コロンバイン高校銃乱射事件

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テンプレート:Infobox 民間人の攻撃 コロンバイン高校銃乱射事件(コロンバインこうこうじゅうらんしゃじけん)はアメリカ合衆国コロラド州ジェファーソン郡コロンバインのジェファーソン郡立コロンバイン高等学校1999年4月20日に発生した事件。英語名は「コロンバイン高校の虐殺」。

トレンチコート・マフィアと自称する同校の生徒、エリック・ハリスとディラン・クレボルドが銃を乱射、12名の生徒および1名の教師を射殺し、両名は自殺した。重軽傷者は24名。アメリカの学校における銃乱射事件としては、犠牲者数において1966年に起きたテキサスタワー乱射事件に次いで大規模なものであった(当時、その後2007年に33人が死亡したバージニア工科大学銃乱射事件が起きた)。

背景

事件の舞台となったコロンバイン高校に在学していたエリック・ハリスとディラン・クレボルドは、この高校に入学してしばらくを経た頃からその卒業の頃までにわたって、同校の一部の生徒らのいじめの対象になっていたという。

校内のいわゆる人気集団のクリーク(派閥)の生徒らから毎日のように小突かれる2人の姿や、その人気集団の生徒らと深い親交を持つ女子生徒らが2人と一緒にいた女子生徒を嘲る、時に2人を直接嘲る場面などが日常的にあったとの証言があり、彼らの共通の知り合いでのちに独白録を出版もしたブルックス・ブラウンは、2人がファゴット(faggot/「オカマ野郎」「ホモ野郎」というような意味の罵り言葉)と罵られるところや、ハリスがロッカーに押し込まれるところ、2人が車の中から物を投げつけられるところなどを目撃している。

こうしたいじめの対象となっていたのはハリスとクレボルドのほかにもおり、そうした生徒らのうちの幾らかが一種の自警団としての結束を旨に、自身らを「トレンチコート・マフィア」と自称するようになる。ハリスとクレボルドはこの集団のリーダーと共通の友人であった。黒色のトレンチコートをシンボルとしたこの「トレンチコート・マフィア」に所属していた生徒らは、この事件が発生するより前にその全員が卒業ないしは退学している。

ブルックス・ブラウンは「日常的に行われていたそのいじめが、2人の絆を強くしていた」と語る。彼らを圧迫していた生徒らは、この高校で力を持つ(いわゆる「幅を利かせている」)者たちだった。事件の当日、2人は彼らのことを「ジョック」と呼んだ。

徴候

1997年、コロンバイン高校の生徒ブルックス・ブラウンの両親は、ハリスが彼らの息子を狙おうと脅しているのをハリスのウェブサイトで発見し、それを知らされたジェファーソン郡保安官マイケル・ゲーラはこのサイトの物騒な記述を見た。

ゲーラは捜索令状用の草案の宣誓供述書を書くことを決定した。しかし、宣誓供述書はファイルされなかった。この情報は、2001年9月まで公表されなかった(捜査令状が発行されなかったのは、家宅捜査をする十分となる根拠が無かったためであるが、ジェファーソン郡は存在自体を隠蔽した)。

ブルックス・ブラウンはのちに出版した独白録で、ハリスのこうした行動の背景にあったと考えられる感情についてのことを記している。当時のハリスには、自身の唯一無二の親友であったクレボルドが(ブラウンと交流することによって)自らのもとを離れてゆくかもしれない、という不安を抱いていた節があったという。

乱射:45分間の恐怖

1999年4月20日11時10分に、エリック・ハリスおよびディラン・クレボルドは各々の自動車でコロンバイン高校に同時に到着した。ハリスは学生用駐車場に駐車し、クレボルドは彼の割り当てではない教職員及び来客用駐車場に駐車した。それらの地点から彼らはそれぞれ一階カフェテリアに対する完全な視界を確保していた。また、両名とも学校の主な出口をカバーしていた。彼らは「A」ランチが始まる数分前にカフェテリアに入り、2つのダッフルバッグを置いた。バッグにはそれぞれ20ポンド (9kg) のプロパン爆弾が11時17分に爆発するようセットされていた。彼らがカフェテリアに入ったとき、丁度、管理者が防犯カメラのビデオテープを巻き戻してから新しいテープに交換していたため、爆弾設置の瞬間は録画されなかった。

彼らの当初の計画では、カフェテリアで爆弾を炸裂させ、そこから逃げてきた人たちを銃撃する予定であった。爆弾はカフェテリアの全てを破壊し二階の図書館を崩壊させるのに十分な威力を持っていた。彼らは爆弾の炸裂を待つために各々の自動車に戻った。計画は少なくとも500名の生徒を殺害する予定であった。

カフェテリアの爆弾は爆発せず、ハリスとクレボルドはハリスの自動車のそばで出会い、弾薬や爆弾の詰まったダッフルバッグを持ち、ハリスはソードオフに改造されたサヴェージ スプリングフィールド67Hポンプアクション式散弾銃ハイポイント995 9mmセミオートカービンを、クレボルドは9mm半自動拳銃イントラテック TEC-DC9、 スティーブンス311D水平二連短銃身散弾銃をそれぞれ入れたバックパックで武装しカフェテリアに向かった。彼らは校地で最も高い位置である西側入り口階段の上に行った。この有利な地点からカフェテリアの横側入り口は階段の下方にあった。学校の主な西側入り口は彼らの左側にあり、運動場は右側に位置した。

11時19分に、事件の目撃者はエリック・ハリスが「ゴー、ゴー」と叫ぶのを聞いた。その瞬間彼らは散弾銃を引き抜き、丘に座って昼食をとっていたレイチェル・スコットとリチャード・カスタルドに向かって銃を発射した。スコットは4発撃たれて即死、カスタルドは8発撃たれて重傷を負った。ハリスとクレボルドのどちらが先に発砲し、どちらがスコットを射殺したかは不明である。

続いてハリスはトレンチコートを脱ぎ、カービンを西階段の下側に向けた。ダニエル・ロアボーとショーン・グレーヴス、ランス・カークリンはちょうど西階段を上り始めていた。カークリンは彼らが突然銃撃するのを目撃し、ロアボーはグレーヴスに倒れ込み、銃弾がグレーヴスの足に命中した。その後犯人は2人を横切りカークリンに銃を向けた。3人とも負傷した。その後二人は向きを変え学校遠方の南側に銃撃を始めた。学校の西入口の反対側の小丘には5名の生徒が座っていた。マイケル・ジョンソンは銃撃を受けたが走って逃げることに成功した。マーク・テーラーは銃撃を受け地面に倒れ込んだが、彼は死んだふりをした。他の3名は無傷で逃げることができた。二人の銃撃中、ショーン・グレーヴスは立ち上がり足を引きずりながらカフェテリアの補助入り口へ階段を下って、ドアの前で倒れ込んだ。クレボルドはカフェテリアへ向かう階段を下りると、再びランス・カークリンを撃ち彼に重傷を負わせた。ダニエル・ロアボーは階段を下りようと努力を続け、伝えられるところによれば、内側に逃げようとする他の生徒のためにカフェテリアのドアを固定しようとした。クレボルドはロアボーのそばまで歩き、至近距離から彼の頭を撃った。彼はそのまま階段を下り、負傷してカフェテリア入口で倒れていたショーン・グレーヴスをまたいで中に入った。おそらくクレボルドは爆弾が不発に終った理由を確かめようとしたのだと推測される。クレボルドがカフェテリアに入ると同時に、ハリスは銃を階段の下に向け、カフェテリアの入り口近くに座る数名の生徒を銃撃し始め、走って逃げようとしたアン・マリーホフタルターを負傷させた。数秒後、クレボルドは上でハリスと会うために階段を上った。

階段の上でハリスとクレボルドは数ヤード離れたサッカー場のそばに立っている生徒達を狙い撃とうとしたが、それは失敗した。続いて彼らはパイプ爆弾を駐車場、屋根、東側の斜面に投げつけたが、どれも爆発しなかった。

キャンパス内で騒動を見ていた教員のパッティ・ネルソンは学生のブライアン・アンダーソンと西エントランスへ向かった。ハリスとクレボルドを見た彼女は、彼らがビデオを撮っているか、いたずらしていると思い、外に出て「やめなさい」と言おうとした。アンダーソンが外に出ようと一つ目の両開きのドアを開こうとしたので、ハリスとクレボルドは窓ガラスを撃った。アンダーソンは飛び散ったガラスで負傷、同じくネルソンは破片によって肩を負傷した。ネルソンは恐怖に怯えながらも素早く立ち上がって図書館のホールに入り、中にいる学生に、机の下に伏せて音を立てずにいるように警告した。それから彼女は911にダイヤルし、自分も図書館のカウンターの下に隠れた。アンダーソンは内外のドアの間に残された。

一方で11時24分頃、保安官が到着。負傷したブライアン・アンダーソンからハリスとクレボルドの気を逸らすため発砲した。アンダーソンはよろめきながらも、図書館に駆け込み、職員休憩室に入って事態が終わるまでそこに残った。ハリスは保安官に十発発砲した。保安官はコード33(緊急支援要請)を無線で連絡した。ハリスとクレボルドは保安官の銃が作動不良を起こした隙をつき、学校に走った。二人は北通路を下って進みながら出会う人間に発砲し、爆弾を投げた。その間、学生のステファニー・マンソンが足首を撃たれたが、彼女はこの学校から、通りの向こうの家にたどり着くことができた。二人はそれから学校の東エントランスのガラスに向け発砲した。しばらくして彼らは図書館通路へ向け西エントランスの方へ戻った。彼らはホールを通り抜ける間、出会う学生に向け発砲を繰り返した(この間、負傷者は出なかった)。

その直前に、ウィリアム“デイブ”サンダーズ監督は学生たちと二階への階段を通ってカフェテリアから避難した。階段は中央南通路内の図書館通路から角を曲がった所にあった。彼らが角を曲がって図書館通路を降りていた時、ハリスとクレボルドが北通路から角を曲がって来るのが見えた。ハリスとクレボルドは素早く振り返ると角を曲がって来て一団に発砲した。南通路に来ていたサンダーズは胸を撃たれた。被弾しなかった学生たちは第1科学室へと走り、中の教師に警告した。サンダーズはなんとか第3科学室に入り、二人の生徒の応急処置を受けた。生徒は外部へ連絡を取ろうとしたがサンダーズは午後3時頃に死亡した。

図書館の惨劇

ハリスとクレボルドが銃撃を続けている間、パッティ・ネルソンは救急隊に電話をかけ、自分が分かる限りの状況を説明しながら学生を机の下に隠れさせようとしていた。記録によると、午前11時25分05秒に911のオペレーターがネルソンの電話を受けている。ハリスとクレボルドが図書館に入ってきたのはその4分10秒後だった。ハリスとクレボルドは図書館に入る前に南通路で2つのパイプ爆弾を階段からカフェテリアに放り込んだ。爆弾は両方爆発した(その爆破の映像は監視カメラの記録に収められている)。彼らは爆弾をもう一つ図書館通路に放り込み、ロッカーの一部を破壊した。11時29分、二人は図書館に侵入した。中には52人の学生、2人の教師、2人の図書館スタッフが隠れていた。

ハリスは図書館に入るとカウンターの反対側から本棚を撃った。この銃撃で本棚に隣接しているコピー機の下で隠れていた学生、エヴァン・トッドが負傷した。ハリスは、「起きろ!」と大声で叫んだ。その声はネルソンがかけていた911の記録 (11:29:18) に残るほど大きかった。職員休憩室に隠れていたスタッフと学生は彼らが「白い帽子か野球帽をかぶっている奴は全員立て!」とか「ジョックは全員立て! 俺たちは白い帽子の奴を捕まえる!」(コロンバインでは運動部員は白い帽子をかぶる伝統がある)と言うのを聞いていた。誰も立ち上がらず、ハリスの「いいだろう、どっちにしろ撃つぞ!」と言う声が聞こえると、二人はそれから図書館の反対側へ進んだ。トッドはカウンターの下に隠れてやり過ごした。カイル・ベラスケスは、コンピュータが置かれた北の(または上の)列の机の下に体を丸くして隠れていた。彼は机の下から動かなかった。クレボルドは最初に彼の頭を後ろから撃って殺害した。二人はコンピュータ席の南列で自分たちのダッフルバッグから弾薬を取り出し、銃に再装填を始めた。彼らは外側の階段に面している窓へ歩いて行くと、学生を避難させている警察に警告を与えるため、窓越しに発砲した。これに対して警官側も応戦した。

数秒後にクレボルドは窓に背を向けて、ショットガンを近くのテーブルに隠れていたパトリック・アイルランド、ダニエル・スティプレトン、マカイ・ホールに発砲し、負傷させた後、着ていたトレンチコートを脱いだ。ハリスは自分のショットガンを持つと、コンピュータ受付の下の列まで歩き、最初の机の下に誰がそこに隠れているか確認せずに銃を向け、発砲した。この銃撃でその場所に隠れていたスティーブン・カーナウが死亡した。カーナウはこの銃撃で死亡した中で最も若い14歳だった。ハリスは続けてコンピューター受付の下に発砲し、ケイシー・ルーゲスガーを負傷させた。ケイシーは右腕に『バン、バン、バン』と三発銃撃を受けた(ケイシーは事件の後の取材で撃たれた瞬間自分の腕ではないような感覚だったと話している)。ケイシーは撃たれた後ハリスに『ビッチになるなよ』と言われ再び銃撃された。弾丸は左首筋を横切った。

さらにハリスが南のコンピュータ列の向かいのテーブルまで歩き、キャシー・バーナルを脅して跪かせると、頭部を撃って射殺した。この直前にハリスは頭の上で手を二回叩き、「(隠れん坊の遊びのように)見ぃつけた」 ("peek-a-boo") と言ったとされている。この銃撃の際、ハリスは発砲した反動で銃を顔面にぶつけ、鼻を負傷した。

ハリスはそれから次のテーブルに向かい、学生のブレー・パスクァーレ(十分な場所がなかったので、彼女は隠れられなかった)のいるテーブルの隣に座った。ハリスは「死にたくないか」などということを彼女に尋ねた。目撃者はハリスは直前に顔に負傷したために方向感覚を失っていたのではないか、という。ハリスがパスクァーレをなじる間にパトリック・アイルランドは彼の近くにいた2人の負傷者(ダニエル・スティプレトン、マカイ・ホール)のうちの1人に応急手当を与え始めた。これを見たクレボルドは彼の頭に2発と足に1発発砲し、アイルランドの靴を吹き飛ばした。アイルランドは意識を失ったが奇跡的に生き残ることが出来た。

クレボルドはテーブルの下に隠れているアイゼア・ショールズ、マシュー・ケッター、クレイグ・スコット(3人とも学校の人気のスポーツ選手で、クレイグはレイチェル・スコットの弟)を発見。ショールズを連れ出そうとしたが出来ず、ハリスを呼び出した。ハリスはパスクァーレから離れ、クレボルドと合流した。2人は数秒間ショールズを罵った(目撃者はクレボルドが人種差別発言をしていたという)。直後にハリスはショールズを、クレボルドはケッターを狙ってそれぞれ発砲し、二人を射殺した。クレイグ・スコットは死んでいるふりをして無事にやり過ごした。ハリスは、それから二酸化炭素爆弾をホール、スティプレトン、アイルランドがいるテーブルの方に投げた。爆弾はすぐにホールが拾って遠くに投げたため、爆発で誰も負傷することはなかった。

続いてハリスとクレボルドは図書館の本棚とテーブルの周りを歩きながら本棚やテーブルに発砲した。クレボルドの銃撃でマーク・キントジェンが負傷、更にクレボルドはテーブル下に隠れていたリサ・クローツ、ヴァレーン・シェナー、ローレン・タウンゼンドに発砲。クローツとシェナーを負傷させ、タウンゼンドを射殺した。

一方、ハリスは2人の女子生徒が隠れていたテーブルへ行き、覗き込んで「哀れだな」と冷たい視線を送った。ハリスとクレボルドは空いたテーブルへ行き、再び銃器の再装填を行った。そこで負傷していたヴァレーン・シェナーが「ああ、神さま! 私をお助けください」と叫んだ。クレボルドはシェナーの方へ行くと、彼女に神の存在を信じるかどうか尋ねた。彼女は答えに詰まり、一旦はノーと言ったがイエスと言い直した。クレボルドが理由を尋ねると彼女は自分の家族が信じているものであるから、と言った。クレボルドはシェナーを罵ってその場から離れた。この現場を目撃していた人々から、このやり取りをしたのはシェナーではなく、前述の死亡したキャシー・バーナルではないか、という情報も出ていた。そのため、事件後に議論を呼ぶこととなった。

ハリスは別のテーブルの下にカービン銃で2度発砲、ニコル・ノーレンとジョン・トムリンを負傷させた。トムリンは外へ這い出ようとしてそれを見たクレボルドに蹴られた。ハリスがトムリンを罵った直後、クレボルドはトムリンに向け連続で発砲し、射殺した。ハリスは死亡したローレン・タウンゼントが倒れているテーブルの向こう側に歩いて戻り、テーブル下に隠れていたケリー・フレミングに向けてカービン銃を連射、射殺した。ハリスは再びクローツと死亡しているタウンゼントの方に撃ち、近くにいたジェアナ・パークを負傷させた。

11時37分頃、ハリスとクレボルドは図書館の中心へ移り、テーブルで武器の再装填を行った。クレボルドは近くにいた学生に気付き、自分の名を名のるように言った。その学生はクレボルドの顔見知りであるジョン・サヴェージだった。サヴェージがいったい何をしているのかと聞くとクレボルドは「ああ、ただの人殺しだ」と答えた。サヴェージは自分も殺すのか聞くと、クレボルドは戸惑った後、サヴェージに図書館から出るように言った。サヴェージは図書館の入口から無事に脱出した。サヴェージが去ったあと、ハリスはカービン銃で近くにいたダニエル・モーゼルの顔面を至近距離から撃ち、殺害した後に移動、生徒たちが隠れていそうな北の方向のテーブルにむけて銃を連射した。この銃撃でジェニファー・ドイルとオースティン・ユーバンクスが負傷、コーレイ・デポーターが致命傷を受け、後に死亡した。

二人はそれからテーブルから立ち去って、図書館のカウンターに向った。ハリスは図書館の南西の端へ火炎瓶を投げたが炸裂しなかった。カウンターにまわる途中で二人は先の銃撃で負傷していたエヴァン・トッドを見つけた。二人はトッドに『お前はジョックか?』と聞いた。トッドは『ノー』と答えた(トッドはフットボール選手だったが嘘をついた)。そしてハリスがトッドに『死にたいか』と聞くとトッドは『君たちはこれまでトラブルを起こしたことはないだろ?』と云った。それを聞くと二人の少年は去って行った。クレボルドは職員休憩室の方へ発砲し、小型テレビを破壊した。ハリスは、椅子をカウンターのパソコンの上部の上にドンと置くと、11時42分頃に図書館から出て行き、殺戮を終えた。

ハリスとクレボルドが図書館を出た直後、無傷の34人と負傷した10人の学生は北入口から避難した。パトリック・アイルランド(負傷して意識がなかった)とリサ・クローツ(負傷して動けなかった)は図書館に残された。パッティ・ネルソンはクレボルドが銃撃した職員休憩室に走った。そこには負傷して逃げ込んでいたブライアン・アンダーソンと3人の図書館スタッフがおり、彼女もその中に加わった。彼女たち5人は事態が終わる午後3時30分頃までそこに隠れていた。

犯人たちの自殺

ハリスとクレボルドは図書館を出た後、科学室があるエリアに向かい、小さな焼夷弾を空の倉庫部屋に放り込み、炸裂させた。彼らが通り過ぎた後、隣接した部屋にいた教師が消火を行った。二人は南通路を進み、第8科学室(誰もいなかった)に向けて発砲した。次に彼らはカフェテリアに階段を下って入ってきた。ハリスはプロパン爆弾のうちの1つをカービン銃で撃ち、爆発させようとしたが果たせなかった。ハリスはテーブルに残されていた飲み物を一口飲むと火炎瓶を投げた。最初、火炎瓶は炸裂はしなかったが、二人が階段を上ってカフェテリアから去った後、火事を引き起こした。この火事は備え付けのスプリンクラーで消火された。カフェテリアでの一件は防犯カメラに映っており、二人の行動は映像記録となった。彼らは11時50分過ぎにカフェテリアを去り、学校の主な南北通路の周りに向かい、あてもなく発砲した。彼らは、南通路を渡り、教室を通り過ぎ、中央事務所へ入った。その間、二人は教室のドアの小さな窓から中を見て、中の学生と目を合わせたが、中には入らなかった。二人は事務室を出た後にバスルーム入口に入り、「そこにいることはわかっている」、「俺たちは見つけた奴はすべて殺す」と言った。しかし、バスルームの中には入らなかった。11時55分に二人は再びカフェテリアに現れ、調理場へ行き、3分後に南廊下へ引き上げた。

午後0時2分、ハリスとクレボルドは再び図書館に入った(カフェテリアから図書館に来るまでに何をしていたかは不明)。図書館からは既に意識を失っていたパトリック・アイルランドと負傷して動けないリサ・クローツ(クローツは死んだふりをしていた)以外の生存者はすべて逃げ出していた。二人は窓越しに警官と撃ち合おうとしたが無駄に終わり、マシュー・ケッターとアイゼア・ショールズの遺体のそばに行き、自らの銃で自分を撃ち、自殺した。午後2時38分に、パトリック・アイルランドは意識を回復し、窓の方へ這っていった。彼は外で待機していたSWAT隊員によって窓から救出された。リサ・クローツは警察が踏み込んでくる午後3時25分まで図書館の中におり、職員休憩室に隠れていたパッティ・ネルソン、ブライアン・アンダーソンと3人のスタッフと共に彼女は救出された。

午後4時に保安官は当初、学生や教師の死者は25人と発表した。午後4時30分に学校は安全であると宣言されたが、午後5時30分に別の爆薬が発見され、再び警察が向かった。午後6時15分までに駐車場の自動車にしかけられた爆弾が発見され、午後10時45分除去作業が行われたが起爆させてしまった。幸い、自動車が破壊されただけで負傷者はいなかった。

最終的に12人の学生と1人の教師が殺害され、24人の学生が負傷。また、3名の学生が避難の際に負傷した。ハリスとクレボルドが自殺するまで約45分の出来事だった。

警察の過失と不当な対応

この事件に関しては、事件前、事件時、事件後と、以下のような警察の過失や不当な対応が問題となった。

  • (前述の通り)、事件前に報告されていたハリスの殺人予告のウェブサイトを、警察はファイルせず、事件後もこの事を隠蔽した。
  • 警察はハリスとクレボルトが銃撃しているとき、現場の状況が十分に確認できていたにも拘らず、ストーン保安官の指揮官決定に従って応戦せずに傍観していた(負傷した教師のデイヴ・サンダースは、他の生徒らが懸命に助けようとしていたにも拘らず、警察の突入が無く、数時間後に大量出血で死亡してしまった)。
  • 警察は犠牲者の遺体を、翌日まで現場に放置した。この事に関して警察側は「犯人らが偽装爆弾を仕掛けた可能性があったため安易に中に入れなかった」と説明しているが、逃げ出した生徒達の証言により偽装爆弾などの可能性は無かった事が示唆されていたことが分かった。
  • 事件後の捜査で、捜査チームの一員であったストーン保安官は、犯人2人の友人であったブルックス・ブラウンを、「犯人らと長いつながりがあった」という理由だけで、長期にわたり捜査対象とし、マスコミにも「ブルックスも事件に関与している」と話していた。その事でブルックスは、事件後の町ではしばらくの間、ひどく容疑者扱いされた。
  • ストーン保安官は、犠牲者であるダニエル・ロアボーの衣服を、他の犠牲者の衣服を遺族に返していたにもかかわらず、「生物学的有害物質であるため」返却しなかった。そもそも警察には、捜査が終了していない段階で証拠品を返す義務は無かった。
  • 警察が公表した事件の報告書には、いくつもの間違った記述がされていた。そのひとつである、ブルックスが事件前後にいた位置については、ブルックスは「警察が、いかにも自分が怪しいと人々に思わせる為に、わざと位置を間違えて公表した」と、自著に書いている。
  • 警察は、犯人らが事件直前に撮影した、「犯行動機などを説明したビデオ」を長期にわたり公表せず、その事で多くの誤った憶測を広めた。
  • 警察らの調査に不満を感じた生存者や犠牲者の家族などが、事件後に第三者などによる再調査を求め、立法機関の委員会で決を採ったが、これは否決された。これには、事前に警察が委員に圧力をかけていたとの説もある。

銃器

エリック・ハリスが使用した銃器

ディラン・クレボルドが使用した銃器

イントラテック TEC-DC9

禁止命令が出る前に製造され、DO76305という製造番号を打たれたこのテック9は、1997年にコロラド州デンヴァーに住むロイス・スペインという男が手に入れていた。彼は銃の販売許可証をもって銃砲店を経営していたが、商売が思わしくなく、店を畳んで許可証も返上し、在庫品は自分のコレクションにした。そして、年に十回開かれるガン・ショーにそのコレクションを出品し、売りさばいた。

地方で開かれるガン・ショーとは、銃のガレージ・セールのようなもので、そこで銃を売るのに販売許可証は必要としない。

デンヴァーのガン・ショーでロイスのテック9を手に入れたのは、22歳のコンピューター技師、マーク・メインズであった。しかし、母親が銃砲規制に携わる仕事についていたため隠し持っているしかなく、逆に処分に困ってしまった。そんなとき、ピツァ・バーラーで働いていた友人のフィリップ・デュランから耳寄りな話を聞いたのである。テック9を欲しがっている男たちがいる、と。

そして、1999年1月23日、再び開かれたガン・ショーで、その男たち二人に会い、その銃を自宅で売ることにした。自宅で売ることにしたのは、買い手のその男たちがまだ17歳だったからである。値段は、500ドル。これを買ったのが、エリック・ハリスとディラン・クレボルドである。

むろん、未成年者に銃を売ることは違法である。そして、この大量殺人事件で逮捕、起訴されたのはマーク・メインズとフィリップ・デュランの二人だけである。

抗鬱剤の影響の疑い

エリックの遺体を検死したところ、体内からフルボキサミンの成分が大量に検出された。このフルボキサミンをはじめとする抗鬱剤 (SSRI) は、24 歳以下の若年者が服用した場合に攻撃性や衝動性を増長するという副作用が報告されていたため、事件との関連が疑われた。実際、精神的な不安定さを抱えていたエリックは、精神科医からフルボキサミン(製品名「ルボックス」)を処方されていた[1]

事件後、被害者遺族らがルボックスの販売会社(ソルベイ社)を告訴したものの、ルボックスの服用と事件との因果関係は証明されなかった。ただし、米国内では裁判を通じてルボックスに対する風当たりが強くなり売り上げも激減し、2002 年より販売中止となったが、数年後販売が再開された。日本においても児童に対して無差別殺傷事件を起こした宅間守元死刑囚が SSRI を服用していたことが報道されている[2]

関連事項

コロンバイン高校の近くにはロッキード・マーティン社のミサイル工場があり、同校の生徒の両親の多くもこのミサイル工場で働いている。事件当日はアメリカ軍がコソボに対して最大の爆撃を行った日であり、時の大統領、ビル・クリントンは爆撃作戦の成功を伝える会見を開いたわずか1時間後に銃乱射事件について「痛ましい事件が起こった」と会見を開いた。

この事件から10日後、全米ライフル協会は近くのコロラド州デンバーで銃所持の権利を主張する集会を開いた(ただし、この集会は事件の発生する以前より予定されていたものである)。

後の2012年に発生したオーロラ銃乱射事件映画館内の銃乱射事件)、2013年に発生したアラパホー高校銃乱射事件の現場は、コロンバイン高校から20-30キロ圏内という位置関係である[3]

関連する記事・事件

  • ボウリング・フォー・コロンバイン - 本事件を題材としたドキュメンタリー映画。
  • コロンバインの空に - 射殺されたローレン・タウンゼントの家族をモデルにしたTVムービー。ただし、本事件は間接的に登場するだけで、ストーリーの中心になっているわけではない。
  • エレファント (映画) - 本事件を題材にした映画。
  • ダイアナの選択 - 本事件を髣髴とさせる乱射事件で生き残ったヒロインを描いている映画。
  • スーパーコロンバイン大虐殺RPG! - 本事件を題材とし、犯人らの行動を追体験することを目的とした同人ゲーム。
  • バスケットボール・ダイアリーズ - 麻薬依存の少年が更生するまでを描いた作品だが、ワンシーンで学校での銃乱射を模写していたために本事件に影響を与えたと非難された。
  • ジョック - 体育会系を中心とした学園内の上流階級。犯人は彼らに劣等感や恨みといった特別な感情を抱いていた。
  • 銃社会 - 銃規制
  • TEC-DC9 - 犯人の一人が使用したセミオート化された短機関銃
  • バージニア工科大学銃乱射事件 - 2007年4月に発生。被害規模がコロンバイン高校の銃乱射事件を上回った。この事件の犯人である在米韓国人のチョ・スンヒはコロンバイン高校銃乱射事件容疑者2名を「殉教者」と言っていた。
  • テキサスタワー乱射事件 - 1966年8月1日にテキサス大学で発生した銃乱射事件。死者14名、負傷者30名とコロンバイン高校銃乱射事件、バージニア工科大学銃乱射事件が発生するまで米国史上最悪の事件であった。
  • マリリン・マンソン - 本事件の犯人が愛聴していたアーティストとされ、不条理なバッシングを受けた。
  • ポスタル - この事件以降、アメリカでこのゲームの発売が禁止された。また、この事件とこのゲームとの類似性が疑われている。
  • ZERO DAY - 本事件をドキュメンタリー風に描いた映画。
  • YouTube - アップロードされている犯人の最後の映像はZERO DAYの映像であり俳優が演技をしている映像である。また実際は上にも書いてあるように図書館で自決しているのが真実である。
  • ナイトウィッシュ -アルバム「ウィッシュマスター」に収録されている「ザ・キンスレイヤー」は当事件をモチーフにして作られた曲である。

参考文献

脚注

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関連項目

外部リンク

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  1. カニングハム久子「対応に苦悩するアメリカの教育現場」『教育ジャーナル2007年8月号』61頁。
  2. 週刊新潮 2009年5月28日号
  3. テンプレート:Cite news