サービス残業
テンプレート:Ambox サービス残業(サービスざんぎょう)とは、使用者(雇用主)から正規の賃金(労働基準法が定める時間外労働手当[1])の全額を支払わない(支払いを免れる)時間外労働の俗称であり、サビ残、賃金不払い残業ともいう。雇用主がその立場を用いて被用者(労働者)に対して強制を強いる場合が一般化している。下記に記述してあるとおり違法行為であり懲役刑、罰金刑が課される。
目次
概説
近年は企業の効率化による人件費抑制と人減らしの中、かつて正社員で補っていた業務を残業させられない非正規社員に置き換えられたことで、正社員が過剰に働かざるを得ない状況が発生している(ただし、企業によっては時給制の非正規社員でもサービス残業を強いられる職場もある)。特に、外資系より日本の企業がサービス残業を強いる傾向が強いと指摘される[2]。
サービス残業は使用者の労働基準法違反である(#労働基準法から見たサービス残業の違法性を参照)[3]。サービス残業は長時間労働を招くため、過労死や過労自殺、その前段階でうつ病などの精神疾患を発生させる原因となることもあり、サービス残業の存在を知りつつ放置する行為は刑事罰にあたる違法行為となっている。また、詐欺罪が成立する場合もある。
労働基準法から見たサービス残業の違法性
使用者が労働者に対して指揮権を持ち拘束できる時間(労働時間)は、労働基準法第32条第2項により1日最大8時間(休憩時間含まず、労働基準法第40条第1項に該当する場合は除く)となっている[4]。また、労働基準法第32条第1項により1週で最大40時間まで(休憩時間含まず、労働基準法第131条に該当する場合は44時間まで)とされている。
ただし、以下の2つの要件を満たせば労働基準法第32条で定められている1日最大8時間および1週最大40時間の枠を超えて使用者が労働者に対し指揮権を持ち拘束することができるようになる。
- 労働基準法第36条第1項で定められている通り労使間で協定(三六協定)を締結して行政官庁に届け出る。
- 労働基準法第37条第1項で定められている通りに使用者が労働者に対して割増賃金(残業代・時間外労働手当)を支払う。
サービス残業は、労働基準法第37条第1項で定められている時間外労働分の割増賃金を支払うという要件が欠けているので違法である[3][5]。事業の種別や規模、業績などは関係ない。使用者が労働者に対し労働基準法第32条で定められている最大労働時間を超過する労働を強制し拘束するにもかかわらず、三六協定が締結されていなかったり、割増賃金を支払わない状態が違法なのである[5]。
使用者は、上記2つの要件を具備してはじめて適法に時間外労働を労働者に指示することができるのであるから[6]、この要件を具備していないサービス残業という違法な要請がなされても労働者は何らの法的義務も負っていないので従わなくともよい。たとえ使用者が労働者に対してサービス残業を強制させたとしても労働基準法第37条第1項により使用者は労働者に対し割増賃金の支払い義務を負っているため、労働基準監督署より是正勧告を受ける対象となったり、労働者より未払賃金請求訴訟を起こされるなどし、未払い賃金を遅延損害金を含めて支払わなければならなくなる場合がある[7][8][9]。
違反した場合の罰則
労働基準法第32条、第37条には、違反した場合の罰則が労働基準法第119条によって規定されている。これに違反した使用者は、6箇月以下の懲役または30万円以下の罰金に処すると定められている。
実態
テンプレート:出典の明記 しかし、多くの場合、三六協定は入社時に強制的に結ばれるため、労働者側は(手当の高低を問わず)残業そのものも拒否できない状態におかれ、労働者が残業を拒否し、またはサービス残業を告発した場合、懲戒解雇などの不当な制裁を行ったり、さらに悪質なケースでは労働者に対して莫大な損害賠償請求を起こす事業主も存在するため、労働者が死亡あるいは社会復帰困難な状況に追い込まれない限り労働者側が訴訟を起こすことはほとんどない。
サービス残業の形態
サービス残業は以下のような形態で発生する。
労働者に残業の「申請」を行わせない
有形・無形の圧力により、残業の「申請」を行わせず、強制的に残業させる。タイムカードによる出退勤管理をしている企業では、定時に退勤処理を行わせたあとで働かせる場合もある。外部からは従業員が自主的に残って働いているように見える。「サービス」の語の由来でもある。
一例を挙げれば、「一日4時間以上/月30時間以上の残業をしてはならない」などの内規を作ったり、一つの課などで月に決められた一定時間まで、例えば180時間までの残業時間枠を設ける方法がある。
文字の上ではあくまでも「あまり残業をするな」という規定でしかなく、法的な強制力はない。しかし、このような規定だけを設けても、実際には定められた時間内に仕事をこなすことが不可能な場合、従業員がやむを得ず「内規に反して」サービス残業を始めることがある。内規に反して働いているという状態になるため残業を「申請」しにくく、記録上は規定内の残業時間で仕事がこなせているように見えてしまうので、人員を増やす理由も仕事量を減らす理由も記録上は見えなくなり、以後それが常態化してしまいやすい。そのような職場では、本来「あまり残業するな」という意味だったはずの内規が「残業してもいいが、残業賃金は払わない」という意味にもなる。
財政事情が厳しいなどの口実で人件費に関して予算を限ってしまい、管理する側に予算を超過して残業を認める権限を与えないことで、残業を認めたくてもない袖は振れないのだとして残業申請を諦めさせようとする事業所もある。企業が任意に決めたにすぎない予算によって法的に義務のある残業賃金の支払いを免れるはずもない。
厚生労働省は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」という労働基準局長から都道府県労働局長あての通達を、平成13年4月6日に出しており、「始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法」として「使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること」とされ、「自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置」について、「労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと」「時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること」とされており、単に時間外労働を指示していないということだけをもって、使用者に理があるとは言えないとしている[10]。
また「ノー残業デー」「定時帰宅奨励日」「5時消灯」などによる自主的なキャンペーンを行っている企業や業績悪化から時間外労働を一律に禁止する企業もあるが、「ノー残業デー」は「ノー残業(代)デー」で残業行為自体は咎めもなく、「定時帰宅奨励日」はあくまで「奨励」レベルで強制力がないために誰も守らない、「5時消灯」は消灯後に個々に照明機器を持ち込ませてサービス残業を行わせる、あるいはパソコンを使った作業などは消灯後も暗闇の中で仕事をさせるなど、指導の裏をかいてサービス残業を行う(あるいは強要する)者もおりテンプレート:要出典、これらの自主的なキャンペーンが事実上形骸化している企業も少なくない。
このほか、定時の後に「奉仕時間」「ボランティアタイム」「自己啓発時間」などといったもっともらしい名目の時間を設け、表向きは社員が自らの意思で無償奉仕を行う時間のように思わせているが、その実態はサービス残業となんら変わりがない、などといったケースもある。
職場外での仕事の強制
「職場での残業は認められないが、仕事が完了することは求められている」場合に発生しやすい。いわゆる、仕事(に用いる道具など)を持ち帰るケースである(プログラム、ウェブデザインなど特にPCを用いた仕事に多い)。就業時間外に働いているので厳密には残業ではない(「サービス労働」と言われることもある)が、実質的には残業である場合が多い。賃金の不払い以外にも、持ち帰った仕事をしている最中に事故にあった場合の労働災害や、情報漏洩があった場合の責任など問題が多く、近年ではあまり行われなくなりつつある。
- さらには職場外での仕事という行為(ファイルを家に持ち帰るなど)は、上記のように(盗難やウイルス感染などにより)情報漏洩が発生する危険もある。情報網が多様化した現代社会では、いかに家族(夫婦や親子、兄弟)であっても思わぬところでライバル会社や敵対企業と繋がっている可能性がある。そんな状況下で「家で仕事を片付けたい」などという行為は極秘情報を自ら外部に流しているといっても過言ではない。
裁量労働制の違法利用
正規の手続きなしに使用者側が一方的に裁量労働制を導入したと称して運用する違法な例がある。裁量労働制を導入するための手続きとして、労使の合意(専門業務型では労使協定の締結・企画業務型では労使委員会の決議)と労働基準監督署への届け出とが必要である。また、裁量労働制のもとでは残業という概念自体が存在しないとの誤った解釈に基づいて一切の手当てを支払わない違法な例がある。現行の裁量労働制はみなし労働時間制の一種であるため、給与算定のために勤務時間管理を行う必要は基本的にはないが、深夜・法定休日勤務手当ては支給しなければ違法となる。また、みなし労働時間が法定労働時間(8時間)を超過する場合には、労使であらかじめ36協定(残業に関する協定)を締結して労働基準監督署に届け出るとともに、超過分の時間外労働手当(たとえばみなし労働時間が9時間であれば1時間分)を支給しなければ違法となるが、裁量労働制を採用している大部分の企業は、みなし残業超過分の労働手当を適正に払わず固定給で青天井のサービス残業をさせている。
法律条文に明確に列挙されている職種以外にも使用者側の独自解釈の元に裁量労働制を適用する場合もあり、この場合も違法であるが、そのまま運用されていることがある。一例として、裁量労働制が適用できないプログラマをシステムエンジニア扱いにして裁量労働制を適用してしまうケースが挙げられる。[1]
裁量労働制では出勤・退社の時間は自由に決められるのが建前である。しかし、遅刻・早退の給与控除のみを行う一方で残業代のみを都合よくカットすることがあり、違法であるにもかかわらずそのまま運用され、サービス残業と同じような時間外労働を行わせる場合がある。 また、マスコミのADや記者などは、部署によって休暇が年数日、一日15時間以上の労働の上に有給休暇も記録上での消化という悲惨な環境が常態化していると言われるが、労使双方の裁量労働制の解釈のあいまいさも手伝い、違法であるにもかかわらず表立たない傾向が強い。
近年では求人広告においても年俸制(月給表記の場合もあり)として募集し、時間外労働手当の支給を逃れようとする企業が増えてきており、転職・就職の際には注意が必要である。待遇項目等に時間外手当支給と表記されている場合があるが、表記の有無にかかわらず時間外労働手当が支給されなければ、違法となる。
管理職に昇進させる
管理監督者(「監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」)は労働基準法に定める労働時間などの規定の適用を受けず、残業手当の支払い義務が発生しない(41条)。
- 第41条 この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
- (略)
- 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
- (略)
そこで、管理職を「管理監督者」とみなした上で、名目だけ管理職に昇進させ、「少額の管理職手当」と引き替えに、「残業手当をカット」する方法が採られることがある。しかし、管理職が41条が規程する管理監督者に該当するとは限らない。管理監督者とは経営と一体的立場にある者を指し、管理監督者に該当するかどうかは勤務実態および処遇に照らして個別具体的に判断される。「課長」やチェーンストアの「直営店長」といった役職名によって自動的に管理監督者に該当するわけではない。自己の労務管理についても裁量権を与えられている必要があり、労働時間を長くする裁量だけが認められて短くする裁量が認められないような者は、管理監督者には該当しない。
コナカや日本マクドナルドなどの直営店長が起こした裁判では、店長側の訴えを認め、「コナカや日本マクドナルドにおける店長は管理監督者とはいえない」との判断を下し、過去に未払いとされていた残業代の支払いを命じた(管理職かどうかの判断はしていない)。これらの訴訟では、名ばかり管理職という言葉が生まれ問題視されている。
日本労働弁護団が2008年2月11日に設けた「名ばかり管理職110番」では、一番下っ端の社員の肩書きが「幹部候補生」「管理職(課長および店長)候補」(いずれも管理職扱い)であった例、3,000人規模の会社で数百人の「課長」がいる例、高校を卒業して入社した金型工場で19歳でいきなり管理職扱いにされた極端な例などの報告がなされている。彼らはいずれも管理職でありながら部下はおらず、また「課長」「店長」であるにもかかわらず出退勤の時間が管理されていた。
半端な業務時間を切り捨てる
会社によっては、15分、30分単位で労働時間を管理するが、その場合最小単位分の時間を切り上げて請求することができる。しかし実際には、10分程度の作業であったりすると請求することなく済ませてしまうことがある。また企業はこのサービス残業となる状態を避けるために給料付の休憩を与えることによって調整する場合がある。例として1時間の昼休憩とは別に10分程度のトイレ休憩に給料をつければ定時より仕事が5分程度遅くなった場合でもサービス残業にならない。
帰宅拒否症候群
家庭内がうまく行っていない場合、早々に家に帰って家族からぞんざいに扱われるよりも、会社に残って仕事上の人間関係に依存したほうが気が楽という、いわゆる『帰宅拒否症候群』と呼ばれる状態に陥っている人もいる(精神的な症状ではあるが、正式の病名ではない)。また、単身赴任のため、一人暮らしの部屋に戻っても寂しいあるいはやることもないという理由で、定時になっても帰宅せず職場に残る人もいる。このような者が先輩や上司として多く居る職場では新人や後輩が先に帰り辛く、特に急ぎの仕事もないのに「ナアナア残業」と呼ばれる付き合い残業を強要されることにもつながりかねない。
この場合の解決策として、経営者およびその部署の長は、終業の時刻になった時点で率先して「時間になったから、早く帰るように」と定時帰宅を促すよう、努力しなければならない。帰宅拒否症候群の社員には、会社にとどめて「ナアナア残業」をさせるのではなく、とにかく退社させて、帰宅までの間に楽しめる趣味(娯楽・スポーツ・社によるサークル活動)を持たせるよう努力するべきである。
サービス残業の実態と対応
サービス残業は労働基準法違反であるが、労働者は文句を言えば逆恨みによる報復人事にあうため、いやおうなしに従っていることが多い。
2001年4月には厚生労働省からサービス残業を規制する趣旨の通達「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」(基発339号)が出され、労働基準監督署による調査、始業・終業時刻の記録・確認などの是正指導が強化された。
しかし、法令で残業時間を規制しても仕事の量は減らないという職場もあり、結局自宅へ仕事を持ち帰り「サービス労働」を行うことになるケースも少なくない。また、企業側が休暇の取得を奨励したものの、仕事は消化しなければならないため休暇の日に自宅で無給の「在宅勤務」を強いられるケースもある。こういったケースは労働基準監督署による摘発が非常に困難である。
労働基準監督署による是正勧告など
複数の労働基準監督署が2004年9月以降に実施してきた立ち入り調査でサービス残業が発覚してきた。労働基準監督署の是正勧告を受けて社内調査をしてサービス残業代を支払った(2005年)。もっとも立ち入りが行われたのは一般にサービス残業が少ないとされる電力会社が中心で、これらは氷山の一角に過ぎないという指摘が多い。
- 柳原製作所 長野
- 関西電力 22億9700万円(約11,000人)
- 東京電力 69億4800万円(約25,900人)
- 中部電力 65億円(約12,000人)
- スタッフサービス大阪本部 約53億6500万円(全国の従業員と退職者計約3,400人)
- ヤマト運輸関西支社管内 金額は不明(大阪主管支店管内の従業員約22,000人)
- 富士火災海上保険 2億7400万円(約1,000人)
- ホテルグランヴィア京都 2億700万円(約400人)
- ミドリ電化JR尼崎駅前店 金額は不明(約5,100人)
- ミズノ 18億6,000万円(約2,000人)
- 近畿大学 約1億38万円(職員・退職者約563人)
- 名古屋港イタリア村 約700万円(外国人調理師3人)
- 大阪大学 金額は不明(教員の一部を含む職員約5,400人)
- 学校法人立命館 約900万円(大学・高校などの職員約460人)
- 神戸ポートピアホテル 約7,100万円(174人)
- 群馬大学 約2,500万円(付属病院を含む職員約900人)
- 北九州市立医療センター 金額は不明(医師約70人)
- 横浜銀行 約7,900万円(銀行員約1,100人)
- 大原簿記専門学校神戸校
- ダイハツ工業 約5,000万円(社員約1,000人)
- 大和ハウス工業 約32億円(社員約9,387人)
- がんこフードサービス 金額は不明(岸和田五風荘店従業員約100人)
- オークワ 約8億円(社員・パート合わせ計約1万6,000人)
- 新日本 (人材派遣会社) 約100万円(従業員。人数は不明)
- 学校法人甲子園学院 約1,220万円(教職員61人)
- 王将フードサービス 約2億5,500万円(社員及びパート従業員計923人)
このような是正勧告に対して、日本経済団体連合会は「企業の労使自治や企業の国際競争力の強化を阻害しかねないような動きが顕著」と非難している[2]。
なお、日本の事業者は500万強あり、その大半が多かれ少なかれサービス残業をさせているものと考えられるが、労働基準監督官の総数はわずかに3000人程度である。
アルバイト、パートのサービス残業
時給で給与を計算するパート、アルバイトでは、サービス残業は目に見える形で発生しやすい。
チェーン店などでは「IN/OUT作業」「上がり作業」と称して、勤務予定時間終了後(または勤務開始前)にゴミ捨てや掃除などの雑用を課すことがある。これは明らかに違法な行為であるが、「作業が10分程度と短い」ことや「パート・アルバイトの立場が弱い」などから、雇用主のいうままに規定時刻に勤務終了したかのようにしてしまうことも多い。労働時間の報告は1秒単位でもできるが、労働基準法上では、労働時間をどの単位(分単位、秒単位など)まで細かく管理するべきかは明文化されていない。
対策
以下に示す以外に、労働組合の力が強い企業では、勤怠登録と入退館の手続きを別にして、退勤と退館の時刻にあまりにも差がある場合“何をやらせていたのか”と管理職に質問すること・一定時刻以前の早朝入館は事前に届け出をさせ、通知がない場合は入場を認めないなどが行われている。
合理化と増員
正社員が過剰に働かざるを得ない状況を避けるためには、業務の無駄を省き合理化することと、従業員の数を増やすことしかない。しかし、従業員の数を増やせば結局賃金も増えてしまうし、仕事量の増減に残業を増やす以外で対応するとなると、期間限定の従業員を入れることが考えられるが、慣れていないアルバイト等にまかせることで業務効率が低下する恐れもある。
厚生労働省への匿名での情報提供
厚生労働省はWebページ上に「労働基準関係情報メール窓口」を設けており、労働基準法等における問題に関する情報を匿名で提供することができる。情報は、関係する労働基準監督署へ情報提供するなど厚生労働省の業務の参考にされるが、個別の事案への相談には応じていない。
労働基準監督署への申告
労働者は労働基準監督署へ賃金不払いの申告をすることができる[11]。申告は匿名でも可能である[12]。但し、労働基準監督署としても企業の実態調査を行う際に、労働者やその家族がサービス残業を過大に申し立てる恐れがある為にその申し立てに責任を持たせるため、氏名、連絡先を求めることが原則である。申告があると労働基準監督官は調査を行い、サービス残業が認められた場合には使用者に賃金支払いを勧告する。賃金不払いが悪質な場合、労働基準監督署は労働基準法違反の疑いで検察庁へ送付することがある。賃金不払い残業は犯罪であり刑事罰が科せられる行為である。
但し、必ずしも労働基準監督署が適切に対処するとは限らないので注意が必要である。一人で行っても門前払いされ弁護士、司法書士、NHKや民放キー局のディレクター・プロデューサーなどを同席させたら態度を変えたケースが存在する。
労働基準監督署への告訴
未払賃金請求訴訟
サービス残業を強いられている場合には、日々の勤務時間を逐一メモを取る(特に本人が毎日、残業時間を日記風に記録していた場合は十分に有効)、その他証明力のある記録または証拠(給料明細、可能ならばタイムカードのコピー、自動車運転者労働者の場合はアナログ式タコグラフから記録されたチャート紙またはデジタル式タコグラフから記録されたデータのコピーや運行指示書、業務日報等)を残しておくことが肝要である。またタイムカードや時間管理の業務日報などがなくても、まず本人の記憶、陳述に基づき労働時間のコアタイムを計算して労働時間の主張をし、他の間接的な記録があればそれで補充するという方法でも残業時間の立証は十分可能である[13]。
賃金などが支払われなかった場合、雇用主が商人の場合は、本来支払われるべき日の翌日から遅延している期間の利息に相当する遅延損害金年利6%も含めて請求ができる(商法第514条、最二小判昭和51年7月9日参照)。雇用主が商人ではない場合は、民事法定利率年利5%の遅延損害金となる。なお退職した労働者の場合は、遅延損害金年利14.6%を請求できる(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項、同法律施行令1条)。また裁判上、未払賃金と同額の付加金の支払を請求することができる(労基法114条)。
- 注:ここに記載されている遅延金、遅延損害金および付加金は必ずしも請求できるものではない。実際に支給されるかどうかは、その時の状況、事由等により判断が異なるため、最終的な結果は労働審判や裁判を行わなければわからない。
ホワイトカラー・エグゼンプション
日本経団連からの要望を受けた形で、2006年6月より「一定以上の年収の人を労働時間規制から外して残業代の適用対象外にする 自律的労働制度の創設」に向けた検討が厚労省で開始された。
日本経団連の要望は、年収400万以上のホワイトカラー労働者を労働時間の管理対象外とする、という内容のものであるが、「ホワイトカラー」の定義があいまいであることもあって、労働者団体からはサービス残業を合法化するものであるという危惧が表明されている。
脚注
- ↑ 労働基準法-第37条</br>使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
- ↑ 外資系でも職場によっては日本人社員にはサービス残業が強制され、外国人社員には残業代を支払っているなど、国籍・出身国による差別的取り扱いをしている場合がある
- ↑ 3.0 3.1 テンプレート:Cite web
- ↑ 労働基準法第32条第2項では、「使用者は労働者に対し休憩時間を除き1日について8時間を超えて労働させてはならない」と規定されているため。
- ↑ 5.0 5.1 テンプレート:Cite web
- ↑ 例外として、災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合に、使用者が行政官庁の許可を受けた場合がある(労働基準法第33条第1項)。
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite web (pdf)
- ↑ 連合 厚生労働省による監督指導
- ↑ 賃金不払いの相談例 賃金不払いの相談例 労基法違反申告書の雛形
- ↑ 日本労働弁護団
- ↑ 『季刊・労働者の権利』2003年10月「武富士残業代請求訴訟-残業時間立証の工夫」
関連文献・記事
関連項目
- 時間外労働
- 風呂敷残業
- 強制労働
- 国際労働機関
- 企業犯罪
- ホワイトカラーエグゼンプション
- 営業職
- 労働法・労働基準法
- 労働基準監督署・労働基準監督官
- 過労死
- 過労自殺
- リストラ
- パワーハラスメント
- ブラック企業
- 八代尚宏
- 日興システムソリューションズ
- ダブルスピーク
- ざる法
- ワーク・ライフ・バランス
- サマータイム※2009年現在導入が検討されているサマータイム法案において、表向きは「1時間早く出社して労働時間を短縮」とあるが、実際は労働時間を余計に増やすことになり、サービス残業が増えるだけと指摘する声もある
外部リンク
- 労働基準関係情報メール窓口(厚生労働省) - 労働基準法等における問題に関する情報を匿名で提供することができる。
- サービス残業代かんたんチェッカー - 請求出来る残業代の簡易チェックツール
- サービス残業代搾取詐欺(日本詐欺大全)