クーン・ローブ
クーン・ローブ(Kuhn Loeb & Co.)は、20世紀前半までアメリカ合衆国に君臨した金融財閥である。クーン・ローブ商会とも表記される。1867年に創業、ニューヨークを本部を置いた。
歴史
創業期
1850年代アブラハム・クーンとソロモン・ローブの姓を組み合わせてクーン・ローブ商会とした。 その後、事業で手を組むと同時にクーン家の娘イーダとローブ家のモリスが結婚して一族となっている。 その娘であるテレサと結婚したのが、ジェイコブ・ヘンリー・シフである。 ジェイコブ・ヘンリー・シフはドイツ・フランクフルトのゲットー(フランクフルト・ゲットー)でロスチャイルド家と共に住んでいた歴史を持つ。
1870年代以降、クーン=ローブ商会は、今日でいうベンチャー企業と目され、当時の鉄道事業に積極的に投資。モルガン財閥と競争を繰り広げた。1877年のシカゴ・ノースウェスタン鉄道への資金調達を皮切りに、1881年にはペンシルバニア鉄道、シカゴ・ミルウォーキー・セント・ポール・アンド・パシフィック鉄道への資金調達を行った。シフは、1897年にユニオン・パシフィック鉄道の事業再建の資金調達を支援した。1901年のモルガン財閥とのノーザン・パシフィック鉄道の買収攻勢防戦劇は当時の大きな話題となった。また長期間にわたって、ウェスティングハウス、ウェスタン・ユニオン、ポラロイドなど、アメリカ合衆国の大企業と密接な関わりを持ち、長期の財政的な後ろ盾となった。またオーストリア、フィンランド、メキシコ、ベネズエラなど一部の外国政府の財政アドバイザーも務めた。
日本との関係
ジョン・ロックフェラーへのメインバンク、財政アドバイザーとしても有名で、国内の主要産業への投資のみならず、クーン・ローブを通じ中華民国や大日本帝国などの公債引き受け等にも参画し、日本政府が日英同盟を根拠にして日露戦争の日本公債をイギリス・ロンドンで販売した際、当時世界最大の石油産出量を誇っていたカスピ海のバクー油田の利権を持つロスチャイルド家は購入を拒否、その代わりロスチャイルド家と行動を共にするジェイコブ・ヘンリー・シフを紹介。日本は戦費を調達でき、またロシアにも勝利したが、賠償金を獲得できなかったため、日露戦以後は金利を支払い続け、シフは「日露戦争で最も儲けた」。1911年にはクーン・ローブはロックフェラーと共同で、後にチェース銀行と合併するエクイタブル・トラスト社を買収した。
衰退期
一時はモルガン財閥と並立する存在になったが、マーチャントバンクとして存続。第二次世界大戦後、資金調達の方法が銀行家同士のやりとりから、ウォール街などでの証券市場での取引が中心となってクーン・ローブの勢いにかげりが見え始める。
1977年にリーマン・ブラザーズに統合され、クーン・ローブ・リーマンと称した。その後、1984年にクーン・ローブ・リーマンがアメリカン・エキスプレスに買収され、シアーソン・リーマン・アメリカン・エキスプレス(Shearson Lehman/American Express)に改名された際、クーン・ローブの名は消えることとなった。