レイダース/失われたアーク《聖櫃》
テンプレート:Infobox Film 『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(レイダース/うしなわれたアーク、テンプレート:En)は、1981年のアメリカ映画。アドベンチャー映画。『インディ・ジョーンズ シリーズ』の第1作である。
概要
「レイダース」のレイダーとは、盗賊のこと。「失われたアーク」とはモーセの十戒の書かれた石板を納めた「聖櫃」のことであり、ユダヤの秘宝の一つ。
米アカデミー賞視覚効果、編集、美術、音響賞を受賞。またスピルバーグ監督が『未知との遭遇』に続く2度目の監督賞ノミネート、作品賞、撮影賞、作曲賞にもノミネートされ、ジョージ・ルーカスは『アメリカン・グラフィティ』『スター・ウォーズ』に継いで、三作品目がノミネートされた事になる。
制作費1800万ドルという中規模予算の作品ながら、世界興行収入3億8000万ドルの大ヒットを記録し[1]、続編として『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984年)、『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989年)、『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008年)が製作された。
当初は『~最後の聖戦』までの三部作をもってシリーズ完結の予定だったが、ファンからの根強い続編製作の声とスピルバーグ、フォード、そしてシリーズ続行に消極的だったルーカスの意思が一致し、19年ぶりのシリーズ第4作として『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』が完成。アメリカでは2008年5月22日、日本では2008年6月21日に公開された。
ビデオ化の際に『Indiana Jones and the Raiders of the Lost Ark』と改題された。
ストーリー
舞台は1936年。プリンストン大学で教鞭を執る高名な考古学者インディアナ・ジョーンズ教授(インディ)には、世界中の宝物を探し発見するというトレジャーハンターとしての顔があった。ある日、陸軍諜報部よりインディの下にナチス・ドイツがタニスの遺跡を発見して聖櫃(アーク)の発掘に着手したという情報が舞い込む。また情報部が傍受したドイツ軍の電報によれば、聖櫃の在り処を示す重大な手がかりラーの杖飾りはインディの恩師であるアブナー・レイヴンウッド教授の手にあるという。何としてでもナチスより先に聖櫃を手に入れろとの依頼を受け、インディは聖櫃の争奪戦に臨む。
その頃、インディのライバルでもあるフランス人考古学者ルネ・ベロックは、ドイツ国防軍聖櫃発掘部隊の指揮官であるヘルマン・ディートリッヒ大佐と共にエジプト・カイロ近郊のタニス発掘現場へと送り込まれていた。
インディはアブナーの日記を手がかりに、一路ネパール・ヒマラヤ山脈奥地の寒村へと向かう。アブナーの娘であり、かつてインディの恋人でもあったマリオン・レイヴンウッドが営む酒場を訪れるが、既にアブナーは死亡していた。マリオンも今やインディに協力的ではなく、また明日来るようにと言ってインディを追い返すが、直後にインディを尾行していたゲシュタポのエージェントアーノルド・エルンスト・トートらが酒場に現れ、マリオンに杖飾りを渡すように強要する。トートはマリオンの目を火かき棒で焼き潰そうとするも、間一髪でインディが現れてこれを阻止。炎に包まれた酒場での銃撃戦の中、トートは炎に炙られていた杖飾りを見つけて拾い上げるものの、手のひらに火傷を負い、あまりの苦痛に杖飾りを手放して店を飛び出してしまう。結局、店は焼け落ちて、杖飾りを取り戻したマリオンはインディと共にエジプトへと向かうのであった。
カイロに到着したインディは、友人の発掘王サラーを頼りにタニス発掘の情報を集める。しかし、ディートリッヒの部下に襲撃を受け、マリオンがトラックの爆発に巻き込まれてしまう。その上、既にドイツ軍が杖飾りを入手していることを知る。実はディートリッヒらに合流したトートの火傷痕から複製されたのだが、杖飾りは両面そろって初めて正しい発掘場所を示す為、ドイツ軍は未だに聖櫃が隠された「魂の井戸」の特定には至っていない。
次の日、インディとサラーはエジプト人採掘者に紛れてタニス遺跡の発掘現場へと潜入し、本物の杖飾りを用いて「魂の井戸」の場所を突き止め、さらに生きたまま捕えられているマリオンを発見する。そして密かに発掘を行い、ついに「魂の井戸」と聖櫃を発見するも、明け方になってベロックらに現場を発見されてしまう。インディは聖櫃を奪われた上、マリオンと共に閉じ込められてしまう。
その後ベロックらは聖櫃を積んだトラックと共にカイロの空港へと向かった。だが、その最中に「魂の井戸」を脱出したインディの手で聖櫃は奪還される。インディとマリオンは聖櫃と共にイギリス行き貨物船バンツー・ウィンド号に乗り込みエジプトを脱出した。しかし翌朝にはUボートが現れ、ディートリッヒ率いるドイツ兵の臨検を受けて再び聖櫃は奪還され、マリオンも捕えられてしまう。一方のインディはドイツ兵の目を欺いてUボートにしがみ付いていた。
聖櫃を積んだUボートはギリシャ・クレタ島の秘密基地に到着する。ベロックが儀式の再現を提案すると、当初ディートリッヒはユダヤの儀式だとして反対したものの、空の箱を総統に届ける訳にはいかないと説得され、渋々ながらこれを認める。儀式を行うべく聖櫃を運搬している最中、再びインディの襲撃を受ける。ロケットランチャーを手にしたインディはマリオンを返さなければ聖櫃を破壊すると脅迫するものの、考古学を愛するインディが聖櫃に攻撃できるはずがないと踏んだベロックは交渉を拒否。インディはマリオンと共に柱に縛り付けられ、彼らの目前でついに儀式が開始された。
ところがベロックが聖櫃のフタを開くと砂が入っているばかりである。ディートリッヒは激怒し、トートは嘲笑したが、直後に精霊が飛び出してドイツ兵たちの間を飛び回る。すぐさまインディはマリオンに目を閉じるように言って自らも目を閉じる。直後に精霊は豹変し、聖櫃から飛び出した雷撃がドイツ兵を皆殺しにした。そして、ベロックはディートリッヒやトート共々生きたまま溶解され、殺されたのである。インディとマリオンがようやく目を開けると、もはや人の気配はなく、聖櫃だけが残されていた。
その後、インディはワシントンにて陸軍諜報部への報告を終え、マリオンと共に街へと向かう。そして聖櫃の納められた木箱は、無数の木箱が並ぶ政府機関の地下倉庫(エリア51)に収められたのであった。
スタッフ
- 製作総指揮:ジョージ・ルーカス / ハワード・G・カザンジャン
- 製作:フランク・マーシャル
- 監督:スティーヴン・スピルバーグ
- 原案:ジョージ・ルーカス / フィリップ・カウフマン
- 脚本:ローレンス・カスダン
- 撮影:ダグラス・スローカム
- 編集:マイケル・カーン / (ジョージ・ルーカス ※アンクレジット)
- 美術:ノーマン・レイノルズ
- 音楽:ジョン・ウィリアムズ
- VFX:ILM
- VFXスーパーバイザー:リチャード・エドランド
- 提供:パラマウント映画 / ルーカスフィルム・リミテッド
キャスト
- インディアナ・ジョーンズ(インディ)(ハリソン・フォード)
- 主人公。有名な考古学者にして無類の冒険家。
- マリオン・レイヴンウッド(カレン・アレン)
- かつてシカゴ大学で教鞭を執っていたアブナー・レイヴンウッド教授の娘であり、またインディのかつての恋人。ネパールで酒場を営んでいた。アークを見つける鍵となる「ラーの杖飾り」を父から譲り受けており、インディと共にエジプトへ向かう事となる。かなり酒に強い。
- サラー(ジョン・リス=デイヴィス)
- インディの友人で、エジプトの発掘王。ディートリッヒ率いるドイツ国防軍聖櫃発掘部隊によって発掘作業に徴用されており、採掘に関する情報をインディに与えるなど、エジプトでの活動を支援する。
- マーカス・ブロディ(デンホルム・エリオット)
- 大学の副学部長で、インディの上司。博物館の館長でもある。
- ルネ・ベロック(ポール・フリーマン)
- フランス人考古学者。インディのライバル。インディが苦労して手に入れた宝を横から奪っていく、ハイエナのような男。ナチス・ドイツと手を組んでアークを狙う。インディとは違って狡猾な現実主義者。ナチス・ドイツと組んではいるものの、内心では考古学的に無知なディートリッヒやトートを軽蔑しており、同じ理由からアドルフ・ヒトラーも見下している。マリオンに好意を抱いており、しばしばディートリッヒやトートの手からマリオンを遠ざけようとする。
- アーノルド・エルンスト・トート(ロナルド・レイシー)
- ゲシュタポのエージェントで、荒手の拷問を得意とする。ラーの杖飾りを手に入れるべくマリオンの酒場に現われるが、火事の火によって高温になった杖飾りに触れたため右手に火傷を負い、紋章の跡が刻まれる。常に黒いレインコート姿で薄笑いを浮かべている。襟には黄金ナチ党員バッジが確認できる。
- ヘルマン・ディートリッヒ(ヴォルフ・カーラー)
- ナチス・ドイツの聖櫃捜索隊の司令官。所属・階級はドイツ国防軍大佐。ヒトラーからの任務を完遂する事が全てであり、考古学に対して一切の敬意すらなくユダヤ教の信仰であるアークに対しては嫌悪感すら抱いている。アークを狙いベロックと手を結んでいるが、卑怯な手段は使うものの純粋な考古学者としての探究心を持ち、好意を抱いているマリオンに対していささか甘いベロックを信用していない。また小説版では親衛隊将校アイデルの横暴な態度や大物ぶる姿勢を指して「黒い制服に身を包んだ道化」と評するなど、アドルフ・ヒトラー総統に忠誠を誓いながらも、親衛隊や党の上層部を嫌悪する描写がある。
- カタンガ(ジョージ・ハリス)
- 貨物船バンツー・ウィンド号の船長。サラーの友人。
- サティポ(アルフレッド・モリーナ)
- インディと共にチャチャポヤンの遺跡に向かった2人組の1人。
- バーランカ(ビック・タブリアン)
- インディと共にチャチャポヤンの遺跡に向かった2人組の1人。
- ゴブラー(アンソニー・ヒギンズ)
- ドイツ国防軍少佐。ディートリッヒの副官。
- マスグラブ(ドン・フェローズ)
- アメリカ陸軍情報部大佐。インディに聖櫃捜索を依頼する。
- イートン(ウィリアム・フートキンズ)
- アメリカ陸軍情報部少佐。
日本語吹替
役名 | 俳優 | 日本語吹き替え | ||
---|---|---|---|---|
日本テレビ版 | VHS・DVD・BD版 | WOWOW・BD版 | ||
インディ | ハリソン・フォード | 村井国夫 | 内田直哉 | |
マリオン | カレン・アレン | 戸田恵子 | 土井美加 | |
ベロック | ポール・フリーマン | 田口計 | 石田太郎 | 石田圭祐 |
トート | ロナルド・レイシー | 内海賢二 | 樋浦勉 | 横島亘 |
サラー | ジョン・リス=デイヴィス | 小林修 | 遠藤純一 | |
ディートリッヒ | ヴォルフ・カーラー | 阪脩 | 千田光男 | 高越昭紀 |
ブロディ | デンホルム・エリオット | 宮川洋一 | 中村正 | 有本欽隆 |
イートン | ウィリアム・フートキンズ | 今西正男 | 池田勝 | 島香裕 |
マスグローブ | ドン・フェローズ | 北村弘一 | 嶋俊介 | をはり万造 |
サティポ | アルフレッド・モリーナ | 野島昭生 | 秋元羊介 | 河野裕 |
バランカ | ビック・タブリアン | 平林尚三 | 千田光男 | |
カタンガ | ジョージ・ハリス | 天地麦人 | 大塚明夫 | |
ゴブラー | アンソニー・ヒギンズ | 藤城裕士 | 津田英三 | |
イラム | トゥッテ・レムコフ | 千葉順二 | 丸山詠二 | |
ファヤー | スアド・メソウディ | 巴菁子 | 竹口安芸子 | |
一等整備士 | パット・ローチ | 島香裕 | ||
整備士 | グレン・ランドール・Jr | 小島敏彦 | 原語音声 | |
2人組のドイツ兵 | ? | 広瀬正志 堀内賢雄 |
原語音声 | |
学生 | 堀越真己 大門夏子 |
|||
役不明又はその他 | 田原アルノ 幹本雄之 森一 佐々木みち代 佐藤ユリ 大谷育江 島香裕 |
下山吉光 白熊寛嗣 樋渡宏嗣 斉藤次郎 田村健亮 松田健一郎 井上悟 中嶋佳葉 長谷瞳 真堂圭 | ||
翻訳 | 木原たけし | |||
演出 | 佐藤敏夫 | 蕨南勝之 | 福永莞爾 | |
調整 | 小野敦志 | 東北新社スタジオ | スタジオ・ユニ | |
録音 | ||||
制作進行 | 小柳剛 古川直正 |
梅原潤一 植田剛司 | ||
リライト | 山門珠美 | |||
制作 | 東北新社 | |||
初回放送 | 1985年10月4日 『金曜ロードショー』 (21:02-23:24) |
2009年7月18日 WOWOW191ch (16:00-18:00) |
- シリーズの出自に相応しくOO7シリーズ作を複数手掛けた吹き替え版スタッフと、MとQ役を長年務めた声優に情報部員役を配して作られた日本テレビ版は、村井国夫がハリソン・フォードを吹き替えた最初の作品。この作品以後、日本テレビ制作のハリソン・フォード作品の吹き替えは村井に定着した。
- 日本テレビ版放送は、2008年6月22日:テレビ朝日『日曜洋画劇場』、2012年8月17日(金)06:30 - 08:45他:洋画専門チャンネルザ・シネマで行われている。ザ・シネマではノーカット版を捜索したが発見できず、やむを得ずカット版を放送した。
- 吹き替えを内田直哉で統一するために、BDにはWOWOW版吹き替えが収録された。
視覚効果
『新たなる希望』で一度解散した視覚効果チームはインダストリアル・ライト&マジックとして再結集。『帝国の逆襲』の次作が『レイダース』となった。視覚効果監督はリチャード・エドランド。現在は映画監督となったジョー・ジョンストンがSFXシーンの絵コンテを担当。インディがアメリカを発つ際に乗る飛行艇、追跡シーンでジープが転落する崖、ラストの薄暗い倉庫などマット・ペインティングも効果的に使われた。
終盤のディートリッヒ、トート、ベロックが死ぬ場面はクリス・ウェイラスによる特殊メイクアップ効果。それぞれの俳優の頭部から型取りされたモデルを、(1)真空ポンプで潰す・(2)熱で溶ける様子を低速度で撮影・(3)ショットガンで破壊という手段で作られた。(3)の効果はデヴィッド・クローネンバーグ監督の『スキャナーズ』でも使われている。
キャスティング
当初、インディの役はトム・セレックが予定されていたが、セレックは当時テレビを中心として人気が絶頂で、テレビシリーズ(『私立探偵マグナム』)の仕事を選んでこの役を断り、結局ハン・ソロ役としてでしか世界中では知られていなかったハリソン・フォードが演じる事となった[2]。
ヒロイン・マリオンの役には、デブラ・ウィンガーをスピルバーグは望んだのだが、「私は演技を必要としないような作品には出演しない」と断られ、スピルバーグは激怒したという。またスピルバーグは当時交際していたエイミー・アーヴィングにもマリオン役を打診している。オーディションにはショーン・ヤングも参加していた[3]。
映画全篇でセリフは13行しか与えられていないものの、ドイツ語の「死」に聞こえる名前の通り、恐怖感を煽るゲシュタポのアーノルド・エルンスト・トート[4]少佐を演じたロナルド・レイシーは英国で舞台演出や演技コーチも務めたベテランである。オランダ時代のポール・ヴァーホーヴェン作品やテレビシリーズ『シャーロック・ホームズの冒険』のショルトー兄弟役(『四つの署名』)[5]などでも知られ、『最後の聖戦』ではセリフもクレジットも無いがハインリヒ・ヒムラー役で顔を見せている。1991年没。2度の結婚でもうけた子供2人も俳優になった。
『ショコラ』や『スパイダーマン2』に出演したアルフレッド・モリーナは本作が映画デビュー作品である。ペルーでインディが乗る飛行艇のパイロット=ジョック役を演じたフレッド・ソレンソンは、10年以上を経た後『ジュラシック・パーク』のハワイ・ロケがハリケーンで頓挫した際に奇遇にも空港に居合わせ、スピルバーグ率いる撮影チームのハワイ撤退を助けた。ILMの視覚効果監督デニス・ミューレンがインディを尾行し飛行艇に乗るスパイ役で数カット映る。この役は脚本段階ではトートと同一人物だったが、無名のゲシュタポだったトートが名前のある役に昇格したために別人となっている。
エピソード
- 制作初期のエピソード
- 『スター・ウォーズ』を監督したジョージ・ルーカスが、興行的失敗の可能性を感じハワイに逃避していた時、『未知との遭遇』の撮影を終え休暇を取っていたスティーブン・スピルバーグが合流。『007シリーズ』のような作品を作りたいと言うスピルバーグに「それならこんなアイデアがあるよ」とルーカスが明かしたのが、この『レイダース』である。製作はルーカスフィルムで行い、ハワイから帰った半年後に正式にスピルバーグに参加を依頼、スピルバーグは監督を引き受けた[6]。
- ルーカスが『アメリカン・グラフィティ2』と『帝国の逆襲』の製作、スピルバーグは『1941』監督が決まっていたので企画そのものは一時棚上げとなったが、延期した間にスピルバーグがローレンス・カスダンの脚本『OH! ベルーシ絶体絶命』を発掘、『帝国の逆襲』の脚本家リイ・ブラケットの死で危機に陥ったルーカスにカスダンを紹介、「ヒトラーのオカルト趣味」という実在の要素を盛り込んだフィリップ・カウフマンの原案も含めて、ルーカスのプロットをカスダンが映画用に脚本化する事になった。
- インディーの名前
- 当初スティーヴ・マックイーンの『ネバダ・スミス』に因んだ[7]主人公の名前「インディアナ・スミス」はスピルバーグの「平凡過ぎる」という意見から「ジョーンズ」に変更[8]。「インディアナ」はルーカスの愛犬の名前でもあり、シリーズ第3作でこのエピソードが活用された。
- 短期間での撮影
- スピルバーグはそれまで予算や日程をオーバーする傾向があったが、本作では撮影前に絵コンテを描いて第2班に任せる場面(トラックの追跡)を選定。撮影スタジオは低コストで済むという理由からイギリスで行い、セットやロケ地のミニチュアを作らせて撮影方法や機材を検討するなど入念に準備し、4回以上テイクを重ねず1日平均40シーンも撮影するというハイペースを維持。エジプトのシーンを撮影中ハリソン・フォードが体調を崩し(ジョン・ウー作品にも負けないと豪語する)三日月刀とムチの決戦を演じられなくなった際に「銃で撃つ」アイディアを用いるなど撮影ペースを停滞させないよう常に心がけた結果、配給のパラマウントに申し入れていた撮影予定を12日節約した[9]。
- コストマネージメントの感覚はプロデューサーとして経験を積んでいたルーカスから学んだものとも言えるが、本作の撮影開始を延期してまで取り組んだ『1941』が興業的に惨敗を喫した教訓とも無関係ではないと思われる。ルーカスはスピルバーグに「絶対に予算オーバーしないこと、撮影スケジュールを厳守する」という条件を付けた。「もし守れないなら、いつでも私と交代させる。」と話していた。
- 野外ロケ
- エジプトの野外ロケはチュニジアで行う事が早々に決まった。ルーカスが『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』で訪れており土地勘があったためである。エジプトの場面以外にも儀式のためにアークを運搬する途上の谷が『新たなる希望』でR2-D2が彷徨っていたタトゥイーンの谷と同じ場所である。
- 害虫との闘い
- 冒頭の洞窟に入る場面ではタランチュラ、アークの眠る「魂の井戸」の場面では無数の毒蛇がインディたちを脅かす。撮影スタッフはゴム製の長靴と手袋で身を固め、コブラを含む蛇六千匹を配置した撮影では血清と医者も待機した。動物に脅かされる場面は第2作では大量の虫、第3作では大量のネズミが登場するほか、「何故インディは蛇が苦手なのか?」という疑問にも第3作で回答がなされた。これらから、毒性もある害虫を、全て本物を使っている事が分かる。
- 複数作の契約
- パラマウント・ピクチャーズはこの作品を製作するにあたって、『インディ・ジョーンズ』の5作品製作の契約を結んだ。その内、スピルバーグとハリソン・フォードは3作の契約をしている。
- 同性愛の告白エピソード
- 序盤、講義の終了後に男子学生から林檎をプレゼントされてインディーが困るシーンがある。これは林檎は、「同性愛者の愛の告白」に使用されるためである。それをマーカスがくすねるが、演じたデンホルムは両性愛を公言している。
- ドイツ語訛り
- ネパールでの銃撃戦、長身でシリーズ常連となったパット・ローチ(後半インディと殴り合いになるドイツ人兵士と二役)が演じたシェルパとインディが揉み合いになり、トートは部下に二人まとめた射殺を指示。"Shoot him"というセリフに部下が一瞬戸惑うのは、トートのドイツ語訛りで"Showtime"とも聞こえるから。
- 『最後の聖戦』でも訛りを活用したシーンがある。その後、炎にあぶられた「ラーの杖飾り」をトートが拾い上げ火傷をする。手に残った火傷の痕から杖飾りが複製されるという展開は逆にインディのアーク発見に繋がるが、手を火傷するシーン自体は後に『ホーム・アローン』にパロディとして使われる事になった。日本テレビの『レイダース』吹替え版で火傷した手を雪に突っ込み「ああ気持ちいい!」と言わせていたところ、『ホーム・アローン』でも同様「ああ気持ちいい!」と言わせて原典からの継承となった。原音はどちらもうめき声だけでセリフになっていない。
- デジタル修正
- 90年代に出たワイドスクリーン版レーザーディスクのためのリマスターでも音響効果が再編集されていたが、DVD化に際してフィルムの傷や埃が除去された上、幾つかの場面がデジタル修正された(ペルーの遺跡からインディが脱出する際のトンネルを転がる大石についた棒と、「魂の井戸」で撮影時に立てられていた安全用のガラスにインディと向かい合ったコブラが映る)。
- Uボート
- 作中に登場するドイツ潜水艦Uボートは、ドイツ映画『U・ボート』の撮影に使われたものを借用した。また、基地も『U・ボート』と同じくフランスのラ・ロシェルに現存する実物でロケを行っている。
- スターウォーズのパロディ
- 冒頭に登場する複葉機の胴体の文字はOB-CPO。『スター・ウォーズ』のオビ=ワン・ケノービとC-3POに掛けたものだが、「OB」はペルーの国籍記号である。
- また、「魂の井戸」の中で、インディとサラーがアークを持ち上げるときに、インディ側の柱を見ると、C-3POとR2-D2が描かれている。
- 追跡シーン
- 追跡シーンのテリー・レナードらによるスタントは、『駅馬車』が参照された。インディがアークの載ったトラックを奪いドイツ軍が追いかけるシチュエーションは、まさに『駅馬車』であろう。スピルバーグの絵コンテに基づく撮影は、ハリソン・フォード自身により演じられたシーンも含め8週間が費やされた。レナードは1994年の『マーヴェリック』で第2班監督を務め、やはり『駅馬車』にそっくりのスタントを演出している。
- 他作品への影響
- スピルバーグは『未知との遭遇』に続き、友好的な異星人を主人公に据えた映画を作ろうと考え、ハリソン・フォードと親密だった脚本家のメリッサ・マシスンを、チュニジアに呼んでアイディアを話した。ハリソンとマシスンは83年に結婚。またマシスンによって脚本化された『E.T.』は、『レイダース』終了後製作に入り、82年に公開され記録的な大ヒットとなった。しかし、同時にハリソン主演の同年公開SF映画『ブレードランナー』を、興行的失敗に追い込むこととなった。
小説
- レイダース "失われた<聖櫃>"(キァンベル・ブラック著、早川書房、1982年11月30日出版、360円)
脚注
外部リンク
テンプレート:インディ・ジョーンズシリーズ テンプレート:スティーヴン・スピルバーグ監督作品 テンプレート:ジョージ・ルーカス テンプレート:Link GA
テンプレート:Link GA- ↑ 引用エラー: 無効な
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タグです。 「boxofficemojo
」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません - ↑ 『スター・ウォーズ』以降ハリソンへの出演依頼は急増し、ギャラも上昇したが、ハン・ソロに似た役柄はもう演じたくないと考え、役柄の幅を広げたい意向をルーカスに伝えていた(デール・ポロック『スカイウォーキング』)
- ↑ Imdb
- ↑ フルネームは小説版より
- ↑ ビデオの吹き替え版でトート役を担当した樋浦勉は『四つの署名』でもレイシーの吹き替えに起用された。
- ↑ 劇場公開時のパンフレットより。スピルバーグは実際『007』シリーズの監督をしたいと希望していた事があり、'70年代後半にプロデューサーのアルバート・ブロッコリに「一作監督させて欲しい」と頼んで断られたという(2012年11月27日映画.comの記事などによる)。
- ↑ Imdbの「トリビア」より。
- ↑ 筈見有弘『スピルバーグ』(講談社)では「語呂が悪いから」としている
- ↑ 劇場版パンフレットにはパラマウントにわざと撮影予定を多めに伝えていたという記述あり。