有機農産物
有機農産物(ゆうきのうさんぶつ)は、有機栽培によって生産された農産物のことである。
かつては有機資材を利用して栽培された農産物も有機農産物と呼ばれることがあったが、1992年に農林水産省によって「有機農産物及び特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」が制定され、「化学的に合成された肥料及び農薬を避けることを基本として、播種または植付け前2年以上(多年生作物にあっては、最初の収穫前3年前)の間、堆肥等による土づくりを行ったほ場において生産された農産物」と定義された。
1992年のガイドラインは法的拘束力を持たなかったため、この定義に当てはまらないものも有機減農薬栽培などと表示していたものもあった。
2000年、日本農林規格 (JAS) が改正され、農産物について有機農産物またはそれに類似した表示をするためには、農林水産省の登録を受けた第三者機関(登録認証機関)の認証による有機JASの格付け審査に合格することが必要となった。
これにより、有機農産物、また有機農産物を加工して作られた食品の名称(有機○○、オーガニック○○)の表示は「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)」の適用を受け、認証先を記した「有機JASマーク」の表示が必要となり、違反した場合には罰則を受けることになった。
農林水産省の定める「有機農産物の日本農林規格」においては、3条で「有機農産物」が定義されており、その具体的な内容が4条において詳細に定められている。
なお、日本有機農業研究会は、「有機農産物の定義」として,「有機農産物とは、生産から消費までの過程を通じて化学肥料・農薬等の合成化学物質や生物薬剤、放射性物質、(遺伝子組換え種子及び生産物等)をまったく使用せず、その地域の資源をできるだけ活用し、自然が本来有する生産力を尊重した方法で生産されたものをいう」と定めている。
認証に関わる問題
日本農林規格の改正によって、有機JAS規格を満たす農産物・加工食品で無ければ「有機」等と表示した(=有機JASマークを付した)商品を販売することは出来なくなった。しかし、この規格は広告等に「有機栽培」「無農薬」といった表記をすることを制限するものではないため、生産者や業者がホームページやパンフレットで「有機栽培」として販売していても(それが虚偽表示で無い限り)問題とされない状況にある。そのため、認証を受けていない生産者や団体はそれぞれ独自の規格を設けるなどして安全性・妥当性を持たせる場合が見られるものの、有機JAS規格のように第三者機関が関与し公的に認めたものではないことに注意が必要である。実際、化成肥料を用いて栽培したため農林水産省から改善命令が出されたケース[1]もある。
消費者に対して適正な有機農産物を提供するための規格であるが、厳密な規格をクリアするための圃場やその他設備の整備・改修、認証手続きなどに多額の出費が必要となり、生産者にとっては大きな負担となる。このため、認証を受けずに販売を続ける生産者も少なくない。さらに、有機の種、有機の苗を使うことを定めておきながら、入手困難な場合はその限りでない、といった矛盾を含む規定に対して疑問の声も上がっている[2]。
脚注
関連項目
- 都道府県による独自認証の農産物の例:大阪エコ農産物
外部リンク
- 有機食品の検査認証制度(農林水産省)
- 食品表示とJAS規格(農林水産省)
- JAS制度の概要(社団法人 日本農林規格協会)
- 有機JASマーク推進プロジェクト