モード・ジャズ
モード・ジャズあるいはモーダル・ジャズ(Modal Jazz)は、コード進行よりもモード (旋法)を用いて演奏されるジャズ。モダン・ジャズのサブ・ジャンルのひとつである。
概要
1950年代後半に試され始め、1958年リリースの、マイルス・デイヴィスのアルバム「カインド・オブ・ブルー」で完成された。
ビバップをはじめとするモダンジャズでは、コード進行やコードの分解に基づくアドリブ・ソロ(奏者ごとの即興演奏)が行われてきた。ハード・バップに至っては、メロディーが洗練された一方で、コードに基づく一つの音階のうち元のフレーズから外れた音が使えないという状況が出てきて制限がさらに増した。その大きな原因は、コード進行だけでなくメロディーでの進行感も出そうとしたことである。
そこで、コード進行を主体とせず、モードに基づく旋律による進行に切り替えたものが、モード・ジャズである(一説にはハード・バップから洗練・発展したものともいわれる)。バッキングなどの和声の面では多少困難にはなったものの、ソロプレイにおいては一気に自由度が増し選択肢も増えた。
欠点は、コード進行によるバッキングやメロディーによる劇的な進行がない事である。
理論
機能和声理論では、例えばCメジャーのトニックにおいてC・E・Gは和音構成音、D・F・A・Bは非和声音と定義される。 旋律は和音構成音に帰結するように動き、非和声音に至った旋律がその後跳躍することは無い。(先取音を除く)
しかし、モードの楽曲においては、和音構成音、非和声音といった区別が無くなり、全ての音が等価に扱われる。和声という概念が、既に観念の中に身を置いているということに気づき、和声という理論が多数決における、マジョリティの感覚優先であるということを確認。それぞれの民族の独自性(マイノリティ)を確立していくための手段として取り組まれた。リディアンクロマティックコンセプトが礎になっている。 よって、例えば本来、EやCに帰結すべきであるD音が、Aへ跳躍することもあり得るわけである。 特に、モード以前のスタイルとの差異化を計るため、和音構成音に帰結するような動きは意識的に避けられるケースが多い。 また、ベースを含む全てのパートにおいてそういった音の扱いが可能になるため、従来ドミナントペダルとしてしか現れることのなかった第二転回形を、機能和声的な脈絡の無いまま出現させる、といった処理も可能になる。
成立に寄与したアーティスト
マイルス・デイヴィスはモード・ジャズで商業的に最も成功したアーティストであり、アルバム「カインド・オブ・ブルー」はモード・ジャズの可能性を追究した。 そのセッションに参加したアーティスト(テナー・サックス奏者のジョン・コルトレーン、アルト・サックス奏者のキャノンボール・アダレイ、ピアニストのビル・エヴァンスとウィントン・ケリー、ベーシストのポール・チェンバース、ドラマーのジミー・コブ)のうちコルトレーンは1960年代を通してモーダルな即興演奏を他の誰よりも深く追究した。