松平郷松平家

テンプレート:日本の氏族 松平郷松平家（まつだいらごうまつだいらけ）は、三河国の豪族・松平氏の庶宗家。別名に松平太郎左衛門家（まつだいらたろうざえもんけ）・挙母松平家（ころもまつだいらけ） 。

松平氏発祥の地・加茂郡松平郷（現在の愛知県豊田市松平町）を所領とし、明治維新まで代々この地を領した。

概要

松平郷松平家の実質上初代は、親氏流松平家の初代松平親氏（14世紀後半頃）の庶長子とする信広である（『松平太郎左衛門家16代信古年代覚書』では代数起算を親氏としている）。

信広の弟とされる松平氏三代松平信光が所領を三河国平野部に拡張して額田郡岩津郷（岡崎市岩津町）に居城を移したとき、松平氏の元来の所領である山間部の松平郷は庶長子の信広に譲られたことにより、嫡子の信光系の松平本宗家（安祥松平家または岩津松平家））から別家された信広系の松平郷松平家（挙母松平家）が成立した。ただし、庶宗家と呼ばれるのは安祥松平家（徳川家）の成長後であり、元来の所領を受け継いだことから考えて、当初は名実共に嫡宗家と見られていたと考えられる。

信広は、親氏の岳父の松平信重まで代々の松平郷領主が名乗ってきた「太郎左衛門少尉」の通称から｢左衛門少尉｣を省き、｢松平太郎｣を名乗ったとする。この家の別名は、「挙母松平家」とともに「松平太郎家」とも呼ばれる。信広以降の松平郷松平家の当主は「松平太郎」を歴代の通称とし、代々松平郷を継承した。

松平郷松平家は松平氏の庶宗家にあたるものの、平野部に進出した松平氏の流れが戦国大名に発展していくのに対して、松平郷のみを領する土豪から発展することはなかった。16世紀には近隣を領する松平氏の一派、大給松平家の影響下に入るほどで、当時三河の各地で繁栄していた松平氏の一族を称していう「十八松平」にも数え入れられていない。

江戸時代に入ったとき、松平郷松平家の所領は250石余りであり、のちに加増を受けたが440石余りの旗本身分に留まった。しかし松平氏発祥の地である松平郷を領有し続けたこと、将軍家の始祖である親氏直系の家であることから特別の格式をもって遇せられ、交代寄合として大名なみに参勤交代を行う家柄とされた。

明治維新後も家名は途絶えることなく現在に至っている。昭和初期の当主、松平信博は映画音楽の作曲家として活躍した。

歴代当主

　　　　（松平信重）

1. 松平親氏
2. 松平泰親
3. 松平信広
4. 松平長勝
5. 松平勝茂
6. 松平信吉
7. 松平親長
8. 松平由重
9. 松平尚栄
10. 松平重和
11. 松平信和
12. 松平親貞
13. 松平尚澄
14. 松平親相
15. 松平信乗
16. 松平信言
17. 松平信汎
18. 松平頼載
19. 松平信英
20. 松平信博
21. 松平九洲男
22. 松平信泰
23. 松平英男
24. 松平弘久
25. 松平輝夫

関連項目

• 三河小栗氏（庶家） - 著名な小栗忠順などが出る。

参考文献

• 平野明夫『三河松平一族』、新人物往来社 2002年、ISBN 4-404-02961-6 C0021

松平郷が旧西加茂郡挙母町（現豊田市）域に存在したことから、近代以後の郷土史家が呼称。松平郷松平家が旧挙母町の中心集落となった加茂郡挙母郷を領有した歴史的事実はない。

徳川家康に連なるのは安祥松平家だが、安祥家は分家で信光系の本来の惣領は岩津家とする説もある（『新編岡崎市史』）

日本イベントプロデュース協会「三河松平郷 松平東照宮 権現祭り視察ツアー」（2012年4月に実施）より。松平輝夫は同協会の副理事長。

三河小栗氏の出自を松平郷松平家に求めた場合、年代的整合性は崩れる。

但し、三河小栗氏は松平氏の一族ではなく、三河国内にて活動していた常陸小栗氏の支族として扱われていた。三河小栗氏が系譜的先祖を松平氏に求める主張を行うのは近世以後である。また、近世を通じて松平郷松平家の庶家として扱われていたのは松平次郎左衛門家のみであった。