サスペリア

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サスペリア』(Suspiria)は、イタリアの映画監督、ダリオ・アルジェントによるホラー映画である。ゴブリンが奏でる恐怖の音楽が音響立体移動装置(サーカム・サウンド・システム)により増幅され一世を風靡した。「魔女3部作」の1作目とされる。

概要

トマス・ド・クインシーの小説「深き淵よりの嘆息」をモチーフに、ダリオ・アルジェントダリア・ニコロディが脚本化した。主人公を演じたのはジェシカ・ハーパー。1977年公開。ドイツのバレエ名門校に入学した若い娘を襲う恐怖を描き、大ヒットした。

魔女3部作の魔女

本作では魔女の正体が謎のままであったが、次回作の『インフェルノ』や『サスペリア・テルザ 最後の魔女』で明かされエレナ・マルコスが、三姉妹の魔女の一人である「溜息の母(インフェルノでは嘆きの母)」である事が明かされた。それによってインフェルノに「暗黒の母(インフェルノでは暗闇の母)」が登場し、『サスペリア・テルザ最後の魔女』に「涙の母」とそれぞれ作品別に登場している。なお『インフェルノ』や『テルザ最後の魔女』では多少三人の魔女の母の名が異なっている。

ストーリー

バレリーナ志望のスージーは、ドイツにあるバレエの名門校に入学するために、ニューヨークからやって来た。空港でようやく拾うことができたタクシーに乗ってスージーは学校に向かう。激しい雨の中到着したバレエ学院は赤い館。そしてその建物の玄関では、若い生徒であるパットが何者かに追われているかのように怯え、何か叫んでいた。「秘密のドア、アイリス、青いの……。」

恐怖に顔をひきつらせたパットは、雷鳴の中をずぶ濡れになって走っていった。この奇妙な光景を見たスージーは、すぐに玄関に走り寄って、ドアを開けるように頼んだが、インターフォンからは、なぜか冷たい拒絶の言葉が返ってくるだけであった。途方に暮れたスージーは、仕方がなく出直すことにした。

友人のアパートにたどり着いたパットの身の上に、奇怪なことが起こった。部屋に入った時、この世のものとは思えない呻き声を耳にしたパットは、その直後、窓の外の闇の中から、突然現われた毛むくじゃらの腕に締めつけられ、何度も何度も胸や腹をナイフで突き刺されてしまう。そのパットの悲鳴を聞きつけて駆けつけた友人も不運な惨死の道づれとなって鮮血に染まった。

翌日再び学校を訪れたスージーは、ようやく入学することができた。そこには、海外旅行中という女理事長代理のマダム・ブランク、厳格な主任教師のタナー女史、盲導犬に引かれる盲目のピアニストのダニエル、ルーマニア人の下男パブロ、マダムの甥で9歳になるアルバート少年等がいた。レッスン中突然身体が不調となったスージーは、途中で床に倒れこんだ。校医の診察を受けたスージーは、増血のためとして葡萄酒を食事に加えられる。この葡萄酒を飲むと、スージーはいつもなぜか眠くなり、眠ってしまう。

スージーは、サラと仲良しになり、学院の様子をこと細かく知るようになった。その夜、寄宿舎の天井から白い蛆虫が落ちてくるという事件が起こった。学院はパニック状態になったが、その事件の原因は屋根裏に保存してあったハムやソーセージに寄生したものと判明した。そこで、当分の間、生徒たちは全員、バレエ練習用の大ホールにベッドを移して寝起きすることになった。

真夜中、ベッドに入っても眠れないスージーとサラは、大きな仕切り用のカーテンの向こうから漏れてくる不気味な呻き声にひどくおびえ、またその呻き声の周辺からどこかへ立ち去っていく奇妙な足音を耳にした。サラはあの呻き声の主が、海外旅行中の理事長ではないかとスージーに告げたが、翌朝、それをタナー女史に尋ねると、冷たい否定が返ってくるのだった。

次の日、アルバートがダニエルの盲導犬に噛みつかれるという事件が起きた。タナーは烈火のごとく怒り、ダニエルをクビにしてしまった。ダニエルは「私は目が不自由でも耳は良いんだ。こんな呪われた所、出て行ってやる」と捨て台詞を吐きながらその場を立ち去った。こうした事件の起こる中、スージーとサラは、夜ごとタナーたちの靴音に好奇心をかきたてられた。なぜ教師たちの靴音が響き、突然それが消えてしまうのか。サラはその靴音を追って廊下に忍び出た。その夜、ビアホールからの帰り道のダニエルは、自分の盲導犬に噛み殺された。

次の夜、スージーの寝室に来たサラは、最初に変死したパットから、死の直前に奇妙な話を聞かされ、謎めいたメモを預けられたことを告げた。しかし、スージーは睡魔に襲われる。仕方がなく自室に戻ったサラは、恐怖心に襲われ、廊下に逃げ出した。何者かが追いかけてくる気配を感じ、屋根裏へ逃げ込むが、高い窓から工具室に転倒する。そこにあった無数の細い針金がサラの白い肌にからみつく。まるで蜘蛛の巣にかかったかのように身動きができないサラの腹部を何者かの手がナイフで突き刺す。最後に喉を掻き切られたサラは惨死する。

翌朝、サラの姿が見えないことを不審に思うスージーにタナーは、サラが荷物をまとめて退学していったことを告げる。奇妙に思ったスージーは、サラの友人の精神科医フランクを訪ね、学院についての奇妙な出来事を相談した。フランクは学院の歴史と魔女についての話をした。より詳しいミリウス教授の話もその場で聞くことができた。

その夜、誰もいない寄宿舎に戻ったスージーはついに意を決して、葡萄酒を捨て、秘密を暴こうとする。足音の数だけ廊下を歩くと、スージーは校長室にたどり着く。そこでスージーははじめての夜の女学生の言葉を思い出す。「アイリスが3つ。青いのを回すのよ……。」

壁を見ると、アイリスの飾りがあった。青いアイリスを回すと秘密のドアが開く。奥の部屋では教師たちがスージーを呪う儀式をしている。この学院は魔女たちの館であり、バレエ教室はもともと魔女の儀式の踊りから派生したものだったのだ。姿を見られたスージーは、別の部屋に逃げ込む。そこには長老のエレナ・マルコス(溜息の母)がカーテン越しのベッドにいた。スージーはカーテンを開けたが、そこには誰もいなかった。エレナの嘲笑と共に突然、サラの死体が動きだし、スージーに向かって襲い掛かってきた。絶体絶命のピンチ、雷の光がエレナ・マルコスの透明な身体を光で浮かび上がらせた。スージーは全力を振り絞り、ガラス製の孔雀の置物の羽根を取って、マルコスの喉を突き刺す。彼女の死とともに館が崩れはじめる。教師たちも阿鼻叫喚の様子だ。やっとのことで館の外に逃げ出したスージー。激しい雨のなか、スージーは笑みを浮かべた。

スタッフ

キャスト

その他

  • 本作のヒロインのスージー役には脚本を担当したダリア・ニコロディが当初予定されていたが、米国の配給業者が米国で売りやすくするためにアメリカ人の俳優を推薦してきたためジェシカ・ハーパーを起用した。ダリア・ニコロディにはスージーの友人サラ役が割り当てられたが、彼女はそれを拒否、オープニングの空港の1シーンのみカメオ出演している。
  • 最初にスージーがタクシーに乗り、運転手に行き先を伝えるシーンで、雷光に照らされたガラスに一瞬、叫ぶような青い顔が映る。日本では当時本物の幽霊が映っていると話題となったが、アルジェント本人が意図的に演出したものである。
  • 物語の終盤、スージーがエレナを刺殺するのに使用するガラスの羽であるが、アルジェントの初監督作『歓びの毒牙』の原題(水晶の羽を持つ鳥)のメタファーとなっている。
  • 日本でも「決して、ひとりでは見ないでください」というキャッチフレーズと、あまりにも激烈な恐怖・残酷表現の為、1000万円のショック保険をつけ大ヒットした。また、『8時だヨ!全員集合』で、志村けんいかりや長介を指して「決して、ひとりでは見ないでください」というコントを披露している。
  • その影響を受け、同配給会社が同監督の前作でサスペリアとは無関係の作品『(w:Profondo Rosso)』(1975年)に『サスペリアPART2』の題をつけて公開した。この作品は現在販売されているDVDでは「紅い深淵」という副題がつけられ、『サスペリア』と同梱のDVD-BOXとして本数限定で販売された。
  • 『サスペリア2000』という邦題のサスペンス映画は、『サスペリア』とは全く無関係。
  • 本作はフランク・ヴェーデキントの『ミネハハ』をモチーフにしたとの説があるが、これは映画『エコール』の監督ルシール・アザリロヴィックの、勘違いによりインタビューで話した内容が宣伝材料とされて一人歩きしたもの。実際には『ミネハハ』は『サスペリア』の原作ではない。
  • 現在、パブリックドメインとなっている。[1]
  • 同映画のテーマ曲は、後に日本の刑事ドラマ『相棒』Season 5の第16話「イエスタデイ」で、林泰文扮するゲストキャラクターが喪失していた記憶を取り戻すシーンで使用された。
  • 映画の後半で、太った婦人が「ダレダ?」と聞こえる言葉を発しているが、これはロシア語で「そこに居るのは誰?誰なの?」Кто эта там?Кто там?(クトー エータ ターム?クトー ターム?) と言っている。

日本語吹替

役名 旧DVD版[1] TBS版 テレビ東京版
スージー 内川藍維 岡本茉莉 勝生真沙子
サラ 深水由美 山田礼子 高島雅羅
ブランク夫人 西宏子 京田尚子
ミス・タナー 紗ゆり 高橋和枝 谷育子
ナレーション 大木民夫
青山穣
吉田孝
樫井笙人
中村千絵
市川まゆ美
桑島美由生
西敦子
千葉耕市
菊地紘子
山田栄子
浅井淑子
速水奨
有馬瑞香
安達忍
山岡葉子
後藤真寿美
川道信介
朝戸鉄也
井上和彦
(日本語版スタッフ) 翻訳:蘭光太郎
演出:多部博之
制作:コスモプロモーション
翻訳:磯村愛子
演出:田島荘三
調整:近藤勝之
効果:新音響
スタジオ:コスモスタジオ
制作担当:小嶋尚志(コスモプロモーション)
プロデューサー:石川博(テレビ東京)
配給:ムービーテレビジョン
制作:テレビ東京/コスモプロモーション
(初回放送) 1979年10月1日 1986年5月1日
(番組名) 月曜ロードショー 木曜洋画劇場[2]

関連項目

脚注

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外部リンク

テンプレート:ダリオ・アルジェント
  1. 発売元はカルチュア・パブリッシャーズ
  2. 新盤DVD、Blu-ray(発売元:キングレコード)に収録