タマちゃん
タマちゃんは、2002年に多摩川に現れたオスのアゴヒゲアザラシの愛称である。
目次
概要
2002年8月、多摩川の丸子橋付近に出現。新聞やニュース等でも取り上げられ、話題となった。その後、神奈川県横浜市港北区の鶴見川の大綱橋付近や同市西区の帷子川の横浜駅近くなどに出没。鶴見川や帷子川は典型的な都市河川として水質が悪いと思われていたため、市民から大丈夫かという不安の声も出たが、それ自体は杞憂に終わった。いずれの河川も海水と真水が混じり合った汽水域を持ち、タマちゃんのエサとなるエビや魚が豊富であるため、遡上出没したのではないかと解説された。タマちゃんの動向が報道されることにより、市民の関心が薄かった都市河川や東京湾の状況に関心を持たせる効果を生んだ。2002年新語・流行語大賞の年間大賞に選出されている(受賞者は佐々木裕司・黒住祐子)。
タマちゃんはアゴヒゲアザラシの迷入個体だったが、結局無理な捕獲は、ショック死させる可能性が高いため、あえて静観という対応がとられた。漁業が基幹産業の地域や市民が容易に触れられる状況であれば対応が変わったと考えられる。また、野生のアザラシに近づくのは危険だという側面もある。
2003年以降、タマちゃんと見られるアゴヒゲアザラシが埼玉県朝霞市の荒川(さいたま市桜区と志木市に跨がる秋ヶ瀬橋とJR武蔵野線荒川橋梁の中間)に出没し、翌2004年前半まで見かけられるようになり、ブームが継続する。しかし、同年4月以降は姿を消し、同年7月にはタマちゃんは海に還ったという報道もされている[1]が、その行方は定かではない。
タマちゃんが確認された期間と河川
- 2002年8月7日-2002年8月17日 - 多摩川
- 2002年8月25日-2002年8月30日 - 鶴見川
- 2002年9月12日-2002年9月13日 - 帷子川
- 2002年9月15日-2002年9月24日 - 大岡川
- 2002年9月29日-2003年3月14日 - 帷子川
- 2003年4月20日-2003年4月23日 - 中川
- 2003年4月30日-2004年4月12日 - 荒川
- 最後に確認されたのは2004年4月12日午前2時のライブ映像。以後の消息は不明。
タマちゃんに乗じた企画
「タマちゃんフィーバー」とマスコミに形容されるように、タマちゃんに肖るような様々な企画が展開された。
特別住民票
鶴見川に現れた頃、横浜市より特別住民票を与えられ西区民となった。登録氏名は西玉夫(にし たまお)。なお、住民票発行の根拠となる法律は存在せず、法的には市町村や特別区が配付する広報印刷物の一種にすぎない。これに関して、在日外国人20人がコメディアンのデーブ・ガタリッジの主催で「動物を住民登録するのなら私たち人間にこそ住民票を」とアザラシのコスプレをして抗議行動を行う一幕もあった[2]。
これ以後、各地で海獣を中心とした野生動物が一定期間出没した事で特別住民票を発行する自治体が相次いだ(2009年に釧路市で出没したラッコのクーちゃん等多数)。
タマちゃんを題材にした歌
タマちゃんを題材とする楽曲(殆どがアマチュア歌手・作家によるインディーズ盤)が作られた。経緯は不明であるが「タマちゃん音頭」という同名異曲が多数作られている。
- タマちゃん(2002年9月26日発売、歌:泉沙池、作詞曲:Reon)
- たまたまたまちゃん(2002年10月30日発売、歌:すぎはらまゆ)
- タマちゃんが来た夏(2002年11月26日発売、歌:風の子(当時女子大生の香取良美と作詞・作曲の鍋島呂夢のデュオ))
- タマチャン音頭(2003年8月15日発売、作詞:中山のぼる、作曲:佐瀬寿一)
- タマちゃん音頭〜帷子川編〜(歌:美月歌織、作詞:西山陽、作曲:よしむらあきら。「人生かたつむり」のカップリング)
- タマちゃん音頭(歌:太陽昇・幼稚園児、作詞は染井芳一)
- タマちゃん音頭(作詞・作曲は理容店経営・音楽家の小山章雄)
- タマちゃん音頭(作詞:西和彦、作曲は西和彦と長男の西まさよし)
- タマちゃん音頭(川西杏作詞・作曲・歌)
- タマちゃん音頭(久仁京介作詞・西村孝輔作編曲・歌:西たまき)
- ゾウアザラシ(モーリー・ロバートソンが自身のバンド「疾風怒涛る」にて)
経緯が類似する他の出没動物
タマちゃんの出没から1ヶ月経過した2002年9月には、宮城県本吉郡歌津町(現在の南三陸町)で別のアザラシが出没し、ウタちゃんと名付けられるなどアザラシ追っかけブームが発生。これ以降、東日本地域を中心とする太平洋・日本海沿岸各地で野生のアザラシやアシカ科(キタオットセイ等)・イルカなどが出没する度に報じられるようになった。
2006年9月にはタマちゃんが出没した荒川と並行する新河岸川沿いの川越市の田畑で衰弱した野生のキタオットセイの子供が発見され(しんちゃんと名付けられる)、上野動物園職員が捕獲・収容後、鴨川シーワールドで半年ほど加療して2007年3月に銚子沖で放流された事例もある。
2011年10月に荒川に出没したアザラシ
テンプレート:Sister 2011年10月上旬、埼玉県志木市の荒川の秋ヶ瀬取水堰付近にタマちゃん以来7年ぶりにアザラシが出現。10月10日にテレビ朝日らが報道し、翌11日・12日は東京キー局(NNN系列では情報ライブ ミヤネ屋のytvのクルーを含む)・テレ玉・NHKさいたま放送局と主要新聞社の取材陣が秋ヶ瀬取水堰そばの堤防に集結し、報道を見た数十人の近隣住民らがマイカーや自転車で見物に訪れる事態となっている。なお、見物人の増加により、取水堰の管理用地や道路上に路上駐車する車が現れたため、秋ヶ瀬取水堰の管理所では車の移動や河川への立ち入り禁止を促す警告放送を実施している。
当初の報道ではタマちゃんの再来とする媒体もあった[3]。が、報道各社の取材で別の種類のゴマフアザラシだとする各地の水族館職員の証言が相次いでいる。
このアザラシは志木あらちゃんの名前で住民票が公布されることになった。
2012年11月25日開催のタウンページ協賛ゆるキャラ(R)グランプリ2012に、「志木あらちゃん」が志木市商工会のキャラクターである「カッピー」と共にエントリーした[4]。
2011年10月25日時点で、NHK・在京キー局での志木あらちゃんに関する報道は102番組で合計7時間47分30秒に及び、これら一連の報道による志木市への広告効果は、ニホンモニターの試算によればCMスポット料金換算で75億円に上る。これは2011年度の志木市の広報活動予算の約324年分に相当するとされる[5]。
2013年3月に湖山池に出没したアザラシ
2013年3月7日、鳥取県鳥取市の湖山池でワモンアザラシの子供と思われるアザラシが発見された。湖山池は長さ3キロメートルの湖山川で海と繋がった汽水であり、そこから迷い込んだと推測されている。鳥取市では同年9月から湖山池を中心とした会場で「水と緑のオアシスとっとり2013(第30回全国都市緑化フェア)」が開催予定であり、鳥取県知事平井伸治は、それにちなんで「コヤマみどり(コヤちゃん)」と命名[6]。県の公式サイト内に専用ページ「コヤちゃんねる」が設置された。
同月12日には鳥取市からコヤちゃんに特別住民票が交付された。市長の竹内功は「末永く湖山池に住んで、緑化フェアの盛り上げに一役も二役もかって頂きたい」とコメントしている[7]。
脚注
テンプレート:脚注ヘルプ- ↑ 2004年7月14日付読売新聞
- ↑ 「私たちにも住民票を」 タマちゃん扮し在日外国人 2003年2月22日、共同通信
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ カッピー/志木あらちゃん - ゆるキャラグランプリ2012
- ↑ 「志木あらちゃん」広告効果75億円 ゆるキャラにも、スポニチアネックス、2011年10月26日 06:00。
- ↑ 湖山池を守る「コヤマみどり」です アザラシ命名 鳥取(朝日新聞デジタル、2013年3月15日0時8分)
- ↑ アザラシ:「コヤマみどり」に初住民票 鳥取・湖山池で話題 /鳥取(毎日jp、2013年03月13日)
関連項目
- 動物の愛称一覧
- パナウェーブ研究所 - 「タマちゃんのことを想う会」を称する活動をした。
- FNNスーパーニュース - タマちゃんが多摩川に出現したことを速報し、以後も最も大きく取りあげたと思われる報道番組。
- 黒住祐子 - 2002年の新語・流行語大賞受賞者の一人(上記番組のリポーター)
- 少年アシベ - タマちゃんが認知される以前にアザラシの存在を広めた作品。
- おたる水族館 - アゴヒゲアザラシ3頭飼育中。ニュース番組で飼育員によるコメントも放送された。
- ナカちゃん - 那珂川に現れたアゴヒゲアザラシ。