カミーユ・サン=サーンス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:独自研究 テンプレート:Infobox Musicianテンプレート:Portal クラシック音楽 シャルル・カミーユ・サン=サーンスCharles Camille Saint-Saëns, 1835年10月9日 - 1921年12月16日)は、フランス作曲家、ピアニスト、オルガニスト。

略歴

官吏の家庭に生まれる。モーツァルトと並び称される神童タイプで、2歳でピアノを弾き、3歳で作曲をしたと言われている。また、10歳でバッハ、モーツァルト、ベートーヴェンたちの作品の演奏会を開き、16歳で最初の交響曲を書いている。1848年に13歳でパリ音楽院に入学して作曲とオルガンを学ぶ。やがて作曲家兼オルガニストとして活躍した。特にオルガンの即興演奏に素晴らしい腕を見せ、1857年に当時のパリのオルガニストの最高峰といわれたマドレーヌ教会のオルガニストに就任する。1871年にはフランス音楽普及のために、フランクフォーレらとともに国民音楽協会を設立した。

1881年にはアカデミー会員に推薦され、57歳の1892年にはケンブリッジ大学から音楽博士の称号を贈られた。1913年78歳でサン=サーンスは、最高勲章であるグラン・クロワも贈呈されている。

輝かしい功績に恵まれていたサン=サーンスは、1921年にアルジェリア旅行中に86歳の生涯を閉じた。サン=サーンスの葬儀は、その多大な功績に相応しく国葬で執り行われた。

作風と評価

音楽家として、作曲家、ピアニスト、オルガニストとして活躍したほか、少年のころからさまざまな分野に興味を持ち、その才能を発揮した。一流のレベルとして知られるのは詩、天文学、数学、絵画などである。特に詩人としての活動は多岐にわたり、自作の詩による声楽作品も少なからず存在する。

その博識ゆえの嫌味な性格は人々の良く知るところであり、アルフレッド・コルトーに向かって「へぇ、君程度でピアニストになれるの?」といった話は有名である[1]。これは、彼が超一流しか眼中になかったことを示すエピソードでもあった。実際にサン=サーンスが完璧と評した生徒の中に、ピアニストのレオポルド・ゴドフスキーがいる。

晩年、印象主義音楽の台頭の中でも近代音楽を批判し、すでに保守的とみなされるようになった作風による創作を第一次世界大戦後も死の直前まで続けた。若き日のドビュッシーは、サン=サーンスの典型的な批判者であった。しかしドビュッシーはまた「サン=サーンスほどの音楽通は世界広しといえどもいない。」とも評している[2]。当のサン=サーンスはドビュッシーの交響組曲『春』に対して、嬰ヘ長調であることを理由に管弦楽に適さないとして酷評している。しかし、『動物の謝肉祭』では和音の平行移動などの多くの印象主義の技法を駆使(「水族館」)するなどしている。

映画『ギーズ公の暗殺』のために史上初めてオリジナルの映画音楽を作曲したことに象徴されるが、サン=サーンスは様々な音楽分野において先駆的な役割を果たしている。

サン=サーンスが古典音楽に固執し、また不人気であったかのように記されることがあるが、それは正しくない。国家的な大音楽家とみなされていたことは、葬儀が国葬であったことからもわかる。

主要作品

作品についてはサン=サーンスの楽曲一覧をご覧ください。

歌劇

  • 黄色い王女 作品30 (1872年)
  • サムソンとデリラ 作品47(1869年 - 1872年) ※同作品中「バッカナール」は、フィギュアスケートで有名選手が用いるなど特に広く知られた楽曲である
  • 銀の音色 (1877年)
  • エティエンヌ・マルセル (1879年)
  • ヘンリー八世 (1883年)
  • ガブリエッラ・ディ・ヴェルジ (1885年)
  • プロセルピーヌ (1887年)
  • アスカニオ (1890年)
  • フリーネ (1893年)
  • フレデゴント (1895年)
  • 野蛮人 (1901年)
  • エレーヌ (1904年)
  • 祖先 (1906年)
  • デジャニール (1911年)
  • ロッシュ・カルドンの城、または過酷な運命

劇音楽

  • アンティゴネ (1893年)
  • 気に病む男 (1893年)
  • デジャニール (1898年)
  • パリザティス (1902年)
  • アンドロマク (1903年)
  • 象牙細工師の娘(疑作説あり)(1909初演)
  • 誓い 作品130 (1910年)
  • 戯れに恋はすまじ (1917年)

バレエ音楽

  • ジャヴォット (1896年)

交響曲

協奏的作品(独奏と管弦楽のための作品)

ヴァイオリンと管弦楽のための作品

ピアノと管弦楽のための作品

チェロと管弦楽のための作品

その他

  • タランテラ 作品6(1857年)(フルート、クラリネットと管弦楽)
  • ミューズと詩人」(La Muse et le poete)作品132(1910年)(ヴァイオリン、チェロと管弦楽)
  • 演奏会用小品ト長調 作品154(1918年 - 1919年) (ハープと管弦楽)
  • 糸杉と月桂樹Sypres et lauriers)作品156(1919年) (オルガンと管弦楽)
  • 抒情的小品(オデレット)(Odelette)作品162(1920年) (フルートと管弦楽)
  • ロマンス ヘ長調 作品36(1874年) (ホルンとピアノ、またはホルンと管弦楽)
  • ロマンス ホ長調 作品67 (ホルンとピアノ、またはホルンと管弦楽)
  • 演奏会用小品 ヘ短調 作品94Morceau de concert) (ホルンとピアノ、またはホルンと管弦楽)

管弦楽作品

  • 序曲「スパルタクス」(1863年)
  • ブルターニュ狂詩曲 作品7bis(作品7から抜粋・再構成)
  • 管弦楽組曲 作品49(1863年)
  • 行進曲「東洋と西洋」作品25 (1869年) (吹奏楽) ※軍楽隊とオーケストラという編成もあるらしい
  • ガヴォット 作品23(1871年)
  • 交響詩「オンファールの糸車」(Le rouet d'Omphale)作品31(1871年)
  • 英雄行進曲Marche héroïque)作品34(1871年) ※2台ピアノからの編曲(下記に再掲)
  • 交響詩「ファエトン」(Phaeton)作品39(1873年)
  • 交響詩「死の舞踏」(Danse macabre)作品40(1874年)
  • 交響詩「ヘラクレスの青年時代」作品50
  • アルジェリア組曲Suite algerienne)作品60(1879年 - 1880年)(4曲)
  • リスボンの夜 作品63(1880年)
  • アラゴン舞曲 作品64(1880年)
  • ヴィクトル・ユゴー賛歌 作品69(1881年)
  • サラバンドとリゴードン 作品93(1892年)
  • エドワード7世のための戴冠行進曲 作品117(1902年)
  • 軍隊行進曲「ナイル川の岸辺で」 作品125(1908年)(吹奏楽)
  • 祝祭序曲 作品133(1909年)(吹奏楽)
  • 連合国行進曲 作品155(1918年)(吹奏楽)
  • アルジェの学生に捧げる行進曲 作品163(1921年)(吹奏楽)

室内楽作品

ピアノ作品

オリジナル作品(自編を含む)

編曲作品(再構成作品も含む)

2台のピアノのための作品(自編を含む)

オルガン作品

  • 3つの小品 作品1(1852年)(ハルモニウム作品)
  • 幻想曲 変ホ長調(1857年)
  • ブルターニュの歌による3つの狂詩曲 作品7(1866年)
  • 祝婚曲(Bénédiction nuptiale) 作品9(1859年)
  • 奉挙、または聖体拝領(Élévation ou Communion) 作品13(1858年)
  • 3つの前奏曲とフーガ 第1集 作品99(1894年)
  • 幻想曲(第2番)変ニ長調 作品101(1895年)
  • 3つの前奏曲とフーガ 第2集 作品109(1898年)
  • 7つの即興曲 作品150(1916-17年)
  • 幻想曲(第3番)ハ長調 作品157(1919年)

合唱を含む作品

  • ジン(Les Djinns)(1850年)
  • クリスマス・オラトリオ 作品12(1858年)
  • カンタータ「プロメテの結婚」作品19(1867年)
  • オラトリオ「ノアの洪水」(Déluge)作品45(1874年)
  • レクイエム 作品54(1878年)
  • 竪琴とハープLa lyre et la harpe) 作品57(1879年)
  • ヴィクトル・ユゴー賛歌 作品69(1881年)

歌曲

  • 歌曲集「ペルシャの歌」(Mélodies persanes)作品26(1870年) (A.ルノー詞、6曲)
  • 「見えない笛」(Une flûte invisible)(1885年) (V.ユゴー詞、フルートのオブリガード付き)
  • 「鼓手の婚約者」(La fiancée du timbalier)作品82(1887年) (V.ユゴー詞)

映画音楽

  • 「ギーズ公の暗殺」(L'assassinat du Duc de Guise)作品128(1908年、世界初の映画音楽)

著作

日本語訳があるものは次の通り。

  • 『音楽の十字街に立つ』(馬場二郎訳/新潮社/1925年)
  • ジャン=ミシェル・ネクトゥー編著『サン=サーンスとフォーレ 往復書簡集1862-1920』(大谷千正、日吉都希惠、島谷眞紀訳/新評論/1993年)

参考文献

  • ミヒャエル・シュテーゲマン著『サン=サーンス』(西原稔訳/音楽之友社/1993年)

出典

  1. Harold C. Schonberg, The Great Pianists, p. 406
  2. 『反ディレッタントのクローシュ氏』より

外部リンク