ブルース・カミングス
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ブルース・カミングス(Bruce Cumings, 1943年 - )は、アメリカを代表する歴史修正主義の歴史家である[1]。専門は、政治学、朝鮮半島を中心とする東アジア政治。
略歴
1975年、コロンビア大学大学院で博士号取得。スワースモア大学、ワシントン大学国際関係学部を経て、1987年からシカゴ大学歴史学部教授。2012年現在同大学スウィフト冠教授。1967年から1968年には徴兵を忌避して平和部隊に参加し、韓国で英語教師として働いた経験もある。
研究
1981年に出版された著書『朝鮮戦争の起源』において、朝鮮戦争は植民地時代に醸成された朝鮮内部の階級対立に端を発する内戦の発展したものであるという説を唱え[2]、1980年代には朝鮮戦争研究に影響を与えた。同書ではまた、解放後の米軍政下の南朝鮮における人民委員会運動とそれに対する米軍政の抑圧を米軍資料によって描き出した。朝鮮戦争を内戦として捉え、この「内戦」は1945年に既に始まっていたのだから1950年に「誰が戦争をはじめたのか」という問題には「答えを出せない」とし、「この問いは問われるべきではない」と主張した。開戦をめぐる台湾ファクター、北朝鮮軍の韓国占領と米韓軍の北朝鮮占領などについても多く取り上げている[3]。
冷戦終結後にソ連や中国の資料が公開されるようになった。特に朝鮮戦争の開戦経緯が、ソ連の同意を取り付けた金日成による先制攻撃であることが明らかとなったことにより、カミングスの説に対する支持は少なくなった。
朝鮮戦争を米ソの分割占領および戦争勃発以前の社会的葛藤と政治的対立の延長、もしくは終着点として捉えるべきという問題提起は、依然として有効であるとする意見もある[4]。
著書
単著
- The Origins of the Korean War vol. 1: Liberation and the Emergence of Separate Regimes, 1945-1947 (Princeton University Press, 1981).
- 『朝鮮戦争の起源.1/2――解放と南北分断体制の出現, 1945年-1947年』 鄭敬謨・林哲・加地永都子訳(シアレヒム社, 1989-91年)
- 『朝鮮戦争の起源.1――1945年-1947年, 解放と南北分断体制の出現』 鄭敬謨・林哲・加地永都子訳(明石書店, 2012年)
- The Origins of the Korean War vol. 2: The Roaring of the Cataract, 1947-1950 (Princeton University Press, 1990).
- 『朝鮮戦争の起源.2・上/下――1947年-1950年, 「革命的」内戦とアメリカの覇権』 鄭敬謨・林哲・山岡由美訳(明石書店, 2012年)
- War and Television (Verso, 1992).
- Korea's Place in the Sun: A Modern History (W.W.Norton, 1997).
- Parallax Visions: Making Sense of American-East Asian Relations at the End of the Century (Duke University Press, 1999).
- North Korea: Another Country (The New Press, 2004).
- Dominion from Sea to Sea (Yale University Press, 2009).
共著
- Korea: the Unknown War, with Jon Halliday, (Pantheon Books, 1988).
- Inventing the Axis of Evil: the Truth about North Korea, Iran, and Syria, with Ervand Abrahamian and Moshe Maoz, (The New Press, 2004).
編著
- Child of Conflict: the Korean-American Relationship, 1943-1953, (University of Washington Press, 1983).