ハルゼミ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
テンプレート:生物分類表 テンプレート:Sister ハルゼミ(春蝉)、学名 Terpnosia vacua は、カメムシ目(半翅目)・セミ科に分類されるセミの一種。日本と中国各地のマツ林に生息する小型のセミで、和名通り春に成虫が発生する。晩春や初夏を表す季語「松蝉」(まつぜみ)はハルゼミを指す。
特徴
成虫の体長はオス28-32mm、メス23-25mmで、ヒグラシを小さく、黒くしたような外見である。オスの方が腹部が長い分メスより大きい。翅は透明だが、体はほぼ全身が黒色-黒褐色をしている。
日本列島では本州・四国・九州、日本以外では中国にも分布する。
ある程度の規模があるマツ林に生息するが、マツ林の外に出ることは少なく、生息域は局所的である。市街地にはまず出現しないが、周囲の山林で見られる場合がある。
日本では、セミの多くは夏に成虫が現れるが、ハルゼミは和名のとおり4月末から6月にかけて発生する。オスの鳴き声は他のセミに比べるとゆっくりしている。人によって表現は異なり「ジーッ・ジーッ…」「ゲーキョ・ゲーキョ…」「ムゼー・ムゼー…」などと聞きなしされる。鳴き声はわりと大きいが生息地に入らないと聞くことができない。黒い小型のセミで高木の梢に多いため、発見も難しい。
日本ではマツクイムシによるマツ林の減少、さらにマツクイムシ防除の農薬散布も追い討ちをかけ、ハルゼミの生息地は各地で減少している。各自治体レベルでの絶滅危惧種指定が多い。
日本産近縁種
- ハルゼミ属 Terpnosia
- ハルゼミ T. vacua (Olivier,1790)
- エゾハルゼミ T. nigricosta (Motschulsky,1866)
- ヒメハルゼミ属 Euterpnosia
参考文献
- 白水隆ほか監修『学生版 日本昆虫図鑑』北隆館 ISBN 4-8326-0040-0
- 中尾舜一『セミの自然誌 - 鳴き声に聞く種分化のドラマ』中央公論社〈中公新書〉 1990年 ISBN 4-12-100979-7
- 宮武頼夫・加納康嗣編著『検索入門 セミ・バッタ』保育社 1992年 ISBN 4-586-31038-3
- 福田晴夫ほか『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方 - 野山の宝石たち』南方新社 2005年 ISBN 4-86124-057-3
外部リンク
- 図鑑/ハルゼミ(セミの家) - ハルゼミの解説、写真