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高温超伝導
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{{Unsolved|物理学|なぜ、特定の材料は50 [[ケルビン|K]]より非常に高い温度で、[[超伝導]]を示すのか?}} '''高温超伝導'''(こうおんちょうでんどう、{{lang-en-short|High-temperature superconductivity}})とは、高い[[転移温度]] (Tc) で起こる[[超伝導]]である。 == 概要 == 「高温」の[[意味]]は、時代、状況によって異なるが、一般に'''高温超伝導'''と言えば、[[ヨハネス・ベドノルツ|ベドノルツ]]と[[カール・アレクサンダー・ミュラー|ミューラー]](ミュラー)が、La-Ba-Cu-O系において[[1986年]]に発見したことから始まり、その後続々と発見された転移温度が[[液体窒素]]温度(−195.8 [[セルシウス度|°C]], 77 [[ケルビン|K]])を越える一連の銅酸化物高温超伝導物質と、その超伝導現象のことを指す場合が多い。高温超伝導を示す物質のことを'''高温超伝導体'''という。[[銅酸化物]]であるものは'''銅酸化物高温超伝導体'''という。 高温という語は、通常は人間が「熱い」と感じるほど温度が高いことを表すが、高温超伝導における高温とは、従来の超伝導体と比較すると高温である−200℃~−100℃程度を指す。 なお、ミュラーとベドノルツはこの業績により、[[1987年]]の[[ノーベル物理学賞]]を受賞した。 == 歴史 == [[1985年]]、[[誘電体]]研究で著名な[[IBM]]チューリッヒ研究所のフェローとなっていた[[カール・アレクサンダー・ミュラー|アレックス・ミューラー]]のもとで、[[ヨハネス・ベドノルツ|ジョージ・ベドノルツ]]は[[チタン酸ストロンチウム]]の研究を行っていた。この物質は[[強誘電体]]として良く知られている[[絶縁体]]であるが、電子ドープにより[[半導体]]から金属的となり、低い転移温度ながら超伝導を示す。ミューラーは[[ヤーン・テラー効果|ヤーン・テラー]]型格子変形と超伝導との関係に興味をもっていた。ベドノルツはある日、[[図書室]]でLa-Ba-Cu-Oペロブスカイト系で液体窒素温度まで金属になるという[[論文]]を知り、早速作ってみると、試料は30 K付近から抵抗が減少し、10 K以下でゼロ抵抗になるように見えた。 彼らはドイツの会議でこの結果を発表したが、誰にも評価されることはなかった。そこでIBM T.J. Watson研究所に試料を送って真偽を鑑定してもらったが、[[比熱]]測定に超伝導転移による跳びが見られなかったことから超伝導ではないという結果が返ってきた。超伝導を認められなかったものの、1986年4月、ベドノルツとミューラーはとりあえず[[Zeitschrift für Physik]]というドイツの学術誌に論文を投稿した<ref>{{cite journal |author = J. G. Bednorz and K. A. Müller |title = Possible high''T''<sub>c</sub> superconductivity in the Ba−La−Cu−O system |journal = Z. Physik, B |volume = 64 |year = 1986 |pages = 189–193 |doi = 10.1007/BF01303701 |issue = 1|bibcode = 1986ZPhyB..64..189B }}</ref>。 この論文が公表された1986年、少なくとも世界の数カ所で結果の追試が行われた。このうち[[東京大学]]の[[田中昭二 (物理学者)|田中グループ]]は、この物質の[[結晶構造]]の同定と[[マイスナー効果]]を確認し、誰もが間違いないと確信できるレベルでLa-Ba-Cu-O系で超伝導が起こっていることを証明した。田中研で超伝導の存在が判明したのが1986年[[11月13日]]であり、[[12月5日]]にボストンの材料研究学会においてこの結果が発表された。これ以後、数年間にわたり高温超伝導探索のフィーバーが続いた。1987年2月には、90 K級で転移するY-Ba-Cu-O([[Y系超伝導体]])が発見された。短期間のうちにTcが60 Kも高められたことになる。 超伝導転移温度は次々と塗り替えられ、[[2014年]]現在、水銀系銅酸化物において高圧力下での166[[ケルビン]]の転移温度が最高記録であるとされている<ref name="iopscience">[http://iopscience.iop.org/0295-5075/72/3/458/ High-pressure effects in fluorinated HgBa2Ca2Cu3O8 + δ]</ref>。ただし超伝導現象の最も基本的な性質であるゼロ抵抗は全く実現されておらず、この温度を超伝導転移温度と呼んでいいかについては議論がある。[[気圧|大気圧]]下では[[1993年]]に発見されたHg-1223の135Kが最も高い温度となる<ref name="sansouken20130130">[http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2013/pr20130130/pr20130130.html これまでで最高温度となる153 Kでの超伝導転移を観測]</ref>。 銅酸化物高温超伝導に関する研究論文は、1987年前後をピークとして発表数は減少傾向を示している。学術データベースの統計から判断すると、高温超伝導に関する研究は、[[2010年]]から[[2015年]]までの間に行き詰まりを迎えるとする見方もあった<ref>{{cite journal|author=Katharine Sanderson|title=Superconductivity research is down but not out|journal=[[ネイチャー|Nature]]|volume=443|pages= 376-377 |year=2006|doi= 10.1038/443376b}}</ref>。 また、[[2000年]]前後には、[[フラーレン]]などでも高温超伝導が生じるとする論文が数編提出されたが、後に全て[[ヘンドリック・シェーン|研究者]]による[[捏造]]と判明して撤回された<ref>{{cite book|和書|author=村松 秀|title= 論文捏造|series=中公新書ラクレ|publisher= 中央公論新社|year=2006|month=9|isbn= 978-4121502261}}</ref> 。 [[2001年]]、[[青山学院大学]]の[[秋光純]]らのグループが40kが上限と考えられる[[BCS理論]]基づく超伝導体で、限りなく上限に近い転移温度39kの[[二ホウ化マグネシウム]]を発見<ref name="aoyama2007">[http://www.aoyamagakuin.jp/news/2007/1129-01.html 青山学院ニュース - 「秋光純大学理工学部教授がアメリカ物理学会(APS)より "2008 James C. McGroddy Prize for New Materials"を受賞」]</ref>。金属系超電導物質では最高温度となる<ref name="aoyama2007"/>。 [[2008年]]、[[東京工業大学|東工大]]の[[細野秀雄]]らにより、鉄を含んだ組成の酸化物が超伝導を示すことが分かり、新たな鉱脈として大きな注目を集めている([[鉄系超伝導物質]])。ただ、超伝導転移温度は最も高い場合でも56K程度であり、銅酸化物高温超伝導体に対しては今のところ低い。 === 定義 === 高温超伝導体は[[国際電気標準会議]] (IEC) の[[国際規定]]IEC60050-815(2000) と[[日本工業規格]]JISh7005(1999) により定義されており、「一般的に約25 K以上の[[臨界温度]] (Tc) を持つ超伝導体」とある。しかし、転移温度が90 Kを超えるものが一般的になった今では液体窒素温度(−195.8 ℃、77 K)以上で転移するものを高温超伝導体と呼ぶことが多い。 == 結晶構造 == YBa<sub>2</sub>Cu<sub>3</sub>O<sub>7-δ</sub> (Tc~93K)やBi<sub>2</sub>Sr<sub>2</sub>Ca<sub>2</sub>Cu<sub>3</sub>O<sub>10</sub> (Tc~109K)といった銅酸化物高温超伝導体は全て、[[ペロブスカイト構造]]を基礎とした[[結晶構造]]をしている。 これら銅酸化物高温超伝導体の構造には以下のような特徴がある。 *2次元正方格子CuO<sub>2</sub>面がシート状に広がっている。 *多くの物質では、このシートの上下には[[ランタノイド]]等による電気伝導をブロックする層があり、CuO<sub>2</sub>面とブロック層が交互に積層する構造をとっている。ブロック層が存在しない無限層と呼ばれるものもある。 == 超伝導体の名前 == これらの超伝導体は、構成する[[元素]]の頭文字をとって呼ばれることが多い。たとえばYBa<sub>2</sub>Cu<sub>3</sub>O<sub>7-δ</sub>は'''YBCO'''と呼ばれ、Bi<sub>2</sub>Sr<sub>2</sub>Ca<sub>2</sub>Cu<sub>3</sub>O<sub>10</sub>は'''BSCCO'''(ビスコ)と呼ばれる。 一方、構成元素の[[物質量]]比(モル比)で呼ぶこともある。たとえばYBa<sub>2</sub>Cu<sub>3</sub>O<sub>7-δ</sub>は'''Y123'''、Bi<sub>2</sub>Sr<sub>2</sub>Ca<sub>2</sub>Cu<sub>3</sub>O<sub>10</sub>は'''Bi2223'''などである。 == 性質 == [[ファイル:高温超伝導の相図.png|right]] 高温超伝導体にはキャリアが[[正孔|ホール]]であるものと、[[電子]]のものの2種類がある。前者をホールドープ型、またはp型と呼ばれ、後者は電子ドープ型、またはn型と呼ばれる。 ホールドープ型の高温超伝導体はホール濃度と温度により、右図のような状態をとる。ホール濃度がゼロのとき、反強磁性となり、ドープをすると反強磁性が消え、擬ギャップと呼ばれる状態になる。さらにドープすると超伝導になる。ドープを増やすと超伝導転移温度は上昇する。この領域をアンダードープ領域と呼ぶ。さらにドープすると転移温度は下がる。この領域をオーバードープ領域と呼ぶ。これ以上ドープすると超伝導は消え金属的になる。 == 機構 == 高温超伝導においても従来型の超伝導と同様に[[クーパー対]]が形成されていることが分かっている。従来型超伝導では、[[BCS理論]]により、[[フォノン]]を媒介とするクーパー対の形成機構が解明されているのに対し、高温超伝導におけるクーパー対の形成機構に関しては、完全な意見の一致は得られていない。高温超伝導体の発見後すぐに行われた[[同位体効果]]実験から、高温超伝導機構はフォノン機構では説明できないとされている。膨大な実験的・理論的な研究により、高温超伝導物質中のCuO<sub>2</sub>2次元面内の電子系における、[[反強磁性]]的な[[スピン角運動量|スピン]]の揺らぎを媒介にしたクーパー対形成機構で、高温超伝導の機構を理解できるという立場が主流となっている。しかし[[酸素の同位体]]置換により超伝導電子密度が変化するという報告もあり、フォノンも何らかの寄与をしているものと考えられている。 == 例 == {|class="wikitable" style="text-align:center " |+超伝導体の転移温度の例 (液体窒素の沸点は比較のため)</small> !width="15%" |転移温度 <br>(単位 ケルビン) !width="30%" |材料 !width="20%" |分類 |- |138 |Hg<math>_{12}</math>Tl<math>_3</math>Ba<math>_{30}</math>Ca<math>_{30}</math>Cu<math>_{45}</math>O<math>_{127}</math> |style="background:#f96060" rowspan="3" | 銅酸化物超伝導体 |- |110 |Bi<math>_2</math>Sr<math>_2</math>Ca<math>_2</math>Cu<math>_{3}</math>O<math>_{10}</math>(BSCCO) |- |92 |YBa<math>_2</math>Cu<math>_3</math>O<math>_7</math> ([[イットリウム系超伝導体|YBCO]]) |- |style="background:#FFD700" |77 |style="background:#FFD700" |液体窒素の沸点 |style="background:#FFD700" | |- ||55 |SmFeAs(O,F) |style="background:#8989f9" rowspan="3" | [[鉄系超伝導物質|鉄系超伝導体]] |- |41 |CeFeAs(O,F) |- |26 |LaFeAs(O,F) |- |39 |MgB<math>_2</math>([[二ホウ化マグネシウム]]) |style="background:#808080" rowspan="3" | 金属低温超電導体 |- |18 |Nb<math>_3</math>Sn([[超伝導電磁石|ニオブスズ]]) |- |10 |NbTi([[超伝導電磁石|ニオブチタン]]) |- |4.2 |Hg([[水銀|水銀]]) |} == 応用 == YBa<sub>2</sub>Cu<sub>3</sub>O<sub>7-δ</sub>の発見で転移温度が[[液体窒素温度]]を越えてから、高価な[[液体ヘリウム]]にかわって安価な[[液体窒素]]を使えることから実用への期待が高まった。しかし加工が難しいことや臨界電流密度を高めるのが難しいことから応用はなかなか進んでいない。応用としては[[送電線]]、[[高周波通信用超伝導フィルター]]、[[超伝導量子干渉計|SQUID]]、[[磁界検出器]]、[[超電導リニア]]、米海軍の艦船推進用モーター、MRI<ref>http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2011/110511_2/detail.html</ref>など。 == 脚注 == {{reflist}} == 関連項目 == *[[超伝導]] - [[室温超伝導]] *[[イットリウム系超伝導体]] *[[強相関電子系]] *[[結晶構造]] - [[立方晶]] - [[ペロブスカイト構造]] *[[鉄系超伝導物質]] == 外部リンク == *[https://www.webstore.jsa.or.jp/webstore/Com/FlowControl.jsp?lang=jp&bunsyoId=JIS+H+7005%3A2005&dantaiCd=JIS&status=1&pageNo=0 超電導関連用語(JIS)] *[http://www.sei.co.jp/news/press/06/prs457_s.html 高温超伝導ケーブルによる送電の実用化実験、アメリカ合衆国] *[http://superlife.info Superconductivity in everyday life: Interactive exhibition] *[http://people.ccmr.cornell.edu/~jcdavis/ コーネル大学での高温超伝導研究] *[http://iop.org/EJ/journal/SUST 超伝導の科学と技術] *{{YouTube|c3asSdngzLs|高温超電導体の上で磁石が浮上するビデオ}} *[http://suptech.com/tech_faq.htm 高温超伝導技術] {{DEFAULTSORT:こうおんちようてんとう}} [[Category:超伝導]]
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