スペイン語

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テンプレート:Infobox Language スペイン語(スペインご、español)もしくはカスティーリャ語(カスティーリャご、castellano)は、インド・ヨーロッパ語族イタリック語派に属する言語。略して西語とも書く。

解説

スペイン語は、世界で約4億2千万人の人々によって日常的に話されており、ラテンアメリカ地域における国際共通語である。スペイン語を公用語としている国と地域の数は20以上あり、世界で英語(約80の国・地域)、フランス語(約50の国・地域)、アラビア語(約27の国・地域)に次ぐ4番目に多くの国で使用されている言語である。国際連合においては、英語、フランス語、中国語ロシア語アラビア語と並ぶ、6つの公用語の1つである。インターネットにおいては、利用者全体の約8%がスペイン語使用であり、英語(約27%)と中国語(約23%)に次ぐ第三の言語である[1]。(インターネットにおける言語の使用参照)

日本では、一般的にスペイン語と呼ばれることが多いが、イスパニア語と呼ばれることもある[2]。日本におけるスペイン語の漢字表記は「西班牙語」。漢字表記を略して西語と表記されることもある。スペイン語において「スペイン語」を意味する名詞は、“castellano”(カステリャーノ、もしくはカステジャーノ[3]) または“español”(エスパニョール)。エスパニョールはスペイン (España) の言葉という意味。カステリャーノはカスティーリャ地方の言語という意味。南米ではカステジャーノということが多く、メキシコなど中米諸国とカリブ海諸国ではエスパニョールしか使われない。カステリャーノという名称は、スペイン国内で地方言語を使う地域においては「自分たちの言葉ではない他所者の言葉」という意味で使われる。南米では逆に「本場カスティーリャから受け継いだ正しいスペイン語」という意味で用いられる。

スペイン語はポルトガル語と似ており、かなりの水準で相互意思疎通が可能である(詳細はポルトガル語#スペイン語との比較にて)。

歴史

スペイン語は、ローマ帝国の公用語であったラテン語口語である俗ラテン語を元に、アラビア語などの影響を受けながら発達した言語である。8世紀に北アフリカからイスラム教徒イベリア半島に侵入し、その後、キリスト教徒によるレコンキスタ(再征服運動)が起こるが、この時期に俗ラテン語がロマンス諸語に変化した。このロマンス諸語が後に、ポルトガル語、スペイン語、イタリア語フランス語ルーマニア語などに分かれていく。

イベリア半島では、アラビア語の影響なども受けながらイベリア系ロマンス語が発達し、カスティーリャ、レオン、ポルトガル、そしてイスラム系タイファ王国などで使用されていた(タイファ王国ではアラビア語のアンダルス方言も広く使用され、その影響を強く受けたロマンス語をモサラベ語と呼ぶ)。やがてレコンキスタの過程でカスティーリャ王国はその中心的勢力となり、スペイン王国の誕生後は事実上統一スペイン国家の国家語となった。このため、現在でもスペイン語のことをカステリャーノ (castellano) と呼ぶ人は多い。

この歴史的経緯により、文法などはラテン語の規則を多く受け継いでいるが、単語はアラビア語から借用したものも多く使われている。(とりわけアンダルシア方言は最も強くアラビア語の影響を受けた)スペイン語の中のアラビア語起源の単語は主に、

がある。またイベリアのムスリムの間ではスペイン語もアラビア文字で表記されることが少なくなかった。イベリア半島のムスリムはベルベル人が多かったため、ベルベル語の影響も存在している。なお、同じイベリア半島で話されている言語であるバスク語はローマ帝国やケルト人の進出以前から半島で使われていた言語と思われ、スペイン語とは大きく異なる。しかし、スペイン語はバスク語の影響も受けている。

音韻対応

語頭にあった f の多くは h になり、その後発音上は消滅[4]。強勢のある e, o の多くは ie, ue に二重母音化。-ct- の多くは -ch- に変化。-ll- はフランス語の -ill-, イタリア語の -gli- に対応する。cl-, pl- の多くは ll に変化。現在の音素 テンプレート:IPA2 は古くはç テンプレート:IPA2, z テンプレート:IPA2 であり、別音素だった。語頭の s + 閉鎖音は前に e が付加(prótesis)され、esc-/esqu-, esp-, est- となった。母音間の d は消滅していることが多い。語頭にあるあとに母音が続く i と母音にはさまれた強勢のない i は y に変化した。y は本来半母音だったが、摩擦音で発音されるのが一般的になった。二重母音における テンプレート:IPA2 の音は英語のそれと同じように語頭や語中では -i, 語末では -y とつづる(他のロマンス系言語の多くは y は外来語以外に用いない)。v は古くは テンプレート:IPA2 と発音したが、b と同じ テンプレート:IPA2 に変化し、その後、借用語において原語の v のつづりを b に置き換える傾向がある。一方、w は v に置き換えられることがある。

方言

かつてはアラゴン地方(アラゴン語)、カタルーニャ地方(カタルーニャ語)、バレアレス諸島(カタルーニャ語)、バレンシア地方(バレンシア語)、アストゥリアス地方(アストゥリアス語)、レオン地方(レオン語)、ガリシア地方(ガリシア語)の言語がスペイン語(カスティーリャ語)の方言とされた時期もあったが、現在では、カタルーニャ語、バレンシア語、ガリシア語はいずれも独立した言語であると考えられており[5]、それぞれの地方において公用語とされている。アラゴン語、アストゥリアス語、レオン語もカスティーリャ語から派生した言語ではなく、その他のロマンス語同様、俗ラテン語が変化して今日に至っている言語であり、言語学的には別の言語であるが、カスティーリャ語の方言の扱いを受けることが多いのが現状である。

話者分布

ファイル:Knowledge of Spanish EU map.svg
EU加盟国および各自治体の住民におけるスペイン語への理解度
濃黄色が母語地域、以下50%以上、20-49%、10-19%、5-9%、5%未満(灰色はEU非加盟国・地域)

スペイン語は国連の6つの公用語(他は英語フランス語ロシア語中国語アラビア語)の一つであり、スペインを始め、中南米18ヵ国、北米一ヵ国、アフリカ1ヵ国、計20か国における公用語である。スペイン語が公用語である国・地域は以下の通り。

なお、スペインではカタルーニャ州バレンシア州バレアレス諸島州ではカタルーニャ語(バレンシア州ではヴァレンシア語)が、バスク州ナバーラ州の一部ではバスク語が、ガリシア州ではガリシア語が、スペイン語同様に地方公用語として認められている。

中南米では、ガイアナスリナムハイチなどを除く多くの国で使われている。なお、英語が唯一の公用語であるベリーズにおいても最も話されている言語はスペイン語である。ポルトガル語が公用語であるブラジルでも第二言語として広く一般に話されている。

また、米国ではかつて南西部一帯がメキシコ領であった関係でスペイン語の地名が各地に残っており、ニューメキシコ州ではスペイン語が事実上の公用語となっている。中南米のスペイン語圏諸国をルーツに持つ米国人は「ヒスパニック」、もしくは「ラティーノ」(ラテン系米国人[6]と呼ばれ、メキシコ領時代から存在していたものの、近年急速にヒスパニック移民が増加した。その結果、米国では事実上の公用語の英語に加え、ヒスパニックの割合の高いカリフォルニア州フロリダ州テキサス州などではスペイン語が第二言語となりつつある。この状況を受けて、英語が母語の米国人の中でもスペイン語を学ぶ人が急増している。

フィリピン1898年までスペイン領であった関係もあり、特に上流階級の間でスペイン語が使われていたが、1986年に公用語から外された。とはいえ、現在でも主にカトリック文化などの関係でスペイン語の単語が多数フィリピン人の日常生活で使われているだけでなく、タガログ語などでスペイン語からの借用語が多くみられるほか、チャバカノ語のようにスペイン語を基にしたクレオール言語も見られる。

マリアナ諸島チャモロ語は、スペインによる征服時に言語的にもスペイン語に圧倒された。スペイン語から非常に多くの借用語を取り入れたのみならず、固有の数詞も放棄し、スペイン語由来の数詞を用いている。

音韻

スペインで話されているスペイン語とラテンアメリカのスペイン語では、発音、アクセントが若干異なる。それ以外にも、地方により発音などに差異が出ることがある。

母音

母音は a, e, i, o, u の5つで、日本語とほぼ同じである。ただし、u は日本語の「う」よりも口をすぼめて発音する。

長音、促音は無いが、アクセントのある母音はやや長めに発音されることが多いので日本語話者には長音に聞こえることがある。

二重母音・三重母音

母音のうち a, e, o を強母音、i (語末の y を含む)、u を弱母音とする。強母音 + 弱母音、弱母音 + 強母音、弱母音 + 弱母音の連続は二重母音、弱母音 + 強母音 + 弱母音の連続は三重母音となり、いずれも一音節で発音する。その場合弱母音は、音節主音の前の位置にある場合はスペイン語学では半子音(semiconsonante)[7]と呼び、音節主音の後ろの場合は半母音(semivocal)[8]と呼び、IPA表記では i は[j](ヨッド)[9]、u は[w](ワウ)[10]のように、またスペイン式の発音表記ではそれぞれ[i̯]、[u̯]のように表記される(es:Vocoide no silábico参照)[11]

強母音 + 強母音の連続は母音接続で、二重母音とはならず、別の音節として発音する。また、弱母音字でもアセント (acento)[12]がある場合 (í, ú) は強母音として扱う。

後述するように gue, gui, que, qui の u は黙字であり、二重母音の一部ではない。quiero のようにさらに母音字が続く場合は、黙字の u を無視したうえで、上記の規則に従う。ディエレシス(分音記号、クレマ)がある güe, güi の üe, üi は二重母音である。

アクセント

スペイン語のアクセント強勢アクセントである。

  • アセント (´)[12]がある語は、その音節に強勢がある。
  • アセントがない語の場合、
    • 語末が母音か n, s のときは、最後から2番目の音節に強勢がある (grave, llana, paroxítona)。
    • 語末が n, s 以外の子音(y を含む)ときは、最終音節に強勢がある (aguda, oxítona)。
  • 語尾が -mente の副詞では、-mente を取り去った語に上記規則に従って第一強勢が、-mente-men- に第二強勢(第一強勢より弱い)がある。例: últimamente (última-) [ˈultimaˌmente], solamente (sola-) [ˈsolaˌmente], igualmente (igual-) [iˈɣwalˌmente]

子音

子音字 b, ch, d, f, m, n, p, r, s, y はローマ字の日本語読みとほぼ同様の感覚で単語を読むことができる。一方、 c, g, h, j, l (ll), q, v, x, z はローマ字読みとかならずしも一致しない。子音の発音には地域差があり、ここで示したのは比較的広く用いられているものである。

  • テンプレート:IPA2: bv は同じ発音で、どちらもバ行音 テンプレート:IPA2で発音される。
    • ただし、イタリア系移民の多いアルゼンチンの一部などでは v を [v]で発音することがある。
    • 発声の始めと [m] の後では通常のバ行音 [b]
    • それ以外の位置では摩擦音化し、 [β][13]
    • [s] の前では発音しないことがある[13]
  • テンプレート:IPA2: ca, co, cu, que, qui, および音節末の c はカ行音 [k]
    • que, qui は「ケ」「キ」と発音し、「クエ」「クイ」にはならない。u を発音するためには cue, cui とつづる。
  • テンプレート:IPA2: ce, ci, za, zo, zu, および音節末の z は、スペインの標準語では [θ]。英語の無声の th 音よりも摩擦が強い[13]。スペイン南部や中南米ではセセオにより s との区別が失われ、通常のサ行音 [s]
    • これらの音は、15世紀以前はツァ行音 [ts] で発音していた。
  • ch: チャ行音 [ʧ]
    • カリブ諸国などではチャ行音よりもシャ行音に近い発音になることがある。
  • d: ダ行音 テンプレート:IPA2
    • 発声の始めと [l], [n] の後では通常のダ行音 [d]
    • それ以外の位置では摩擦音化し、 [ð]
    • 語末では [ð]、さらに無声化し [θ] となるか、ほとんど発音しないことがある。
  • f: ファ行音 [f]
  • テンプレート:IPA2: ga, go, gu, および音節末の g はガ行音 テンプレート:IPA2
    • 発声の始めと [ŋ] の後では通常のガ行音 [g]
    • それ以外の位置では摩擦音化し、 [ɣ] [13]
    • gue, gui は「ゲ」「ギ」と発音し、「グエ」「グイ」にはならない。u を発音するためにはディエレシスを使用し、 güe, güi とつづる。
  • テンプレート:IPA2: ge, gi, および j[x]。ハ行音、ドイツ語の ach laut に近いが、それより少し奥のほうで発音する。
    • アンダルシア南西部や米国南部では通常のハ行音 [h] で発音することがある。
    • 語末では発音しないことがある[13]
  • h: 発音しない(黙字)。
  • l: ラ行音 [l]
  • ll: 本来はリャ行音に近い [ʎ] だが、実際には多くの地域でジェイスモにより y との区別が失われ、ヤ行とジャ行の中間の [ʝ][ʑ] で発音する。
  • m: マ行音 テンプレート:IPA2
  • n: ナ行音 テンプレート:IPA2
  • ñ: ニャ行音 [ɲ]
  • p: パ行音 [p]
    • [s], [t] の前では発音しないことがある[13]
  • r: 日本語に近いラ行音 [ɾ]
    • 語頭と [l], [n], [s] の後では後述する巻き舌音 [r]
  • rr: 巻き舌音 [r]
  • s: サ行音 [s]
    • スペイン南部や中南米の一部では音節末の s をハ行音 [h] で発音するか、ほとんど発音しないことがある。
  • t: タ行音 [t]
  • w: 外来語のみに用いられ、単語によってワ行音 [w]、または [b]
    • 地域差もあり、ペルーでは常に [w] で発音する傾向がある。
    • 語頭では [gw] になることもある。
  • x: 本来は [ks] だが、 [k] は弱くなるか、発音しないことが多い。
    • 特に子音の前、および語頭では [k] を発音せず、[s]となりやすい[13]
    • México [ˈme̞xiko̞] のように、一部の固有名詞などでは j 音 [x] で発音する。
  • y: 本来の発音はヤ行に近い [ʝ] だが、多くの地域でジェイスモにより ll との区別が失われている。
    • 語末の y は i と同等。ただし、アクセント位置は最終音節。

二重子音

以下の子音の連続は二重子音となる。分節上、単子音と同様に扱う。

+ l
bl, cl, fl, gl, pl
+ r
br, cr, dr, fr, gr, pr, tr

dr, tr は二重子音であるが、dl, tl は二重子音ではない。

音韻的特徴

外来語

外来語はその発音やつづりの特徴から以下のパターンが挙げられる。

  1. つづりをスペイン語風に読む。
  2. 発音を優先し、つづりを書き換える。
    • fútbol(←football) 「フットボール」
  3. 原語のつづりを変えず原音に近い発音をする。分かりやすい特徴を挙げれば、j を y のように、h を j のように発音する。新しい外来語に多い。

外来語の発音については、地域や世代、個人によって多少差がある。「1.」は古い外来語でよく見られるほか、固有名詞(商品名を含む)でよく見られ、例えば Colgate(コルゲート)は「コルガーテ」と発音する。メキシコでは商品名のスペイン語化に関する法律もある。特に人名や地名を原音に近い発音をする場合、原音の確認を要する場合が多いので、スペイン語風に発音しても間違いではない(例: Miami マイアミをスペイン語読みでミアミと発音)。また、お隣のポルトガル語はスペイン語とよく似ている一方、つづりの発音の違いやアクセントの規則の違い、独特の音韻変化などがあるため、しばしばアクセント記号が付加され、スペイン語式に読み換えられる。例えばリオデジャネイロ(Rio de Janeiro; ブラジルポルトガル語の発音は「ヒウ・ヂ・ジャネイル」に近い)は Rio(川の意)が対応するスペイン語に置き換えられRío de Janeiro と表記し、「リオ・デ・ハネイロ」と発音する。また、サンパウロ(São Paulo)については、対応するスペイン語形のサン・パブロ(San Pablo)で呼ばれるのが普通である。語頭の「s+子音」は テンプレート:IPA2 の前に テンプレート:IPA2 を付加して発音することが多い(付加しない人もいる)。例えば Spain は テンプレート:IPA2 または テンプレート:IPA2 と発音する。

アルファベット

基本的には、母音 (a,e,i,o,u) は、ローマ字の様にそのままに発音し、子音は、子音+eを足した発音をする。

大文字 小文字 文字名称
A a a: ア
B b be: ベ
be grande: ベ・グランデ(大きい「ベ」の意味、v と区別する)
be alta: ベ・アルタ(高い「ベ」の意味)
be larga:べ・ラルガ(長い「ベ」の意味)
C c ce: セ
Ch ch che: チェ*
D d de: デ
E e e: エ
F f efe: エフェ
G g ge: ヘ
H h hache: アチェ(単語中では発音しない)
I i i: イ
i latina: イ・ラティーナ(ラテン語の「イ」の意味)
J j jota: ホタ
K k ka: カ
L l ele: エレ
Ll ll elle: エジェ、エリェ*
doble ele: ドブレ・エレ
M m eme: エメ
N n ene: エネ
Ñ ñ eñe: エニェ
O o o: オ
P p pe: ペ
Q q cu: ク
R r ere: エレ(歯茎はじき音 [ɾ]
- ** rr erre: エルレ*歯茎ふるえ音 [r]
doble erre: ドブレ・エレ
erre doble: エレ・ドブレ
S s ese: エセ
T t te: テ
U u u: ウ
V v ve: ベ(b と同音)
uve: ウベ
ve baja: ベ・バハ(低い「ベ」の意味、b と区別する)
ve corta: ベ・コルタ(短い「ベ」の意味)
W w doble u: ドブレ・ウ
doble ve: ドブレ・ベ
ve doble: ベ・ドブレ
uve doble: ウベ・ドブレ
X x equis: エキス
Y y ye: イェ
i griega: イ・グリエガ(ギリシア語の「イ」の意味)
Z z zeta, ceta: セタ
zeda, ceda: セダ

*ch, ll, rr: 1994年以降、これらの文字を独立した一字として扱うことはやめた。また現在では、Real Academia Española (王立スペイン語アカデミー)の発行する辞書でも独立した文字としては、扱っていない。

**また、rrで表される歯茎ふるえ音[r]は語頭ではr一文字で記すという正書法上の規則があるため、rrは語頭には現れない。したがって、大文字はない(例:rosa、薔薇は、rrosaとは、表記しない)が、派生複合語を構成する第二要素となる場合にはrrで表す(例:rey、王。副王:vi + rey > virrey)。

文法の特徴

  • 名詞は男性名詞と女性名詞に分かれるが、-oや-eなどで終われば男性、-a, -ción や-dadなどで終われば女性という規則があるため比較的判別が容易である。
  • 名詞の複数形は(e)sをつけて作るが、これはフランス語やポルトガル語同様西ロマンス語の特徴である。
  • 定冠詞男女・複数の別ごとに存在する(男性単数el、女性単数la、男性複数los、女性複数las、中性lo)。ただ、女性名詞でもアクセントのある a 、または ha で始まる単数名詞の場合はelを使う(el agua)。前置詞 a, de の後に定冠詞 el が来る場合にはそれぞれ al, del という1つの単語になる。
  • フランス語イタリア語にあるような部分冠詞はない。
  • 形容詞は基本的に名詞に対して後置される(例:un coche moderno)が、若干の形容詞あるいは話者の主観を述べる場合は前置されることもある。また、掛かる名詞の性数に応じて変化する(moderno, moderna, modernos, modernas)。
  • フランス語のenやイタリア語のne, あるいはフランス語の y やイタリア語の ci に相当する「前置詞+名詞」の代用となる代名詞は存在しない。
  • 2人称は親称 tú(複数形vosotros/as)と敬称 usted(複数形ustedes)を使い分ける。中南米では古いスペイン語で使われていたvosが相手に対する蔑称として用いられることがある。vosは元々は相手に対する尊称であったが現在は親称・蔑称の意味に成り代わっている。日本語の「貴様」のようなもの。ただし、一部では親称として用いられることもあり、特にアルゼンチンでは全国でvosのみが使われるといっても構わない。2人称複数である vosotros/as は、vos と otros(「他」の複数形)が接合したものである。なお、vosotros/as が使用されるのはスペインと赤道ギニアに限られ、中南米やスペインのアンダルシアカナリア諸島では親称としてもustedesが一般的に使用される。usted は vuestra merced(直訳すれば「あなたの厚意」)(表記として単数の場合UdやVd、複数形でUdsやVdsが使われるが、これはUとVが母音と子音にわかれる前の影響で、発音はウステとウステデスとなる)が2人称尊称として(主に騎士が主君に対して)用いられ、短縮されたもので、動詞の活用は3人称である。Tú と usted の用法はスペインと中南米では違いがあり、スペインでは改まった場面でなければ初対面でも tú を使うことがよくあり、また、部下が上司に対して tú を使うこともよくある。しかし、中南米では、 tú を使うのは親しい人や目下の人に限られる。但し、キューバではスペイン同様 tú をよく使う。
  • 1人称複数の nosotros/as は古スペイン語では nos で男女の区別もなかった。Vosotros/as も同様で、vos だったが、vos が単数の敬称として使われるようになると複数形はそれと区別するため vosotros/as となった。Vos を敬称として始めて用いたのは宮廷においてで、vosotrosももともと貴族の言葉である。宮廷文化をもたないアンダルシアや中南米では vosotros の使用は浸透せず、ustedes が汎用2人称複数となった。
  • 1人称や2人称が主語になる場合、主語の強調や意味の明確化が必要でない場合には主語をあえて表現しない。
  • 動詞の基本形の語尾は-ar, -erまたは-irのいずれかである。
  • 動詞には直説法接続法命令法がある。直説法は現在、点過去(完了過去)、線過去(不完了過去)、未来、過去未来(「可能」・「条件」・「遡及未来」という語が用いられることもある)、現在完了、直前過去完了、過去完了、未来完了、過去未来完了が、接続法では現在、過去、現在完了、過去完了が存在する(中世には未来や未来完了も存在した)。また、各時制で主語の人称・数に応じて6通り(中南米では実質5通り)に活用される。
  • 英語のbeに当たる動詞がserとestarの二つある。serはSoy espanola.「私はスペイン人です」のような性質を述べるときに用い、estarはEstoy cansado.「私は疲れている」のような一時的状態、Osaka está en Japón.「大阪は日本にある」のような所在を表すのに用いる(このような区別はフランス語にはないが、イタリア語にはある)。またestar+現在分詞でEstoy llolando. 「私は泣いている」のように英語の進行形に似た意味を表すのはフランス語やイタリア語にはない特徴である。 ただしこの形は英語の進行形ほどよく使われるわけではない。現在形の動作動詞が進行相をも表し、また過去時では線過去形に過去進行形的な不完了相を表す機能があるからである。

規則動詞の現在時制における活用形

原形 hablar(話す) comer(食べる) vivir(生きる、住む)
一人称単数 hablo como vivo
一人称複数 hablamos comemos vivimos
二人称単数 hablas comes vives
二人称複数 habláis/hablan coméis/comen vivís/viven
三人称単数(二人称の敬称含む) habla come vive
三人称複数(二人称の敬称含む) hablan comen viven

不規則動詞serの活用

叙法 直説法 接続法 命令法
単純時制 現在 点過去 線過去 未来 過去未来 現在 過去 未来
1人称単数 soy fui era seré sería sea fuera / fuese fuere -
2人称単数 eres fuiste eras serás serías seas fueras / fueses fueres
3人称単数 es fue era será sería sea fuera / fuese fuere sea
1人称複数 somos fuimos éramos seremos seríamos seamos fuéramos / fuésemos fuéremos seamos
2人称複数 sois fuisteis erais seréis seríais seáis fuerais / fueseis fuereis sed
3人称複数 son fueron eran serán serían sean fueran / fuesen fueren sean

助動詞haberの活用

助動詞haberの活用形は、過去分詞とあわせて完了時制をつくる。下記の表では、「sido」が動詞serの過去分詞形。

叙法 直説法 接続法
複合時制 現在完了 過去完了 未来完了 過去未来完了 現在完了 過去完了 未来完了
1人称単数 he sido había sido habré sido habría sido haya sido hubiera / hubiese sido hubiere sido
2人称単数 has sido habías sido habrás sido habrías sido hayas sido hubieras / hubieses sido hubieres sido
3人称単数 ha sido había sido habrá sido habría sido haya sido hubiera / hubiese sido hubiere sido
1人称複数 hemos sido habíamos sido habremos sido habríamos sido hayamos sido hubiéramos / hubiésemos sido hubiéremos sido
2人称複数 habéis sido habíais sido habréis sido habríais sido hayáis sido hubierais / hubieseis sido hubiereis sido
3人称複数 han sido habían sido habrán sido habrían sido hayan sido hubieran / hubiesen sido hubieren sido
  • 上記のように、過去が点過去と線過去にはっきり分かれているのが特徴である。点過去は過去のある時点で起こったことを述べるときに用いる。線過去はフランス語やイタリア語の文法で「半過去」と呼ばれるものに相当し、過去の一定の期間における継続的な状態を述べるときに用いる。点過去と線過去を、それぞれ「不定過去」と「不完了過去」と呼ぶこともある。また点過去は単に「過去」ということもある。なお、pretérito perfectoは現在完了のことであり、完了過去とも言われるが、完了過去を点過去の意味で用いる場合もあり、現在完了との意味での完了過去との区別のために、形式に注目して単純完了過去と呼ぶ場合もある[14]。(中南米諸国で普及している“ベリョ文法”では、「点過去」を pretérito (過去)、「線過去」を copretérito (あえて訳せば“副過去”)と呼んでいる。また、先述の pretérito perfecto に関しても、「現在完了」は pretérito perfecto compuesto (複合完了過去)、「点過去」は pretérito perfecto simple (単純完了過去)が、スペイン王立アカデミアの文法用語として紹介されている)[15]
    • El avión salió el lunes.(飛行機は月曜日に出発した。)点過去の例。
    • El avión salía cada lunes.(飛行機は月曜日毎に出発していた。)線過去の例。
  • 接続法は、予想・憶測・希望など、事実であると認識していないときに使われる。たとえば「~と思っている」という文では「~」の部分は事実であると認識しているので直説法が使われるが、「~とは思っていない」言うときは、「~」を事実と認識していないので接続法が使われる。
    • Creo que María está en casa. (私はマリアは家にいると思う。)estáはestarの直説法現在形。
    • No creo que María esté en casa.(私はマリアは家にいると思わない。)estéはestarの接続法現在形。
  • 希望から、弱い命令の意味にも使われる。
    • ¡Ojalá sea bonita!(かわいいといいなぁ)seaser(〜である)の接続法。
    • Hable.(話してください。)hablarの接続法現在形で命令(依頼)を表わしている。
  • 接続法過去の語尾は-ra型と-se型の2種類があるが、一般には-ra型が用いられる。-se型の活用は堅苦しい印象を与え、いわゆる文語で用いられる。
  • テンプレート:要出典範囲。このとき、再帰代名詞とともに一つの動詞であると考えることも多い。(levantarse, acostarse, lavarse, fumarse, irseなど。)この場合、動詞の基本形を示す際には左記のように代名詞を語尾につけた一つの単語のように表記するが、文中で動詞が活用されると代名詞は分かれて前置される。なお、命令文の場合には能格動詞が活用されても代名詞は前置されないことが多い。
    • No puedo levantarme tan temprano(そんなに早く起きる事はできない。) 再帰動詞が1単語として扱われる例。
    • Me fumo cigarrillos.(私はタバコを吸う。)fumarse → me fumoの活用の例。
    • ¡Vete rápido!(さっさと行け!)命令形の例。

表現

あいさつ

  • 「Hola」(オラ)= やあ(〃どこの国でも共通。時間関係なしに使用できる)
  • 「Buenos días」(ブエノス・ディアス)= おはようございます。(お昼ご飯を食べるまで)
  • 「Buenas tardes」(ブエナス・タルデス)= こんにちは(日がある間。
  • 「Buenas noches」(ブエナス・ノーチェス)= こんばんは/おやすみなさい。
  • 「Dulces sueños」(ドゥルセス・スエニョス)= おやすみなさい。
  • 「Mucho gusto」(ムーチョ・グスト)= はじめまして
  • 「Encantado/a」(エンカンタド:男性形/エンカンタダ:女性形)=はじめまして
  • 「Gracias」(グラシアス)= ありがとう。
  • 「Disculpe」(ディスクルペ)= すみません。
  • 「Por favor」(ポル・ファボール)= お願いです。
  • 「Soy japonés」(ソイ・ハポネス)= 私は日本人です。(♂)
  • 「Soy japonesa」(ソイ・ハポネサ)= 私は日本人です。(♀)
  • 「Oiga」(オイガ)電話での「もしもし」(電話をかけた側)もしくは「ちょっとすみません」にあたる。
  • 「Hasta luego」(アスタ・ルエゴ)=またあとで
  • 「Adiós」(アディオス)=さようなら

注意

  • 「Para」(パラ)= やめろ!
  • 「Quita」(キタ)= やめろ!
  • 「Silencio」(シレンシオ)= しずかに!
  • 「Ten cuidado」(テン・クイダード)= 気をつけて!

日本とスペイン語

スペイン語に由来する日本語には以下のようなものがある。

生物

自然

戦争

料理

服装

建築物

民族

文化

楽器

金属

脚注

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関連項目

外部リンク

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  1. テンプレート:Cite web
  2. 「エス語」はイスパニア語ではなく、エスペラントの略称である。
  3. 発音についてはジェイスモを参照。
  4. 例:
  5. ただし、バレンシア語を独立した言語とするか、カタルーニャ語の方言とするかについては議論がある。
  6. ラティーノにはブラジル系米国人を含む。
  7. テンプレート:Cite web
  8. テンプレート:Cite web
  9. テンプレート:Cite web
  10. テンプレート:Cite web
  11. スペインでは半母音と半子音を区別するため、半母音には[i̯, u̯]、半子音には[j, w]のように使い分ける場合もある。テンプレート:Cite book
  12. 12.0 12.1 スペイン語では他のアクセント符号を用いないので、単に「アセント」、もしくは acento ortográfico (アセント・オルトグラフィコ)と呼ぶ。一方同じつづりで意味の異なる語を区別するために付加するアクセント符号は acento diacrítico (アセント・ディアクリティコ)と呼ぶ。アセント符号(´)とティルデ(~)は似た字形になりやすく、両方を「ティルデ」と呼ぶことが一般的である。
  13. 13.0 13.1 13.2 13.3 13.4 13.5 13.6 13.7 13.8 13.9 テンプレート:Cite book実際は電子版による。
  14. 山田善郎監修(2002) 『中級スペイン文法』第17章動詞-時制p.301 白水社
  15. 寿里順平著(1998) 『スペイン語とつきあう本 寿里順平の辛口語学エッセー』p.37,p.107 東洋書店