プライズゲーム
プライズゲームとは、プライズ(景品)を獲得することを目的としたアーケードゲーム機のこと。
目次
概説
プライズゲームは1960年代から様々な形態のものが存在していたが、1980年代後半に登場したセガの「UFOキャッチャー」の景品としてぬいぐるみが多く使われるようになってからブームとなり、ゲームセンターの収益源として重要な一ジャンルとなった。
なお、プリント倶楽部やカプセルトイ(ガシャポン、ガシャガシャ)、甲虫王者ムシキング等のように、必ず商品が出て来るものは、プライズゲームではなく自動販売機と定義される。
分類
タイプとしては、おおよそ次のようなものがある。
- 景品を直接つかんだり、引っ掛けたりするタイプ。
- クレーンゲーム - セガの「UFOキャッチャー」に代表されるタイプのもので、ゲーム機内に設置された景品を狙って、二軸のクレーンを落しどころまで動かし、景品を爪でつかみ上げて、出口の穴まで持っていって穴に落とすと景品がもらえるもの。1960年代から存在し、広く設置されている。
- プッシャーゲーム - ナムコの「スウィートランド」に代表されるタイプのもので、回転するフィールド上の景品をバケットですくい取って雛壇状のテーブルに落とし、テーブルの動作によってダクトヘ押し出されて落下した景品がもらえるもの。構造上、飴などの菓子類やアクセサリーなどの小さめの景品しか扱えないが、景品が落下する際にスイッチを作動させると別の抽選機構が働いて、当選すると大型の景品が獲得できるものもある。
- その他、景品を掴んで手前に引き出すもの(バンプレスト「コンビニキャッチャー」シリーズ)、回転している盤の上の景品を押してダクトに落とすもの(大平技研工業「ヘキサシリーズ」)、景品が下がっているひもを引っ掛け下に落とすもの、釣り針のような形で釣り上げるものなど。
- ルーレットなどの目押し型・点数加算型 - ルーレットの点数が一定点数以上になると、景品が載せられたトレイがら景品がダクトに落とされるもの。「ガチャ王」や「キャラクターコレクション」、「ファンシーリフター」シリーズが代表格。
- アクションゲームやシミュレーションゲーム、シューティングゲームの得点によって景品が払い出されるもの。ただし、現在はビデオゲームに景品払い出し機能をつけることが禁止されており、構造上の制約が多く、また景品の見栄えが悪くなるため、近年ではこのタイプのゲーム機はほとんどリリースされていない。
このうち、2004年以降のゲームセンター業界のガイドライン(自主規制)で問題なく製造・運用が可能なのは1の「景品を直接獲得する」タイプのみであり、抽選機構などを設けることは出来なくなっている。
ルーレットなどの目押し型・点数加算型について
物理的に直接景品を狙わない「目押し型・点数加算型」では、ルーレットの回転などがあたかもプレイヤーがストップボタンを押すタイミングで動作しているように思われがちだが、パチスロ同様に本体内部にコンピュータによる投入金額に応じた「確率変動処理」機能が施されており、投入金額の累計が設置者の設定した金額(インカム)に達しなければ単純なタイミングだけで景品獲得は出来ないようにコントロールされている。
このギミックそのものが2000年代以降の業界での自主規制から逸脱しているが、「ファンシーリフター」でテーマパークなどのチケット現物や、ゲーム機・iPodの本体(箱)など高額商品が景品としてトレイに載せられたり、媒体の横に景品が中身として入っている透明のロッカーを設置して、ゲーム上ではロッカーを開けるための鍵を景品としているコーボーの「ミラクルPush LockOn」という機種がある。「ミラクルPush LockOn」は景品(鍵)をダクトに落下させる「的」をプッシャー棒の上下左右操作で狙う形態であるが、インカムに達しないと的当てが正確であっても微妙に外れてしまうように設計されている。
これらの機種はシングルロケに設置されていることが多く、景品も後述のガイドラインを逸脱しているものが使用される傾向にある。
主要ゲーム機一覧
セガ
- UFOキャッチャーシリーズ
- UFOプッシャー
- UFOあらかると
- UFOプライズステージ
- UFOコロン
バンプレスト
- コンビニキャッチャーシリーズ
- ガチャ王
- キャラクターコレクション
タイトー
コナミ
- ウーヤーター
- つるりんくん
- ヒエヒエペン太
- みらくるすぴん
ナムコ
カトウ製作所
- ファンシーリフターシリーズ
大平技研工業株式会社
- ファンシープッシャーテトラス
- ヘキサシリーズ
- なんでもドアシリーズ
アトラス
- ラッキークレーンシリーズ
- トリプルキャッチャーシリーズ
カプコン
- ベルキャッチャー
- ベルサークル
景品に関する問題点
プライズゲーム機の多様化に伴い、現在では様々な品目が景品として使用されるようになっているが、プライズゲーム機が主に設置される場所であるゲームセンターでは、関連する業界団体である日本アミューズメントマシン工業協会(JAMMA)および全日本アミューズメント施設営業者協会連合会(AOU)が独自に定めたガイドライン(自主規制)[1]に従って、提供する景品1個の市販価額の上限を800円(程度)以内とし、景品として提供できる品目は年齢や身分を問わず誰にでも購入・使用が可能なものと制限を設けた営業を行ってい る。
一方で、営業を行うに当たって警察の許可を必要としないシングルロケの事業者は、前記業界団体に所属していない場合が多く、業界のガイドラインの趣旨が行き渡っていない。そのため、その一部においては、家庭用ゲーム機などの高額景品や、喫煙具や性的な商品など道徳的に問題のある景品、あるいは高額景品が当たると標榜するくじや引換券を提供するなど、ガイドラインに沿わない運営が行われている例がある。しかし、そのような事業所に対する警察の態度は、「当面問題を生じないかどうかの推移を見守る」[2]という程度に留まっている。ただし、その気になれば即座に摘発する事も可能であり、何らかのきっかけで突然摘発される可能性もある。
以下のような景品の提供スタイルは、全て業界団体のガイドラインを逸脱するものである。
- 提示されている景品と異なる内容の景品、あるいは獲得する時点では内容の不明な景品の提供。例えば、「5分の1の割合で写真の景品が入っている。見本の他にも素敵な景品が多数入っている」などのような提示方法や、あらかじめ景品の内容を提示しないような営業方法、例えば「中身の見えないカプセルを景品にする。」はガイドライン違反である。なお、トレーディングカードアーケードゲームで払い出されるのは、プレイすれば必ず一定の枚数が得られるもので、景品ではなく商品として扱われるため、該当しない。
- 景品1個の、市販価格が800円を超えている。仮に、実売価格が1万5千円する携帯ゲーム機を800円で仕入れられたとしても、景品に使用すればガイドライン違反である。
- プレイヤーがゲームの結果によって「引換券」を獲得し、それを実際の景品と交換する行為。景品の2次交換の禁止である。入手できる景品がクジタイプで、その中に書かれている内容の物を獲得できるものが該当する。メダルゲームのメダルやカジノバーのチップの他、ロッカーの鍵を獲得させてその鍵を用いて景品を獲得する形式も同様である。景品の獲得に成功した後、色違いや別種のものへの交換することも、「引換券」の場合と同じ解釈になるため不可である。獲得した景品が故障・破損していた場合も、基本的には同色同柄の同一品としか交換できない。テンプレート:要出典範囲
- 景品そのものを単独で販売すること。仕入れ価格より安く販売しても違反となる。または景品を買い取る・買い戻すこと。なお、プレイヤー自身がゲームをプレイして獲得した景品を古物商やネットオークションなどに転売することは問題ない。一方で、通販業者などがメーカーや取扱問屋から仕入れて個別に販売していることは、シングルロケと同様に業界団体に非加盟のため、現状ではガイドライン違反には当たらない。しかし景品はあくまで単品での価格が設定されていない「非売品」であり、個別に販売されることはメーカーの意図していないことである。このことから、一部のメーカーは2010年頃からアミューズメント施設以外への出荷を制限する姿勢を見せている。
- 7号転用機のパチスロやパチンコ機、ビデオゲーム、ピンボールなどのゲーム結果に対して景品を提供すること。直接入手するのではなく、特殊な条件で景品を獲得するものを含む。
- 複数の景品の同時獲得が可能な構造。例えば小型チョコレートや菓子類を積んで山を作り、これを崩すことで大量獲得できるような提供方法が該当する。景品の提供は1ゲームにつき最大1個と定められている。
また、このガイドラインで使用が禁止されている景品の種類としては以下のものがある。
- ショーツ(パンティー)や、アダルトビデオ・バイブレーター・オナホールなどのアダルトグッズを景品に利用すること。下着類はかつては定番のアイテムだったが、現在は未使用も含み提供が禁止されている。但し、アダルトショップに設置のものでは上記のアダルトグッズが扱われている。
- 煙草および喫煙具、酒類、およびそれらを模したものを景品として提供すること。シガレットチョコやノンアルコールビール、電子煙草や禁煙グッズなども使用できない。かつては景品に提供されることの多かったライターやミニボトルも、現在は使用が禁止されている。
- 現金、有価証券、宝くじ、金券およびそれを模したもの。テレホンカードなど金券のほか、地域通貨や、「子供銀行券」などの硬貨や紙幣を模した玩具、電子マネーへのチャージなども使用できない。店舗内でのみ使用可能な回数券、割引券、商品券、再プレイ券などのチケット類、メダルも含まれる。
- 興奮・めまい・幻覚等の作用を目的とする有機溶剤や成分を含有する物品類。市販の医薬品も禁止されている。
- 刃物やレーザーポインターなど、心身に危害を加える恐れのある物品類。
- 食品衛生法に抵触する材料を使用した物品類。菓子の原材料の他、おもちゃ等に使われる可塑剤のフタル酸エステルに対する規制も含まれる。
- 偽ブランド、偽キャラクター商品。AOU非加盟業者が商標法違反で摘発された例もある。最近では、同人イラストや芸能人の写真を無断で使ったプライズ景品が出回り[3]、問題になっている[4]。
- 生きた動物や生ものを入れるのは、法的というより衛生上の問題であるため、保健所等の衛生管理機関による指導対象となる。逆にいえば、保健所の検査を受けて許可を取れば可能ではあるが、生き物の虐待で生命を軽視する行為につながり、倫理上の問題もあるという理由から、生き物を景品にするのも禁止すべきだいう批判もあるテンプレート:要出典。JAMMA/AOUのガイドラインでは、「動物愛護の精神に反する生物」は使用が禁止されている。なお、これに該当するゲーム機のメーカーは、中に入れる動物やその飼育用具、餌などの提供や、保健所への許可申請手続き代行なども行っている。
法的な問題点
ゲームセンターをはじめとした風俗営業がいわゆる通達行政などの法令による規制が緩かったために問題は発する。
ゲームをプレイするために入れたお金(硬貨)は、途中でセレクター部分などに詰まってイジェクトボタンで排出されたものでない限り戻ってこない。ジュースなどの自販機と異なり、硬貨の通り道がほぼ一方通行なうえに、釣銭を出すためのメカニズムが組み込まれていないためである。また、店員に「やっぱりやめたい」と返却を要求しても受け付けてもらえない仕組みになっている。その理由として、各自治体が定める『青少年保護育成条例』などで禁止されているため、というのが挙げられる。「お金を入れていない状態で「ゲームが出来ない」と金銭の返却を要求する」という不正行為を防止する目的がある。ただし、一般にはほとんど浸透しておらず、客と店員のトラブルの元になることがたびたびある。ちなみに、返金の代替行為としては「入れたお金の分だけサービスボタンで別のゲーム機を出来るようにする」というのが一般的だという。これはプライズ機のみならず、プリクラ機やビデオゲーム機(筐体)でも共通の問題である。
風俗営業適正化法では、性風俗以外の風俗営業を、第1号から第8号まで分類しており、プライズゲーム機が主に運営されるゲームセンターは、このうち第8号に属している。そして、同法第23条では、第8号営業において、ゲームの結果に応じて賞品を提供することを禁止している。
一方、同じ遊技業であるぱちんこ屋は第7号営業に分類されており、ゲームの結果に応じての賞品の提供は、同法19条にてその条件を定めている。この賞品提供の可否が、ゲームセンターとぱちんこ屋を区別する分水嶺であり、第7号営業にのみ許されている賞品を提供するゲーム機の運営を、第8号営業が行うことは、本来は違法行為である。
それにもかかわらず8号営業でプライズゲームの営業が行われているのは、現在の風適法による規制の対象となる以前から既にプライズマシンが営業に欠かせないジャンルとして成立していたアーケードゲーム業界が、警察庁に要請し[5]、「粗品レベルの景品(当初は市価300円相当以下、後に市価800円相当以下)の提供に留め」、「厳しい自主規制の下で運営を行う」限りにおいてはプライズゲーム機が提供しているものを賞品とはみなさないという警察庁の有権解釈を得たからである。
業界団体のガイドラインは、表面的には法的根拠が曖昧[6]な自主規制ではあり、そもそも厳密に法律を解釈すれば、運営自体が不可能である。しかし、規制の内容は、監督官庁の解釈を反映させたものなので、実質的には法律に準じる規則と考えるべきである。この自主規制を守らず、社会問題に発展するようなことがあれば、警察はいつでも全面的にプライズゲーム機の営業を禁止する可能性がある。
これらの経緯は、全国各地方の公安委員会や所轄の警察署の生活安全課にも周知されており、地域によって解釈に差があるようなことはない。
主な景品
市販品の菓子・食品を除く「アミューズメント向け景品専用」として発売されるものは原則として受注生産で、人気のある景品でも再生産されないことが多い。
- ぬいぐるみ
- キーホルダー・ストラップ
- タオル
- 抱き枕カバー
- フィギュア
- プラモデル
- マウスパッド
- ポスター
- タペストリー
- オルゴール
- その他の玩具
- CD
- セル画
- DVD
- 菓子、食品
- 市販品が多いが、クレーンゲーム機等で運用しやすいよう、 円筒形や六角柱状などアミューズメント向け専用のパッケージが用意されているものもある。アイスクリームを景品とする専用マシンもある。
- 本
- ビデオシステムが自社製麻雀ゲームのパロディ漫画アンソロジーを景品として出した事がある[8]。
- 雑貨
- マグカップ・皿・箸などの食器類、Tシャツ・タオルなどの衣類、時計、バッグ、ポーチなど。
- 家電製品
- 生物
参考文献
- 大下英治 『セガ・ゲームの王国』 講談社、ISBN 4-06-206325-5
脚注
外部サイト
プライズゲーム機
- セガ
- タイトー
- バンダイナムコゲームス
- トリプルキャッチャーアイス(アトラス)
景品
- セガプライズ公式サイト(セガ)
- TAITO PRIZE NEWS(タイトー)
- コナミのプライズ(コナミ)
- バンプレスト とるナビ(バンプレスト)
- FANS CLUB(システムサービス)
- フリュープライズ キャラ広場(フリュー)
- テンプレート:PDFlink(警察庁生活安全局,PDF形式)
- テンプレート:PDFlink (AOU,PDF形式)
テンプレート:Cite web