シシャモ
シシャモ(ししゃも、柳葉魚、Spirinchus lanceolatus)は、キュウリウオ目キュウリウオ科に属する魚。食用とされる。世界中でも北海道の太平洋沿岸の一部でしか獲れない。漁獲高の減少のため、キュウリウオや輸入品のカラフトシシャモ(カペリン)が「シシャモ」として食卓に上ることも多い。同じキュウリウオ科に属しているものの、キュウリウオはキュウリウオ属、カラフトシシャモはカラフトシシャモ属の別の魚である。
回遊魚であり、晩秋に産卵のため川を溯上する。この時期の卵を持った雌は子持ちシシャモといい、酒肴として珍重されているが、雄の方が高価である。また雄雌共に大きい(太い)ほど味がよいともいわれるが、その反面、大きくなるほど骨も大きく硬いものになるため食べにくいとも言う。一夜干しのほか、糠漬け、珍味、漬物、フライ等にもされる。また、10-11月の漁期には地元で刺身や寿司ネタともなる。
名称
「シシャモ」という名称は、アイヌ語のsusam(スサム、語源はsusu(スス(シュシュ))=柳、ham(ハム)=葉とされる)に由来する。シシャモに関するアイヌ民族の伝説は複数の種類がある。
- アイヌの神様が食べ物に困っていた人間達に食糧を与えようとして、柳の葉を川(鵡川)に流したところ、ススハム「スス=柳」、「ハム=魚」になったという伝説[1][2]。柳の葉を川に流した神は、雷神の妹の祈りを受けたフクロウの女神であるなど、類似の伝説もある。
- 神の木である柳の葉が水に落ちて朽ちるのを哀れんだ神が魚に変えたという伝説[3]。
- 飢えに苦しんでいたアイヌの娘が病気の父のために川岸で神に祈りをささげたところ、柳の葉が川に次々と落ちて泳ぎ回りそれがシシャモになったという伝説[4][5]。娘ではなく息子とされる場合もある。
また、語源として「スス=柳」、「ハム=魚」以外に、「シサク(美しいの意)」説や「シサム(日本人の意)」説など諸説ある[5]。
生態
本種は、遡河回遊魚であり、産卵のために10月から12月にかけて河川へ遡上し、雌は河床の砂礫に産卵する。産卵は底層流速が 0.6 m/sec 未満の場所に多い[6]。産卵時は夜間に雌雄1対となり、雄は魚体を弓状にそらせて雌を抱え込み、臀鰭を雌の腹鰭基部から尾柄付近までの間に巻き込み、両生殖孔付近に生じる空間において受精が行われる。雄の臀鰭は、10月頃からの性成熟に伴い二次性徴として伸張する。この現象は、テンプレート:仮リンク Tymallus tymallus の背鰭およびオイカワ Zacco platypus と同様に抱擁器官として使われ、受精率を高めるために重要な役割を果たしている。産卵後における成魚のほとんどは斃死するが、雌の一部は下りシシャモとして海にもどり、翌年満2歳(通称3年魚)で再び産卵に参加する。これまで文献により、シシャモの産卵遡上が確認されている河川は、北海道太平洋の襟裳岬の西側では9河川、東側では7河川である。
シシャモ卵は外囲に粘着膜を有し、それが受精後に反転して河床の底質材料などに付着する。受精卵は、河川で発生を続け、翌年の4月から5月にかけて孵化する。仔魚は、直ちに降海し、約1年半の海洋生活を経て、成魚となって再び河川へ遡上する。鵡川の河口周辺海域における仔魚は、水深帯4-8 mに多く分布している。海域におけるシシャモは、遊楽部川から別寒辺牛川の沖、水深120m以浅に分布し、産卵期になると各河川の沿岸域に密集する。資源動態や形質遺伝的な系統が解析され、襟裳岬を境界とした太平洋側の西部海域と東部海域における系群の相違が示唆されている。
本種は、地理的な分布の特異性と、個体群の減少から保護を要する野生生物の対象となり、留意種(日高以西の個体群は保護に留意すべき地域個体群)として北海道レッドデータブックに記載されている。
脚注
外部リンク
- 北海道むかわ町 - 鵡川ししゃも
- シシャモ伝説 - シシャモ伝説 デジタル絵本館
- テンプレート:PDFlink - アイヌの口碑伝説と記録の一つにあるシシャモ豊漁祈願の儀式。現在もむかわ町で行われている。テンプレート:Fish-stub