T-90のソースを表示

{{出典の明記|date=2013年8月}}
{{戦車|
|名称=T-90
|画像=[[ファイル:T-90A MBT photo010.jpg|250px]]
|説明=[[ロシア連邦軍]]のT-90A
|全長=9.53 [[メートル|m]]
|車体長=6.86 m
|全幅=3.78 m
|全高=2.23 m
|重量=46.5 [[トン|t]]
|懸架方式=トーションバー方式
|速度=
|整地時速度=65 [[キロメートル毎時|km/h]]
|不整地時速度=45 km/h
|行動距離=375 [[キロメートル|km]]<br/>550 km（外部タンク搭載時）
|主砲=51[[口径]]125 mm[[滑腔砲]][[2A46 125mm滑腔砲|2A46M-1]]
|副武装=12.7 mm[[重機関銃]][[Kord重機関銃|Kord]]<br/>7.62 mm[[機関銃]][[PK (機関銃)#派生型|PKT/PKMT]]
|装甲=対化学反応合金、対[[APFSDS]]弾、対[[成形炸薬弾|HEAT弾]][[装甲]]
|エンジン名=V-84-MS（主エンジン）<br />[[4ストローク]][[V型12気筒]][[液冷エンジン|液冷]][[スーパーチャージャー|スーパーチャージド]]・[[ディーゼルエンジン|ディーゼル]]<br/>AB-1-P28（補助エンジン）<br />1[[ワット|kW]]
|出力=840 - 1,000馬力
|乗員=3名
|備考=
}}
'''T-90'''（{{Lang-ru|Т-90}} <small>テー・ヂヴィノースタ</small>）は、[[ソビエト連邦]]、および[[ロシア|ロシア連邦]]が開発した第三世代[[主力戦車]]である。[[T-72]]をベースに大幅に改良してより高価な[[T-80U]]のレベルに近づけた[[戦車]]で、[[1992年]]に[[ロシア連邦軍]]が制式採用した。ロシアでの愛称は「'''[[ヴラジーミル]]/[[ウラジーミル]]'''」（'''{{lang|ru|Владими́р}}'''）である。

== 開発の経緯 ==
一般にT-90は、[[湾岸戦争]]で著しく低下したT-72を初めとするロシア製[[兵器]]の評価を挽回し、輸出市場拡大による外貨獲得を目的に開発されたモデルであると認識されている。ただし、T-90に相当する[[戦車]]の開発は、湾岸戦争以前に着手されていた。T-64とT-80が[[ウクライナ]]に存在する設計局と工場で製造されていたため、ソ連崩壊により新規車両やメンテナンスパーツの入手が不透明になったことも、開発の動機の一つであると考えられる

[[1970年代]]半ば以降、[[ソビエト連邦|ソ連]]は[[T-64]]、[[T-72]]、[[T-80]]と3種類の[[主力戦車]]を装備していたが、このうちT-72が高い信頼性で部隊から強い支持を集める一方、T-64、T-80は盛り込まれた数々の新機軸が災いし、整備に手間が掛かっていた。当然の如く「信頼あるT-72に、T-80に匹敵する攻撃力を付与して、大量装備するべき」との意見が運用側から寄せられ、T-72、T-80の改良作業と並行する形で新型戦車の開発が進められ、[[1989年]]、開発記号"オブイェークト188"と名付けられた試作戦車数両が製造された。各種試験の結果は上々であったものの、当時深刻な財政難に直面していた[[ソビエト連邦軍|ソ連軍]]はなかなか制式採用に踏み切らず、湾岸戦争でのT-72の惨敗を受けて、ようやく採用の運びとなった。その後も[[ソ連崩壊|ソビエト連邦の崩壊]]もあって、オブイェークト188の採用･装備は一時宙に浮いたが、[[1992年]]9月に量産型オブイェークト188（T-90）の最初のロットがロールアウト。同年10月に、[[ロシア陸軍]]の制式装備と決定されている<ref>『ソビエト･ロシア 戦車王国の系譜』酣燈社、2009年。ISBN 978-4-87357-321-2</ref>。量産開始以降は、[[ニジニ・タギル]]の[[ウラルヴァゴンザヴォート|産業合同「ウラルヴァゴンザヴォート」]]（[[ウラル]]車輌工場）で生産が行われている。

== 概要 ==
[[主砲]]は[[2A46 125mm滑腔砲|2A46M-1 51口径125 mm滑腔砲]]で、[[T-72]]の主砲を改良したものにあたる。[[APFSDS]]（装弾筒付翼安定徹甲弾）、[[成形炸薬弾|HEAT]]（対戦車榴弾）、[[榴弾|HE]]（榴弾）など、現代戦車では一般的な[[弾薬]]のほか、[[T-80]]で採用された[[9M119 (ミサイル)|9M119Mレフレークス]][[対戦車ミサイル]]（[[NATOコードネーム]]ではAT-11 Sniper）を発射できる。

主砲からミサイルを発射できるのは旧東側[[戦車]]の特徴で、レフレークスの場合、[[レーザー]]を戦車から目標に照射し、その反射を捉えて[[ミサイル]]を誘導するセミアクティブレーザー方式を採用している。ミサイルの飛翔速度は[[マッハ数|マッハ]]2に達し、射程は約5,000 m。750 - 800 mm程度の[[装甲]]（均質圧延鋼板換算）を貫通するという。

これら弾薬とミサイルは[[自動装填装置]]により装填されるため、T-90に装填手は搭乗していない。

装甲などの防御装備も改良されており、積層装甲と新型の[[爆発反応装甲]][[コンタークト5]]を採用している。

また、敵戦闘車両や[[航空機]]などの[[FLIR]]（赤外線監視装置）や、[[赤外線]]誘導方式の対戦車ミサイルに対し、強力な赤外線を照射して妨害する能力や、敵のレーザー照射を妨害する能力を持った[[ミサイル警報装置]]を搭載しており、これらは[[TShU-1|TShU-1-7シュトーラ-1]][[アクティブ防護システム|防御システム]]と呼ばれている。

初期型のT-90ではT-72系列の[[エンジン]]を改良したV-84MSを装備していたが、出力が840馬力で、重量46.5トンのT-90にとっては必ずしも満足できるものではなかったため、現在[[ロシア軍]]が採用しているT-90AではV-92S2（1,000馬力）エンジンに置きかえられている。

<gallery widths="180px" heights="150px">
ファイル:T-90 engine.jpg|エンジンカットモデル
ファイル:T-90 turret front view.jpg|砲塔上面
ファイル:T90.jpg|側面及び背面
</gallery>

== 採用･輸出 ==
T-90は一輌あたり約140万[[アメリカ合衆国ドル|ドル]]と安価で、性能も優れていることから、他国に対しても積極的な売りこみが行われている。かつて[[ソビエト連邦|ソ連]]は「[[モンキーモデル]]」と呼ばれるオリジナルよりも性能の劣る仕様で他国へ[[兵器]]を売り込んでいたが、[[湾岸戦争]]での失敗もあって、T-90については、国防上の観点から最先端技術の輸出は行わないにしても、以前のような著しい劣化仕様とはみられていない。例えば、[[インド]]のT-90はエンジン出力などの一部の性能ではロシア本国仕様を上回っている（一方で、TShU-1-7シュトーラは装備していない）。

ロシアとインドは、[[2000年]][[10月]]に「戦略的パートナーシップ宣言」に調印し、この中でT-90Sの約300輌（一部は[[回収戦車]]型）の売却と、インドでの[[ライセンス生産]]について合意している。インドの隣国である[[パキスタン]]が[[ウクライナ]]から[[T-80|T-80UD]]を導入していることから、T-90Sの導入はこれに対抗する意図があると見られている。インドの現地生産型T-90Sは、「'''{{仮リンク|ビシュマ|en|Bhishma}}'''」（[[IAST]]：'''{{lang|Latn|Bhishma}}'''）の愛称で呼ばれることになる。

一方で、[[朝鮮民主主義人民共和国|北朝鮮]]の[[金正日]]が[[2001年]][[8月]]にロシアの[[オムスク]]にある戦車工場を訪れた際には、ロシアはT-90の売却を拒否している。このため、北朝鮮では[[T-62]]（天馬号/天馬虎）を基に、独自に「[[暴風号]]/暴風虎」という、T-90風の戦車を開発したという報道もあるが、詳細は明らかになっていない。

このほか、[[アルジェリア]]にもT-90SAが180輌輸出される。また、インドからは[[モロッコ]]に330輌のT-90Sを輸出する契約が結ばれた。この他、[[リビア]]、[[イラン]]、[[シリア]]、[[インドネシア]]に対してもロシアやインドとの契約が結ばれたとされる。高性能であるがあまりに高価なT-80U系の車輌が販売不振であるのに対し、手頃なT-90は順調に輸出が進んでいるといえる。

このように当初は輸出向けの生産が主であったものの、製造本国であるロシアにおいても、次期[[主力戦車]]として予定されていた[[T-95]]の開発が中止された一方（現在は再開）で、現用のT-80Uもコストの高さと装備の複数化の弊害を理由に生産･配備が中止され、[[ロシア連邦軍]]の主力戦車としてT-90を本格的に配備すると決定した。今後、ロシア連邦軍は主力戦車を[[T-72]]の改良型とT-90で揃える方針である。

== 採用国 ==
*{{RUS}}  
*{{IND}}
*{{ALG}} 
*{{SAU}} 
*{{CYP}} 
*{{TKM}}
*{{SRV}}

== バリエーション ==
;T-72BM
:T-90の原型といえる[[戦車]]。
;T-90
:基本型。当初はT-72BUと呼ばれた。
;T-90E
:輸出型。
;T-90S
:後期型。T-90Cと呼ばれる事もあるが、これは[[キリル文字]]の「[[С]]」（エス）と似た形の[[ラテン文字]]の「[[C]]」（シー）と勘違いしたものと思われる。
[[ファイル:T-90S 0032 copy.jpg|thumb|250px|T-90S「ビシュマ」]]
;T-90S「ビシュマ」
:[[インド]]のT-90S。[[TShU-1|TShU-1-7シュトーラ-1]]を装備していない。
{{-}}
;T-90K
:指揮型。
;T-90SK
:指揮型。
;T-90A
:量産されている中では最新型で、[[2007年]]に[[ロシア連邦軍]]への導入契約が結ばれた。「ウラジーミル[[砲塔]]」と呼ばれる溶接式の砲塔を装備。[[主砲]]は55[[口径]]125 mm[[滑腔砲]][[2A46 125mm滑腔砲|2A46M-5]]を装備。
;T-90M
:T-90AMとの表記もある。全周旋回式の[[指揮官|車長]]用サイトを装備した試作型。
[[ファイル:T-90SM - RAE2013-04.jpg|thumb|250px|T-90SM]]
;T-90SM
:バスル部を設けた砲塔とリモート機銃、アップグレードされた光学機器、[[爆発反応装甲]]サイドスカートを有する試作型。
{{-}}

== 派生型 ==
;BREM-72
:[[回収戦車]]
;MTU-90
:[[架橋戦車]]
;IMR-3
:[[戦闘工兵車]] 
;BMR-3
:[[地雷処理戦車]]

== 登場作品 ==
; 特撮
* 『[[ウルトラマンメビウス]]』    
: 第48話に登場。[[モスクワ]]に出現した[[ウルトラマンメビウスの登場怪獣#無双鉄神 インペライザー|インペライザー]]を包囲した。

; ゲーム
* 『[[ARMA 2]]』
: [[ロシア連邦軍]]の[[兵器]]として登場し、プレイヤーやAIが操作可能。
* 『[[コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア3]]』
: [[ヨーロッパ]]各地へ侵攻したロシア軍の[[戦車]]として登場。
* 『[[コール オブ デューティ ブラックオプス2]]』
* 『[[大戦略シリーズ]]』
: ロシアなどの基本装備として組み込まれる。
* 『[[バトルフィールド2]]』
: MEC（中東連合軍）の兵器として登場し、プレイヤーやAIが操作可能。
* 『[[バトルフィールド バッド カンパニー]]』『[[バトルフィールド バッド カンパニー2]]』
: ロシア側の[[主力戦車]]として登場。
* 『[[バトルフィールド3]]』
: キャンペーンでは[[イラン軍]]の主力戦車として登場。
: マルチではロシア側の主力戦車として登場。
* 『[[バトルフィールド4]]』
: ロシア側の主力戦車として登場。
* 『[[メタルサーガニューフロンティア]]』
: プレイヤーの搭乗戦車の一台として登場。

== 脚注 ==
<references />

== 外部リンク ==
{{Commons|Category:T-90 tanks}}
* [http://www.fas.org/man/dod-101/sys/land/row/t-90.htm FAS（全米科学者連盟） T-90]
* [http://www.army-technology.com/projects/t90/ Army Technology T-90S]
* [http://armor.kiev.ua/fofanov/Tanks/EQP/shtora.html TShU-1-7 Shtora-1 EOCMDAS]
* {{YouTube|LXIoDLVT-Jw|T-90}}デモンストレーション＆性能解説

{{現代戦車}}
{{第二次世界大戦後のソ連の装甲戦闘車両}}

[[Category:ソ連の戦車|T-090]]
[[Category:ロシア連邦の戦車|T-090]]
[[Category:インドの軍事|T-090]]
[[Category:主力戦車]]