出版)版と角川書店版と復刊ドットコム版である。講談社の漫画全集及び文庫全集は朝日ソノラマ版のバージョンである。小学館クリエイティブ社の版は角川版の内容に雑誌版の二色ページを再現、扉絵を収録したもの。

手塚による加筆・修正の順番は、『雑誌掲載版』→『朝日ソノラマ版』→『角川書店版』 である。それぞれ編によってはストーリーが大きく違うものもある。『復刊ドットコム版』は手塚が手を加えてない雑誌連載時の状態がそのままが読める単行本である[22]。(しかし、単行本時に直された設定ミスや絵の描き間違えもそのまま収録されている)

火の鳥で描かれる歴史上・神話上の人物・出来事

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その他・余談

  • テレビアニメふしぎなメルモ』に登場するミラクルキャンディーは第1話で描かれる製造過程によると原料は火の鳥の卵である。エンディング場面では毎回火の鳥の卵からキャンディーが作られる工程が放送された。
  • 漫画『ブラック・ジャック』の「不死鳥」回は火の鳥にまつわる話である。しかし何故か手塚自身がこの作品を封印していたこともあり手塚の存命時には単行本に収録されなかった。
  • テレビアニメ『アストロボーイ・鉄腕アトム』(2003-2004年)に手塚作品のスター・システムの一環でゲストキャラクターとして登場、声優はNHKのTVアニメ版と同じ竹下景子。
  • 「火の鳥2772」は手塚治虫漫画全集で手塚自身が描き下ろしで再漫画化する予定もあったが、実現しなかった。
  • 手塚の死後に作られたオリジナルストーリーでは二階堂黎人による小説『火の鳥アトム編』、創作舞踊劇『火の鳥 転生編』、プラネタリウム用アニメ映画『火の鳥-絆編-』、音楽劇『NINAGAWA火の鳥』、宝塚歌劇花組公演『火の鳥』、短編アニメ『火の鳥アースキーパーズ編』など様々なものが作られている。
  • 鈴木英史による吹奏楽曲「鳳凰〜仁愛鳥譜」は、鈴木のお気に入りである「未来編」のイメージで作曲されたものである。
  • イギリスアンビエントテクノバンドシステム7が、シングル「Hinotori」を含むアルバム『Phoenix』を2007年に発表。これは、手塚治虫の長女・手塚るみ子の呼びかけによるもの。『火の鳥』の内容に触発されて制作された。
  • 火の鳥は阪神・淡路大震災復興活動のシンボルマークとして使われていた。これは悦子夫人が兵庫県に「火の鳥」のイラスト使用権を10年間無償提供した事による。
  • 2010年8月6日に全国農業協同組合中央会は、2010年日本における口蹄疫の流行で被害を受けた畜産農家の復興支援を目的に、火の鳥をデザインしたマークを作成している[23]
  • バレーボール全日本女子チームの愛称は「火の鳥NIPPON」であり、ロゴ等のデザインは手塚プロダクションが担当している[24][25]
  • 火の鳥の実写映画は本来はアニメとの二部構成であった。シナリオまで作られていたが未制作に終わった。内容は火の鳥の世界の結末の一つが描かれている。(シナリオの内容は後述
  • 手塚生前時における掲載誌は廃刊・休刊する事が多く、陰ながら「本作が掲載されると廃刊になる」などと囁かれた[26]。ただし、これは実際には火の鳥のせいではなく、火の鳥が月刊誌のみに連載していたことが原因である。火の鳥は1950年代から連載してきたが、週刊漫画雑誌が登場し主流になり、1950年代からある月刊漫画誌が全て廃刊していったため。また火の鳥太陽編が連載していた「野性時代」はまだ存在するのでこの噂は間違っている。
  • 元手塚のアシスタントの石坂啓は乱世編で見開きで村祭りのシーンがあった時に、それが最後まで仕上げられていなかったので、「これは時間がかかるから、後でアシスタントにやらせるのだろう」とアシスタント全員で思っていたら、手塚治虫が下描き無しで、踊る村人たちを全部書き始めたが、火を囲んでいる大勢の人の輪と、一人ひとりの影をちゃんと角度を変えて驚異的な速さで仕上げたので、みんな「まるで魔法を見ているようだった」と語った。
  • 本作品をオマージュした(影響を受けた)作品は少なくない。
  • 旧ソ連の映画「せむしの仔馬」には火の鳥が登場し、これは手塚治虫が漫画「火の鳥」を描くきっかけとの一つとなった。手塚が胃癌の最中に病院のベットで手がけたアニメに「青いブリンク」があるがこれは「せむしの仔馬」の手塚風のリメイク作品である。「青いブリンク」はアニメでの手塚の遺作の一つになった。
  • 手塚治虫がまだ漫画家になるか医者になるか迷っていた時に、母親とアニメーション映画を見に行き、開演までの時間にロビーの椅子で母親に相談すると「好きな方を択ぶように」と言われ漫画家になった。その時のアニメーションが「せむしの仔馬」である[28]

他のメディア

一連の作品の一部はラジオドラマ化、アニメ化、テレビゲーム化、または実写映画化された。

ラジオ

作詞 - 長坂秀佳 / 作曲・歌 - ささきいさお / 編曲 - 高田弘

テレビアニメ

2004年に手塚プロダクション制作、NHK-BSハイビジョン総合テレビ)にて本放送された。火の鳥を演じた竹下景子はアニメ映画「火の鳥2772 愛のコスモゾーン」以来24年ぶりの火の鳥での出演である。

放送エピソードは「黎明編」・「復活編」・「異形編」・「太陽編」・「未来編」。内容は大幅に短縮・改編されて編によってはほぼ別物語に近いものもある。また父子関係を重視した内容になっている。

ハイビジョン制作、5.1chサラウンド音声作品。

NHKでは様々なチャンネルで何度も放送されている。

  • BSハイビジョン
    • 2004年3月に先行放送開始。同年4月より毎週金曜19時30分からレギュラー放送。
    • 2005年元旦に全編再放送。
    • 2009年3月31日より「ハイビジョン アニメシリーズ」枠内にて毎週火曜19時25分から放送。
  • 総合テレビジョン

声の出演

  • 火の鳥 - 竹下景子
  • ナレーション - 久米明

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スタッフ

主題歌

オープニングテーマ「火の鳥」
作曲 - 内池秀和 / 編曲 - 野見祐二 / 演奏 - チェコ・フィルハーモニー管弦楽団チェン・ミン諫山実生
オーケストラによる演奏。諫山実生によるコーラスがあるが、歌詞はない。
エンディングテーマ「火の鳥
作詞 - 湯川れい子 / 作曲 - 内池秀和 / 編曲 - 冨田恵一 / 歌 - 中島美嘉
エンディングの映像は宇宙空間をバックに、きらめく火の鳥を映したものとなっている。

各話リスト

話数 放送日 サブタイトル 脚本 絵コンテ 演出 作画監督 美術監督
第1話 2004年
4月4日
黎明編 その一 五武冬史 寺田和男 吉村文宏 杉野昭夫 河野次郎
第2話 4月11日 黎明編 その二 吉村文宏 津田義三 杉野昭夫
高橋直樹
第3話 4月18日 黎明編 その三 竹内啓雄 杉野昭夫 河野次郎
安原稔
第4話 4月25日 黎明編 その四 青山弘 杉野昭夫
垪和等
大下久馬
河野次郎
第5話 5月2日 復活編 その一 長谷川圭一 波多正美 吉村文宏 内田裕 斉藤雅巳
第6話 5月9日 復活編 その二 鈴木卓夫 萩原露光 内田裕
渡辺章
第7話 5月16日 異形編 杉井ギサブロー 大下久馬
水野健太郎
大下久馬 河野次郎
第8話 5月23日 太陽編 その一 野崎透 竹内啓雄 伊藤幸松 西田正義
清水恵蔵
柴田正人
第9話 5月30日 太陽編 その二 桑原智 西田正義
第10話 6月6日 太陽編 その三 竹内啓雄 西田正義
瀬谷新二
第11話 6月13日 太陽編 その四 西田正義
第12話 6月20日 未来編 その一 小林弘利 吉村文宏 杉野昭夫 西田稔
第13話 6月27日 未来編 その二 波多正美 鈴木卓夫

実写映画

テンプレート:Infobox Film火の鳥』(ひのとり)は1978年8月19日(1978年8月12日には、有楽座にて先行公開)に公開された日本特撮アニメ映画。製作は東宝・火の鳥プロダクション。配給は東宝イーストマンカラービスタビジョン。上映時間は137分。第1部である黎明編(月刊COM版)を映画化。

劇場映画での主演歴(トップクレジットに限定しても)を持つ出演者12人、世界的知名度の高いメンバーを結集したスタッフ陣と超豪華な顔ぶれで話題を集めたが、興行成績は都市部ロードショーの盛況に反し地方興行が惨敗。トータルの配給収入7億は2010年代の興行収入に換算すれば二十数億に相当する中ヒットといったところだったが、製作費の高さに見合わず、フルアニメーションで制作予定だった(出足好調だったことから一部では決定と報じられた)続編『宇宙編』は断念された。尾美としのりのデビュー作であり、表記は「尾美トシノリ」としている。

ピンク・レディーを踊る狼、瞳の中に燃えあがる怒りの炎といった遊びの過ぎたアニメ合成が多く、「壮大なテーマが結実しないうちに映画がさっさと出来上がってしまった印象」(佐藤忠男)など批評も芳しくなかった。市川監督自身も同年にNHKラジオ番組「日曜喫茶室」で、「ラッシュを見て、こんな映画を撮った監督はどこのどいつだと思った」と冗談まじりに失敗作を示唆している。

現在のところ本作の映像ソフトは発売されていない。東宝特撮封印作品を販売するドラマCD発売会社グリフォンは『ノストラダムスの大予言』と『獣人雪男』のドラマCDの広告の下に東宝特撮封印作品ドラマCDシリーズ第2弾として、『緯度0大作戦』と本作のドラマCDの発売が予告されていたが[29]、実現のしないまま未発売に終わった。ただし、CSでの放送は行われている。

元々、本作は初期構想では実写「第1部」と、フルアニメーション「第2部」の二部構成であった[30]。この「第2部」はシナリオまで出来上がっていたが、第一部がアニメを取り入れた実写作品となり、「第2部」のシナリオはお蔵入りされることになった。

キャッチコピーは、はばたけ! 永遠の鳥よ 燃える炎の中に愛の宇宙が見えるまで

キャスト

スタッフ(実写映画)

アニメ映画

火の鳥・第2部(未制作)

前述の実写映画「火の鳥」は本来は二部構成であった。しかし、実写版は独立した作品となり、本作はシナリオが作成されていたにも関わらず制作には移らなかった[31]。結果的に本作の計画は「火の鳥2772 愛のコスモゾーン」の作成へと繋がった。本作は火の鳥の世界の結末の一つが描かれており、実写「第1部」と作品が輪廻する予定であった。(第1部で始まりを見せて、第2部で終わりを見せ、終わりは始まりに繋がる予定だった。) 現在、この火の鳥(第2部)の内容は河出書房新社の「手塚治虫絵コンテ大全⑥ 火の鳥2772」で読むことができる。内容は「未来編」「宇宙編」「復活編」「望郷編」を総括したような作品になっている。

あらすじ

西暦23xx年。人類はスペース・リープ航法という手段を発明し、自由に宇宙を移動していた。 主人公の名前は牧村壮吾、二十九歳、一流の宇宙ハンター。牧村は試験管で生まれた人物であり、家族はオルガと呼ばれるロボットしかいなかった。牧村にとってオルガはアシスタントであり、妻であり、娘であり、かけがえのない存在であった。ある日、牧村は地球連邦移民局の局長であるロック長官に呼ばれる。そこで永遠の命を持つ「火の鳥」という生物を捕獲することを命じられた。牧村はレオーナとチヒロという二人の男女と出会い、一緒に旅に出ることになった。レオーナとチヒロは旅の途中で「エデン17」という惑星に降り立ち、仲間から外れる。牧村はレオーナから火の鳥が住んでいる惑星に付いて聞き出し、そこへ向かった。その惑星は鳥人が人間のように生活している惑星であった。牧村は火の鳥の情報を聞き出すためにポポヨラという鳥人の娘と接触した。ある日、オルガが突然ポポヨラこそが火の鳥であると語りだす。牧村はそれを知り、ポポヨラと戦い、正体を表した火の鳥から血を貰う。牧村は地球に帰ろうとするが、地球の周辺まで近づくと地球から攻撃を受けるようになった。それは地球の人口増加、食糧危機、宇宙民の反乱などを防ぐために宇宙民を地球に入れないとするロックの判断であった。宇宙民は移民連合を組み、地球と対抗する突撃隊を組織した。牧村は移民の中でレオーナとチヒロの娘である「ロミ」を見つける。ロミは両親であるレオーナとチヒロを亡くし、15歳になり、美しい地球に憧れるようになり移民連合に参加した。牧村はそんなロミに恋をするようになった。牧村は愛するロミのためにロックと戦うことを決意する。移民連合で沢山の人間が亡くなったが、牧村達は地球へと潜り込むことができた。牧村とロミとオルガは荒れ地に巨大なドームのような建物を発見する。その建物には「猿田彦」という博士が住んでおり、そのドームには世界中の動物・植物が冷凍保存され集められていた。その時、地球は連鎖爆発を起こし、滅びてしまう。猿田博士も死に、オルガも牧村をかばって破壊。地球上で生き残ったのは牧村とロミだけであった。そして二人は・・・。

スタッフ(予定されていた内容)
  • 制作、総指揮、監督 - 手塚治虫
  • 監修 - 市川崑
  • 脚本 - 手塚治虫、谷川俊太郎

1時間45分-2時間

火の鳥2772 愛のコスモゾーン

1980年公開の映画作品。手塚治虫が原案・構成・総監督を務めた。

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火の鳥 鳳凰編

テンプレート:Infobox Film 1986年公開。同時上映は『時空の旅人』。

OVA

プラネタリウム用アニメーション映画

テンプレート:Infobox Film火の鳥 -絆編-』(ひのとりきずなへん)は2012年に公開されたプラネタリウム専用アニメーション映画である。秋田県能代市・能代市子ども館 、宮城県大崎市パレットおおさき(大崎生涯学習センター)、茨城県つくば市つくばエキスポセンターで上映[32]

主人公の平凡な地球人の少年カイは、宇宙へ飛びだったまま連絡が途絶えた父の帰りをずっと待っていた。しかし、父は10年経っても帰ってこなかった。ある日、そんなカイの前に炎に包まれた不思議な鳥が現れる。カイはその鳥と宇宙へと旅立つ。そしてカイは父の愛を知る。

舞台

小説

  • 角川書店『火の鳥〈鳳凰編〉』(1986年、著者:山崎 晴哉)
  • 角川書店『火の鳥〈乱世編 上〉大魔王之巻』(1986年、著者:山崎 晴哉)
  • 角川書店『火の鳥〈乱世編 下〉美麗悪魔之巻 』(1987年、著者:山崎 晴哉)
  • 角川書店『火の鳥〈黎明編〉卑弥呼・群狼之巻』(1987年、著者:山崎 晴哉)
  • 講談社『火の鳥2772 (マガジン・ノベルス・スペシャル)』(1995年、著者:並木 敏)
  • ポプラ社『小説 火の鳥 黎明編 (小説火の鳥 1)』(2006年、著者: 大林 憲司)
  • ポプラ社『小説 火の鳥 ヤマト編 (小説火の鳥 2)』(2007年、著者: 大林 憲司)
  • ポプラ社『小説 火の鳥 鳳凰編 (小説火の鳥 3)』(2008年、著者: 大林 憲司)
  • 『火の鳥アトム編』
    • 二階堂黎人により『SF Japan VOL.3 冬季号 手塚治虫スペシャル (2001年 徳間書店)』の中にて書きおろし。文庫『手塚治虫COVER タナトス篇(2003年 徳間書店)』にも収録。

TVゲーム

2作品とも、アニメ映画「火の鳥 鳳凰編」とのメディアミックス作品。パッケージやマニュアルの表紙に映画のイメージ画像が使われているほか、手塚治虫のほか映画の製作元である角川書店がクレジット表記されている。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

外部リンク

テンプレート:前後番組

テンプレート:手塚治虫 テンプレート:市川崑 テンプレート:りんたろう監督作品 テンプレート:川尻善昭監督作品

テンプレート:講談社出版文化賞児童まんが部門
  1. 雑誌「マンガ少年」連載時の望郷編の扉絵には既に『手塚治虫のライフワーク』と銘打たれていた。
  2. 2.0 2.1 角川書店ニュータイプ100%コレクション 火の鳥 1986年刊行
  3. 株式会社金の星社「手塚治虫物語―アニメの夢1960~1989 」2009年、P.156
  4. 手塚治虫公式サイト 年譜1980年代
  5. 1989年の2月8日報知新聞 1989年2月10日「ミュージカル火の鳥追悼公演」
  6. COM名作コミックス「火の鳥 未来編」1968年
  7. 7.0 7.1 『未来編』では25世紀を頂点に人類文明は衰退したと解説されるが、『復活編』では科学技術は進んだ事が記述される。例えば復活編においては、技術の発達によってより精巧なロボットが制作された事が記述される(それでも旧式なロボットであるロビタが普及したとされる)。また放射線に冒された子供を、医師が「30世紀の医療技術をもってしても治療不可能」と説明するくだりがあり「25世紀より退歩しているから」という言及は無い。なお未来編においても、25世紀以降の衰退は、民衆が古いものを懐かしがったとされており、決して科学技術が退歩したとは記述されていないので、一応は矛盾はしていない。 引用エラー: 無効な <ref> タグ; name ".E7.99.BA.E5.B1.95"が異なる内容で複数回定義されています
  8. マンガ作品紹介 火の鳥望郷編 手塚治虫ワールド
  9. 中野晴行『そうだったのか手塚治虫』祥伝社、2005年、p169
  10. マンガ作品紹介 火の鳥望郷編 手塚治虫ワールド
  11. 中野晴行『そうだったのか手塚治虫』祥伝社、2005年、p176
  12. デイリースポーツ「手塚治虫さん原画展、仏で初開催」(2014年1月28日)
  13. サンスポ「パリ初!手塚治虫さん原画展、松谷社長「火の鳥」続編に意欲」(2014年1月28日)
  14. 手塚治虫『ぼくのマンガ道』新日本出版社 2008年 P.48
  15. 文藝別冊「総特集 手塚治虫」河出書房新社1999年 P.123 
  16. 手塚眞『「父」手塚治虫の素顔』誠文堂新光社 2009年 P.43 
  17. 小学館「神様の伴走者 手塚番13+2」2010年。P.210
  18. 18.0 18.1 「『火の鳥』と私」1968年12月20日発行 火の鳥未来編巻末より
  19. 角川書店ニュータイプ100%コレクション 火の鳥 1986年刊行 P.67
  20. 毎日新聞デジタル「超人ロック : 誕生から半世紀 聖悠紀が語る“長寿”の理由」(2012年7月23日)
  21. 手塚眞「わが父 手塚治虫」朝日ジャーナル臨時増刊1989年4月20日号『手塚治虫の世界』所収
  22. 手塚治虫文庫全集 『火の鳥』 11巻 「火の鳥」解説、2012年、p404 - p405
  23. 宮崎口蹄疫復興“火の鳥”マークを作成 JA、手塚プロがタッグテンプレート:リンク切れサンケイビズ 2010年8月6日
  24. 全日本女子チームの愛称決定テンプレート:リンク切れ 日本バレーボール協会プレスリリース 2009年5月18日閲覧
  25. 火の鳥NIPPONテンプレート:リンク切れ 日本バレーボール協会プレスリリース
  26. 矢口高雄「愛蔵版 マタギ」(1990年 中央公論社)前文『「マタギ」の思い出』より。表題作が掲載誌を変えて書き継がれたことを、「火の鳥」と出版業界事情を引き合いに出して説明している。
  27. 手塚治虫と藤木稟の作品を比較するサイト
  28. 角川文庫「火の鳥13 ギリシャ・ローマ編」 あとがきの手塚治虫の妹である宇都美美奈子の寄稿より
  29. テンプレート:Cite book
  30. 1999年「手塚治虫絵コンテ大全⑥ 火の鳥2772」河出書房新社 P713
  31. 1999年「手塚治虫絵コンテ大全⑥ 火の鳥2772」河出書房新社 P711
  32. 虫ん坊「火の鳥絆編 河口俊夫監督インタビュー」(2012年8月号)
  33. 同劇団の代表 高平和子と秋田文庫版の手塚治虫作品集の表紙イラストを手掛けたイラストレーターの西口司郎は夫婦であり、生前に豪華版単行本のイラストを手掛けた事から手塚とも交流があった。