高分子化学
テンプレート:出典の明記 高分子化学(こうぶんしかがく、英語:polymer chemistry)は、分子量がおよそ 10,000 を超える無機化合物および有機化合物である高分子を研究対象とする学問分野である。
高分子化学を大別すると高分子化学は物理化学的研究領域と有機化学的研究領域とに分けることができる。前者は高分子の分子構造を扱う高分子構造論、高分子固体の熱的性質、力学的性質あるいは電気的性質を扱う高分子固体論、高分子の希薄あるいは濃厚溶液の物性を扱う高分子溶液論などから構成される。後者はモノマーから高分子へと成長増大させる手法に関する高分子合成論と合成論に適用する化学反応を探求する高分子反応論等から構成される。
高分子は低分子とは異なる特異な物性・反応性を持つため、1つの研究分野として確立している。高分子の特異な機能・物性は主に力学的・熱力学的な部分に強く現れるために、固体や溶液の粘弾性などといった物理化学的な視点からの研究が大きく発展している。また、近年では生体高分子に関する研究も大きな柱になっている。
歴史
自然界における高分子化合物は、おもに有機高分子の生体物質である糖鎖、タンパク質、核酸などとして多種多様なものが見出される。したがって研究対象である高分子自体は有史以前より人類の営みのなかに存在していたともいえる。また今日では高分子に分類される、ニトロセルロースやポリスチレンは19世紀に、レーヨンは20世紀初頭に発明・発見されているが、学問対象としての高分子化学が確立するのは比較的最近である。
高分子という概念は1926年にヘルマン・シュタウディンガーによって提唱された。彼はセルロースやタンパク質といったものは似たような性質を持つモノマーが多数結合した鎖状の巨大分子(ポリマー)であり、これによって高分子の性質が導かれると提唱した。当初は相手にされなかったこの考え方もやがて広く認められることとなる。
高分子化学の成果は、1940年代以降の石油化学工業の発展とともに、初期はウォーレス・カロザースのナイロン66(1930年)など合成繊維に応用され、今日では服飾品から魚網まで天然繊維に取って代わるほど利用されるようになった。また、カール・ツィーグラーとジュリオ・ナッタが開発したチーグラー・ナッタ触媒(1953年)で合成されるポリプロピレン等に代表される合成樹脂(プラスチック)は、建材、機械部品から日用品の素材として幅広く利用されている。
現在では従来より高強度で高収率、或いは特殊な機能を持つ高分子を作るなどの研究が行われている。また、ナノテクノロジーの分野として生体高分子や超分子の性質の解明に関する研究も盛んである。