木構造 (建築)
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木構造(もくこうぞう)は、木造ともいい、建築の構造の一つで、構造耐力上主要な部分に木材を用いる構造である。また、近年は木質材料を用いる建築が増えたので、これを木質構造と呼ぶことがある。
目次
木構造の構造形式による分類
伝統的な構法
- 太めの柱と梁、及び貫(ぬき)を用いて、互いの部材を貫通させる構造形式で、車知(しゃち)や込み栓(こみせん)を用いて固定する。(在来工法のような釘や補強金物に頼った固定法は用いない。)
- 外力や変形に対しては主に木材のめり込みによって抵抗する。そのため、大変形に対しても粘り強い構造であり、地震や台風の被害が多い日本の風土に適した工法である。
- 仕口の狂いや、仕上げのひずみに対する考慮や、耐久性に対する考慮が十分になされている[1]。
- 高価である。
- 主に古くからの寺社建築や大規模高級住宅に多い。
木造軸組構法
- 工法としては、木造軸組工法又は在来工法と呼ばれる。
- 柱と梁で支える構造形式であるが、柱や梁の幅は3.5寸(105mm)から4寸(120mm)と伝統工法より細めである。
- 外力や変形に対しては、主に筋交いなどの耐力壁によって抵抗する。
- 伝統工法とは異なり、部材同士の接合部は大変弱いので、ホールダウン金物や羽子板ボルトによる金物補強が不可欠である。
- 日本の木造住宅の多くはこの構法である。日本以外ではほとんど建築されない。
木造枠組壁構法
- 工法としては、枠組壁工法又は2×4(ツーバイフォー)工法と呼ばれる。
- 木材の枠組みに構造用合板を打ち付けた壁と床で支える構造形式である。
- 外力や変形に対しては、強固に結合された耐力壁と剛床によって、建物全体で受け止めるため、剛性・強度とも高く、大変形に対しても粘り強い構造である。
- 欧米(特に北米)では標準的な木造住宅の構法であるが、日本でも1974年頃から建築されるようになった。
- 欧米では5~6階建ての集合住宅も見られるが、日本では4階建てまでである。
丸太組構法
- 丸太を横に積み上げて壁を作る構法であるが、屋根についてはこの限りでない。
- 外力や変形に対しては、丸太同士を緊結する縦方向の通しボルトや丸太同士のずれを防ぐだぼによって抵抗する。
- 主に平屋の住宅で用いられる。
木質ラーメン構法
- 太い柱と梁を用い、モーメント抵抗接合によりそれらを剛に接合した構造形式であり、いわゆる木造のラーメン構造である。
- 木製の柱と梁を完全に剛に接合することは難しい(金物を用いたとしても金物が木材にめりこみやすい)。そのため、部材接点は、剛接合ではなく、半剛接合として扱わなければならない。
- 外力や変形に対しては、柱と梁のみで抵抗するため、耐力壁は基本的に必要ないが、部分的に耐力壁で強度を補うこともある。
- 住宅のみならず、事務所や公共施設などにも用いられる。
部材の性質
- 木材は、比強度(単位重量当たりの強度)が高い。すなわち、軽い割には高強度である。このことは、基礎が比較的簡素なもので済むことを意味する。
- 木材は、繊維方向の強度は高いが、繊維直角の方向の強度は低い。
- 木材は、粘り強さがなく、もろい破壊をおこす。そのため、粘り強さは、接合部(釘やボルトの変形、木材のめりこみなど)で確保しなければならない。
接合部の性質
- 木材同士の接合部は、せん断力が働く方向に効くように作る。引張り力が働く部材を接合する場合は、添え板などを使用してせん断接合に変換する。
- 木材同士の接合には、主に次の方法がある。
- それぞれの接合方法は、抵抗のメカニズムが異なるため、異なる接合方法を併用しても耐力を加算することはできない。
火災への対処
木構造は、構造耐力上主要な部分に可燃材料使っているため、他構造に比べ火災に弱い性質をもつ。そのため、原則として、外壁・屋根・軒裏は不燃材料で仕上げなければならない。また、以下のような防火措置を講じる。
- 木部を石膏ボードなど防火性能のある材料で覆い、木部が直接火炎にさらされるのを防ぐ。
- 部屋ごとに室内壁・天井を石膏ボードなど防火性のある材料で覆い、隣室や上階への延焼を遅らせる。また、内装は極力不燃材料で仕上げる。
- 木材は、燃焼すると表面に炭化層を形成し、内部まで燃え尽きるのには時間がかかる。そのため、燃えしろを除いた部分だけでも構造が持つように構造計算を行い、太い断面の木材を使う(燃えしろ設計)。
燃えしろ | |
---|---|
30分耐火 | 25mm |
45分耐火 | 35mm |
1時間耐火 | 45mm |
- 壁内中空部および壁と天井などの取り合い部には、ファイヤーストップ材を設ける。
- 地震時に防火材料が脱落するのを防ぐため、各階の剛性を高くする(層間変形角1/150以下)。
その他、火災保険や地震保険において、耐火性の低い(耐火建築物・準耐火建築物・省令準耐火構造建物でない)木造住宅は保険料が高額となる。
シロアリ・腐朽への対処
木構造は、構造耐力上主要な部分にシロアリ、腐朽に弱い材料を使っているため、他構造に比べ耐久性が低くなりがちである。そのため、原則として地面から1m以内の木部には防腐・防蟻の措置をしなければならない。また、以下のような対策を講じる。
- 建物下部の地面を全面的に鉄筋コンクリートで覆い、地面からの湿気やシロアリの進入を防ぐ。べた基礎の採用が望ましいが、布基礎の場合でも防湿・防蟻のための鉄筋コンクリートを敷く。
- 構造耐力上主要な部分の木材は、乾燥したものを用いる(含水率25%以下が望ましい)。
- 構造耐力上主要な部分の木材は、辺材より心材の方が望ましい。
- 構造耐力上主要な部分の木材の樹種は、使用箇所に応じて、耐腐朽性・耐蟻性の大きいものを採用する。
耐腐朽性 | ||||
---|---|---|---|---|
大 | 中 | 小 | ||
耐蟻性 | 大 | ひば・こうやまき・べいひば | ||
中 | ひのき・けやき・べいひ | すぎ・からまつ | ||
小 | くり・べいすぎ | べいまつ・ダフリカからまつ | あかまつ・くろまつ・べいつが |
- 屋根の形状は単純なものとし、ひさしの出はできるだけ大きくすることが望ましい。
- 外壁の室内側には防湿層を正しく施工し、壁内に室内で発生した湿気が入り込むのを防ぐ(外壁のすべてが通気性のある材料で構成されている場合は除く)。
- 室内で発生した湿気は、窓や換気設備などを用いて、積極的に屋外に排出する。
木構造の環境への負荷
木構造は、他構造に比べ環境への負荷が少ない構造形式である。
- 使用する木材は、太陽光などの自然エネルギーによって生育するものであり、製造に伴う二酸化炭素排出量が少ない。
- 材料の比重が軽量であるため、材料の運搬に伴う二酸化炭素排出量が少ない。
- 材料加工・組み立てが容易であるため、建築作業に伴う二酸化炭素排出量が少ない。
- 建築物の存在期間中、木材中の炭素を建築物に固着させておく効果がある。
脚注
- ↑ 岸田林太郎、中江 斉 著『木造建築工法』工学図書株式会社、1976年、改訂版・まえがき
関連項目
参考文献
- 『建築関係法令集』建築法規編集会議編
- 『木造住宅工事仕様書(解説付)』(財)住宅金融普及協会
- 『枠組壁工法住宅工事仕様書(解説付)』(財)住宅金融普及協会
- 『木質構造設計規準・同解説 -許容応力度・許容耐力設計法-』(社)日本建築学会
- 『木造軸組工法住宅の許容応力度設計』(財)日本住宅・木材技術センター
外部リンク
- 第64回東京消防庁統計書(平成23年) 第29表 火元建物の構造別火災状況
- 国土交通省 東日本大震災の津波被災現況調査結果(第2次報告) (2.建物構造別の浸水深と建物被災状況の関係)
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