消火器
消火器(しょうかき)とは、初期の火災を消すための可搬式または半固定式の消防用設備。
目次
消火原理
消火器は冷却作用、窒息作用、抑制作用の応用により消火する
- 冷却作用
- 注水等による冷却により燃焼温度を奪って消火する。
- 窒息作用
- 酸素を遮断するか、濃度を薄くして消火する。
- 抑制作用
- 燃焼の反応を抑えて消火する。負触媒効果ともいう。
- 粉末消火薬剤、ハロゲン化物消火薬剤が持つ特殊な作用である。
火災と適応消火器
日本
日本の消防法では、対応する火災により以下の3種類が表示されている。
実際は表示されていても実用的でなかったり、特例で適応が認められたりする場合も多い。しかし、高圧変圧器の火災に泡消火器を用いる等の最悪の組み合わせは避けられる。
消火器には3種類の円型マークがあり、これにより消火器が適応する火災が分かるようになっている。
平成23年、老朽化した消火器の破裂事故などをふまえて行われた法改正(平成22年総務省令第111号「消火器の技術上の規格を定める省令の一部を改正する省令」)により、適応火災の表示マークも改正され、色地の円に文字しか書かれていなかったものがイラストに切り替わった。
- A火災 - 旧) 白地に黒文字で「A火災(普通火災)用」 → 現行) 白地に火の出たゴミ箱とたき火のイラスト(ゴミ箱・たきぎは黒のシルエット、炎は赤)
- B火災 - 旧) 黄色地に黒文字で「B火災(油火災)用」 → 現行) 黄色地に灯油缶と流れ出た油が燃えているイラスト(灯油缶・油は黒のシルエット、炎は赤)
- C火災 - 旧) 青地に白文字で「C火災(電気火災)用」(黒文字でないのは見づらくなるため) → 現行) 青地に黄色の雷(かみなり)のイラスト
アメリカ
アメリカの消防法令では、下記の5種類の表示が用意されている。
- A (Common Combustibles) - 普通火災、日本のA火災に相当。緑色で表記。
- B (Flammable Liquids & Gases) - ガソリン、プロパンガスなどの火災。赤色で表記。
- C (Live Electrical Equipment) - 電気火災、日本のC火災に相当。青色で表記。
- D (Combustible Metals) - マグネシウムやリチウムなど金属の急速酸化火災。黄色の星形で表記。
- K (Cooking Media) - サラダ油などの調理火災。黒色で表記。
使用方法と注意
一般に普及している消火器の場合の使用方法。後に述べる通り、大型消火器、化学泡消火器はこの限りでない。また、小型の粉末消火器には押しボタンを叩いて加圧用ガス容器の封板を破る方式の物もある。
- 消火器上部の安全栓(黄色)を抜く。
- ホースを外し、ノズルを火元に向ける。距離は3m程度。余り近づいても効果は上がらず、却って炎が吹き返して危険である。
- 上下のレバーを握り薬剤を放射する。風上から炎の根本を手前から掃くように消火する。
完全に鎮火したかよく注意し、極力全量を炎の根元部分に向けて放射する。特にふとんやゴミ箱などの火災に際しては、鎮火後さらにバケツなどで水をかけておくなどすると再燃を防げる。特に粉末消火器や二酸化炭素消火器は注意を要する。
屋内で粉末消火器を用いると視界が悪くなるので、避難路を背に向ける等の注意が必要である。泡消火器で油火災を消す場合は、油面を圧力で掻き回さないように泡を放射する。また、消火器は1本ずつ操作するよりも数本で一斉に消火する方が、より大きな鎮圧効果が期待できる。
一般に消火器で消火可能な火災は「天井を炎がなめる」以前の状態である。消火器で鎮圧困難であれば、消火栓設備等の備えがあれば直ぐその操作に切り替え、或は避難し無闇に消火器に執着して脱出の時期を失する事の無いようにすべきである(消防本部による消火訓練でも、「炎が天井に回ったらもう初期消火の段階ではない。無理せずに避難して119番通報し消防隊の到着を待て」と指導される)。近寄り難い室内の火災に際しては、窓の隙間や玄関ドアの郵便受け等にホースを差し込んで室内に放射したり、既にレバーを握り放射中の状態にある消火器を室内に投げ込む方法もある。
※1982年(昭和57年)度以前に製造された小型消火器(化学泡消火器を除く)は各社毎に安全栓がバラバラだった。
消火器の設置基準
消防法における設置基準
消防法により一定の防火対象物には消火器の設置が義務付けられている。基準は建築物の種類、面積など。
階ごとに、階各部分から消火器への歩行距離が20mになるようにし(大型消火器の場合は30m)、「消火器」と表示した標識を設置する。
床面が濡れる可能性がある場所では、底部が腐蝕して消火器が破裂することがないよう、消火器は専用の消火器格納庫や消火器設置台などを用いて床面よりも高い位置に設置・保管される。屋外など全体に水が掛かる可能性がある場所では専用の消火器格納箱に収納する。
消火器の能力を示す数値として能力単位がある。消火できた火災模型の種類・数によって表される。この実験により何れかの数値が1以上でないと消火器と認められない。Aは普通火災で、第一消火試験で1以上(大型消火器は10以上)、Bは油火災を言い第二・第三消火試験で1以上(大型消火器は20以上)の数値が能力単位を示す。Cは電気火災を表し数値はない。
また、ABC粉末消火器の様にA火災能力単位が大きくても実際には再燃の危険が大きかったり、強化液消火器の様にB火災能力単位が付与されていても、効果的とは言い難かったりするので、能力単位のみで消火器の性能を評価するのは危険である。
平成22年、老朽化した消火器が破裂し負傷者が出る事故などが相次いだため、総務省は省令第111号「消火器の技術上の規格を定める省令の一部を改正する省令」を発し、平成23年1月1日より消火器の規格を改正した。これにより、同年12月31日をもって旧規格の消火器はすべて型式失効となり販売及び設置が禁止された。ただし、これに際し、旧規格の消火器であってもすでに事業所内に設置されている場合は、機能に異常がなければ平成33年12月31日まで設置しておいてもよいという特例期限が設けられている。「機能に異常がなければ」とは、製造から10年経過した物は耐圧性能を点検しなくてはならない、内部点検・機能点検を加圧式消火器にあっては3年、蓄圧式消火器にあっては5年ごと実施しなければならない、というものである。なお、一般の住宅には消火器の設置義務は無い(市区町村等の条例に規定される場合を除く)ことから、旧規格の消火器が設置されていても型式失効による交換義務は発生しない。
道路運送車輌の保安基準における設置基準
道路運送車輌の保安基準により一定の道路運送車輌に消火器の設置が義務付けられている。
船舶安全法における設置基準
船舶安全法により一定の船舶には消火器の設置が義務付けられている。
消防法上の消火器
国家検定制度
消防法による国家検定制度があり、これに合格した物でないと販売・陳列できない。最近見かけるエアゾール式の消火具(消火スプレー)があるが、これは消防法上消火器と見なされず、エアゾール式簡易消火具として扱われる。
現在一般的に普及している消火器は加圧式ABC粉末消火器である。国家検定を受けた小型消火器は、化学泡消火器および一部の自動車用消火器を除き、1981年に行われた規格改正により各社で操作法が規格統一され、「安全栓を抜く、ノズルを火元に向ける、レバーを握る」の3つの操作で誰でも使用できる。
点検・詰替え・廃棄
消防法により設置義務のある防火対象物に設置されたものは常時使用し得る状態か、6箇月に一度の点検が義務付けられている。防火対象物によって資格者でないと点検できないものもある。適用資格は、消防設備点検資格者1種及び消防設備士乙種第六類。尚、消火薬剤の交換ほか整備については、消防設備士の資格が必要となる。
住宅には設置・点検義務は無いが、住宅用消火器は5年、普通の消火器であれば8年で交換することが望ましい。特に加圧式粉末消火器は容器やキャップに錆、変形をきたした物は絶対使用せずに新しいものに取替える必要がある。加圧式粉末消火器の破裂はその多くが死亡を含む重大事故となる。
薬剤が劣化し絶対に詰替えなければならない消火器は化学泡消火器のみであり、普及している粉末消火器は必ずしも詰め替えの必要は無いが、設置年数が極めて長い物は稀に吸湿・固化することがあるので、法による点検義務が無い家庭用等は5年を目処に点検を兼ねて詰め替えるのが良いであろう。
- 現在では加圧式粉末消火器は極めて安くなっており、単独で詰替えを依頼すると新規に購入するより費用が掛かる場合が多いので、市町村、自治会・町内会、消防機関が斡旋をしている時に依頼するか買い換えるのが賢明であろう。
粉末消火器の簡単な判別法としてたまに上下逆さにしてよく振り、消火器内部で粉末がサラサラと流動するか確かめる方法がある。加圧式粉末消火器はキャップや容器の緩み、錆び、容器の変形に特に留意し、異常があれば廃棄処分する。
蓄圧式は極めて稀に蓄圧ガスの漏洩があるので、圧力計の針が緑色範囲内を示しているかを確かめる。強化液・機械泡は変質のおそれが無いので放射しない限り詰め替える必要は無く、単に圧力計に注意していれば良い。安全栓が悪戯等によって抜かれた場合は、必ずレバーの動きを止めるストッパーの支柱を起こしてから安全栓を再度差し込む。使用済み表示装置の「OKマーク」「goodマーク」「lookマーク」「使用可マーク」「封マーク」が脱落している場合は使用された危険があるので、消防設備士による点検を乞う。
消火器の廃棄については多くの自治体で一般ごみとしての回収が出来ないため、専門業者に依頼する。現在では消火器メーカーの業界団体である社団法人日本消火器工業会による全国的なリサイクルシステムが構築されている。 詳細は消火器リサイクルシステムを参照。
消火器の分類
消火器は使用する消火薬剤、薬剤の放射方式、形態などにより、いくつかに分類される。
消火薬剤による分類
水消火器
かなりの種類があるが、現在製造されているのは汚損を嫌う用途に蓄圧式で噴霧ノズルを持つ純水を用いた浸潤剤等入り水消火器があるのみであり、これが対応する火災は普通火災と電気火災である。なお、純水は不導体であるが、後者の火災には感電に対する十分な安全確保が必要である。原理的には水バケツと同じだが、水バケツは法令上簡易消火用具とされ、消火器ではない。消火の作用は冷却によるものである。
酸アルカリ消火器
濃硫酸と炭酸水素ナトリウム(重曹)水溶液を反応させて、発生した二酸化炭素の圧力で薬剤を放出する。最も歴史の古い消火器の一つで、硫酸の入ったガラス瓶を消火器外から押し金具で割り、炭酸水素ナトリウム水溶液と反応させる「破瓶式」やハンドルを回して瓶を破る「硫酸瓶回転式」、外側のガラス瓶に粉末の重曹を詰めその内側に硫酸アンプルを入れた「二重瓶式」、欧米では主流である化学泡消火器同様、転倒して反応させる「転倒式」などが製造されていた。
しかしこれらは、アンプルの割れ方によって反応が一定でないことや、薬剤の詰め替え時にガラス破片の扱いに注意を要するなどの問題があるため、1951年の規格改正では硫酸アンプルを網篭に入れて破砕混合される方式の「破瓶式」に限定される(ただ、規格改正後も転倒式は製造されていた)。これにより、安定した消火能力を示し、詰め替えも容易になった。消火作用の実質は水と殆ど変わりないが、当時としては強力に噴出する性質が好まれたようである。8Lのバケツの水は3個でA-1の能力しか持たないが、10L程度の酸アルカリ消火器はA-2ないしはA-3の能力を有していたようである。しかし、適応火災が木材や紙・布などが燃える普通火災のみであり、詰め替え時には硫酸瓶を扱わねばならぬ上、使用時には遊離した硫酸で腐食の問題もあり1972年頃に生産されなくなった。
- 対応する火災
- 普通火災
- 電気火災(噴霧ノズルを持つ物)
水槽付きポンプ消火器
水槽に手押しポンプを付けた物、現在では製造されていない。国内では4ガロン入りが多かったようである。欧米では未だ2.5ガロン入り程度の物が製造されている。国内では郵便局、紡績工場、デパート等で採用されていた。
- 対応する火災
- 普通火災
- 電気火災(噴霧ノズルを持つ物)
加圧式水消火器
炭酸ガス加圧式。日本では昭和40年代まで、主に8リットルタイプのものがデパートなどでよく設置されていた。大型水消火器としても加圧式が用いられた。現在でも多くの民間旅客機がキャビンに搭載しているが、一般での使用は現在は無い。
- 対応する火災
- 普通火災
- 電気火災(噴霧ノズルを持つ物)
蓄圧式水(浸潤剤等入り)消火器
「水」に消火能力を高める為、植物から抽出した多糖類とリン酸塩等を添加した薬剤を使用していた。浸透性と再燃防止効果が優れており、従来の水消火器や酸アルカリ消火器と比べ、約3倍の消火効力を有する。メリヤス工場やデパート倉庫などで広く使用されてきた。近年では純水の溶剤に浸潤剤を配合し、精密機械や電子機器にかかった場合でも、乾燥後に不純物を残さないものが製造されている(ミヤタ「クリーンミスト」、ヤマト「アクアシューター」、ハツタ「ピアウォーター」など)。米国では何も添加していない水道水を用いるものが多いが、現在日本では製造されていない。かつては油火災にも適応を持つ浸潤剤等入り水消火器(ヤマト「ウォータージェル」、ユージー(旧中央機器製作所)「ニュートラー」)があったが、この機種は現在製造されていない。
- 対応する火災
- 普通火災
- 油火災(浸潤剤等を添加し、かつ噴霧ノズルを持つ物の一部:現在は製造されていない)
- 電気火災(噴霧ノズルを持つ物)
強化液消火器
炭酸カリウムの濃厚な水溶液を薬剤とする。pH約12の強アルカリ性。薬剤は無色透明だが、水と区別するために淡黄色に着色される場合もある。
かつては酸アルカリ消火器と同じ構造のものがあったが、現在の製品は噴霧ノズル付きの蓄圧式である。大型消火器(60リットル入り)は炭酸ガス加圧式であり、噴射を棒状と噴霧を選択できるノズルを持つ。手さげ式の物は放射時間は20 - 60秒前後、放射距離は3 - 8m程度である。
消火の作用は冷却と抑制によるものである。特に天ぷら油火災に対しては、主成分の炭酸カリウムと油脂が反応(鹸化)し高温の油を瞬時に不燃化するため、最も有効な消火器といえる。この為欧米では厨房用の消火器とされる場合が多い。ガソリン等の鉱物油火災にも適応するが、薬剤容量の十分なものを設置するなど、能力に注意すべきである。 木材や紙等の普通火災に対しては冷却作用と脱水炭化作用により消火する。 強力な抑制作用をもち、消火速度も非常に速い。
これらの特徴から、住宅用消火器として粉末消火器に並んで良く用いられる。機械泡消火器や強化液消火器等の水系消火器とABC粉末消火器を併置するように指導する消防機関も多い。
薬剤は強アルカリ性であり、人体に対する刺激が比較的強いので、目等に入った際は水道水で充分洗い流す。皮膚にも長時間触れさせるべきでない。また電気火災にも使用できるが、一旦薬剤を浴びた電気機器は絶縁が悪くなったり錆びたりするので実際的ではない。 また、ABC粉末消火器と同時に使用(薬剤が混合)すると、直ちに人体に影響を及ぼす濃度ではないが、アンモニアガスが発生するので、消火後は直ちに換気する必要がある。[1]
- 対応する火災
- 普通火災
- 油火災(噴霧ノズルを持つ物・現在の手さげ式は総て噴霧ノズルである)
- 電気火災(噴霧ノズルを持つ物)
木や紙、綿などの一般火災には最も適当である。また、鉄道用の消火器としても広く利用されている。電気製品や精密機械に薬剤が掛かった場合は腐食や絶縁劣化の危険があるので直ちに専門家に委託して清掃する。
中性強化液消火器
現在販売されているものは、界面活性剤に多糖類やリン酸塩などを配合した「リン酸塩系」と、天ぷら油火災に適応した「カリ塩系」の2種ある。いずれも薬剤はpH約7の中性水溶液で、中性強化液と呼ぶ。各社とも全成分は公表していないが、強アルカリ性タイプの強化液(炭酸カリウム主剤)に比べて中性強化液は安全性・消火能力に優れている。消火の作用は冷却と抑制、窒息(リン酸塩系のみ)によるものである。従来のアルカリ性強化液と異なり、リン酸塩系中性強化液は窒息作用により、ガソリン等の油火災にも効果を発揮する。しかし、天ぷら油火災に使用した場合、放射直後に炎が拡大し、油が飛び散るので適当ではない。止むを得ず天ぷら油火災に使用する場合は放射距離以上離れて放射する。一方、カリ塩系中性強化液は、強力な鹸化作用を有するので天ぷら油火災の消火には大変優れているが、ガソリン等の鉱物油の火災には、あまり効果が期待できない。どちらの中性強化液も木材や紙等の普通火災に対し、アルカリ性強化液に比べて消火速度はやや劣るが、アルカリ性強化液には無い、強力な浸透性と脱水炭化作用による確実な再燃防止効果があり、普通火災に優れた効力を発揮する。
これらの特徴からアルカリ性強化液消火器同様、ABC粉末消火器と併置するように指導する消防機関も多い。
- 対応する火災
- 普通火災
- 油火災
- 電気火災
木や紙、綿などの一般火災には最も適当である。また、鉄道用の消火器としても広く利用されている。特に車体がアルミニウム製の車両を多数保有する鉄道会社はこの消火器を採用する傾向が強い(アルミニウムや銅を腐食させにくいため)。電気製品や精密機械に薬剤が掛かった場合は腐食や絶縁劣化の危険があるので直ちに専門家に委託して清掃する。
化学泡消火器
A剤(炭酸水素ナトリウム)とタンパク泡消火剤(古くはムクロジや甘草根の煮出し液を用いた)や防腐剤、B剤(硫酸アルミニウム)を溶かした水溶液を薬剤とする。A剤とB剤は消火器内で別々の筒に入れられている。使用時に消火器をひっくり返して混合・反応させると二酸化炭素が発生し、薬剤が放射する。この時副生されるコロイド状の水酸化アルミニウムは泡になるが、安定性が低いので、A剤にはタンパク泡消火剤やムクロジ等からのサポニンが混合されている。
ABC粉末消火器普及以前は最も広く用いられた。薬剤は劣化しやすいため、1年毎に詰め替える。化学反応により噴射するので、設置場所の温度の下限は+5℃である、従って戸外での設置は冬季十分に発泡しない場合がある。また、凍り易いので室内に設置すべきであろう。
単にひっくり返すだけで噴射される「転倒式」と、使用時に内筒の封板を破ってひっくり返す「破蓋転倒式」(封板が鉛のため、破鉛転倒式という場合もある)、主に大型消火器に用いられるハンドルを回して内筒の蓋を開けてから転倒する物の3種がある。昭和50年代前半まで転倒式の需要が多かったが、転倒式は地震などで倒れたり、火災時横にして抱えるだけで噴射してしまうため(運ぶ時は定置姿勢のままである事を要する)、現在は転倒式は製造されていない。
破蓋転倒式は船舶用としても良く用いられる。消火薬剤が消火器中最も廉価で、詰替えも特殊な技術が必要なく、ポリバケツと攪拌用の棒があれば十分な為であろう。
放射時間は50から60秒と長く、放射距離も9m程度で長い。また、水系消火器の中ではA(普通)火災に対する制炎効果が高く、その鎮圧力は粉末消火器に匹敵する。これは不燃性の二酸化炭素を多く含んだ泡が、燃焼物上で気化するためと考えられる(大阪市消防局による消火能力比較実験で実証済)。
日本では大正期に製造され始めた消火器ではあるが、小型の化学泡消火器は2008年に船舶用を除き、最後まで製造していたハツタ、ヤマトプロテック両社とも製造を打ち切った。
最近では危険物取扱所、街頭設置を始め、大手印刷工場や紡績工場、放送局スタジオなどでも採用されていた。
感電の危険があるので、高電圧の電気設備には使用してはならない。電気製品や精密機械に薬剤が掛かった場合は腐食や絶縁劣化の危険があるので専門家に委託して清掃する。
消火の作用は冷却と窒息によるものである。
- 対応する火災
- 普通火災
- 油火災
化学泡消火器の使用法と注意
破蓋転倒式の場合(転倒式の場合は3からの操作で良い)
- 消火器上部中央の安全キャップを外す。
- 安全キャップ内にある棒状の押し金具を押し込む(内筒の鉛板が破れる)。
- ホースを外し、ノズルを親指で塞ぐ。
- 消火器を横倒しにし、消火器底部の取っ手を持ち消火器をひっくり返す。
- 上下に二、三度振り、親指に圧力を感じたなら親指を外して放射する。
化学泡は他の水系消火薬剤と比べて浸透性が低く、再燃の危険があるので鎮火後には注意が必要である。また、高圧の変圧器や遮断器、配電盤の電気火災には感電の危険があるので使用してはならない。止むを得ず使用する場合は電源を遮断してから放射する。転倒式化学泡消火器誤って倒すと放射してしまうので、設置時には地震等で倒れぬように措置し、火災時は横抱え等をせずに運搬しなければならない。使用時に化学反応で急に圧力が発生するため、錆びたり、キャップに亀裂・緩みのあるような物は破裂の危険がある。
化学泡消火器の薬剤、特にA剤は変質しやすいので、年に一度詰替える必要がある。この詰め替えの時に訓練と合わせて放出すると良い。
使用後薬剤が掛かった物品は乾かぬ内に水洗い、水拭きする。一度乾くと水酸化アルミニウムがこびり付いて中々汚れが落ちない。使用後の消火器もキャップを開けて、ホースやノズルを念入りに水洗いしてノズルやホースの詰りを防ぐ。
機械泡消火器
発泡しやすい泡消火薬剤の水溶液を薬剤とする。水成膜泡消火薬剤(商品名:ライトウォーター等)と、リン酸塩や浸潤剤を配合した界面活性剤泡消火薬剤(商品名:ファイティングフォーム)の2種あるが、いずれも主成分は界面活性剤である。空気を導入させる特殊な構造のノズルを用い、放射時に放射ノズルから空気を取り入れ、発泡して噴射する。
構造は蓄圧式で、ノズル以外は強化液消火器と同じ構造である。車載式には加圧式も見られる。
放射時間は20秒 - 40秒、放射距離は4 - 7m程度である。消火作用は冷却と窒息および抑制によるものである[2]、[3]、[4]。浸透性や再燃防止効果などに優れ、消火能力は化学泡消火器より高い。
油火災、特にガソリンや灯油の火災に対して優れた再燃防止効果で確実に消火できる。また、燃焼物に消火剤を注ぎ込むだけで消火できるので、消火器の操作に不慣れな人でも容易く消火できる。但し、油の表面を覆って消火する窒息作用を特性とするため、他の消火器と比べて消火にやや時間が掛かる。このため、制炎力の優れた粉末消火器を併用することで、速く確実な消火が期待できる。なお、天ぷら油などの動植物油の火災に使用した場合、放射直後に火炎が拡大して油が飛び散ることがあるので、燃焼物から放射距離程度離れて操作するとよい。
普通火災に対しては瞬時に火炎を抑え、優れた浸透性で再燃を防止する。また、空気を多く含んだ泡は、発生した煙を吸着する作用がある為、透視性に優れている。。[5]
このような特長から、紙や木材、綿などを多く扱う場所、ビル、デパート、地下街などに好適である。また、寺院や重要文化財などでもよく設置されている。
感電の危険があるので、高電圧の電気設備には使用してはならない。電気製品や精密機械に薬剤が掛かった場合は腐食や絶縁劣化の危険があるので専門家に委託して清掃する。
アルコールやアセトンなどの親水性可燃物は消泡作用があるので、対策を施した一部の製品を除いて消火能力がかなり落ちる。
- 対応する火災
- 普通火災
- 油火災
二酸化炭素消火器
二酸化炭素(炭酸ガス)を薬剤とし、窒息作用で消火する。汚損が無く、特に電気設備、電算機、電話交換機、可燃性インクを使う印刷工場や溶剤類を扱う実験室、レース場、空港等によく用いられる。
構造は高圧で圧縮した液化二酸化炭素を薬剤として使用、自身の圧力で放射する。独特のラッパ状のホーンを持つ。放射時、ドライアイスと霧が発生する。人間の酸欠事故防止のため、地下街などには設置できない。放射時にはホースや容器(消火器本体)は極めて低温となるのでレバーやホーンの握り部分以外には触れるべきでない。
この消火器は高圧ガスが充填されているため、高圧ガス保安法の適用を受ける。高圧ガス保安法では、二酸化炭素が充填される高圧ガス容器は表面の1/2以上に緑色の塗装をすると定められているため、そのような塗装が施されている。消火器本体は、充填される二酸化炭素の高圧に耐えられるように肉厚の厚い鋼鉄製でできており、他の消火器に比べ重い。
放射時間は10数秒 - 20秒程度、放射距離は2 - 3m程度である。
消火の作用は窒息によるものである。再燃の危険が大きいので、鎮火後は完全に消火したかどうか、注意を要する。風上から放射し、使用後は直ちに換気を図る。放射時はドライアイス(粉末状)混じりのガスを噴射し、その温度は低いが、熱量の小さいことも相俟って燃焼物を冷却するまでに至らず粉末消火器同様、再燃の危険は大きい。(放射した二酸化炭素が風等で吹き去られれば火種があれば直ちに再燃する)
- 対応する火災
- 油火災
- 電気火災
消火により汚損の被害が懸念される場所に好適である。とりわけ美術館や博物館での設置が多い。なお、小型の物でも6畳程度の室内で全量噴射すると中毒死の可能性がある濃度に達するため、一般家庭向きではない。
ハロゲン化物消火器
ハロゲン化物を用いたもの。 前項の二酸化炭素同様に汚損が無い上に二酸化炭素より消火能力が優れているため、特に電気設備、電算機、博物館、電話交換機、競技車両、自衛隊・警察車両、溶剤類を扱う実験室によく用いられていた。
薬剤はハロン2402、ハロン1211、ハロン1301が用いられる。かつては四塩化炭素や一塩化一臭化メタン(ハロン1011)があったが、その毒性の為に早くから製造が禁止された。
また、他のハロゲン化物消火器も1994年1月1日からハロン規制が行われたため現在は製造されていないが、消防法上の失効を迎えていないため継続設置されている場合がある。
ハロン1301は二酸化炭素のような作動時の人体への被害が少ないため、電気機器の設置区画や駐車場、図書室などのような特定の区域に継続設置されている場合がある(ハロンの取り扱い)。そのため、補充や他の消火設備では対応できない部分に限り撤去や他の消火設備に交換され不要となったハロンを回収、精製の上供給される。欧米では代替フロンを用いた消火器も製造されているが、日本国内には流通していない。
ハロン1301は別名フロン13B1とも呼ばれ大抵の容器のガス名打刻にはフロン13B1と打たれている。
ハロゲン化物消火器は消火時にホスゲンやフッ化水素等の有毒ガスが発生するおそれがあるため、比較的毒性の少ないハロン1301以外の消火器は地階や無窓室等への設置が禁止され、消火時の注意事項が銘盤に記入されている。
ハロン1211、ハロン1301は高圧ガス保安法により容器の1/2をねずみ色に塗色するように義務付けられている。
消火の作用は窒息と抑制作用によるものである。冷却作用が少なく再燃の危険が非常に大きいので、鎮火後は完全に消火したがどうか、注意を要する。風上から放射し、使用後は直ちに換気を図る。
- 対応する火災
- 普通火災 (特例として比較的大きい物のみ)
- 油火災
- 電気火災
消火により汚損の被害が懸念される場所に好適であるが、現在は製造されていない。近年では二酸化炭素消火設備の中毒性を避けるため、窒素・アルゴンなどの不活性ガスに代替される例も見られる。
粉末消火器
粉末の消火薬剤を用いたもの。現在最も普及しているのが、各種の粉末中、燐酸二水素アンモニウムを用いたABC粉末消火器である。
重曹等の粉末に消火の作用がある事は古くから知られており、重曹におがくず等を混ぜたものを消火砂の代わりに準備したり、長細い筒状の容器に入れて火災時に振り撒いて消火したりしていた。日本では戦前に既に輸入され知られていたが、当時は火薬を使い拳銃のように構え、火薬の爆発によって散布する物が多かったようである。この形態では発射時、的を外してしまったら取り返しがつかないので、姿を消したようである。他方、現今の姿に近い加圧式と思われる物も輸入されたようであるが、構造が煩瑣で国産化は遅れ漸く1952年に国産化した。
古くは消火の作用は炭酸水素ナトリウムが火炎により熱分解し二酸化炭素が発生し窒息消火するのではないかと考えられていたが、現今では殆ど否定されており、抑制作用こそが消火作用の実態であるとの認識が一般的である。
薬剤には以下の4種類があり、区別のために着色されている。
- Na(炭酸水素ナトリウム)白色 - 薄青色
- ABC(リン酸アンモニウム)淡紅色の着色義務がある。
- K(炭酸水素カリウム)着色義務は無いが紫色に着色されている場合が多い。
- KU(炭酸水素カリウムと尿素の反応生成物)ねずみ色である。
油火災への消火能力は下へ行くほど強力であるが、特殊な理由が無い限り消火器用としてはABC粉末が最も広く普及している。
構造としては使用時に容器に圧力が掛かるガス加圧式の物と、常時圧力が掛かっている蓄圧式の物がある。加圧式はその構造上、使用時に急激に容器に圧力が掛かる為、容器やキャップが腐食した物は破裂事故を招く。
消火の作用は主に抑制作用によるものである。抑制作用は他の消火薬剤より最も強力で、これを応用して可燃性ガスなどの爆発を事前に防ぐ装置・用途もある。
放射時間は10数秒から30秒程度でかなり短く、放射距離も3 - 7m程度である。
冷却作用が無く再燃の危険が非常に大きいので、鎮火後は完全に消火したがどうか、注意を要する。
消火方法は、放射された粉末が空中に舞っている状態で、火元を粉末で覆うようにすると消火しやすい。放射時間が短いのは短時間に大量の粉末を放射する方が効果的であるためでもある。
火炎を急激に減衰させる点では非常に効果的な消火器であり、最も普及しており、ガソリン・ガスの火災には非常に好適であるが、放射が止まると一部でも火種があればまた元通りに炎上してしまう。使う人により十分に能力を発揮できない場合も多い。また、屋内では視界が悪くなり、狙った火元以外にも薬剤が掛かるので汚損が甚だしい。一見能力単位が大きく軽量強力に見える消火器であるが、この様な制約も多い。その為、強化液消火器や泡消火器と併置するのが理想的で、消防機関でも併置を指導する場合が多い。
- 対応する火災
- 普通火災 (ABCのみ)
- 油火災
- 電気火災
ABC粉末は電気製品や精密機械に薬剤が掛かると、長時間の内に空気中の水分を含み、金属を錆びさせたり、絶縁劣化する場合があるので、専門家に委託して清掃する。消火後、直ちに粉末を吹き飛ばしたり掃除機で吸い取ったりすれば強化液や泡消火器より危険は少ない。
加圧式粉末消火器は広く普及している為、錆で破裂の危険があるものが散見され、実際死亡事故を含む大きな事故が発生している。決して放置したり練習用などとせず、消防設備業者に回収を依頼するべきである。
ABC粉末薬剤は熱により分解し、僅かではあるがアンモニアガスを発生させる[6][7]。
薬剤の放射方式による分類
蓄圧式消火器
消火器内部に高圧の空気、窒素ガス、ヘリウムガスを充填したもの。薬剤は常時加圧されていて、レバー操作により圧力を利用して放射する。内部圧力を示す指示圧力計(ゲージ)の取付が義務付けられている。現在国内では水消火器、強化液消火器、機械泡消火器、粉末消火器の一部がこの方式を採用している。二酸化炭素消火器など消火薬剤そのものが圧力を持つ場合もあり、こちらは「自圧式」とも呼ばれる。
ガス加圧式
手さげ式は、現在国内では粉末消火器のみに用いられる。普段内部は加圧されておらず、内部に加圧用のガスが封入された容器がある。使用時にレバーを操作するとカッターにより内容器の封板が破れガスが噴出、容器に充てんされた薬剤が攪拌された後放射される。手さげ式粉末消火器にはレバーにバルブ機構を備え手を離すと噴出が止まる「開閉バルブ式」、一旦レバーを握ると全量が放出される「開放式」の2種類がある。外観から使用済みかどうか判断するのが困難なため、薬剤量が3.5Kg以上の粉末消火器には作動によって識別できる、使用済み表示装置の装着が義務付けられている。また外容器が腐食していると急激な加圧に耐えられず破裂するおそれがあるので、使用を避けるべきである。炭酸ガス加圧式と窒素ガス加圧式の2種類があるが、現在は窒素ガス加圧式を製造するメーカーが増加している。蓄圧式の4倍の力でレバーを握らなければ作動しない。
ストップ機能
安価な加圧式粉末消火器の多くは、噴射を開始すると中身が空になるまで止めることができない。このため、誤放射時の被害が大きくなったり、火災時に適切に燃焼部分に掛けられないまま噴射が終わって再燃したりするという問題がある。通常の蓄圧式の製品と、一部の加圧式の製品にはストップ機能が備わっており、レバーを握るのを止めると放射が停止する。
ただし、ストップ機能は使いかけの消火器を長期保存するためのものではなく、火災時に最適な消火行動が行えるようにするためのものであり、噴射力の維持には期待しない方がよい。特に粉末式消火器の場合、一度噴射をするとストップ機能により停止をしても停止弁に薬剤が噛んでしまうため、完全に密封ができず、長時間経つと内部のガスがなくなってしまう。強化液消火器の場合も、あまり確実に長期間の保存はできないとされている。二酸化炭素消火器の場合は、構造上噴射を停止すれば特に弁に異物が挟まらずに元通りに密閉できるはずであるが、メーカーのカタログでは強化液消火器と同様にストップ機能使用後にはガスが漏れる可能性があるとしている。いずれにせよ、粉末・強化液消火器は少量しか使用しなかった場合でも詰め替え・買い替えをするのが望ましい(特に加圧式のものは圧力計がないので、そのまま保管しても内圧が十分か分からず危険である)。
反応式
薬剤の化学反応を利用して放射する。現在国内では化学泡消火器のみ。かつては酸アルカリ消火器、強化液消火器などがこの方式を用いていた。
形態による分類
火災時火元まで運ばなくてはならないので、総重量により規制がある。
- 手さげ式消火器
- 手に持って使用する消火器。建物内部に備え付けてあるのはこのタイプが多い。
- 据置式消火器
- あらかじめ据え置いてある消火器。ホースを伸ばして使用する。
- 背負式消火器
- 背負って使用する消火器。
- 車載式消火器
- 車輪のついた消火器。大型消火器は総てこの形態である。
大型消火器
A火災用で10以上、B火災で20以上の能力単位を持ち、下記の薬剤量を満足した消火器。主にガソリンスタンドなどのような危険物を取り扱う施設や大規模ビルの電気室等の特殊設備に設置される。
- 水消火器、化学泡消火器 80l以上
- 強化液消火器 60l以上
- 機械泡消火器 20l以上
- ハロゲン化物消火器 30kg以上
- 二酸化炭素消火器 50kg以上
- 粉末消火器 20kg以上
※大型消火器は総て車載式であるが、小型の中にも重量の点から車載式を採る物もある(強化液消火器20l入り、二酸化炭素消火器20kg入り)。
住宅用消火器
住宅用としてのみ設計された物である。試験に使用される火災模型も小型で、能力単位も付与されない。一般の消火器は外面の25%以上を赤色にする義務があるが住宅用にはその定めがなく、ホースも付けなくて良い。安全面から構造は蓄圧式のみで、ハロゲン化物消火薬剤、二酸化炭素消火薬剤は使用できない。原則として使用後再充填出来ない構造(使い切り)で、メーカーは住宅用消火器の耐用年数は5年としている。
その他
火炎の熱などにより、自動的に消火剤を散布する「自動消火器」等と呼ばれている、以下のような機器がある。
- 消火弾に類似したものであるが、設置場所のその場でも熱で容器内圧を上昇させ、破裂して消火剤を散布するもの[8]
- 熱を感知し、耐圧容器内の消火剤をスプリンクラーヘッドの先から噴射するもの
- 一般的な手提げ式消火器に熱で溶ける栓も備え、手動・自動の両方の機能をもたせたもの
消火器詐欺
紺の作業服姿で「消防署の方(方角)から来た」等と訪問し、消火器を販売し高額の現金を騙し取る犯罪。消防吏員の執務服が紺色である事に目をつけた詐欺である。
- 一般的な粉末消火器の場合、購入に1個1万円以上もするのは稀である。
最近では、法人施設に出入りの業者を装い消防設備を点検し、高額請求をするケースが多い。撃退法としては販売許可証を持っているか問い合わせ、その連絡先が消防署に登録されているか問い合わせるとよい。
外国製エアゾール式簡易消火具の注意点
一部日本国内に輸入されるエアゾール式消火具には、日本の規格を満たしていないため、不具合が生じる機種があるので注意が必要である。国民生活センターのテストによれば、外国製のハロンや代替ハロンを使用したエアゾール式簡易消火具の中には、天ぷら油の火災に使用すると炎があおられ拡大する恐れがあるものがあること、石油ストーブが消火できない機種が多いことが指摘されている[9]。
ハロン・代替ハロンには大なり小なり毒性があり、火災時の高温で極めて毒性の強いホスゲンやフッ化水素ガスを生じるので家庭用として使用するのは危険であると言える。「スペースシャトルにも使う」等の宣伝をしているが、10数年前にモントリオール議定書により日本では製造・輸入が禁止され現在では発展途上国でのみ製造されている過去の物質である。
また、ハロン消火設備や国家検定品のハロン消火器は回収され特殊用途に限り再利用されているが、各種規制の網を掻い潜って輸入されたエアゾール式ハロン消火具は回収のシステムが無く、それを購入した個人が抱え込む事になるのを忘れてはならない。
これらの商品を販売しているホームページを見ると検定とか認証を受けていますなどともっともらしい事を謳っている場合が多いが、その殆どが消火具(簡易消火具)としての鑑定を受けていない(NSマークがない)製品が多い。
天ぷら油火災以外では、ハロン自体の消火能力はとても強力であり また粉末/液体ではない為消火後の周辺汚染もない点は特筆すべき点ではある。
輸入品の使用に関し規制はないが、輸入者の道義上の責任は免れ得ないであろう。
脚注
関連項目
主な消火器メーカー
- モリタ宮田工業 (miyata・モリタ)
- 初田製作所(ハツタ)
- ヤマトプロテック(ヤマト)
- 日本ドライケミカル (NDC)
- 丸山製作所(マルヤマ)
- モリタユージー(旧・中央機器製作所→ユニチガード→ユージー)
- 三津浜工業(ミツハマ)
- 今枝製作所(イマエダ)
外部リンク
- サイト
- ビデオ