国定教科書
テンプレート:Pathnav 国定教科書(こくていきょうかしょ)とは、教科書・教科用図書の編集・発行などの権限を国家が占有する制度である。又、政府が全国一律に発行・配布する教科書も指す。
目次
採用国
国定教科書採用国を以下に列挙していく。
かつての日本(大日本帝国)や、現在の大韓民国や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、タイ王国、マレーシア、イラン、ミャンマー、ロシア、トルコ、キューバ、リビアは、国定教科書の制度を採用している。
中国では、「中華人民共和国は国定教科書制度である」という意見がしばしば見られるが、すでに1980年代後半から教科用図書を多様化する改革が行われ、現在では教科用図書検定制度を導入している[1]。
国定教科書の制度はすべての学校における学習者に対して同一教材を配布することなどを目的としているが、教科用図書に関して決定を行う行政機関の意志が反映され、それが、教科「社会」、特に歴史教育に現れると極端なナショナリズムの増長に繋がり易いといわれている。その結果、自由な歴史研究や議論を封殺し偏った歴史観を学習してしまうおそれも可能性も指摘されている。
教科用図書検定制度との関連性
教科用図書検定の制度が「記述の誤りを正す」立場ではなく「行政機関が児童・生徒に配布したい図書に対する記述のあり方を強く示唆する」検定を行うと国定教科書の制度に近づくと考えられる。
日本
日本において「国定教科書」というと、日本で、かつて文部省が発行し、全国一律で用いられた小学校用の教科書を指している。
明治〜大日本帝国:国定教科書制
1872年に義務教育制度が始まった頃は、検定済教科書が用いられていた。しかし、教科書疑獄事件の発生を受けて、国定教科書に改められた。
以下、山住正己著『教科書』(岩波新書)より、教科書制度の変遷を振り返る。
- 1872年(明治5年) 学制公布。(教科書自由発行・自由採択制)
- 1880年(使用禁止書目の発表)
- 1881年(開申制・採択教科書を監督官庁に報告すればよい)
- 1883年(認可制・採択してよいかどうか、許可を受ける必要あり)
- 1886年(検定制)
- 1903年(明治36年)~1945年(昭和20年)(国定制)
教科書に対する国家統制は、自由民権運動の高揚と、それに対抗するような教育政策の反動化、という形で進行した。「開申制」の次の「認可制」は、時間がかかり授業に差し支えて不便、という声をもとに、「検定制」に切り替えられた。数年後、教科書会社と採択側の教育関係者との間で、贈収賄が行われているとして、30数県157人が検挙されるという大事件(教科書疑獄事件)が発生した。
国はそれを機会に、教科書を「国定制」に切り替えた。
戦後日本:検定制
テンプレート:See 日本国憲法下では、「文部省検定済教科書」を基本とし、文部省検定済教科書の発行が困難である場合に「文部省著作教科書」が発行されるという状況となった。現在でも一部の教科用図書において「文部科学省著作教科書」があるが、これが国定教科書に該当するかどうかは見解が分かれている。
2013年6月、自由民主党教育再生実行本部[2]教科書検定の在り方特別部会は、(特に歴史・日本史における)いわゆる「自虐史観」に基づく教育を止めるための「教科書法」を提案することに決めた。
歴史教科書問題
1982年、日本の新聞が歴史教科書検定を誤報したことから中国が反発し、その結果、日本政府は宮澤喜一内閣官房長官談話を発表し、今後、教科書編纂にあたって、中国や韓国などに配慮する近隣諸国条項を創設した。
大韓民国における国定教科書
大韓民国では、1970年代に国定教科書制度となった[3]。以降、初等学校のすべての教科、中学校の国語・国史・道徳、高等学校の国語・国史で国定教科書が使用されている。ただし、高等学校の韓国近現代史 (大韓民国の教科)は検定済教科用図書が使用されている。
「新しい教科書」
テンプレート:See 2008年には、韓国でのこれまでの歴史教科書は民族主義的で左翼的な反政府運動が中心に描かれ、実際の多様な韓国史を反映していない「単純で偏狭な」史観であったと批判して、日本統治時代には抗日独立運動だけでなく、経済発展や近代化など肯定的な面や、また戦後韓国でも北の侵略から国を守った李承晩、高度経済成長を実現した朴正煕時代を高く評価し、韓国の発展の明るい面を記述した「新しい歴史教科書」が登場した[4]。この教科書は李栄薫ソウル大学名誉教授ら保守派による研究組織「教科書フォーラム」が編纂したもので、高校の選択科目「韓国近現代史」で使用される予定のものであったが、実際に使用されるには政府検定が必要である[4]。
韓国では、高校選択科目「韓国近現代史」以外に、中学高校向けの国定教科書「国史」がある[4]。
廃止
2010年から、中学校と高等学校の教科書から国定教科書は廃止されたテンプレート:要出典。
脚注
参考文献
- 田渕五十生「韓国の歴史教科書が示唆するもの―中学校『国史』教科書に表れた日帝支配期の歴史」高円史学7,pp.1 - 12 , 1991-10-01. 奈良教育大学学術リポジトリ.
- 歴史教育者協議会編『あたらしい歴史教育第5巻世界の教科書を読む』大月書店,1994年.
- 斎藤吉久「日韓歴史認識の埋め難き溝--韓国『反日』教科書の凄まじさ」神社新報、2001年(平成13年)4月16日号。
- 三橋宏夫訳『韓国の中学校歴史教科書-中学校国定国史』明石書店,2008年。
- 中央日報「【噴水台】それでも韓国の国史が持ち堪えているのは…」2013年07月08日。
関連項目
外部リンク
- ↑ 諸外国における教科書制度及び教科書事情に関する調査研究報告書(財団法人教科書センター/2000年3月発行)(2007年10月24日時点のアーカイブ)または大沢武彦(国立公文書館アジア歴史資料センター)による解説参照。
- ↑ 政府の教育再生実行会議とは無関係。
- ↑ 斎藤吉久「日韓歴史認識の埋め難き溝--韓国『反日』教科書の凄まじさ」神社新報2001年4月16日号。
- ↑ 4.0 4.1 4.2 テンプレート:Cite news