チャンドラセカール限界
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チャンドラセカール限界 (Chandrasekhar Limit) とは、白色矮星が持ち得る質量の理論的な上限値のこと。この限界値を超えると超新星や中性子星などになると考えられている。スブラマニアン・チャンドラセカールが発表した理論値なので、この名称がある。
概説
白色矮星は、自らの質量による重力で収縮しようとする力と、構成物質の電子の縮退圧とが釣り合ってその大きさを保っているが、ある程度以上質量が大きいと縮退圧では支えきれないため、白色矮星としては存在できない。その限界質量について、1930年代初めにチャンドラセカールは以下の式を導き出し、その結果から太陽の1.26倍以上の質量を持った白色矮星は存在しないと結論した[1][2]。
- <math> M = { 5.87 \over {\mu^2} } M_s </math>
上式で、Mが白色矮星の質量、Msが太陽の質量である。μは原子核の核子の数をその原子の電子数で割った値(電子1個当たりの核子数)である。ここでμの値として、恒星で主に合成される原子核の中で最も安定な原子核である鉄の同位体鉄56の原子核の核子の数56と、その鉄原子の電子数26を与えると、
- <math> M = { 5.87 \over {\mu_{Fe}^2} } M_s = { 5.87 \over { {(56/26)}^2} } M_s \approx 1.26 M_s </math>
となる。
その後の研究の結果、2003年現在でのより厳密な値は太陽質量の1.44倍</B>となっている。
Ia型超新星は、連星をなす白色矮星が伴星からのガス吸収により質量がチャンドラセカール限界を越えたために超新星化したものである。よって質量は一定となり光度も等しくなると考えられ、見かけ上の明るさから距離を割り出せるため標準光源として利用されている。
参考文献
- ↑ S. Chandrasekhar, Philos. Mag. 11, (1931) 592.
- ↑ S. Chandrasekhar, Astrophys. J. 74, (1931) 81-82.