国民健康保険

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テンプレート:Otheruseslist テンプレート:Ambox 日本における国民健康保険(こくみんけんこうほけん, National Health Insurance)とは、日本の国民健康保険法に基づき、被保険者の疾病負傷出産又は死亡に関して、必要な保険給付を行い、社会保障及び国民保険の向上に寄与することを目的とする法定強制型の医療保険である。主に市町村が運営し、被用者保険などとともに、日本におけるユニバーサルヘルスケア制度の中核をなすものである。

医療保険事務上の略称は国保(こくほ)と呼ばれ、社保(しゃほ)と呼ばれる被用者健康保険と区別される。日本の人口のうち27.5%が市町村国保への加入者、2.5%が国保組合の加入者である(2011年)テンプレート:Sfn

テンプレート:日本の医療財政

歴史

ファイル:Kokumin kenko hoken Hasshochi kinen-hi Koshigaya-shi.jpg
国民健康保険発祥の地の碑(越谷市、日本)

テンプレート:See also 日本において最初の公的医療保険は1922年に施行された健康保険法であり、これは企業雇用者の職域保険であったテンプレート:Sfn

地域保険については、埼玉県越ヶ谷町(現・越谷市)の一般住民を対象とした日本初の地域健康保険制度「越ヶ谷順正会」が1935年に発足し、その3年後の1938年に国家レベルでの国民健康保険法(旧法)が創設された。このため越谷市は「越ヶ谷順正会」を「国民健康保険の発祥」と称しており、国民健康保険法施行10周年を記念して、1948年には「越ヶ谷順正会」を顕彰する「相扶共済の碑」が現在の市役所敷地内に立てられている。

1938年の旧法制度では、当時は組合方式であり農山漁村の住民を対象としていたテンプレート:Sfn市町村運営方式により官庁や企業に組織化されていない国民が対象となったのは1958年であり、1961年には国民すべてが公的医療保険に加入する国民皆保険体制が整えられたテンプレート:Sfn

保険者

国民健康保険事業年報 平成22年度[1]
保険者数 世帯数(千世帯) 被保険者数(千人)
テンプレート:Rh| 市町村国保 1,723 20,372 35,493
テンプレート:Rh| 国保組合 165 1,542 3,227
テンプレート:Rh| 計 1,888 21,914 38,769
  • 国民健康保険法について、以下では条数のみ記す。

加入者から徴収した国民健康保険税(又は国民健康保険料)と国庫負担金等の収入によって、保険加入者が疾病、負傷、出産又は死亡したときに、保険給付を行う事業主のことを保険者という。以下が存在する(第2条、第3条)。

国は国民健康保険事業の運営が健全に行われるよう努めなければならず、都道府県は、国民健康保険事業の運営が健全に行われるよう必要な指導をしなければならない(第4条)。

市町村国保

国民健康保険事業の運営に関する重要事項を審議するため、すべての市町村に市町村長の諮問機関として、国民健康保険運営協議会が置かれる(第11条)。協議会の委員は、被保険者代表、保険医・保険薬剤師代表、公益代表各同数で組織される。

また統括団体として、47の国民健康保険団体連合会、および国民健康保険中央会が存在する。

国保組合

テンプレート:See also

国保組合の内訳は以下となっている。

国民健康保険組合は、同種の事業又は業務に従事する者で当該組合の地区内に住所を有するものを組合員として組織する(第13条)。組合には組合会が置かれ、規約の変更、収入・支出の予算、決算等の事項については、組合会の議決を経なければならない(第27条)。また役員として、理事及び監事が置かれ、理事の定数は5人以上、監事の定数は2人以上、理事及び監事の任期は、3年をこえない範囲内において、それぞれ規約で定める(第23条)。

国民健康保険組合を設立しようとするときは、15人以上の発起人が規約を作成し、組合員となるべき者300人以上の同意を得て、主たる事務所の所在地の都道府県知事認可を受けなければならない。都道府県知事は、認可の申請があった場合、組合の地区を含む市町村長の意見を聴き、これらの市町村の国民健康保険事業の運営に支障を及ぼさないと認めるときでなければ認可をしてはならない。組合は、設立の認可を受けた時に成立する(第17条)。組合は、その名称中に「国民健康保険組合」という文字を用いなければならず、組合以外の者は、「国民健康保険組合」という名称又はこれに類する名称を用いてはならない(第15条)。組合の規約には、以下の事項を記載しなければならない(第18条)。

  1. 名称
  2. 事務所の所在地
  3. 組合の地区及び組合員の範囲
  4. 組合員の加入及び脱退に関する事項
  5. 被保険者の資格の取得及び喪失に関する事項
  6. 役員に関する事項
  7. 組合会に関する事項
  8. 保険料に関する事項
  9. 準備金その他の財産の管理に関する事項
  10. 公告の方法
  11. 前各号に掲げる事項のほか厚生労働省令で定める事項

市町村国保を原則とする立場から、厚生省1959年以降、原則として新規設立を認めていないが、特例として認可されることもある。実例は以下の通り。

  • 1970年に建設従事者対象の39組合
建設産業従事者を対象にした国保組合が新設認可された。これは、1970年に、財政難を理由にした日雇健保一人親方擬制適用廃止の救済策として、建設系労働組合による要望を汲んだものである。のちに厚生省の役人に「カラスの鳴かない日はあっても、建設職人の地下タビが赤じゅうたんを踏まない日はなかった」といわせたほど粘りつよい闘争の上に実現したと語り継がれている。

被保険者

市町村国保の世帯主職業 (2010年)テンプレート:Sfn
農林水産業 3.1%
自営業 15.5%
被用者 35.3%
無職者
(40.8%)
うち60歳以上 32.4%
30~59歳 7.0%
~29歳 1.4%
その他 5.2%

対象者

市町村の区域内に住所を有する者で、以下に該当しない者はその意思のいかんにかかわらず、全員が原則として当該市町村が行う国民健康保険の被保険者とされる(第5条、第6条)。外国人であっても、3ヶ月以上の在留期間が決定された中長期在留者(施行規則第1条)や、資料上3か月以上の国内滞在者であると認められる者は、国保への加入義務が発生する[3]

  1. 健康保険・船員保険・公務員共済などの職域保険に加入している者と、その被扶養者
  2. 国民健康保険組合に加入している者と、加入者の世帯に属する者
  3. 生活保護を受けている世帯に属する者
  4. 後期高齢者医療制度の被保険者
  5. その他特別の理由がある者で厚生労働省令で定めるもの

上記の対象でなくなった場合、その日から14日以内に現在住んでいる市町村で加入の手続きをしなければならない。

ただし、学校等に修学のため他市町村に居住する学生については、自ら生活している場合や結婚して配偶者の所得で生計を維持しているような場合を除き、親元の市町村の国民健康保険の適用を受ける。また、病院等に入院等することにより他市町村からその病院等のある市町村に転入した場合は、入院等した際に現に住所を有していた従来の市町村の国民健康保険の被保険者とされる。

市町村国保の対象となるのは、具体的には農林水産業従事者、自営業、被用者保険に該当しない非正規労働者退職者無職者であり、被扶養者という概念は国民健康保険にはない(家族も「被保険者」となる。ただし#退職者医療制度に係る場合をのぞく)ため、専業主婦専業主夫学生未成年者等も被保険者となりうる。かつては自営業者を加入者の代表例とする場合が多かったが、最近は退職者など無職者が加入者の4割を超えるテンプレート:Sfn

国保組合の組合員及び組合員の世帯に属する者は、原則として当該組合が行う国民健康保険の被保険者となる(第13条)。ただし、規約で定めることにより、組合員の世帯に属する者を包括的に被保険者としないことができる。

被保険者証の保険者番号は、6桁の番号からなる。

退職者医療制度

退職者医療制度の対象者は、被保険者のうち、厚生年金共済年金などの被用者年金制度の老齢(退職)年金を受給している65歳未満の者(退職被保険者)及びその65歳未満の被扶養者(被用者保険とは異なり、配偶者や直系尊属であっても「同一世帯」に属していなければならない)であるテンプレート:Sfn。退職者医療への新規加入は廃止され経過措置となっているテンプレート:Sfn

なお、通算老齢(退職)年金受給者については、被用者年金に20年以上又は40歳以後10年以上加入している者が対象になる[4]テンプレート:Sfn。被保険者証の保険者番号は、67から始まる8桁の番号となる。

退職者医療制度はあくまでも国民健康保険の中に含まれるテンプレート:Sfn。一般の国民健康保険と比べると

  • 診療時の一部負担金:一般、退職者医療制度ともに3割で同じ
  • 保険料額の計算方法:一般、退職者医療制度ともに同じ
  • 財源:退職者医療制度では、一部負担金と保険料の他に、職域の健康保険などからの拠出金が財源
  • 被保険者証:世帯内の一般の被保険者とは別に発行

となっている。対象者に直接の利益はないが、リスク構造調整により財政安定につながるという意味がある。

財政

事務費の負担については、国保組合の場合は全額国庫負担であるが(第69条)、市町村国保については国庫負担は行われず、市町村ごとに特別会計を設けなければならない。国保組合では、給付費用の32%が国から補助される(第73条)。

市町村国保の財政

市町村国保の場合、市町村は国民健康保険特別会計を設けなければならない(第10条)。

市町村国保の主な財源は、国、都道府県及び保険者(市区町村)の負担金及び世帯主からの保険料又は国民健康保険税からなっている。内訳は以下の通りである。下記4つの方式の全部又は一部が採用されるが、自治体によりその組み合わせや所得割の掛け率、世帯ごとの保険料の上限は異なっているテンプレート:Sfn。他の保険制度と比べ所得に対する負担率が高いが、個人事業者には従業員の有無と関係なくより重い負担を求める制度になっている自治体が多い。

被保険者の給付に要する費用(医療費から患者負担分を除いた費用)は(#退職者医療制度世帯を除く)、50%が公費、残り50%が保険料で賄われることとされる。公費の内訳は、国41%(給付費等負担金32%、調整交付金9%)、都道府県9%である。加えて様々な支援がなされているのでテンプレート:Sfn、加入者の保険料収入は41.6%であったテンプレート:Sfn#退職者医療制度世帯の給付に要する費用は、保険料と、療養給付費等交付金(被用者保険の保険者からの拠出金)で賄っている(リスク構造調整)。

保険料の納め方

年間保険料は、市町村によって決められた納期までに納めなければならない。納付方法は「口座振替」または前もって郵便にて送られてくる「納付書」の2つを採用しているところが多い。65歳以上75歳未満の者のみで構成される世帯については、世帯主が受ける公的年金が18万円以上であり、かつ保険料(介護保険料との合算)が年金額の2分の1以下である場合は、特に口座振替の申し出をしない限り、保険料は年金からの天引きとなる(特別徴収)(第76条の3)。これらの徴収方法は、原則として介護保険や後期高齢者医療制度と共通である。

  • 納付書をコンビニエンスストアへ持ち込んで、入金することが出来る市町村もある。
  • 肢体不自由者や老齢など何らかの事情で納付できない場合は、予め市町村役所へ要望を伝えた上で「訪問徴収」をしてもらうことも出来る。
  • 納め忘れを防ぐ為に一括納付書を用いて納めることも出来る。この場合、保険料の割引がない代わりに前納報奨金が支払われる市町村もある。
  • 納付書を紛失した場合は、あらためて市町村役所へ連絡して、再発行してもらうことになる。
  • 保険者は、条例又は規約の定めるところにより、特別の理由がある者に対し、保険料を減免し、又はその徴収を猶予することができる(第77条)。

なお、国民健康保険における保険料(税)納付義務者は世帯主であり、個々の被保険者ではない。また、加入や脱退等の届出義務者も世帯主である。また、世帯主自身が国民健康保険の被保険者でなくても、世帯の構成員に被保険者がいる場合は、世帯主が保険料(税)の納付義務を負うことになっている。したがって、保険料(税)の通知や被保険者証などは世帯主宛てに送付されることになっている。この場合における世帯主を、実務上「擬制世帯主(ぎせいせたいぬし)」または略して「擬主(ぎぬし・ぎしゅ)」という。介護保険国民年金などの保険料の第一次的納付義務者が被保険者であるのと異なっている。

  • 所得割は、前年度の世帯全体の所得をもとに加算されるテンプレート:Sfn
  • 資産割については、住民票(保険加入地)のある市町村内で所有する不動産等の固定資産税支払い分に基づいて賦課される。よって、それ以外の地域に所有する不動産等には賦課されない。所有者名義を賦課根拠としているため、名義変更をしていない場合や法人等を通じた間接的所有等については賦課されない。また、居住用家屋など収益を生み出さない不動産も対象になることがあるため、年金生活者で持家のあるものへの資産割は大きな負担となり、前出の偽装加入の一因とされている。このように賦課根拠があやふやで不公平感も根強いため、資産割廃止の自治体も増えている。資産割は広大な農地を所有する大地主に対する負担の意味合いがあるため、地方で高率な資産割をかける傾向がある。
  • 平等割は単身世帯の多いためか、東京23区横浜市などのようにない自治体がある。

保険給付

国民健康保険の保険給付は、法律により給付を行う義務が課せられる法定給付と、そのような義務が課されていない任意給付とに大別される。さらに法定給付は、必ず実施しなければならない絶対的必要給付と、特別の理由があるときには行わないことができる相対的必要給付に大別される。

なお、国民健康保険においては、保険給付は個々の被保険者に対してではなく、(保険料納付義務者たる)世帯主又は組合員に対して支給される。したがって、一部負担金の支払義務も世帯主又は組合員が負う。また被用者保険における「家族給付」は国民健康保険には存在しないので、家族全員(退職被保険者の被扶養者を含む)が「被保険者」としての保険給付を受ける。

絶対的必要給付

  • 療養の給付(第36条)
  • 入院時食事療養費(第52条)
  • 入院時生活療養費(第52条の2)
  • 保険外併用療養費(第53条)
  • 訪問看護療養費(第54条の2)
  • 移送費(第54条の4)
  • 高額療養費(第57条の2)
  • 高額介護合算療養費(第57条の3)
  • 保険者がやむを得ないものと認めるとき、療養費(第54条)

以上については、健康保険における給付とほぼ共通である。

  • 特別療養費(第54条の3)

保険料を1年を超えて滞納した者は、被保険者証を返還しなければならない(第9条3項~5項)。そのため返還後疾病などに罹患して療養を受けた際には、いったん窓口で費用の全額を支払い(療養の給付等を受けることができない)、被保険者証の代わりに交付される被保険者資格証明書(第9条6項)を窓口で提示し、後日自己負担額を除いた相当額を特別療養費として償還払いで支給される。

保険料滞納により被保険者証を返還した世帯主に、その世帯に属する18歳に達する日以降の最初の3月31日までの間にある被保険者(要は高校生以下の子供)があるときは、市町村は、その世帯主に対し、その被保険者(子供)に係る有効期間を6ヶ月とする被保険者証を交付することとされる。この被保険者証は更新可能である。

日本国外での医療費

2001年の法改正により、日本国外における医療費に対しても「海外療養費」として、国内の医療費と同じように国民健康保険が適用されるようになった。これにより国保加入者は、保険の対象となっている日本国外の医療費についても、後で相応の差額を請求することができるようになった。高額療養費の支給も利用することができる。ただし、一旦は全額を自己負担しなければならず、日本での標準的な医療費よりも高額だった場合、日本での標準的な医療費を基準として払い戻し金額が算出される。また、「海外療養費」は一時的に日本国外にいる場合のための制度であり、1年以上継続して日本国外に在住する場合には、原則として国保から(日本国外在住期間は)脱退しなければならず、国保制度を利用した治療目的のための渡航(医療観光としての利用)も認められていない。

相対的必要給付

条例または規約の定めるところにより行うものとされるが、特別の理由があるときにはその全部又は一部を行わないことができる(第58条1項)。

任意給付

条例または規約の定めるところにより行うことができる(第58条2項)。

  • 傷病手当金
  • 付加給付
    国民健康保険組合においては、一部負担金が3割より少ない場合や、出産手当金の給付を行う組合がある。

診療報酬審査委員会

保険者は、保険医療機関等から療養の給付に関する費用の請求があったときは、法定の算定方法等に照らして審査した上、支払うものとする。保険者は、この審査及び支払に関する事務を都道府県の区域を区域とする国民健康保険団体連合会(加入している保険者の数がその区域内の保険者の総数の3分の2に達しないものを除く。)又は社会保険診療報酬支払基金に委託することができる(第45条)。

国民健康保険団体連合会には国民健康保険診療報酬審査委員会(以下「審査委員会」という。)が置かれ、事務の遂行に支障のない範囲内で、診療報酬請求書の審査を審査委員会に行わせることができる(第87条)。

保健事業

テンプレート:See also 国民健康保険における保健事業は、より積極的な事前の措置として、傷病の発生を未然に防止し、あるいは早期発見により重症化・長期化を防止し、被保険者の健康保持及びその増進を図るため、健康教育、疾病予防、健康診断、母性及び乳幼児の保護、栄養改善、レクリエーション等の活動を実施するとともに、療養の給付を行うための国保病院、国保診療所を設置するなどの活動と施設の全体を総称していう(第82条)テンプレート:Sfn

直営医療機関

テンプレート:See also 市町村国保および組合国保には直営で医療機関を運営するところもあり、市町村国保直営施設は2011年では1,145施設であったテンプレート:Sfn

第三者行為と保険給付

交通事故や傷害事件など、第三者の行為(故意過失かを問わない)によって受けた傷病による医療費は、その第三者(加害者)が損害を賠償する責任を負うことになる。しかし、損害賠償が不十分であったり遅延したりしている場合もあり、被害者は、国民健康保険で治療が受けることが出来る。その場合は、保険者に「第三者行為による傷病届」を提出する必要がある(施行規則第32条の6)。保険者は、加害者に代わり、一時的に治療費を立替えて支払うことになり、後日加害者にその立替え分を請求することとなる(第64条)。

不服申立て

保険給付に関する処分・被保険者証の交付・返還に関する処分、又は保険料その他国民健康保険法の規定による徴収金に関する処分に不服がある者は、各都道府県に置かれた国民健康保険審査会審査請求をすることができる(一審制、第91条)。徴収金以外の処分については二審制をとる被用者保険との差異である。処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ、提起することができない(審査請求前置主義、第103条)。

時効

保険料その他国民健康保険法の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は、2年を経過したときは、時効によって消滅する。保険料その他国民健康保険法の規定による徴収金の徴収の告知又は督促は、民法の規定にかかわらず、時効中断の効力を生ずる(第110条)。

課題

テンプレート:See also

市町村国保の財政危機

平成23年度 市町村国保における
保険料の地域差分析[5]
都道府県 被保険者数 応能割指数 応能割率
テンプレート:Rh| 北海道 1,504千人 116% 123%
テンプレート:Rh| 青森県 454千人 116% 122%
テンプレート:Rh| 岩手県 375千人 106% 112%
テンプレート:Rh| 宮城県 643千人 116% 120%
テンプレート:Rh| 秋田県 294千人 114% 119%
テンプレート:Rh| 山形県 304千人 116% 121%
テンプレート:Rh| 福島県 564千人 106% 113%
テンプレート:Rh| 茨城県 922千人 96% 101%
テンプレート:Rh| 栃木県 597千人 100% 99%
テンプレート:Rh| 群馬県 609千人 104% 104%
テンプレート:Rh| 埼玉県 2,103千人 91% 106%
テンプレート:Rh| 千葉県 1,844千人 93% 97%
テンプレート:Rh| 東京都 3,818千人 82% 81%
テンプレート:Rh| 神奈川県 2,455千人 90% 80%
テンプレート:Rh| 新潟県 602千人 99% 99%
テンプレート:Rh| 富山県 250千人 100% 94%
テンプレート:Rh| 石川県 291千人 110% 106%
テンプレート:Rh| 福井県 191千人 95% 91%
テンプレート:Rh| 山梨県 258千人 106% 106%
テンプレート:Rh| 長野県 572千人 92% 98%
テンプレート:Rh| 岐阜県 589千人 104% 100%
テンプレート:Rh| 静岡県 1,069千人 98% 93%
テンプレート:Rh| 愛知県 1,942千人 98% 90%
テンプレート:Rh| 三重県 477千人 104% 98%
テンプレート:Rh| 滋賀県 331千人 107% 103%
テンプレート:Rh| 京都府 676千人 113% 117%
テンプレート:Rh| 大阪府 2,587千人 115% 114%
テンプレート:Rh| 兵庫県 1,462千人 110% 108%
テンプレート:Rh| 奈良県 383千人 109% 108%
テンプレート:Rh| 和歌山県 324千人 112% 117%
テンプレート:Rh| 鳥取県 153千人 112% 116%
テンプレート:Rh| 島根県 168千人 105% 105%
テンプレート:Rh| 岡山県 477千人 106% 104%
テンプレート:Rh| 広島県 703千人 106% 105%
テンプレート:Rh| 山口県 374千人 117% 121%
テンプレート:Rh| 徳島県 192千人 135% 156%
テンプレート:Rh| 香川県 251千人 103% 101%
テンプレート:Rh| 愛媛県 404千人 109% 113%
テンプレート:Rh| 高知県 221千人 114% 125%
テンプレート:Rh| 福岡県 1,337千人 108% 112%
テンプレート:Rh| 佐賀県 227千人 113% 119%
テンプレート:Rh| 長崎県 427千人 104% 109%
テンプレート:Rh| 熊本県 539千人 112% 117%
テンプレート:Rh| 大分県 315千人 121% 127%
テンプレート:Rh| 宮崎県 352千人 116% 126%
テンプレート:Rh| 鹿児島県 480千人 107% 116%
テンプレート:Rh| 沖縄県 510千人 101% 119%
テンプレート:Rh| 全国計 テンプレート:Rh| 35,617千人 テンプレート:Rh| 100% テンプレート:Rh| 100%

市町村国保の保険料は全国均一ではなく、各保険者ごとに独自で決められるようになっている。その理由は、地域の産業構造や人口構成を反映することを目指したもの。しかし、同じ年収金額帯でありながら保険料が自治体ごとに異なることがあり不公平感が生まれている。また、運営地域が市町村単位のため、企業の撤退や大量の退職者の発生、また高齢者人口比率が上がるなどが原因で運営が不安定になりやすいという欠点がある。その解決策として市町村国保への多額の一般会計からの繰り入れや、国保組合への国費投入などは、自分が加入していないはずの保険者に対する公費投入になるため、不公平感が指摘されている。

国民健康保険中央会は、すべての公的保険制度を国保に一本化するよう要望しているテンプレート:Sfn。OECD対日審査では、国保制度について市町村別から都道府県別に移行し規模の拡大を図るよう勧告されている[6]。2013年の社会保障国民会議においても同様の勧告がなされた[7]。また、後期高齢者医療制度支援金について、現在の「加入者割」から完全に「総報酬割」に移行するよう勧告された[7]

加入者層の変化

制度発足当初は、サラリーマンでない自営業者や農業従事者の医療保険制度として発足した。だが、産業構造の変化や高齢化の進展により、年金生活者や失業者等の無職者の割合が半数近くを占めている。また加入者1人あたりの医療費支出も高く、2010年は他の保険加入者の2倍であったテンプレート:Sfn。自治体においては、一般財源等により補填を行っているが、自治体の財政状況により多分な負担ができなくなっている。2009年は市町村国保の約半数が赤字となった[8][9]

また国保における被用者保険対象外となるパートタイマー労働者の比率は32.4%まで上昇しているテンプレート:Sfn。そのため被用者保険の適用を拡大する法改正がなされ、将来の施行を目指している(健康保険#非正規労働者)。

未払い世帯の増加

市町村国健保の保険料収納率は1980年(昭和55年)頃には95%程あったが、2009年には過去最低の88.08%を記録したテンプレート:Sfn

  • 2011年(平成23年)度の最高納付率は94.60%の島根県で、最低納付率は85.32%の東京都[10]
  • 2011年(平成23年)度の政令都市及び東京23区こと特別区での収納率は、最高が93.51%の名古屋市で、最低が85.32%の東京都足立区という結果であった。[11]

市町村は保険料滞納が長引く場合、以下の条件を除いて世帯主に対し被保険者証の返還を求めている。求められた世帯主は応じる義務がある(第9条、施行令第1条)。

  • 世帯主がその財産につき災害を受け、又は盗難にかかつたこと。
  • 世帯主又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと。
  • 世帯主がその事業を廃止し、又は休止したこと。
  • 世帯主がその事業につき著しい損失を受けたこと。
  • 前各号に類する事由があつたこと。

なお、滞納分は滞納することなく支払った他の被保険者が負担することになっており、保険料は滞納分を見越して設定されているといわれている。また、それでも不足の場合は、一般会計からの繰り入れで補填されることになっている。

滞納者に対しては、保険証短期保険証や資格証明書の発行によって保険証の使用が制限されるが、保険証を取り上げられた場合であっても保険加入者には変わりないので、制度上は無保険者が存在しないことになっている。ただし、給付を受けられず全額自己負担になるため事実上の無保険者であり、国民皆保険の形骸化や空洞化が指摘されている。

市町村国保と組合国保

テンプレート:出典の明記 財政難に苦しむ市町村国保からは、国保組合制度の存在および国保組合に対する税金投入に対して批判の声が上がっている。

  • 市町村国保と国保組合とではそれぞれ加入者の人口構成、所得、給付額が異なり、とりわけ市町村の保険に加入する被保険者の高齢化とそれに伴う保険給付の増大が多くことに加えて、低所得者も多い。そのため公費投入率も多い傾向にある。同様の業種に従事する者を対象とするため、保健事業により職業病・労災の発見には有利な面もある(建築土木業におけるアスベストによる悪性中皮種など)。2009年には東京都の全国建設工事業国民健康保険組合(建設国保)が資格のない人たちを偽装加入させている事実が判明した[12]。この組合の運営には年間220億円以上の税金が使われている。加入者数に応じて国から支給される補助金が目当てで、全国規模で行われている可能性が疑われているとのこと。この背景には、加入者が増えるほど組合運営が安定するため、厳しいノルマを課される加入者拡大運動にも一端があるとされる。
  • 国保組合のうち37組合(2007年現在)は入院費の本人負担が一レセプトあたり3,000円を限度とするなど、事実上の全額給付に近い給付を行っている。一見、良い制度と思われがちであるが、加入資格によっては、市町村国保を含めて複数ある国保組合から任意の加入組合を選択できる。そのため、給付条件が法定給付に準じているところと、それ以上のところが並存している場合、加入者の必要に応じて給付条件の有利な保険者を逆選択しあうことも可能である。これは、保険者にとっては既存の組合員に対して著しく不公平となるばかりではなく、保険制度の根幹にも関わりかねない行為であるため、給付条件の統一化が必要との声がある。
  • 建設業従事者など一部の限られた国保組合加入資格者だけに、なぜこのような特権ともいえる制度が守られているのか疑問視する声もある。一方で、建設業は裾野が広く原則として資格や許認可は不要である。また、一人親方や兼業もあるのに加え、昨今の不況で仕事が減り休業状態の建設従事者が多くなるなど、営業実態が把握しにくい傾向がある。弁護士医師と異なり客観的な加入資格認定が困難な業種であり、加入資格の厳格化が難しい側面がある。
  • 国保組合は市町村国保より給付条件が良いことに加えて、月15,000円程度の定額制の保険料の組合が多い。そのため、富裕層にとっては市町村よりはるかに有利である。反面、市町村国保は減免措置もあり低所得者層に有利な傾向がある。国保組合加入資格者は、保険料や給付内容を比較して有利な保険者の選択が可能である。市町村国保間では居住地以外の市町村を保険者とする国保への加入、つまり越境加入は原則的に認めていないが、国保組合間および市町村国保と国保組合間での移動は職業等の加入資格さえ整えば比較的容易にできる。そのため、公平な医療費負担の観点からも早期の是正が望まれる。

加入時に病歴を申告させ虚偽だった場合、医療給付を受けられなくなるとの注意を促している国保組合が一部にある。財政安定化のため慢性疾患のある者の新規加入を防止するための措置であるが、国保組合に加入できないとしても市町村国保には問題なく加入できる。これは違法性はないとされるが保険者による加入者の選別といえ、市町村国保への負担増大の一因といえる。

医療関係者向け組合の多くは自家診療の場合は保険適用されない。ただし、診療コストがほぼ原価で済む場合があるため経済的には保険適用の3割負担と比べても必ずしも不利になるとはいえない。よって、可能な限りあえて全額負担の自家診療を選択することで、保険組合への負担軽減に貢献しているとの指摘がある。そのため、国保の一元化に関してはこうした自助努力をしている保険者にたいする公平性の確保も問題になる。2013年の社会保障国民会議では、所得の高い国保組合に対して、定率補助廃止の取り組みを進めるよう勧告された[7]

事実上の無保険者の存在

日本は国民皆保険であり、日本国民は必ず何らかの健康保険に加入していることになっている。にもかかわらず、保険証を持っていない事実上の無保険者が存在し(国民皆保険の形骸化)、さらに年々増加していることが大きな問題となっている[13]

国民健康保険は雇用者でない自営業者などのための保険制度であるため、保険料の支払いは給料天引きではない。よって、滞納の問題が起こる。1年間国民健康保険税を滞納した被保険者は保険証を没収され、さらに半年間滞納すると保険給付そのものが停止され、事実上の無保険者となる[13]

事実上の無保険者になっても、経済力のある者であれば自由診療を受ければよい。ただし、保険料の支払い能力があるのに支払わず滞納していると口座などが差押される場合がある[14]

問題は経済的困窮者である。国民健康保険は年金生活者や失業者などの無職者も強制加入対象となるため、財産に余裕の無い低収入・無収入者など経済的困窮者も多くいる。このような者では保険料を支払うのが難しいうえ、滞納すると延滞金も課せられる場合があるのでさらに支払いが困難となっていく。経済的困窮者が事実上の無保険者に陥ると高額な医療費を支払う能力がないので疾患が起こっても放置する以外になく、手遅れになって死亡に至る事例も相次いでいるという[15][16][17]

脚注

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参考文献

関連項目

外部リンク

テンプレート:日本の法人
  1. 国民健康保険事業年報 平成22年度, e-stat , (GL08020101)
  2. 2.0 2.1 2.2 テンプレート:Cite report
  3. テンプレート:Cite press
  4. 退職者医療制度は、後期高齢者医療制度の創設等に伴い廃止されることとなっているが、2014年度までの間に退職した者が65歳に達するまで(おおむね2019年度まで)は存続することとなっている。
  5. テンプレート:Cite report
  6. テンプレート:Cite report
  7. 7.0 7.1 7.2 テンプレート:Cite report
  8. テンプレート:Cite news
  9. テンプレート:Cite journal
  10. テンプレート:PDFlink - 厚生労働省(平成25年(2013年)11月15日閲覧)
  11. テンプレート:PDFlink - 厚生労働省(平成25年(2013年)11月15日閲覧)
  12. テンプレート:Cite press
  13. 13.0 13.1 テンプレート:Cite web
  14. テンプレート:Cite web
  15. テンプレート:Cite web
  16. テンプレート:Cite web
  17. テンプレート:Cite web