エコール・ポリテクニーク
エコール・ポリテクニーク(École polytechnique)は、フランスの理工系エリート(テクノクラート)養成のための高等教育機関で、グランゼコールのひとつ。
概要
エコール・ポリテクニーク(École polytechnique)は、フランスの理工系エリート養成のための高等教育機関で、フランス最古のグランゼコール。
ナポレオン・ボナパルトが、1794年にフランス革命後の技術将校の不足に対処するために軍に所属させた学校で、現在も国防省が所管する。但し、あくまでそれは歴史的経緯であり、エコール・ポリテクニーク(École polytechnique)は、軍事系グランゼコールではなく理工系グランゼコールであり、士官養成のためにサン・シール陸軍士官学校や海軍士官学校、空軍士官学校など軍事系のグランゼコールが別に存在する。初代校長はジョゼフ=ルイ・ラグランジュが就いた。また、エコール・ポリテクニークで数学教師を勤めていたアンドレ=マリ・アンペールが右ねじの法則を発見したことは著名である。校舎はもともとフランスの首都パリに存在したが、1976年に移転し、現在はエソンヌ県パレゾー市に本部を置く。
世界中にエコール・ポリテクニークをモデルとした学校・大学が存在する。
1学年は約500名であり(フランス人400名、留学生100名)、修了年限は5年。ただし、最初の1か月は軍事教練であり、その後に軍隊、警察、消防隊、官庁などに派遣されて、6か月間の体験研修を受ける。
入学時に少尉に任官され、1年生は800ユーロ、2年生から卒業までは1000ユーロ給料が支給されるテンプレート:要出典。2年生、3年生はエソンヌ県パレゾー市の校舎敷地内で2年間の全寮制寄宿生活であり、4年時には他のグランゼコールに派遣され、派遣された学校のマスターのディプロムを授かる。成績上位100番ぐらいまでの成績優秀者は、派遣された校名の前にⅩが付けられ区別され(X-Mines、X-Pontsなど)、基本的には卒業後高級官僚になる。5年生時は企業研修や海外留学を経験し、卒論を提出し終了するテンプレート:要出典。学生やディプロム授与者はポリテクニシャン(polytechnicien)と呼ばれる。
日本では「理工科学校・理工科大学」と訳されることが多い。 1994年1月に東京大学工学部と国際交流協定を結んでいる。
2007年からParisTechに加盟している。
入学までの道
入学試験:高校を卒業後、Classes Preparatoires aux Grandes-Ecoles(略称Prepaプレパ)と呼ばれる2年間の予備学校に通う。(プレパには大抵全寮制の設備もあるが、通いの生徒もいる)プレパで2年準備をした夏に全国試験を受ける。試験には2つのパートがあり、まずは筆記試験で全フランスにおける順位が発表される。そこから上位の者だけが口述試験に臨む。口述試験の結果が筆記試験の点数に加算され、最終的な全国での順位が決定する。毎年400名前後が入学する。試験に落ちた場合、翌年再挑戦が出来る。再挑戦の場合、ペナルティポイントが課され順位が落ちることがある。入学者の半数は二度目の挑戦で入学しており、入学には年齢上限があるが、大抵の受験者は2度目の失敗で諦める。3度目の受験で受かる人間はごく少数。
プレパにおける準備:週に30時間程度の授業、10時間の数学、10時間の物理、10時間の科学に加え、コンピューター・サイエンス、フランス文学と英語についても勉強する。授業の他に大量の宿題を課される。毎週、4時間の試験があり(週によって教科は変わる)、クラス内の順位が発表され、この順位は準備期間中ずっとついて回る。週に2~3回(各々1時間)Kholles(コール)と呼ばれる口述試験がある。コールには1人の教授に対し3人の学生が対峙し、教授に出されたそれぞれの質問に黒板を使って説明しながら答える。
試験内容:筆記試験は4時間の数学が2回、4時間の物理が2回、フランス語の論述、英文翻訳、そしてコンピューター・サイエンス、工業化学、化学の中から1教科を選択。1週間続く。だいたい一か月後に筆記試験の順位が発表され、上位の者が口述試験に呼ばれる。口述試験は数学に2コール、物理2コール、科学2コール、フランス語1コール、英語1コールとなる。筆記試験の過去問題はポリテクニークの準備用ウェブサイトで発表されている。
正装
学生の正装(Grand Uniforme)は、赤いストライプの入った黒ズボン(女性の場合はスカート)と金のボタンとベルトの付いた上衣、それにナポレオンも着用していた[コックドハット(en:Cocked hat)」と呼ばれる二角帽子である。女子学生はかつては三角帽子を着用したが現在は男子学生と同じく二角帽子を着用している。
著名な出身者
- アルベール・カコー(土木技術者・建築技術者・航空技術者。コルコバード山頂のキリスト像の内部構造設計など。)
- アルフレド・ドレフュス(軍人)
- アルベール・ルブラン(政治家。フランス第三共和制第15代大統領。元フランス大統領)
- アンドレ・シトロエン (シトロエン創業者)
- アンドレ=マリ・アンペール(物理学者。出身者ではなく、数学講師からのちに同学物理学教授となった。)
- アンリ・ナビエ (数学者・物理学者。後に同校教授。)
- アンリ・ベクレル (物理学者。放射線の発見者。ノーベル物理学賞)
- アンリ・ポアンカレ (数学者・哲学者)
- ヴァレリー・ジスカール・デスタン (元フランス大統領)
- エミール・クラペイロン (物理学者)
- オーギュスタン・ジャン・フレネル(物理学者・土木技術者。フレネル回析)
- オーギュスタン=ルイ・コーシー (数学者、「コーシー列」、「コーシーの平均値の定理」、「コーシーの積分定理」、「コーシー・リーマンの関係式」など)
- オーギュスト・コント (社会学者)
- ガスパール=ギュスターヴ・コリオリ(数学者・物理学者。「コリオリの力」など)
- カルロス・ゴーン (日産自動車社長兼CEO)
- クロード・エルフェ(ピアニスト)
- シメオン・ドニ・ポアソン (数学者・物理学者。後に同校教授。「ポアソン比」、「ポアソンの法則」、「ポアソン分布」など)
- ジャン=ポール・アルトマン(SafranCEO)
- ジェラルド・ムストラル(GDF SuezCEO)
- ジュール・ブリュネ(軍人)
- ジョゼフ・ジョフル(軍人、第一次世界大戦初期のフランス陸軍総司令官)
- ジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサック(化学者・物理学者。シャルルの法則、ゲイ=リュサック度数)
- ジョルジュ・ソレル(社会主義者、革命家)
- ディディエ・ランバール (France TélécomCEO)
- ニコラ・レオナール・サディ・カルノー (化学者・物理学者)
- ピエール・ガドネクス (EDFCEO)
- ピエール・シェフェール (作曲家)
- フェルディナン・フォッシュ (軍人。第一次世界大戦時の連合国軍総司令官)
- ブノワ・マンデルブロ (数学者・経済学者・自然科学者)
- ベルナール・アルノー(LVMH会長)
- ポール・アンドリュー(建築家。、パリ空港公団(ADP)副総裁)
- マリー・フランソワ・サディ・カルノー(政治家。第三共和政第4代大統領。元フランス大統領)
- ミシェル・ペベロー(BNP ParibasCEO)
- モーリス・アレ(経済学者、物理学者。ノーベル経済学賞受賞)
- ルイ=エミール・ベルタン(技術者)
- レオンス・ヴェルニー(技術者、横須賀造船所所長)
外部リンク
- Official website in English (英語)
- Official website in French (フランス語)
- Online alumni community (フランス語)