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[[ファイル:Quebrada de Cafayate, Salta (Argentina).jpg|right|300px|thumb|[[アルゼンチン]] [[サルタ州]] サンカルロスに見られる地層]] [[ファイル:Carpathian flysch cm04.jpg|right|300px|thumb|[[ポーランド]]南東部の[[カルパティア山脈]]に見られる地層]] '''地層'''(ちそう)とは、[[粘土]]、[[砂]]、[[礫]]等の砕屑物や[[火山礫]]、[[火山灰]]等の[[火山砕屑物]]、生物[[遺骸]]などが、[[水]]や[[風]]の力により運搬され、[[堆積]]してできた堆積物ないし堆積岩の内、垂直方向に比して水平方向の広がりが十分に広い(層状に分布している)ものの総称である。 == 地層の形成と地層に見られる構造 == 地層は、その成因から水成層と風成層に区分される。以下に挙げるのは、水成層の形成過程である。 [[地球]]上には、水中や[[窪地]]などの環境がある。そのような所に、他の場所から[[侵食]]されてきた岩石や土砂が、降り積もったり、水によって[[運搬]]されてきたりして、[[堆積物]]が溜まっていく。これが層になり、地層が形成される。 地層は一般的に、水中のほぼ[[水平]]な面の上に、一定の厚さで溜まっていく。比較的均質な構成物からなる1枚の地層を'''単層'''と呼び、単層と単層の間の境界面を'''層理面'''という。普通、地層は地面の中に隠れており見ることはできないが、何らかの原因で地面の断面が見えるようなところでは、地層が観察できる。これを'''[[露頭]]'''という。典型的な露頭は、[[崖]]や、道路脇の地面が削り取られたところ、[[採石場]]、川岸の[[土手]]などで、粒径や構成物が異なった層からなる[[平行]]な帯のひとつとして観察することができる。[[グランドキャニオン]]のような大[[渓谷]]では、数億年に渡る期間の地層が観察できることもある。それぞれの単層の厚さは、1 mmにも満たないものから、1 kmを越えるものまで様々な場合がある。 それぞれの地層から、その層が堆積した[[環境]]を推定できる。水成堆積物では[[河口]]に近い位置で堆積したものほど粒度が荒い[[砂]]、離れるに従い細かくなり、[[シルト]]、[[粘土]]となる。地層を構成するものが[[生物]]である場合もあり、泥炭地で植物が堆積した[[石炭]]や深海で微生物が堆積した[[チャート (岩石)|チャート]]などがある。現在見つかっている最古の地層は、[[グリーンランド]]にある約40億年前の地層で、海底で作られたものと考えられている。 地層は、堆積する速度に変化はあるものの、おおむね連続して堆積している。これを'''整合'''と呼ぶ。これに対し、地層と地層の境界に非常に長い不連続があり、侵食により一部の地層が欠落しているものを'''不整合'''という。堆積が止まっている間に、地層が侵食されたり、傾いたり、褶曲したりといった変動があることも多い。そのようなところに、再び水平に地層が堆積したりする。下の地層と上の地層が平行なものを'''平行不整合'''と呼び、上の地層と下の地層が傾いていたり、下の地層が褶曲したりしているものを'''傾斜不整合'''と呼ぶ。また、下の地層が[[火成岩]]からなる場合は、'''非整合'''と呼ぶこともある。地層の欠落を伴わず、不連続の時間が非常に短い場合、'''時間間隙'''と呼んで不整合と区別することもある。不整合は、陸上でも海底でもつくられるが、いずれの場合も、岩石や土砂が堆積するような環境だった地域が、浸食される環境へ変化し、再び堆積する環境に戻ったことを示している。不整合面のすぐ上には、比較的大きな粒の礫が堆積していることが多く、'''[[基底礫岩]]'''と呼ばれる。これは、侵食された下部の地層の岩石から供給された礫である場合がある。 地層に見られる特徴的な'''堆積構造'''として、以下のものがある。 ; 斜交層理(斜交葉理、クロスラミナ、[[:w:Cross-bedding|cross-bedding]]) : 水流や風の速さ、向きが変化する環境で堆積が起こったときにできる、層理面と斜交した細かな縞模様である。当時の水流などの方向が推定できる。 ; 級化成層(級化層理、級化構造、[[:w:Graded bedding|graded bedding]]) : 構成粒子が、下部が粗粒で、上部に向かうにつれて連続的に細粒へと変化している単層のことである。時間とともに粒子を運搬する水流が弱まった場合や、乱泥流によって運ばれた粒子が堆積した場合に生じる。粗粒のほうが堆積した時点での下部だと分かるため、もともとの地層の上下方向を決めるのに役立つ。 ; [[漣痕]](砂紋、リップルマーク、ripple mark) : 水底に[[波]]が形成した模様が残ったものである。堆積した当時の上方に尖った形で残るため、上下判定に役立つ。 ; スランプ構造(スランピング、slumping structure) : 海底などに堆積した堆積物が、固化していないうちに海底などの斜面を滑り落ち、不規則に乱堆積してできたものをいう。 ; 火炎構造(フレーム構造、flame structure) : 泥質堆積物が固結していないうちに上に砂質堆積物が堆積し、その重みで上位の砂が沈み込んで下位の泥が上昇したために、層理面が炎のように不規則な形になったものをいう。 ; [[底痕]](ソールマーク、sole mark) : 堆積粒子や水流そのものにより堆積物表面につけられた溝が、その上に堆積した砂礫によって充填されたもの。特に[[タービダイト]]のように泥層上に砂礫が堆積する際に形成されたものは、露頭では差別侵食のために観察しやすく、古流向を知る手がかりとして役立つ。 ; 化石層(fossil bed) : 水流などにより、化石が掃き寄せられて密集したものをいう。貝殻はよく化石層を形成している。 ; 砂管(サンドパイプ、sand pipe) : 海底の砂の中に生息していた動物が作った巣穴の跡である。巣穴の最上部は当時の海底で、巣が掘られている方向が当時の下だと推定できる。 地層は、[[地殻変動]]などがあると傾くことがある。地層が傾いている場合、層理面と水平線の交線の方向を'''走向'''、層理面と水平面のなす角を'''傾斜'''と呼び、この2つを使って、傾いた地層の方位を表す。走行・傾斜は、[[断層]]や、[[不整合面]]など、地質学で扱われる様々な面の方向を表すのにも用いられる。 地層に大きな力がかかったりすると、地層が曲がってしまうことがある。これを'''[[褶曲]]'''と呼ぶ。上に凸の部分を[[背斜]]、下に凸の部分を[[向斜]]と呼ぶ。また、曲がらずに、ある平面を境にしてずれることもある。これを'''[[断層]]'''と呼ぶ。地層が激しく褶曲した場合でも、地層が低角度の断層を伴ってずれ、ちぎれることがある。[[石油]]は、地層が背斜構造を示し[[ロックキャップ]]となっている部分に溜まっていることが多い。 地層の中には、過去に地層を切って貫入したマグマが固結して残っていることがあり、'''[[岩脈]]'''と呼ばれる。岩脈は、過去のマグマが通った火道である。一般に、かなりの急傾斜であることが多い。また、過去に地上にマグマをもたらした火道が層状に残っている場合があり、'''[[岩床]]'''と呼ばれる。一般に、岩脈ほど傾斜はきつくない。また、[[花崗岩]]質岩石の作る大規模な岩体で、露出面積が100 km<sup>2</sup>以上のものを'''[[底盤]]'''('''バソリス''')と呼ぶ。 == 地層の形成年代の推定 == 地層は、堆積したままの状態であれば、下にあるものほど古く、上にあるものほど新しい。これを[[地層累重の法則]]と呼ぶ。これは、[[1669年]]に、[[ニコラウス・ステノ]]が初めて提唱し、[[1791年]]に、[[ウィリアム・スミス (地質学者)|ウィリアム・スミス]]によって確立された法則である。しかし、地層が垂直に近いほど傾いていたり、褶曲などによって上下がひっくり返っていたりすると、どちらが元々の上下かわからなくなってしまい、法則を使うことができない。その場合、級化成層や斜交層理といった堆積構造や、砂管のような化石証拠を使って上下判定を行う。 また、同時期に堆積した地層は、その堆積した地質時代に特有の[[化石]]を含むことから、上下の地層と区分され、かつ離れた地域に位置する露頭間で同一の地層の識別や対比が可能となる。これを化石による[[地層同定の法則]]といい、[[1816年]]、[[ウィリアム・スミス (地質学者)|ウィリアム・スミス]]によって確立された。この法則と[[地層累重の法則]]を組み合わせることで、地層に化石による層序(生層序)に基づいた相対的な時間尺度が与えられる。 ある地層がいつ形成されたのかを知りたい場合、生息した地代が分かっている生物の[[化石]]([[示準化石]])や、噴出時期が分かっている[[火山灰]]の層などが利用される。このように、同時代に形成されたことを示す地層を'''[[鍵層]]'''と呼ぶ。また、地層は堆積するときは水平であること、地層累重の法則などから、地層がいつ堆積したか、侵食されたり、傾いたり、褶曲したり、断層ができたり、溶岩が貫入したのはいつかなどということを推定することができる。 == 地層の分類 == [[地質学者]]は、堆積岩や火成岩等の岩石、砂礫等の堆積物とそれら岩相による層区分について研究・討議を重ね、地層命名についての指針を策定し、現在、地層名については、この指針に従って命名、分類されている。 それによれば、まず、別々の地層は、'''累層'''(あるいは'''層''')と呼ばれ、これが地層分類の基本単元となる。層の固有名については、それぞれの層が広く露出していて研究に役立った地域(模式地)の地名から名前がとられ、「〜層」と名づけられる。例えば、[[カンブリア紀]]の生物化石が多数良好な状態で保存されていることで有名な[[バージェス頁岩]]は、暗い色で厚く、[[化石]]を産出する地層が、[[カナダ]]の[[ロッキー山脈]]にある、バージェス峠のそばで露出していたことから命名された。 ある層の中で岩相がわずかに違う場合、それらは'''部層'''に分けることができ、さらに最小単元となる'''単層'''、'''流堆積物'''などに細分されることもある。逆にいくつかの累層をまとめて'''層群'''と呼ぶことが多く、より大きくまとめて'''超層群'''などと言うこともある。これらを最小単元から順に並べると以下のようになる。ただし、最初の3つはどれも単層であるが、溶岩流の層や流堆積物の層は顕著な特徴をもつため特に分けて名づけられることがある。 *単層(Bed):地層としてはそれ以上区分できない最小単元。 *[[溶岩]](Lava):溶岩流などの単層(最小単元)。 *流堆積物(Flow Deposit):[[火砕流]]などの堆積物による単層(最小単元)。 *部層(Member):層をやや細分したもの。 *層(Formation):地層の基本単元。累層とも言う。 *亜層群(Subgroup):層群をいくつかの部分に分ける場合に使う。 *層群(Group):複数の層を含むまとまり。 *超層群(Supergroup):複数の層群を含むまとまり。 岩相ではなく、[[地質年代]]で層序を区分する場合は、地質年代により、地名ないし地質年代区分名の後に〜界、〜系、〜統、〜階とつけて区分する(例:新生界、新第三系、中新統)。 == 地層の調査に使われる道具 == 地層の岩相を確認するために、まず露頭においては、構成する堆積物、堆積岩の風化を受けていない新鮮な面をハンマー等で明確にし、肉眼で観察を行う。場合によっては、標本を採取し、顕微鏡観察や、化学分析も行う。化石が含まれている場合は、化石の同定も行う。 地層の空間的な広がりを調べるには、露頭において地層の走向(面の向いている方向)と傾斜(面の鉛直方向の傾き)を調べる必要がある。このためには、特殊な目盛のついた[[磁針]]と、[[水準器]]によって構成された[[クリノメーター]]と呼ばれる道具が使われる。 これらの情報を元に、岩石の分布や[[地質構造]]などを地形図上に表したものが[[地質図]]である。地質図を作成すると同時に、地下における岩石の分布や地質構造を(通常は鉛直断面で)表した[[地質断面図]]や、ある地点ないし全体を総括して地層の厚さや種類、特徴などを柱状に表したもの[[地質柱状図]]も作成されることも多い。 == 関連項目 == * [[露頭]] * [[地質]] * [[断層]]、[[褶曲]] * [[堆積]]、[[堆積物]]、[[堆積岩]] * [[火成岩]] * [[ボーリング]] * [[流れ盤]] == 参考文献 == * [[菅野三郎]]監修、[[奥村清]]編 『地学の調べ方』 [[コロナ社 (出版社)|コロナ社]]〈地学のガイドシリーズ0〉、1978年、ISBN 4-339-07500-0。 * [[天野一男]]・[[秋山雅彦]] 『フィールドジオロジー入門』 日本地質学会フィールドジオロジー刊行委員会編、[[共立出版]]〈フィールドジオロジー1〉、2004年、ISBN 4-320-04681-1。 *砕屑性堆積物研究会編 『堆積物の研究法-礫岩・砂岩・泥岩』 [[地学団体研究会]]<地学双書>、1983年 == 外部リンク == *[http://www.geosociety.jp/ 日本地質学会] -「普及・教育活動」の「地層命名指針」が参考になる。 *[http://www.gsj.jp/geomap/ 地質図のホームページ] - 地質調査総合センター {{DEFAULTSORT:ちそう}} [[Category:層序学]] [[Category:年代測定]] [[Category:地質調査]] [[nl:Bedding]] [[uk:Надра]]
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