アルト
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アルト(伊 alto)は、女声の声域(声種)のひとつで、コントラルト(contralto)とも言う。イタリア語の「高い」が原義で、テノールよりも高い音域を指すようになった。現在では女声の低い声を言い、女声を2部に分けたときの下の声部、3部に分けたときの一番下の声部の名前ともなる。おおむねアルト歌手はF3からB5くらいの声域をもち[1]、4声体和声や合唱ではG3からE5くらいが用いられる。混声4部合唱ではテノールと合わせて内声、バスと合わせて低声とよばれる。日本におけるアルト歌手の数は現在、非常に少なく希少なものである。記譜は通常ソプラノと同様にト音記号が用いられる。
また、「アルトの音域の」という意味で楽器名に使われることもある。フランス語ではアルト(alto)がヴィオラを意味する。
オペラでは、ソプラノやテノール、バリトンやメゾソプラノに比べて主要な役を演じる機会は少ない。どちらかといえば、年輩の人物(ワーグナーの『ニーベルングの指環』におけるエルダ、ムソルグスキーの『ボリス・ゴドノフ』における乳母、マスカーニの『カヴァレリア・ルスティカーナ』におけるルチアなど)を受け持つことが多い。
アルト独唱の曲としてブラームスの『ゲーテの「冬のハルツの旅」からの断章』、通称『アルト・ラプソディ』がある。
「アルト」の入った楽器名
著名なアルト歌手
- マリアン・アンダーソン(1902年 - 1993年)
- ポーリーヌ・ガルシア=ヴィアルド
- 川崎静子(1919年 - 1982年)
- ユリア・クルプ
- 黒木香保里
- エレナ・ゲルハルト
- 斎田愛子(1910年 - 1954年)
- 三枝喜美子(1921年 - 2000年)
- 佐藤美子(1903年 - 1982年)
- ハンナ・シュヴァルツ
- ナタリー・シュトゥッツマン
- エルネスティーネ・シューマン=ハインク
- アンネット・一恵・ストゥルナート
- ヘルタ・テッパー
- ブリギッテ・ファスベンダー
- キャスリーン・フェリア
- モーリン・フォレスター
- ジャネット・ベイカー
- マルガ・ヘフゲン
- ルイーズ・ホーマー
- 柳兼子(1892年 - 1984年)
- 湯浅初枝(1902年 - )
- 由利あけみ(1913年 - )
- 四家文子(1906年 - 1981年)
他の声域
主な声域を高い方から並べる。
脚注
- ↑ フレデリック・フースラー/イヴォンヌ・ロッド=マーリング 『うたうこと 発声器官の肉体的特質』 須永義雄・大熊文子訳 音楽之友社、2000年、111頁。ISBN 4-276-14252-0