香取神宮のソースを表示

{{神社
|名称   = 香取神宮
|画像   = [[File:Katori-jingu haiden shomen.JPG|280px|拝殿]]<br />拝殿（国の[[登録有形文化財]]）
|所在地 = [[千葉県]][[香取市]]香取1697
|ISO = JP-12
|緯度度 = 35|緯度分 = 53|緯度秒 = 10.03
|経度度 =140|経度分 = 31|経度秒 = 43.27
|祭神   = [[経津主神|経津主大神]]
|社格   = [[式内社]]（[[名神大社|名神大]]）<br />[[下総国]][[一宮]]<br />旧[[官幣大社]]<br />[[勅祭社]]<br />[[別表神社]]
|本殿   = 三間社[[流造]]
|別名   = 
|札所等 = [[東国三社]]
|創建   = （伝）初代[[神武天皇]]18年
|例祭   = [[4月14日]]
|神事   = [[#式年祭|式年神幸祭]]（12年に1度）<br />[[香取神宮御田植祭|御田植祭]]（4月第1土曜・日曜）<br />神幸祭 （[[4月15日]]）<br />大饗祭（[[11月30日]]）<br />団碁祭（[[12月7日]]）<!--特殊神事に限定-->
|ラベル位置 = left
|地図   = Japan Chiba}}
{{座標一覧}}
[[Image:Katori-jinngu-shrine-torii,katori-city,japan.JPG|thumb|right|220px|<center>二の鳥居</center>]]
'''香取神宮'''（かとりじんぐう）は、[[千葉県]][[香取市]]香取にある[[神社]]。[[式内社]]（[[名神大社]]）、[[下総国]][[一宮]]。[[近代社格制度|旧社格]]は[[官幣大社]]で、現在は[[神社本庁]]の[[別表神社]]。

[[関東地方]]を中心として全国に<!--約400社：要出典-->ある[[香取神社]]の総本社。[[茨城県]][[鹿嶋市]]の[[鹿島神宮]]、茨城県[[神栖市]]の[[息栖神社]]とともに[[東国三社]]の一社<ref>[http://www.kamisu-kanko.jp/power/ 東国三社]（神栖市観光協会）。</ref>。また、宮中の[[四方拝]]で遥拝される一社である。<!--[[初詣]]には50万人以上が参拝する。：要出典-->

== 概要 ==
[[千葉県]]北東部、[[利根川]]下流右岸の「亀甲山（かめがせやま）」と称される丘陵上に鎮座する。

全国でも有数の古社として知られ、古くは朝廷から[[蝦夷]]に対する平定神として、また[[藤原氏]]から[[氏神]]の一社として崇敬された。その神威は[[中世]]から[[武家]]の世となって以後も続き、歴代の武家政権からは[[武神]]として崇敬された。現在も[[武道]]分野からの信仰が篤い神社である。

文化財としては、中国・[[唐]]代の海獣葡萄鏡（かいじゅうぶどうきょう）が[[国宝]]に指定されている。建造物では[[江戸時代]]の[[本殿]]・[[楼門]]、美術工芸品では平安時代の鏡、中世の古瀬戸狛犬が国の[[重要文化財]]に指定されており、その他にも多くの文化財を現代に伝えている。

== 祭神 ==
祭神は次の1柱<ref group="注">祭神を1柱とする記載は、[http://www.katori-jingu.or.jp/goyuisyo.htm 御由緒]（公式サイト）、『新修 香取神宮小史』、神社由緒書等における公式記載に基づく。ただし{{Harvnb|香取神宮（平）|1996年|p=584}}等のように、相殿神に[[タケミカヅチ|武甕槌命]]（たけみかづちのみこと）、[[天児屋命|天児屋根命]]（あめのこやねのみこと）、[[比売神]]（ひめがみ）の3柱を載せる場合も見られる。</ref>。

* '''[[経津主神|経津主大神]]''' （ふつぬしのおおかみ）
*: 別名を'''伊波比主神'''・'''斎主神'''（いわいぬしのかみ）、'''斎之大人'''（いはひのうし）。

=== 祭神について ===
上記のように、香取神宮の主祭神は[[経津主神|フツヌシ]]（経津主）として知られる。その出自について、『[[日本書紀]]』（[[720年]]）では一書として<ref name="神代上" group="原">『日本書紀』神代上。</ref>、[[イザナギ|伊弉諾尊]]が[[カグツチ|軻遇突智]]（かぐつち）を斬った際、剣から滴る血が固まってできた岩群がフツヌシの祖であるとしている。また別の一書として<ref name="神代上" group="原"/>、軻遇突智の血が岩群を染め[[イワサク・ネサク|磐裂神・根裂神]]（いわさく・ねさく）が生まれ、その御子の[[イワツツノオ|磐筒男神・磐筒女神]]（いわつつのお・いわつつのめ）がフツヌシを生んだとしている。その後『日本書紀』本文では<ref name="神代下" group="原">『日本書紀』神代下。</ref>、[[天孫降臨]]に先立つ[[葦原中国平定]]において[[タケミカヅチ]]（[[鹿島神宮]]祭神）とともに出雲へ派遣され、[[大国主|大国主命]]と国譲りの交渉を行なったという。なお、『[[古事記]]』ではフツヌシは登場しない。

フツヌシと香取の関係については、『日本書紀』では一書として<ref name="神代下" group="原"/>「斎主神云々、此神今在于東国檝取之地也」とあり、「檝取（楫取、かとり） = 香取」との関係が記されている。その後、『[[古語拾遺]]』（[[大同 (日本)|大同]]2年（[[807年]]）成立）<ref group="原">『古語拾遺』（{{Harvnb|神道・神社史料集成}}参照）。</ref>で「経津主神云々、今下総国香取神是也」、『[[延喜式]]』（[[延長 (日本)|延長]]5年（[[927年]]）完成）所収の[[春日祭]]の[[祝詞]]<ref group="原">『延喜式』8 祝詞 春日祭条（{{Harvnb|神道・神社史料集成}}参照）。</ref>で「香取坐伊波比主命」と記されている。

祭神の性格としては、フツヌシが国土平定に活躍したという書紀の説話から、「武神・軍神」と見なされている。名称の「フツ」についても、記紀に見える「[[布都御魂|フツノミタマ]]（布都御魂、韴霊）」という神剣と同様、刀剣の鋭い様を表した言葉であるといわれる{{Sfn|香取神宮（国史）|1983年}}。軍神の認識を表すものとしては、[[平安時代]]末期の「関より東の軍神、鹿島・香取・[[諏訪大社|諏訪]]の宮」（『[[梁塵秘抄]]』）<ref group="原">『梁塵秘抄』巻2 四句神歌。</ref>という歌が知られる{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=585}}。一方、「楫取 = かじ（[[舵]]）取り」という古名から、古くは「航行を掌る神」として祀られたという見方もある{{Sfn|香取神宮（国史）|1983年}}{{Sfn|香取神宮（角）|1984年}}。そのほか、フツヌシとイハヒヌシ（伊波比主・斎主）という異名称の扱いや原始祭祀氏族には不明な点が多く、香取神宮の創祀も含めて諸説がある（詳細は[[#考証|考証]]節参照）。

== 特徴 ==
[[File:Kashima-jingu roumon.JPG|thumb|200px|right|<center>[[鹿島神宮]]（[[茨城県]][[鹿嶋市]]）</center><small>[[常陸国]][[一宮]]。香取神宮とは深い関係にあり、古来並び称される。</small>]]
香取神宮は、[[常陸国]][[一宮]]・'''[[鹿島神宮]]'''（[[茨城県]][[鹿嶋市]]、{{ウィキ座標|35|58|07.88|N|140|37|53.37|E|region:JP-08_type:landmark|位置|name=常陸国一宮：鹿島神宮}}）と古来深い関係にあり、「鹿島・香取」と並び称される一対の存在にある{{Sfn|香取神宮（角）|1984年}}<ref>神社本庁監修『神社のいろは』（扶桑社）p. 76。</ref>。

鹿島・香取両神宮とも、古くより朝廷からの崇敬の深い神社である。その神威の背景には、両宮が軍神として信仰されたことにある<ref name="Q5"/>。古代の関東東部には、現在の[[霞ヶ浦]]（西浦・[[北浦]]）・[[印旛沼]]・[[手賀沼]]を含む一帯に「[[香取海]]（かとりのうみ）」という[[内海]]が広がっており、両宮はその入り口を扼する地勢学的重要地に鎮座する。この香取海は[[ヤマト政権]]による[[蝦夷]]進出の輸送基地として機能したと見られており<ref name="Q5">山本博文監修『あなたの知らない千葉県の歴史』（洋泉社）Q5（pp. 26-27）。</ref>、両宮はその拠点とされ、両宮の分霊は朝廷の威を示す神として東北沿岸部の各地で祀られた（[[#香取苗裔神|香取苗裔神]]節参照）。

朝廷からの重要視を示すものとしては、次に示すような事例が挙げられる。
* [[神郡]]
*: 鹿島・香取両神宮では、それぞれ[[常陸国]][[鹿島郡 (茨城県)|鹿島郡]]・[[下総国]][[香取郡]]が神郡、すなわち郡全体を神領とすると定められていた{{Sfn|岡田|2011年|p=136}}（『[[延喜式]]』<ref name="式部上" group="原"/>に見える）。神郡を有した神社の例は少なく、いずれも軍事上・交通上の重要地であったとされる{{Sfn|岡田|2011年|p=136}}。
* 鹿島香取使
*: 両宮には、毎年朝廷から[[勅使]]として鹿島使（かしまづかい）と香取使（かとりづかい）、略して鹿島香取使の派遣があった{{Sfn|岡田|2011年|p=133}}。伊勢・近畿を除く地方の神社において、定期的な勅使派遣は両宮のほかは[[宇佐神宮]]（6年に1度）にしかなく、毎年の派遣があった鹿島・香取両宮は極めて異例であった{{Sfn|岡田|2011年|p=133}}。
* 「[[神宮]]」の呼称
*: 『[[延喜式]]』[[延喜式神名帳|神名帳]]（[[平安時代]]の[[官社]]一覧）では、「神宮」と称したのは大神宮（[[伊勢神宮]][[皇大神宮|内宮]]）・鹿島神宮・香取神宮の三社のみであった{{Sfn|岡田|2011年|p=135}}<ref group="注">平安時代以前、「神宮」の呼称使用の他例には『古事記』『日本書紀』で「[[石上神宮]]」があるが、『延喜式』神名帳では「石上坐布留御魂神社」と記される {{Harv|岡田|2011年|p=135}}。</ref>。

また[[藤原氏]]からの崇敬も強く、藤原氏の氏社として創建された[[奈良]]・[[春日大社]]では、鹿島神が第一殿、香取神が第二殿に祀られ、藤原氏の祖神たる[[天児屋命|天児屋根命]]（第三殿）よりも上位に位置づけられた。中世に武家の世に入ってからも、武神を祀る両宮は武家から信仰された。現代でも[[武術]]方面から信仰は強く、道場には「鹿島大明神」「香取大明神」と書かれた2軸の掛軸が対で掲げられることが多い。

== 歴史 ==
=== 創建 ===
社伝では、初代[[神武天皇]]18年の創建と伝える。黎明期に関しては明らかでないが、古くは『[[常陸国風土記]]』（8世紀初頭成立）<ref group="原" name="行方郡">『常陸国風土記』行方郡条（{{Harvnb|神道・神社史料集成}}参照）。</ref>にすでに「香取神子之社」として分祠の記載が見え、それ以前の鎮座は確実とされる<ref name="香取遺産"/>。

また、古代に香取神宮は[[鹿島神宮]]とともに大和朝廷による東国支配の拠点として機能したとされるため<ref name="香取遺産"/>、朝廷が拠点として両社を祀ったのが創祀と見る説がある<ref name="香取遺産"/>{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=585}}。これに対して、その前から原形となる祭祀が存在したとする説もある（[[#考証|考証]]節参照）。

=== 概史 ===
[[File:Kasuga-taisha11bs3200.jpg|thumb|200px|right|<center>[[春日大社]]（[[奈良県]][[奈良市]]）</center><small>藤原氏の氏社。その創建に際して経津主神は香取から春日へ勧請され、その第二殿に祀られた。</small>]]
[[奈良時代]]、香取社は[[藤原氏]]から[[氏神]]として鹿島社とともに強く崇敬された。[[神護景雲]]2年（[[768年]]）には[[奈良県|奈良]][[春日山 (奈良県)|御蓋山]]の地に藤原氏の氏社として春日社（現 [[春日大社]]）が創建されたといい<ref group="注">春日社創建の正確な年号は明らかではない。「神護景雲2年」は春日大社の社記に基づくもので、『日本三代実録』元慶8年8月26日条を支証とする（『国史大辞典』春日大社項）。</ref>、鹿島から武甕槌命（第一殿）、香取から経津主命（第二殿）、[[枚岡神社|枚岡]]から[[天児屋命|天児屋根命]]（第三殿）と[[比売神]]（第四殿）が勧請された<ref name="春日">稲垣栄三「春日大社」（『国史大辞典』吉川弘文館）。</ref>。その後も藤原氏との関係は深く、宝亀8年（[[777年]]）<ref group="原" name="宝亀8"/>[[藤原良継]]の病の際には「氏神」として正四位上の[[神階]]に叙されている。

[[平安時代]]以降の神階としては、[[承和 (日本)|承和]]3年（[[836年]]）<ref group="原" name="承和3"/>に正二位、承和6年（[[839年]]）<ref group="原" name="承和6"/>に従一位への昇叙の記事があり、[[元慶]]6年（[[882年]]）<ref group="原" name="元慶6"/>には正一位勲一等と見える。

[[延長 (元号)|延長]]5年（[[927年]]）成立の『[[延喜式]]』[[延喜式神名帳|神名帳]]には[[下総国]][[香取郡]]に「香取神宮 名神大 月次新嘗」と記載されて[[式内社]]（[[名神大社]]）に列しており、[[月次祭]]・[[新嘗祭]]では幣帛に預かっていた。なお、同帳で当時「[[神宮]]」の称号で記されたのは、伊勢神宮・鹿島神宮と当宮の三社のみであった。また下総国では[[一宮]]に位置づけられ、下総国内からも崇敬されたという<ref group="注">ただし、古文書に「一宮」の呼称自体は見られない {{Harv|一宮制|2000年|p=218}}。</ref>。

中世、武家の世となってからも武神として神威は維持されており、[[源頼朝]]、[[足利尊氏]]の寄進に見られるように武将からも信仰された{{Sfn|香取神宮（角）|1984年}}。一方で、[[千葉氏]]を始めとする武家による神領侵犯も度々行われていた{{Sfn|社領（国史）|1983年}}。また、この時期には常陸・下総両国の海夫（漁業従事者）・関を支配し、[[香取海]]を掌握して多くの収入を得ていた{{Sfn|香取神宮（角）|1984年}}。

千葉氏の滅亡後、代わって関東に入った[[徳川家康]]の下、[[天正]]19年（[[1591年]]）に1,000石が[[朱印地]]として与えられた{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=588}}。その後開かれた[[江戸幕府]]からも崇敬を受け、[[慶長]]12年（[[1607年]]）に大造営、[[元禄]]13年（[[1700年]]）に再度造営が行われた{{Sfn|香取神宮（角）|1984年}}。現在の本殿・楼門・旧拝殿（現・祈祷殿）は、この元禄期の造営によるものである{{Sfn|香取神宮（角）|1984年}}。

[[明治]]4年（[[1871年]]）5月14日、[[近代社格制度]]において[[官幣大社]]に列し{{Sfn|香取小史|1995年|p=69}}、[[昭和]]17年（[[1942年]]）[[勅祭社]]に定められた。戦後は[[神社本庁]]の[[別表神社]]に列している。

=== 神階 ===
<div class="thumb tright">
{| class="wikitable" style="font-size:85%;background-color:#ffffff;white-space: nowrap"
|+鹿島神・香取神の神階
!年!!鹿島神!!香取神
|-
|777年||正三位||正四位上
|-
|782年||勲五等||--
|-
|836年||従二位勲一等<br />→正二位勲一等||従三位<br />→正二位
|-
|839年||従一位勲一等||従一位
|-
|850年||正一位?<br />（正一位勲一等?）||正一位?
|-
|882年||--||正一位勲一等
|}</div>
* [[六国史]]における[[神階]]奉叙の記録
** [[宝亀]]8年（[[777年]]）7月16日、正四位上 （『[[続日本紀]]』）<ref group="原" name="宝亀8">『続日本紀』宝亀8年（777年）7月16日条（{{Harvnb|神道・神社史料集成}}参照）。</ref> - 表記は「香取神」。
** [[承和 (日本)|承和]]3年（[[836年]]）5月9日、従三位から正二位 （『[[続日本後紀]]』）<ref group="原" name="承和3">『続日本後紀』承和3年（836年）5月9日（{{Harvnb|神道・神社史料集成}}参照）。</ref> - 表記は「伊波比主命」。
** 承和6年（[[839年]]）10月29日、従一位 （『続日本後紀』）<ref group="原" name="承和6">『続日本後紀』承和6年（839年）10月29日条（{{Harvnb|神道・神社史料集成}}参照）。</ref> - 表記は「伊波比主命」。
** [[元慶]]6年（[[882年]]）12月9日、正一位勲一等 （『[[日本三代実録]]』）<ref group="原" name="元慶6">『日本三代実録』元慶6年（882年）12月9日条（{{Harvnb|神道・神社史料集成}}参照）。</ref> - 表記は「香取神社」。
* 参考：奈良・春日社（[[春日大社]]）の「伊波比主命大神」に対する叙位
** [[嘉祥]]3年（[[850年]]）9月15日、正一位 （『[[日本文徳天皇実録]]』）<ref group="原" name="嘉祥3">『日本文徳天皇実録』嘉祥3年（850年）9月15日条（{{Harvnb|神道・神社史料集成}}参照）。</ref>
**: <small>注）記事では春日社の他の祭神3柱も叙されているが、後に勧請元社の神々がこの記事の策命を継いで昇進していることから、元社と春日社は同時に叙位したとも見られている<ref name="春日平凡社">『奈良県の地名』（平凡社）春日大社項。</ref>{{Sfn|香取神宮（国史）|1983年}}。</small>

=== 神職 ===
==== 職制 ====
神宮の職制について、[[延長 (日本)|延長]]5年（[[927年]]）成立の『[[延喜式]]』<ref group="原">『延喜式』15 内蔵 鹿島香取条（{{Harvnb|神道・神社史料集成}}参照）。</ref><ref group="原">『延喜式』3 臨時祭 香取楽人装束条（{{Harvnb|神道・神社史料集成}}参照）。</ref><ref group="原">『延喜式』3 臨時祭 神宮司季禄条（{{Harvnb|神道・神社史料集成}}参照）。</ref>では、宮司1人、禰宜1人、物忌2人のほか楽人6人、舞妓8人を記し、宮司は従八位に准じるとしている{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=585}}{{Sfn|香取神宮（角）|1984年}}。

平安時代末期から中世にかけて見える神官は、大禰宜、大宮司、副祝、物申祝、行事禰宜、国行事、権禰宜、田所、案主、分飯司、大祝、検非違使使、宮介、録司代、惣検校、権之介、正検非違使、高倉目代など百数十以上に上っている{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=585}}。

明治以前の神宮祭祀の中心神官は、両社務（大宮司・大禰宜）、六官（宮之介・権禰宜・物申祝・国行事・大祝・副祝）のほか、惣検校・権之介・行事禰宜・録司代・田所・案主・高倉目代・正検非違使・権検非違使・分飯司などであった{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=585}}。

==== 祭祀氏族 ====
神宮の祭祀氏族は、古くは'''香取連'''（かとりのむらじ、香取氏）一族であったといわれる{{Sfn|香取神宮（角）|1984年}}。「香取大宮司系図」<ref>『続群書類従』第7輯ノ下所収。</ref>によれば、フツヌシ（経津主）の子にその始祖・苗益命（なえますのみこと、天苗加命）があり、[[敏達天皇]]年間（[[572年]]?-[[585年]]?）に子孫の豊佐登が「香取連」を称し、[[文武天皇]]年間（[[697年]]-[[707年]]）から香取社を奉斎し始めたという{{Sfn|香取神宮（角）|1984年}}。

このように香取氏はフツヌシの神裔を称する一族であったが{{Sfn|香取小史|1995年|p=47}}、その後同系図によれば、'''[[大中臣氏]]'''から大中臣清暢が香取連五百島の養子に入って香取大宮司を、清暢の子・秋雄が香取大禰宜を担ったという{{Sfn|香取神宮（角）|1984年}}。以後、平安時代末期までは大宮司・大禰宜とも大中臣氏が独占した{{Sfn|香取神宮（角）|1984年}}。ただし香取神宮は藤原氏の氏神であったため、その補任は中央の藤原氏に管掌されていた{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=585}}。

<div style="width: 5%; float: left; vertical-align: top; white-space: nowrap">
　
</div>
<div style="float: left; vertical-align: top; white-space: nowrap">
<div class="NavFrame" style="width:100%;">
 <div class="NavContent" style="text-align:left;font-size:85%">
'''関係略系図'''
: 系図は左から右。実線は実子、点線は養子を表す。
{{familytree/start|style="text-align:center; font-size:100%"}}
{{familytree|border=0|01|-|02|-|09|-|03|-|09|-|04|~|05|-|06| 01=[[経津主神|経津主命]]<br />　|02=天苗加命<br />（苗益命）|03=<sup>香取連</sup>豊佐登<br />　|04=五百島<br />　|05=<sup>香取大宮司</sup>清暢<br />　|06=<sup>香取大禰宜</sup>秋雄<br />　|09=（略）<br />　}}
{{familytree|border=0|||||||||||||||||||||||||01| 01=<small>養子</small>↑}}
{{familytree|border=0|||||||||||||||||01|-|09|-|02| 01=<sup>[[大中臣氏|大中臣]][[朝臣]]</sup>[[大中臣清麻呂|清麻呂]]<br />　|02=清暢<br />　|09=（略）<br />　}}
{{familytree/end}}
</div>
</div>
</div><br style="clear: both"/>

[[康治]]元年（[[1142年]]）に鹿島神宮大宮司・中臣氏一族から香取神宮大宮司への任命があって以降は、香取大中臣氏と鹿島中臣氏とが香取の大宮司職を巡って対立を見せた{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=585}}。両氏は鎌倉幕府や摂関家に働きかけて抗争し、最終的に[[寛喜]]年間（[[1229年]]-[[1232年]]）頃に大中臣氏側が勝利した{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=585}}。

この頃から藤原氏の影響も薄れ、大中臣氏一族の内部で大宮司・大禰宜職や社領を巡っての抗争が展開された{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=585}}。この抗争も[[応安]]7年（[[1374年]]）頃に終息に至り、鎌倉末期・室町期は大禰宜家が主導権を握って安定化した{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=586}}。その後、近世には江戸幕府の統制下に入ったが、抗争は繰り返されていたことが散見される{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=586}}。

=== 社領 ===
『[[延喜式]]』<ref name="式部上" group="原">『延喜式』18 式部上 郡司条（{{Harvnb|神道・神社史料集成}}参照）。</ref>によれば、神宮の鎮座する[[下総国]][[香取郡]]は[[神郡]]、すなわち郡全体が神宮の神領に指定されていた。『[[常陸国風土記]]』<ref group="原">『常陸国風土記』香島郡条。</ref>には、鹿島神宮の鎮座する[[常陸国]][[鹿島郡 (茨城県)|鹿島郡]]（香島郡）が[[大化]]5年（[[649年]]）に神郡として建郡されたとあり、香取郡も同様に建郡されたものと推測されている{{Sfn|香取郡（平）|1996年}}{{Sfn|香取郡（角）|1984年}}。

[[大同 (日本)|大同]]元年（[[806年]]）<ref group="原">『新抄格勅符抄』10 神事諸家封戸 大同元年（806年）牒（{{Harvnb|神道・神社史料集成}}参照）。</ref>には神宮の封戸は70戸であった{{Sfn|社領（国史）|1983年}}。11世紀には藤原氏からの封戸寄進の記事も見える{{Sfn|社領（国史）|1983年}}。

[[中世]]には、神官同士の争いや[[千葉氏]]に代表される武家からの神領侵犯があり、訴訟も頻繁に行われた{{Sfn|社領（国史）|1983年}}。また、中世に始まる特殊収入として「海夫（かいふ）」、すなわち香取海の漁業従事者からの供祭料があった。

千葉氏の滅亡後、代わって関東に入った[[徳川家康]]の下で[[天正]]19年（[[1591年]]）に[[検地]]が行われた{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=588}}。その結果社領は大幅に削減され、同年に1,000石が[[朱印地]]として与えられた{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=588}}。元禄期の史料では、神宮領900石、大戸社領100石、神宮寺領20石であったという{{Sfn|社領（国史）|1983年}}。

=== 社殿造営 ===
『[[日本後紀]]』<ref group="原">『日本後紀』弘仁3年（812年6月5日条（{{Harvnb|神道・神社史料集成}}参照）。</ref>『[[日本三代実録]]』<ref group="原" name="元慶6"/>『[[延喜式]]』<ref group="原">『延喜式』3 臨時祭 神社修理条（{{Harvnb|神道・神社史料集成}}参照）。</ref>によれば、[[弘仁]]3年（[[812年]]）以前から、香取神宮には20年に1度の式年造営（[[式年遷宮]]）が定められていた。

平安時代末期からの造替年次は、[[保延]]3年（[[1137年]]）、[[久寿]]2年（[[1155年]]）、[[治承]]元年（[[1177年]]）、[[建久]]4年（[[1193年]]：大風のため）、建久8年（[[1197年]]）、[[承久]]元年（[[1219年]]：戦乱のため[[嘉禄]]3年（[[1227年]]）に延期）、[[宝治]]3年（[[1249年]]）、[[文永]]8年（[[1271年]]）、[[正応]]5年（[[1292年]]）、[[元徳]]2年（[[1330年]]）、[[貞治]]年間（[[1362年]]-[[1367年]]）頃、[[至徳 (日本)|至徳]]2年（[[1385年]]）頃、[[応永]]5年（[[1398年]]）、[[永享]]2年（[[1430年]]）、[[享禄]]2年（[[1529年]]）頃、[[元亀]]3年（[[1572年]]）に確認される{{Sfn|香取神宮（角）|1984年}}。このほか、[[正和]]5年（[[1316年]]）、応永31年（[[1424年]]）、[[文明 (日本)|文明]]15年（[[1483年]]）、[[明応]]元年（[[1492年]]）にも造営があったとする史料もある{{Sfn|香取神宮（角）|1984年}}。このように鎌倉時代にはほぼ20年に1度の造替が守られているが、南北朝時代以降はそれが困難となっていった様子がわかり、その時期は史料もあまり残っていない{{Sfn|香取神宮（角）|1984年}}。

江戸時代には、幕府によって[[慶長]]12年（[[1607年]]）に大造営が行われた{{Sfn|香取神宮（角）|1984年}}。[[元禄]]13年（[[1700年]]）に再度造営が行われ、この時の本殿始め主要社殿が現在に伝わっている{{Sfn|香取神宮（角）|1984年}}。

なお現在の本殿の形式は、「アサメ殿（あさめどの）<ref name="アサメ" group="注">「アサメ」の字は「女偏に盛」。</ref>」の形式を伝えるものとされる<ref name="ふさ"/>{{Sfn|三浦|1986年}}。アサメ殿とは神宮にかつて存在した社殿で、普段は[[イワサク・ネサク|磐裂神・根裂神]]（経津主神の祖父母神）を祀る末社で、正神殿（本殿）の式年遷宮の際にその仮殿（かりどの：神体を仮安置する社殿）として使用されていた{{Sfn|三浦|1986年}}。その間には、磐裂神・根裂神の安置のために仮アサメ殿も設定されたという{{Sfn|三浦|1986年}}。正神殿は鎌倉時代の元徳2年（1330年）造営のものを最後として造られなくなったと見られており、以後の本殿はこのアサメ殿の形式を継承したと考えられている{{Sfn|三浦|1986年}}。鎌倉時代における正神殿に関しては、古文書から「桁行五間・梁間二間の切妻造平入の身舎で背面一間通りに庇を有する建物」と推定されており、式年造替の存在から、この形式は平安時代前期に遡るものであろうと推測されている{{Sfn|三浦|1986年}}。

== 境内 ==
神宮の鎮座する丘は、中央が低く周囲が高いという形状から「'''亀甲山'''（かめがせやま）」と称されている{{Sfn|香取小史|1995年|p=50}}。

神宮境内は神域とされ手付かずの自然が残されているため、多数のスギの巨木や、イヌマキ・モミ・クロマツの大木が生育している<ref name="ふさ"/>。[[高木層]]のみでなく亜高木層・低木層・林床にも多数の草木が生育しており、スギの老令林としては県内でも有数なものであるとして、県の天然記念物に指定されている<ref name="ふさ"/>。

=== 社殿 ===
[[File:Katori-jingu honden.JPG|thumb|200px|right|<center>本殿（重要文化財）</center><small>北東方より。向かって左奥は拝殿。</small>]]
[[File:Katori-jingu romon.JPG|thumb|200px|right|<center>楼門（重要文化財）</center>]]
[[File:Katori-jingu kyuhaiden.JPG|thumb|200px|right|<center>祈祷殿（旧拝殿、県指定文化財）</center>]]
現在の主な社殿は、[[江戸時代]]の[[元禄]]13年（[[1700年]]）、江戸幕府5代将軍・[[徳川綱吉]]の命により造営されたものである。この時に本殿・拝殿・楼門が整えられたが、うち拝殿は昭和11年（[[1936年]]）から昭和15年（[[1940年]]）の大修築に伴って改築がなされ、現在は祈祷殿として使用されている。この昭和の大修築では、幣殿・神饌所も造営された。主要社殿の形式は、大修築前後とも本殿・幣殿・拝殿が連なった'''[[権現造]]'''である。上記のうち本殿・楼門は国の重要文化財に、旧拝殿（祈祷殿）は県の文化財に指定されており、現拝殿は国の登録有形文化財に登録されている。

'''本殿'''は、元禄13年（1700年）の造営。三間社[[流造]]、[[檜皮葺]]で、南面している。この形式の社殿としては最大級の規模である<ref name="ふさ"/>。前面の庇（ひさし）部分を室内に取り込んでおり、背面にも短い庇を有している<ref name="ふさ"/>。重要文化財指定時の名称では「流造」と記されているが、背面に庇を有することから両流造の一種とする見方もある{{Sfn|三浦|1986年}}。壁や柱は黒漆塗で、黒を基調とした特徴的な外観である。屋根は現在檜皮葺であるが、かつては柿葺であったとされる<ref name="ふさ">[http://wwwp.pref.chiba.lg.jp/pbbunkazai/ ふさの国文化財ナビゲーション]（千葉県教育委員会）。</ref>。様式は[[近世]]前期を象徴するもので、桃山様式が各部に見られる一方、慶長期の手法も取り入れられている<ref name="ふさ"/>。昭和の大修築に際しては、本殿にも大規模な修繕が行われた{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=589}}。この本殿に関しては、かつて神宮に存在した「アサメ殿（あさめどの）<ref name="アサメ" group="注"/>」という社殿を継承すると見られているほか（詳細は[[#社殿造営|社殿造営]]節参照）、通常の両流造では本殿内の神座が身舎（大梁の架かる建築構造上の主体部）に設けられるのに対して、背面庇（身舎の周囲に取り付く部分）にあるという異例の形式が指摘される{{Sfn|三浦|1986年}}（下図参照）。

'''拝殿'''・'''幣殿'''・'''神饌所'''は、昭和の大修築による造営。木造平屋建てで、檜皮葺である<ref name="国指定">[http://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/index.asp 国指定文化財等データベース]。</ref>。本殿正面から幣殿・拝殿と接続し、権現造の形式をとっている<ref name="ふさ"/>。また、拝殿正面には千鳥破風が設けられている<ref name="ふさ"/>。それまでの拝殿（旧拝殿）は丹塗であったが、この造営において軸部には黒漆塗、組物・蟇股には極彩色が施され、本殿に釣り合った体裁に改められた<ref name="ふさ"/>。

'''楼門'''は、元禄13年（1700年）の造営。三間一戸で、入母屋造。屋根は現在銅板葺であるが、当初は[[こけら葺|栩葺]]（とちぶき）であった<ref name="宝物">[http://www.katori-jingu.or.jp/houmotu.htm 宝物・文化財]（公式サイト）。</ref>。純和様の様式であり、壁や柱は丹塗である。楼門内にある随身像は俗に「左大臣・右大臣」と称されるが、正面向かって右像は[[武内宿禰]]、左像は[[藤原鎌足]]と伝えられている<ref name="宝物"/>。また、楼上の額は[[東郷平八郎]]の筆である<ref name="宝物"/>。この楼門は、神宮のシンボル的な建物に位置づけられている<ref name="宝物"/>。

'''祈祷殿'''（'''旧拝殿'''）は、元禄13年（1700年）の造営。拝殿として造営・使用されていたが、昭和の大修築に伴って南東に移築され、昭和59年（[[1984年]]）にさらに西へ1.5メートルほど移動された<ref name="ふさ"/>。間口五間、奥行三間で、入母屋造である<ref name="ふさ"/>。屋根は現在銅板葺であるが、当初は栩葺（とちぶき）で昭和40年（1965年）に改められた<ref name="ふさ"/>。壁や柱は丹塗である。拝殿としては比較的大規模なもので、彫刻等の随所に造営時の様式が示されている<ref name="ふさ"/>。

上記のほか、神庫は明治42年（[[1909年]]）の造営で、木造の[[校倉造]]（市指定文化財）{{Sfn|香取小史|1995年|p=56}}。神徳館は昭和36年（[[1961年]]）の造営で、旧大宮司邸跡に立つ{{Sfn|香取小史|1995年|p=56}}。その門（勅使門）は旧大宮司邸の表門の転用で、[[天明]]元年（[[1781年]]）の造営、茅葺（市指定文化財）{{Sfn|香取小史|1995年|p=55}}。また、北東に立つ香雲閣（かうんかく）は、明治29年（[[1896年]]）の造営（国の登録有形文化財）{{Sfn|香取小史|1995年|p=54}}。

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ファイル:香取神宮 本殿内陣.png|本殿平面図
File:Katori-jingu haiden.JPG|拝殿（国の登録有形文化財）
File:Katori-jingu shinko.JPG|神庫（市指定文化財）
File:Katori-jingu shinmon.JPG|総門
File:Shintokukan omotemon (Katori-jingu).JPG|神徳館表門（市指定文化財）
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=== 要石 ===
[[File:Katori-jingu kanameishi.JPG|thumb|200px|right|<center>[[要石]]の祠</center>]]
'''[[要石]]'''（かなめいし）は、境内西方に位置する霊石。形状は凸型。

かつて、地震は地中に棲む[[大鯰]]（おおなまず）が起こすものと考えられていた。要石はその大鯰を押さえつける地震からの守り神として現在にも伝わっている。鹿島・香取の要石は大鯰の頭と尾を抑える杭と言われ、見た目は小さいが地中部分は大きく決して抜くことはできないと言い伝えられている。[[貞享]]元年（[[1684年]]）に[[徳川光圀]]が神宮を参拝した際、要石の周りを掘らせたが根元には届かなかったという{{Sfn|香取小史|1995年|p=63}}。なお、[[鹿島神宮]]には凹型の要石があり、同様の説話が伝えられる。

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File:Kaname-ishi-stone,katori-jingu,katori-city.japan.JPG|要石の形状
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=== その他 ===
[[File:Katori-jingu sannotorii.JPG|thumb|200px|right|<center>三の鳥居</center>]]
* 御神木 - 拝殿前に立つ大杉で、樹齢は1,000年といわれる{{Sfn|香取小史|1995年|p=52}}。
* 斥候杉 （ものみのすぎ） - [[源頼義]]が斥候に登らせたという杉（非現存）{{Sfn|香取小史|1995年|p=52}}。
* 三本杉 - 源頼義の祈願により三又に分かれたという杉（一本は枯死）{{Sfn|香取小史|1995年|p=52}}。
* 木母杉 - 楼門左に立つ。徳川光圀が貞享元年（1684年）に参拝した時に、境内に立つ多数の杉の母であろうとして名付けられた（現在は枯死）{{Sfn|香取小史|1995年|p=50}}。
* 黄門桜 - 徳川光圀が貞享元年（1684年）に参拝した時の手植えと伝えられる桜（現在はその[[蘖|ひこばえ]]が成長したもの）{{Sfn|香取小史|1995年|p=51}}。
* 大正天皇手植松 - [[大正天皇]]が明治44年（[[1911年]]）5月21日に参拝した時の手植えの松{{Sfn|香取小史|1995年|p=51}}。
* 常陸宮手植松 - [[常陸宮正仁親王]]が昭和41年（[[1966年]]）4月7日に参拝した時の手植えの松{{Sfn|香取小史|1995年|p=53}}。
* [[海上自衛隊]][[練習艦]][[かとり (練習艦)|かとり]]の錨
* 神池
* 桜馬場（鹿苑）
* 雨乞塚 - 奥宮付近。天平4年（[[732年]]）の旱魃の際、壇を設けて雨乞いを行なった跡という{{Sfn|香取小史|1995年|p=62}}。

== 参道 ==
神宮へは参道が2つあり、それぞれに鳥居が設けられている。

表参道は旧佐原市中心部から続く参道で、現在の[[千葉県道55号佐原山田線|県道55号]]にあたる。[[千葉県道56号佐原椿海線|県道56号]]との交差点近くに一の鳥居が立っている（{{ウィキ座標|35|53|15.71|N|140|30|41.09|E|region:JP-12_type:landmark|位置|name=一の鳥居}}）。一の鳥居から二の鳥居までは道なりに約1.6km。

もう一つの参道は香取市津宮に始まる。この参道の起点は利根川岸で、川に向かって浜鳥居が立っている（{{ウィキ座標|35|54|05.82|N|140|31|34.12|E|region:JP-12_type:landmark|位置|name=津宮浜鳥居}}）。鳥居は祭神がここから上陸したことに由来すると伝えられ、この鳥居からの道がかつての表参道であった{{Sfn|香取小史|1995年|p=57}}。『[[小右記]]』[[治安 (元号)|治安]]3年（[[1023年]]）の条<ref group="原">『小右記』治安3年（1023年）9月6日条。</ref>によれば、鹿島使（朝廷からの[[奉幣|奉幣使]]）が鹿島神宮を出て「渡海参香取宮」とあり、香取神宮へは海を渡っての奉幣が定例であったとされる{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=584}}。現在も式年神幸祭では、ここから神輿をのせた御座船が出発する{{Sfn|香取小史|1995年|p=57}}。また鳥居の近くには、往時の舟運繁栄の名残である常夜燈（市指定文化財）や<ref>[http://www.city.katori.lg.jp/05sightseeing/kyouiku/bunkazai/b05d.html#Vol-040 Vol-040 津宮河岸の常夜燈]（香取市ホームページ「香取遺産」）。</ref>、[[与謝野晶子]]歌碑がある。二の鳥居までは道なりに約2.5km。途中には境外摂末社の忍男神社、膽男神社、沖宮が鎮座する。

また参道の終点の神宮側では、現在は二の鳥居から楼門へと参道が続くが、古くは楼門前を直角に曲がり西の奥宮前へと続く道が表参道であった<ref name="香取遺産">[http://www.city.katori.lg.jp/05sightseeing/kyouiku/bunkazai/b05a.html#Vol-001 Vol-001 下総国の一宮 香取神宮]（香取市ホームページ「香取遺産」）。</ref>。

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File:Katori-jingu ichinotorii.JPG|一の鳥居（表参道）
File:Katori-jingu tsunomiya-torii.JPG|津宮浜鳥居（[[利根川]]河岸）
File:Joyatou (Tsunomiya, Katori).JPG|津宮河岸の常夜燈（市指定文化財）
</gallery>

== 摂末社 ==
摂末社は、摂社9社（境内3社、境外6社）・末社21社（境内7社、境外14社）の計30社<ref>摂末社は『新修 香取神宮小史』pp. 35-40による。</ref>。

=== 摂社 ===
{{座標一覧|節=摂社}}
摂社は、明治10年（[[1877年]]）3月21日に[[内務省 (日本)|内務省]]の通達によって公式に定められた{{Sfn|香取小史|1995年|p=37}}。

[[File:Kashimashingu-sha (Katori-jingu).JPG|thumb|170px|right|<center>鹿島新宮社</center>]]
; 鹿島新宮社
:* 祭神：[[タケミカヅチ|武甕槌大神]]（たけみかづちのおおかみ）、[[天香山命|天隠山命]]（あまのかくやまのみこと）
:* 例祭：[[11月9日]]
: 「かしましんぐうしゃ」。本殿の向かって右後方に鎮座する境内社（{{ウィキ座標|35|53|11.71|N|140|31|44.49|E|region:JP-12_type:landmark|位置|name=境内摂社：鹿島新宮社}}）。武甕槌神は、[[鹿島神宮]]の祭神。

[[File:Sosa-jinja (Katori-jingu).JPG|thumb|170px|right|<center>匝瑳神社</center>]]
; 匝瑳神社
:* 祭神：[[イワツツノオ|磐筒男神]]（いわつつおのかみ）、磐筒女神（いわつつめのかみ）
:* 例祭：[[11月10日]]
: 「そうさじんじゃ」。本殿の向かって左方に鎮座する境内社（{{ウィキ座標|35|53|10.57|N|140|31|42.12|E|region:JP-12_type:landmark|位置|name=境内摂社：匝瑳神社}}）。祭神2柱は、経津主神の父母神。

[[File:Sobataka-jinja (Okura, Katori) haiden.JPG|thumb|170px|right|<center>[[側高神社 (香取市大倉)|側高神社]]</center><small>香取神宮の第一摂社。</small>]]
; [[側高神社 (香取市大倉)|側高神社]]
:* 鎮座地：香取市大倉（{{ウィキ座標|35|53|42.38|N|140|33|13.08|E|region:JP-12_type:landmark|位置|name=境外摂社：側高神社（第一摂社）}}）
:* 祭神：不詳
:* 例祭：[[12月7日]]
: 「そばたかじんじゃ」。旧[[郷社]]。古来「第一摂社」と称される関係の深い神社であり、本宮同様に神武天皇18年の創建と伝える{{Sfn|香取小史|1995年|p=35}}<ref>[http://www.city.katori.lg.jp/05sightseeing/kyouiku/bunkazai/b05h.html#Vol-073 Vol-073 側高神社]（香取市ホームページ「香取遺産」）。</ref>。祭神は古来神秘とされており、今なお明らかではない{{Sfn|香取小史|1995年|p=35}}。当社には、香取神の命で側高神が陸奥神から馬を奪って馬牧をなしたという伝承が残り、蝦夷征討との関係性や香取神宮の役割が指摘される<ref name="図説">『図説千葉県の歴史』（河出書房新社）p. 73-75。</ref>。本殿は江戸時代初期の造営で県の文化財に、ひげなで祭は市の無形民俗文化財に指定されている。

; 奥宮
:* 鎮座地：香取市香取（{{ウィキ座標|35|53|03.51|N|140|31|35.37|E|region:JP-12_type:landmark|位置|name=境外摂社：奥宮}}）
:* 祭神：経津主神の[[荒魂|荒御魂]]（あらみたま）
:* 例祭：[[3月10日]]
: 「おくのおみや<!--公式サイトの境内案内に準拠-->」。境内西方に鎮座する。社殿は昭和48年（[[1973年]]）の[[伊勢神宮]][[遷宮]]の際の古材を使用している{{Sfn|香取小史|1995年|p=37}}。

; 又見神社
:* 鎮座地：香取市香取（{{ウィキ座標|35|53|10.80|N|140|31|20.83|E|region:JP-12_type:landmark|位置|name=境外摂社：又見神社}}）
:* 祭神：[[天苗加命]]（あめのなえますのみこと）、武沼井命（たけぬいのみこと）、天押雲命（あめのおしくものみこと）
:* 例祭：[[2月20日]]
: 「またみじんじゃ」。祭神の天苗加命は経津主神の御子神で、香取氏の祖神とされる。そのため「若御子神社」ともいう{{Sfn|香取小史|1995年|p=5}}。武沼井命は鹿島神の御子神、天押雲命は天児屋根命の御子神。本殿右横には古墳の石室が露出して残っており、「又見古墳」として市の史跡に指定されている。

; 忍男神社
:* 鎮座地：香取市津宮（{{ウィキ座標|35|53|54.33|N|140|31|36.81|E|region:JP-12_type:landmark|位置|name=境外摂社：忍男神社}}）
:* 祭神：[[イザナギ|伊邪那岐命]]（いざなぎのみこと）
: 「おしおじんじゃ」。「東の宮」とも{{Sfn|香取小史|1995年|p=36}}。膽男神社の東方傍に鎮座する。古くはここで夏越の祓を行なったという{{Sfn|香取小史|1995年|p=36}}。当社では明治17年（[[1884年]]）まで、「白状祭」として陸奥で捕らえた馬の素性を白状に記すという祭が行われていたといい、側高神社の伝承同様、蝦夷追討との関係が示唆される<ref name="図説"/>。

; 膽男神社
:* 鎮座地：香取市津宮（{{ウィキ座標|35|53|52.95|N|140|31|30.78|E|region:JP-12_type:landmark|位置|name=境外摂社：膽男神社}}）
:* 祭神：[[大国主|大名持命]]（おおなむちのみこと）
: 「まもりおじんじゃ」。「西の宮」とも{{Sfn|香取小史|1995年|p=36}}。忍男神社の西方傍に鎮座する。

; [[大戸神社]]
:* 鎮座地：香取市大戸（{{ウィキ座標|35|53|02.81|N|140|27|45.10|E|region:JP-12_type:landmark|位置|name=境外摂社：大戸神社}}）
:* 祭神：[[アメノタヂカラオ|天手力男神]]（あめのたじからおのかみ）
:* 例祭：[[4月7日]]
: 「おおどじんじゃ」。旧[[県社]]。[[景行天皇]]40年の創建と伝える<ref>[http://www.city.katori.lg.jp/05sightseeing/kyouiku/bunkazai/b05i.html#Vol-085 Vol-085 大戸神社]（香取市ホームページ「香取遺産」）。</ref>。羅龍王面・納曽利面3面、和鏡3面が県の文化財に指定されている。

; 返田神社
:* 鎮座地：香取市返田（{{ウィキ座標|35|51|45.46|N|140|30|59.96|E|region:JP-12|位置|name=境外摂社：返田神社}}）
:* 祭神：[[カグツチ|軻遇突智神]]（かぐつちのかみ）、[[ハニヤス|埴安姫神]]（はにやすひめのかみ）
: 「かやだじんじゃ」。旧[[村社]]。本宮同様に神武天皇18年の創建と伝えるほか<ref>『千葉県の地名』（平凡社）返田神社項。</ref>、鎌倉時代の古文書には「返田悪王子社」の名が見える<ref name="返田">[http://www.city.katori.lg.jp/05sightseeing/kyouiku/bunkazai/b05c.html#Vol-028 Vol-028　返田神社本殿]（香取市ホームページ「香取遺産」）。</ref>。境内には諸国一宮を祀った石祠が並ぶ<ref name="返田"/>。本殿は江戸時代の造営で県の文化財に指定されている。

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File:Okumiya (Katori-jingu).JPG|奥宮
File:Matami-jinja (Katori-jingu).JPG|又見神社<br /><small>右に又見古墳石室（市指定史跡）。</small>
File:Oshio-jinja (Katori-jingu).JPG|忍男神社
File:Mamorio-jinja (Katori-jingu).JPG|膽男神社
File:Oto-shrine,katori-city,japan.JPG|[[大戸神社]]
File:Kayada-jinja (Katori) haiden.JPG|返田神社
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=== 末社 ===
{{座標一覧|節=末社}}
'''境内社'''
* 天降神社 （あまくだりじんじゃ） - 祭神：伊伎志爾保神、鑰守神。市神社に合祀。
* 諏訪神社 （すわじんじゃ） - 祭神：[[建御名方神]]。例祭：[[4月12日]]。
* 六所神社 （ろくしょじんじゃ） - 祭神：[[スサノオ|須佐之男命]]、[[大国主|大国主命]]、[[岐の神|岐神]]、[[雷神]]二座。例祭：[[9月11日]]。
* 花薗神社 （はなぞのじんじゃ） - 祭神：靇神。六所神社に合祀。
* 馬場殿神社 （ばばどのじんじゃ） - 祭神：[[スサノオ|建速須佐之命]]。例祭：[[8月1日]]。
* 櫻大刀自神社 （さくらおおとじじんじゃ） - 祭神：[[コノハナサクヤビメ|木花咲耶姫命]]。例祭：[[11月4日]]。
* 市神社 （いちがみしゃ） - 祭神：[[事代主|事代主神]]。例祭：[[8月16日]]。

'''境外社'''
* 押手神社 （おしてじんじゃ、香取市香取、{{ウィキ座標|35|53|04.86|N|140|31|39.16|E|region:JP-12_type:landmark|位置|name=境外末社：押手神社}}） - 祭神：[[ウカノミタマ|宇迦之御魂神]]。例祭：[[2月4日]]。
* 姥山神社 （うばやまじんじゃ、香取市香取、{{ウィキ座標|35|53|01.06|N|140|31|50.11|E|region:JP-12_type:landmark|位置|name=境外末社：姥山神社}}） - 祭神：[[一言主|一言主命]]。例祭：[[2月20日]]前後の日曜。
* 佐山神社 （さやまじんじゃ、香取市香取、{{ウィキ座標|35|53|06.42|N|140|31|47.75|E|region:JP-12_type:landmark|位置|name=境外末社：佐山神社}}）- 祭神：[[タキリビメ|田心姫神]]。例祭：[[2月23日]]。
* 狐坐山神社 （こざやまじんじゃ、香取市香取、{{ウィキ座標|35|53|05.90|N|140|31|51.86|E|region:JP-12_type:landmark|位置|name=境外末社：狐坐山神社}}） - 祭神：命婦神。例祭：[[1月12日]]。
* 王子神社 （おうじじんじゃ、香取市香取、{{ウィキ座標|35|52|55.06|N|140|31|34.47|E|region:JP-12_type:landmark|位置|name=境外末社：王子神社}}） - 祭神：経津主神の御子神。例祭：[[9月11日]]。
* 沖宮 （おきのみや、香取市津宮、{{ウィキ座標|35|53|55.72|N|140|31|37.12|E|region:JP-12_type:landmark|位置|name=境外末社：沖宮}}） - 祭神：[[ワタツミ|綿津見命]]。
* 龍田神社 （たつたじんじゃ） - 祭神：級津彦神、級津姫神、[[ウカノミタマ|倉稲魂神]]。
* 璽神社 （おしでじんじゃ、香取市香取） - 例祭：[[1月4日]]。
* 裂々神社 （さくさくじんじゃ、香取市香取） - 祭神：[[イワサク・ネサク|磐裂神]]、[[イワサク・ネサク|根裂神]]。
*: 祭神2柱は[[イワツツノオ|磐筒男神]]・磐筒女神（経津主神の親神）の親神とされる。
* 日神社 （香取市香取） - 祭神：[[天照大神|天照大御神]]。
* 月神社 （香取市香取） - 祭神：[[ツクヨミ|月豫見命]]。
* 大山祇神社 （おおやまづみじんじゃ、香取市香取） - 祭神：[[オオヤマツミ|大山祇命]]。例祭：[[1月8日]]。
* 三島神社 （みしまじんじゃ、香取市香取、{{ウィキ座標|35|53|10.65|N|140|31|20.64|E|region:JP-12_type:landmark|位置|name=境外末社：三島神社}}） - 祭神：香取連三島命。例祭：12月18日。又見神社境内に鎮座。
* 護国神社 （ごこくじんじゃ、香取市香取、{{ウィキ座標|35|53|03.93|N|140|31|39.55|E|region:JP-12_type:landmark|位置|name=境外末社：護国神社}}） - 例祭：春の彼岸・秋の彼岸。
*: 昭和21年9月創建。明治以降の国難で殉じた香取郡出身者を祀る。

<gallery>
File:Ichigami-sha & Amakudari-jinja, Babadono-jinja (Katori-jingu).JPG|天降神社・市神社（左）、馬場殿神社（右）
File:Suwa-jinja (Katori-jingu).JPG|諏訪神社
File:Sakuraotoji-jinja (Katori-jingu).JPG|櫻大刀自神社
File:Oshide-jinja (Katori-jingu).JPG|押手神社
File:Okinomiya (Katori-jingu).JPG|沖宮
File:Mishima-jinja (Katori-jingu).JPG|三島神社
File:Gokoku-jinja (Katori-jingu).JPG|護国神社
</gallery>

=== 元摂末社 ===
次の5社は、現在は神宮と摂末社の関係にないが、古文書にその旨が見える{{Sfn|香取小史|1995年|p=39-40}}。
* [[神崎神社]] （こうざきじんじゃ、香取郡神崎町）
* 高房神社 （たかふさじんじゃ、香取市山田）
* 切手神社 （香取市大根）
* [[東大社]] （香取郡東庄町宮本）
* [[木内大神 (香取市)|木内神社]] （香取市木内）

== 祭事 ==
=== 式年祭 ===
[[File:Jinko Festival,Tsunomiya,Katori Jingu Shrine,Katori-city,Japan.JPG|thumb|200px|right|<center>式年神幸祭（2014年）</center>]]
式年大祭として、'''式年神幸祭'''（しきねんじんこうさい）が12年に1度の[[午年]]に行われる。境内前までの神幸祭は毎年4月15日に行われているが、式年大祭では4月15日・16日の両日に大規模に行われる。古くは「軍神祭」「軍陣祭」とも称された{{Sfn|香取軍神祭（国史）|1983年}}。

この祭は、経津主神による東国平定の様子を模したものといわれる{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=589}}。元は「式年遷宮大祭」の名で、20年に1度の式年造営に伴って行われたという{{Sfn|香取小史|1995年|p=26}}。しかしながら式年造営と同じく[[応仁の乱]]の頃に衰え、[[永禄]]11年（[[1568年]]）を最後として明治まで絶えていた{{Sfn|香取軍神祭（国史）|1983年}}。その後、明治8年（[[1875年]]）に復興され毎年執行されていたが、明治15年（[[1882年]]）以降は午年毎の執行と定められ、現在に至っている{{Sfn|香取軍神祭（国史）|1983年}}。

祭事の流れは次の通り{{Sfn|香取小史|1995年|p=26}}。
* 15日：神輿を中心とした神幸列が神宮を発し津宮に到着。利根川岸で神輿は御座船に移され、船上祭を催行。次いで鹿島神宮による御迎祭。利根川を遡って佐原河口に上陸したのち、[[御旅所]]で一宿。
* 16日：神幸列が市内を巡り、神宮へ陸路を還御。

=== 年間祭事 ===
<div class="NavFrame" style="width:100%;">
 <div class="NavHead" style="padding:1.5px; line-height:1.7; letter-spacing:1px;">香取神宮 年間祭事一覧</div>
 <div class="NavContent" style="text-align:left;">
* 毎月
** 朔日祭 （2月-11月の1日）
** 月次祭並献詠祭 （2月、3月、5月-12月の14日）
** 摂末社月次祭 （1月-12月の21日）

* 1月
** 歳旦祭並御日供始祭 （[[1月1日]]） - 中祭
** [[元始祭]] （[[1月3日]]） - 中祭
** 末社璽神社例祭 （[[1月4日]]）
** 政治始祭 （1月4日 日時変更あり）
** [[昭和天皇]]祭遙拝式 （[[1月7日]]）
** 交通安全祈願祭 （1月7日 日時変更あり）
** 末社大山祗神社例祭 （[[1月8日]]）
** 成人の日祭 （第2月曜日）
** 町村自治祈願祭 （[[1月11日]] 日時変更あり）
** 醸造安全祈願祭 （[[1月12日]] 日時変更あり）
** 末社狐座山神社例祭 （1月12日）
** 月次祭並献詠祭披講式 （[[1月14日]]）
** 星鎮祭 （[[1月16日]]）

* 2月
** 節分祭 （[[2月3日]]）
** 末社押手神社例祭 （[[2月4日]]）
** 紀元祭 （[[2月11日]]） - 中祭
** '''祈年祭''' （[[2月17日]]） - 大祭
** 末社姥山神社例祭 （20日前後の日曜日）
** 摂社又見神社春祭 （[[2月20日]]）
** 末社佐山神社例祭 （[[2月23日]]）

* 3月
** 摂社奥宮例祭 （[[3月10日]]）
** 香取護国神社春季大祭 （[[彼岸]]の入り）
** 春季皇霊祭遙拝式並 （[[春分の日]]）
** 春分の日祭 （春分の日）

* 4月
** 農業振興祈願祭 （第1土曜日）
** '''[[御田植祭]]耕田式''' （第1土曜日） - 大祭。[[香取神宮御田植祭]]参照。
** 神武天皇祭遙拝式 （[[4月3日]]）
** 崇敬会大祭 （第1土曜に続く日曜日）
** '''御田植祭田植式''' （第1土曜に続く日曜日） - 大祭
** 山口祭 （[[4月11日]]）
** 末社諏訪神社例祭 （[[4月12日]]）
** '''例祭''' （[[4月14日]]） - 大祭
** '''神幸祭''' （[[4月15日]]） - 大祭
** みどりの日祭 （[[4月29日]]）

* 5月
** 健児祭 （[[5月5日]]）

* 6月
** [[大祓]]式 （[[6月30日]]）

* 7月
** 朔日祭並御日供講祈願祭 （[[7月1日]]）

* 8月
** 末社馬場殿神社例祭 （8月1日）
** 末社市神社例祭 （[[8月16日]]）

* 9月
** 末社王子神社例祭 （[[9月11日]]）
** 末社六所神社例祭 （9月11日）
** 敬老の日祭 （[[9月19日]]）
** 秋季皇霊祭遙拝式並 （[[秋分の日]]）
** 秋分の日祭 （秋分の日）
** 香取護国神社秋季大祭 （彼岸の明け）

* 10月
** 体育の日祭（第二月曜日）
** 神嘗祭当日祭遙拝式並（[[10月17日]]） - 中祭
** 新飯神事祭（10月17日）

* 11月
** 明治祭 （[[11月3日]]） - 中祭
** 末社櫻大刀自神社例祭 （[[11月4日]]）
** 摂社鹿島新宮例祭 （[[11月9日]]）
** 摂社匝瑳神社例祭 （[[11月10日]]）
** 月次祭並奉納菊花奉告祭 （[[11月14日]]）
** '''[[新嘗祭]]''' （[[11月23日]]） - 大祭
** 新穀感謝祭 （[[11月24日]]）
** 大饗祭 （[[11月30日]]） - 中祭

* 12月
** 賀詞祭 （[[12月1日]]） - 中祭
** 内陣神楽 （[[12月4日]]） - 中祭
** 団碁祭（だんきさい） （[[12月7日]]） - 中祭
** 摂社又見神社例祭 （[[12月18日]]）
** 末社三島神社例祭 （12月18日）
** [[天長祭]] （[[12月23日]]） - 中祭
** 大祓式 （[[12月31日]]）
** 除夜祭 （12月31日）
** 神符守札遷霊祭 （12月31日）
** 古神札焼納祭 （12月31日）
</div>
</div>

[[File:Rice-transplanting Festival in Katori-jingu 1,katori-city,japan.jpg|thumb|180px|right|<center>[[香取神宮御田植祭|御田植祭]]</center>]]
; [[香取神宮御田植祭|御田植祭]]
: 「おたうえさい」。4月第1土曜・日曜に行われる。1日目は耕田式、2日目には田植式が行われ、いずれも大祭。神宮の斎田で田植を行い、五穀豊穣を祈願する祭。史料では[[明徳]]2年（[[1391年]]）には既に見え{{Sfn|香取小史|1995年|p=29}}、祭は「日本三大御田植祭」にも数えられている<ref group="注">「日本三大御田植祭」は、香取神宮のほか[[伊雑宮]]（[[三重県]][[志摩市]]、[[磯部の御神田]]）、[[住吉大社]]（[[大阪府]][[大阪市]]、[[住吉の御田植]]）。</ref><ref name="春"/>。詳しくは「[[香取神宮御田植祭]]」参照。

; 例祭・神幸祭
: 4月14日・15日に行われる。いずれも大祭。例祭は、神宮における祭の中でも最も重要な祭。神宮は[[勅祭社]]の1つであるため、6年に1度（子年・午年）には勅使の参向を受ける{{Sfn|香取小史|1995年|p=25}}。例祭の翌日には神幸祭が執行され、平安時代さながらの衣装を着た神幸列が進み、駐車場で御駐輦祭が行われる<ref name="春">[http://www.katori-jingu.or.jp/siki_spring.htm 春]（公式サイト）。</ref>。

; 大饗祭
: 「だいきょうさい」。1月30日に行われる。中祭。経津主神・武甕槌神が国土を平定した際に神々を労ったことに基づくという祭{{Sfn|香取小史|1995年|p=33}}。日没後に行われ、数々の珍しい神饌（供え物）が神前に献ぜられる<ref>[http://www.katori-jingu.or.jp/siki_winter.htm 秋]（公式サイト）。</ref>。

; 団碁祭
: 「だんきさい」。12月7日に行われる。中祭。「八石八斗団子祭」ともいわれる、新穀で作った団子を奉納する豊穣感謝の祭。輪団子80余りが神前に献じられる。神酒の奉納がないため、特に大饗祭の接待にあたった比売神を慰労するための祭ともいわれる{{Sfn|香取小史|1995年|p=35}}<ref>[http://www.kanko.chuo.chiba.jp/c_event/8164/ 団碁祭]（千葉県「ちばの観光まるごと紹介」）。</ref>。祭典後、団子は参拝者に配られる。

<gallery>
File:Bean scattering,mamemaki,katori jingu shrine,katori-city,japan.jpg|[[節分]]祭での豆まき
File:Rice-transplanting Festival in Katori-jingu 2,katori-city,japan.JPG|御田植祭での斎田までの行列
File:Ooharae-chinowa,katori-jingu,katori-city,japan.JPG|[[大祓]]の茅の輪
File:Niiname-sai,traditional Japanese dance,katori-jingu-shrine,katori-city,japan.JPG|新嘗祭・悠久の舞
File:Festival-japanese dumpling made from rice flour,danki-sai,katori jingu shrine,katori-city,japan.JPG|団碁祭の神饌
</gallery>

== 文化財 ==
<small>（香取神宮に関する文化財のうち、独立境外摂社は除いて記載）</small>
=== 国宝 ===
* '''海獣葡萄鏡''' 1面（工芸品）
*: 直径29.6cm、縁の高さ2cm、重量537.5g、白銅製<ref name="ふさ"/>。中国・唐時代の作。
*: 鏡背は葡萄唐草の地文様の上に獅子のほかさまざまな鳥・獣・虫を表す。鏡名の「海獣」は、鏡背中心部の鈕（つまみ）に表された[[サン猊|狻猊]]（さんげい）を指す。狻猊は中国の伝説上の生物である。正倉院の南倉には本鏡と瓜二つの銅鏡があり、香取神宮鏡は正倉院の鏡と全く同一の鋳型から造った同笵鏡ではないが、両者は関係があると推定される。香取神宮に伝来した経緯は未詳<ref>『週刊朝日百科 日本の国宝』89号（朝日新聞社、1998（解説執筆は川尻秋生））。</ref>。宝物館内に展示。昭和28年3月31日指定。

=== 重要文化財（国指定） ===
* 本殿（附 棟札1枚、銘札1枚、海老錠3箇）・楼門（計2棟）（建造物）
*: 本殿は昭和52年6月27日指定、昭和58年12月26日に楼門を追加指定。
* 古瀬戸黄釉狛犬 1対（工芸品）
*: 阿吽一対の古瀬戸の狛犬。陶製。阿形（あぎょう）像の高さは17.6cm、吽形（うんぎょう）像は17.9cm<ref name="ふさ"/>。技法・作風から、鎌倉時代後期または室町時代初期の作と見られている<ref name="ふさ"/>。宝物館内に展示。昭和28年3月31日指定。
**阿形像は昭和51年7月1日発売の250円[[日本の普通切手|普通切手]]の意匠になった。
* 双竜鏡 1面（工芸品）
*: 直径20.5cm、縁の高さ5mm（蒲鉾形）、白銅製。平安時代の[[久安]]5年（[[1149年]]）の銘があり、鏡背文様を有する在銘の和鏡としては最古の例である。鏡背文様の様式は一般的な和鏡とは異なり、中国の宋あるいは朝鮮の高麗鏡に影響を受けたものと見られる。<ref>『解説版 新指定重要文化財 4 工芸品Ⅰ』、毎日新聞社、1981、p.260</ref>宝物館内に展示。昭和28年11月14日指定。
* 香取大禰宜家文書 15巻7冊（381通）（古文書）
*: 大禰宜を世襲した香取家に伝わる古文書。平安時代後期から江戸時代までの文書381通からなる<ref name="ふさ"/>。関東の神社文書としては代表的な遺品とされる<ref name="ふさ"/>。個人所有。昭和60年6月6日指定。

=== 登録有形文化財（国登録） ===
* 香雲閣（建造物） - 平成12年2月15日登録。
* 拝殿・幣殿・神饌所（以上1棟）（建造物） - 平成13年4月24日登録。

=== 千葉県指定有形文化財 ===
* 旧拝殿 1棟（附 棟札4枚）（建造物） - 平成19年3月16日指定。
* 古神宝類（工芸品）
*: 神宮に伝わる神宝が一括して指定されている。内訳は、奈良時代から江戸時代までの銅鏡39面、「神代盾（しんたいたて）」とも称される盾形鉄製品2面、鉄釜1口、金銅扇子形御正体2面、金銅扇6柄、銅製供器（椀形）9口、鉄製供器（脚付円盤）10脚、太刀（銘利恒）1口、行器（元和4年在銘）1口、手筥3合、櫛108枚、木造獅子口面等3面、木製神号額（伝亀山上皇宸筆）1面、香取古文書5巻等<ref name="ふさ"/>。宝物館内に展示。昭和35年2月23日指定。

=== 千葉県指定天然記念物 ===
* 香取神宮の森 - 昭和49年3月19日指定。

=== 香取市指定有形文化財 ===
* 神庫 - 平成6年3月1日指定。
* 神徳館表門 - 平成7年6月1日指定。

=== その他 ===
* [[美しい日本の歩きたくなるみち500選]]「佐原の町なみと香取神宮へのみち」
* [[ちば遺産100選]]「香取神宮の神幸祭とおらんだ楽隊」、「香取神宮の本殿と楼門」、「香取神宮の海獣葡萄鏡」、「香取神宮の森」
* [[房総の魅力500選]]「香取神宮」

== 関係事項 ==
=== 香取苗裔神 ===
{{座標一覧|節=香取苗裔神}}
[[File:Shiogama Shrine haiden.jpeg|thumb|200px|right|<center>[[鹽竈神社]]（[[宮城県]][[塩竈市]]）</center><small>[[陸奥国]]一宮。[[シオツチノオジ|塩土老翁神]]に武甕槌・経津主両神を合わせ祀る。</small>]]
香取神宮は東国開拓の拠点であったことから、その苗裔神（びょうえいしん）すなわち[[御子神]]（みこがみ）が各地に形成された。『[[常陸国風土記]]』<ref group="原" name="行方郡"/>にはすでに、[[行方郡 (茨城県)|行方郡]]に分祠の記載が見える。

『[[延喜式]]』[[延喜式神名帳|神名帳]]では、[[陸奥国]]に「香取」を冠する神社として次の2社が記載される。
* [[牡鹿郡]] 香取伊豆乃御子神社
** 比定[[論社]]：香取伊豆御子神社（[[宮城県]][[石巻市]]、{{ウィキ座標|38|24|03.73|N|141|24|08.22|E|region:JP-04_type:landmark|位置|name=苗裔神：香取伊豆乃御子神社（論社の香取伊豆御子神社）}}）
** 比定論社：和渕神社（宮城県石巻市、{{ウィキ座標|38|31|49.02|N|141|13|15.97|E|region:JP-04_type:landmark|位置|name=苗裔神：香取伊豆乃御子神社（論社の和渕神社）}}）
* [[栗原郡]] 香取御児神社
** 比定論社：香取御児神社（宮城県[[栗原市]]、{{ウィキ座標|38|44|16.20|N|141|00|42.52|E|region:JP-04_type:landmark|位置|name=苗裔神：香取御児神社（論社）}}）
** 比定論社：鹿島神社（宮城県栗原市、{{ウィキ座標|38|46|32.04|N|141|01|19.22|E|region:JP-04_type:landmark|位置|name=苗裔神：香取御児神社（論社の鹿島神社）}}）
上記の香取苗裔神同様、鹿島神宮でも鹿島苗裔神が陸奥国に展開しており、『延喜式』神名帳には8社が見える。このことから、大和朝廷の勢力が海岸沿いに北進する際に、鹿島神・香取神の神威を仰いだものと考えられている{{Sfn|鹿島御児神社（国史）|1983年}}。併せて、陸奥国一宮・[[鹽竈神社]]（宮城県[[塩竈市]]、{{ウィキ座標|38|19|08.12|N|141|00|45.47|E|region:JP-04_type:landmark|位置|name=陸奥国一宮：鹽竈神社（武甕槌・経津主両神を合祀）}}）において武甕槌・経津主両神が祀られていることも、その様子を表すものとして指摘される{{Sfn|鹿島御児神社（国史）|1983年}}。

なお初期段階では、鹿島は外海（蝦夷）、香取は内海（香取海）を志向したとされる{{Sfn|大和|1984年|p=276}}。その後、上記の香取苗裔神が2社のみながら共に栗原郡（現・宮城県栗原市周辺）に祀られており、牡鹿郡（現・宮城県石巻市周辺）を最北端とする鹿島を飛び越して北に鎮座する{{Sfn|大和|1984年|p=277}}。これに関して、栗原郡の統治が可能になった時期が[[9世紀]]と見られる点や、弘仁3年（[[811年]]）から陸奥国鎮守府将軍として物部匝瑳氏（もののべのそうさうじ：下総国匝瑳郡関係氏族）一族が見える点、承和6年（839年）に香取神の神階が鹿島神に追いつく点、またその記事で「香取、鹿島」の順序で記載されている点から、物部匝瑳氏の活躍に伴う鹿島・香取神の神威逆転を指摘する説がある{{Sfn|大和|1984年|p=277}}。

そのほか、旧下総国西部の[[利根川]]・[[江戸川]]沿い低湿地においては、10世紀以後に開拓されるにあたって香取神が[[産土神]]として勧請された関係で、多くの分祠が分布している（「[[香取神社]]」参照）{{Sfn|香取小史|1995年|p=40}}。また、同じく経津主神を祀る[[上野国]]一宮・[[一之宮貫前神社]]（[[群馬県]][[富岡市]]）も関連性が指摘される{{Sfn|香取小史|1995年|p=41}}。

=== 香取神宮寺 ===
かつて香取神宮には[[神宮寺]]として、金剛宝寺、惣持院、新福寺の3寺があった{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=588}}。金剛宝寺は宮中台にあり、神宮の[[別当寺]]であった{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=588}}。惣持院は供僧と称し、[[真言宗]]{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=588}}。新福寺は山号を経津神徳山とし、[[曹洞宗]]で{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=588}}、近世には34石を有していた{{Sfn|香取神宮（角）|1984年}}。これら3寺はいずれも明治初年に廃寺となった{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=588}}。

== 考証 ==
=== 祭神・祭祀氏族について ===
神宮の草創については、朝廷が東国支配の拠点として両社を祀ったのが創祀と見る説<ref name="香取遺産"/>{{Sfn|香取神宮（平）|1996年|p=585}}、それ以前から原形となる祭祀が存在したとする説（下記）がある。

また、現在の香取神宮では主祭神の公称を「[[経津主神|フツヌシ]]（経津主）」としているが、『日本書紀』によるとフツヌシには「イハヒヌシ（伊波比主・斎主）」という別称がある。神宮との関係を示す文献は、『[[続日本後紀]]』『[[日本文徳天皇実録]]』『[[延喜式]]』ではイハヒヌシ、『[[古語拾遺]]』ではフツヌシが採用される。これらの神名から、神宮の黎明期に関して次のような議論がある。

'''フツヌシ （経津主）'''
: 「フツ」とは刀剣の鋭い様を表した言葉といわれ、刀剣を表す神名とされる{{Sfn|香取神宮（国史）|1983年}}。関連して記紀には「[[布都御魂|フツノミタマ]]（布都御魂、韴霊）」という神剣が見え、フツノミタマはタケミカヅチから[[高倉下]]に下され、のち物部氏氏神の[[石上神宮]]（奈良県[[天理市]]）に祀られたという。ただしフツヌシは『古事記』には見えず、『古事記』に見える[[タケミカヅチ]]の別名「建布都・豊布都」からの造作と見る説もある<ref>『国史大辞典』経津主神項。</ref>。
: 香取神の本質をこのフツヌシと見る説では、『古語拾遺』のみ記載が異なることについて、同書が[[斎部広成]]によって記された中臣氏・藤原氏批判の書物であり、より本質に近い記載であると説明される{{Sfn|大和|1984年|p=267}}。史書が異なる記載をしたのは、祭祀氏族（香取氏）の本源が物部氏であったためとも指摘される{{Sfn|大和|1984年|p=267}}。

'''イハヒヌシ （イワイヌシ、伊波比主・斎主）'''
: 「いわう」にあてられる「斎」「祝」の字義から、「イハヒヌシ」とは「祭事の執行者」を意味する神名と推測される{{Sfn|岡田|2011年|p=147}}。
: 香取神をイハヒヌシと見る説では、『古語拾遺』以外が全てイハヒヌシと記すことを根拠とする{{Sfn|岡田|2011年|p=146}}。『古語拾遺』のみ記載が異なることについては、斎部広成が中臣氏の神について正しい知識を持ち合わせなかったと説明される{{Sfn|岡田|2011年|p=146}}。祭神名からは、「鹿島 = 朝廷の神」に対する「香取 = 在地の神（奉仕する神）」という、[[伊勢神宮]]の内宮・外宮に似た祭祀構造が指摘される{{Sfn|大和|1984年|p=270}}{{Sfn|岡田|2011年|p=149}}。また神階が鹿島に遅れること、勲等がないことは奉仕する神であったためとも推測されるほか{{Sfn|大和|1984年|p=269}}、神を祀るのは女性の任であったことから祭神を女神とする見方もある{{Sfn|大和|1984年|p=270}}。

祭祀氏族としては、古くは経津主神の神裔を称する香取氏（かとりうじ）であったことが知られているが、その香取氏の本質として、'''[[物部氏]]'''を指摘する説がある{{Sfn|大和|1984年|p=267}}。その中で、フツノミタマとフツヌシの関連性、史書に見える周辺の物部氏族の存在から、フツヌシが物部氏の氏神として祀られたと推測がなされている{{Sfn|大和|1984年|p=267}}。一方、香取神宮が[[下海上国造]]の氏神であったとし、その国造を担った'''他田日奉部氏'''（おさだのひまつりべうじ）を原始氏族に推測する説もある{{Sfn|岡田|2011年|p=147}}。他田日奉部氏は宗教的[[部民制|部民]]で、直（あたい）という従属性の強い[[カバネ]]を有しており、「イハヒヌシ」という奉仕する神の性格とも合致すると指摘される{{Sfn|岡田|2011年|p=147}}。

=== 周辺の古墳 ===
[[File:Matami-kofun sekishitsu.JPG|thumb|180px|right|<center>又見古墳</center>]]
[[File:Shintoyama-kofun.JPG|thumb|180px|right|<center>神道山古墳群の前方後円墳</center>]]
神宮の周辺には、次の古墳が見つかっている。
* 又見古墳（市指定史跡）
*: 神宮に最も近い位置に残る古墳。摂社・又見神社境内において[[横穴式石室]]を露出し、墳丘は残っていない。[[7世紀]]中葉の築造とされる<ref>[http://www.city.katori.lg.jp/05sightseeing/kyouiku/bunkazai/b05c.html#Vol-029 Vol-029 又見古墳]（香取市ホームページ「香取遺産」）</ref>。
* 神道山古墳群（しんどうやま、市指定史跡）
*: 神宮北方に残る古墳群。前方後円墳1基、円墳11基からなり、6世紀頃の古墳群とされる<ref name="神道山">[http://www.city.katori.lg.jp/05sightseeing/kyouiku/bunkazai/b05d.html#Vol-039 Vol-039 神道山古墳群]（香取市ホームページ「香取遺産」）</ref>。このうち前方後円墳は全長46.8メートルで、昭和3年（1928年）の発見当初は経津主神の陵墓という議論も存在した<ref name="神道山"/>。
* 津宮古墳群
*: 神道山の北東部にある古墳群。前方後円墳3基、円墳1基からなる<ref name="ふさ"/>。
これらの古墳と神宮には関係性が指摘されるが、神宮側にはこれら古墳に関する古文書・伝承は残っておらず、詳細は明らかではない。

そのほか、やや東方ながら香取市小見川には、5世紀中頃の[[三之分目大塚山古墳]]（[[前方後円墳]]、123メートル）、6世紀末の城山一号墳（前方後円墳、68メートル）<ref>[http://www.city.katori.lg.jp/05sightseeing/kyouiku/bunkazai/b05c.html#Vol-034 Vol-034 城山一号墳]（香取市ホームページ「香取遺産」）</ref>など規模の大きい古墳が多数あり、[[下海上国造]]の本拠地とされている。

== 現地情報 ==
'''所在地'''
* [[千葉県]][[香取市]]香取1697

'''付属施設'''
* 宝物館 - 開館時間：午前9時から午後4時。海獣葡萄鏡（国宝）等の宝物を展示する。

'''交通アクセス'''
* 鉄道
** [[香取駅]]（[[東日本旅客鉄道|JR東日本]][[成田線]]）
*** 徒歩：津宮参道を約30分
*** 正月3が日にはシャトルバスが運行される。
** [[佐原駅]]（[[東日本旅客鉄道|JR東日本]][[成田線]]）
*** 徒歩：表参道を約50分
*** バス
**** [[千葉交通]]バス（香取神宮・上里経由[[小見川駅]]行） - 毎日運行。
**** [[香取市]]シャトルバス（佐原区循環バス（周遊ルート）） - 土・日・祝日のみ、往復10便。
*** タクシー：約10分
*** レンタサイクル：約20分 - 佐原駅前ほかで貸し出し。

* 高速バス
** [[京成バス]]・[[千葉交通]] 利根ライナー号（佐原ルート、小見川・佐原ルート、小見川ルート）
**: [[浜松町バスターミナル]]出発で、[[東京駅]]八重洲口前(東京建物ビル隣り)・大栄停留所を経由する。
*** 佐原ルート：「佐原駅北口」、「香取市役所前」バス停下車
*** 小見川・佐原ルート：「佐原駅北口」、「香取市役所前」、「佐原香取（[[佐原香取インターチェンジ|佐原香取IC]]）」バス停下車
*** 小見川ルート：「佐原香取（佐原香取IC）」バス停下車　
** [[関鉄グリーンバス]] [[あそう号]]（[[東京駅]]発）
*** 「香取神宮」バス停下車

* 車
** [[東関東自動車道]] [[佐原香取インターチェンジ|佐原香取IC]]から約1Km
** 駐車場：無料駐車場(400台)と私営有料駐車場

'''周辺'''
* [[佐原の町並み]]
** 伊能忠敬記念館
* [[水郷佐原山車会館]]
* [[水郷佐原水生植物園]] - 利根川対岸。
* [[観福寺 (香取市牧野)|観福寺]] （香取市牧野） - 香取神宮と関わる懸仏4躯（重要文化財）を伝える<ref>[http://www.city.katori.lg.jp/05sightseeing/kyouiku/bunkazai/b05f.html#Vol-052 Vol-052 懸仏の最高傑作]（香取市ホームページ「香取遺産」）</ref>。

== 脚注 ==
'''注釈'''
{{reflist|group="注"}}

'''原典'''：記載事項の一次史料を紹介（出典扱いではない）。<!--一次史料に基づく記載は原則禁止されているため-->
{{reflist|group="原"}}

'''出典'''
{{reflist|2}}

== 参考文献 ==
'''書籍'''
* 香取神宮発行書籍
** {{Cite book|和書|editor=香取神宮社務所編|author=|year=1995|title=新修 香取神宮小史|publisher=香取神宮社務所|isbn=|ref={{Harvid|香取小史|1995年}}}}
* 百科事典
** {{Cite book|和書|author=|year=1983|title=[[国史大辞典]] 第3巻|publisher=[[吉川弘文館]]|isbn=464200503X|ref=}}
*** {{Wikicite|reference=肥後和男「鹿島御児神社（かしまみこじんじゃ）」|ref={{Harvid|鹿島御児神社（国史）|1983年}}}}、{{Wikicite|reference=萩原竜夫「香取軍神祭（かとりぐんじんさい）」|ref={{Harvid|香取軍神祭（国史）|1983年}}}}、{{Wikicite|reference=萩原竜夫「香取神宮（かとりじんぐう）」|ref={{Harvid|香取神宮（国史）|1983年}}}}（{{Wikicite|reference=福田豊彦「社領」|ref={{Harvid|社領（国史）|1983年}}}}）
** {{Cite book|和書|editor=|author=|year=1996|chapter=|title=日本歴史地名体系 千葉県の地名|publisher=[[平凡社]]|isbn=4582490085|ref=}}
*** {{Wikicite|reference=「香取郡」|ref={{Harvid|香取郡（平）|1996年}}}}、{{Wikicite|reference=「香取神宮」|ref={{Harvid|香取神宮（平）|1996年}}}}
** {{Cite book|和書|editor=|author=|year=1984|chapter=|title=[[角川日本地名大辞典]] 12 千葉県|publisher=[[角川書店]]|isbn= 4040010809|ref=}}
*** {{Wikicite|reference=「香取郡」|ref={{Harvid|香取郡（角）|1984年}}}}、{{Wikicite|reference=「香取神宮」|ref={{Harvid|香取神宮（角）|1984年}}}}
* その他書籍
** {{Cite book|和書|editor=中世諸国一宮制研究会編|author=|year=2000|chapter=|title=中世諸国一宮制の基礎的研究|publisher=岩田書院|isbn=978-4872941708|ref={{Harvid|一宮制|2000年}}}}
** {{Cite book|和書|editor=[[谷川健一]]編|author=|year=1984|chapter=|title=日本の神々 -神社と聖地- 11 関東|publisher=[[白水社]]|isbn=4560025118|ref=}}
*** {{Wikicite|reference=大和岩雄「香取神宮」|ref={{Harvid|大和|1984年}}}}、{{Wikicite|reference=平野馨「側高神社」|ref={{Harvid|側高神社（神々）|1984年}}}}
** {{Cite book|和書|editor=|author=岡田精司|year=2011|chapter=6 東国の鎮守 <鹿島・香取神宮>|title=新編 神社の古代史|publisher=[[学生社]]|isbn=4311203022|ref={{Harvid|岡田|2011年}}}}

'''論文'''
* {{Cite journal|和書|author=三浦正幸|title=香取神宮本殿|date=1986-4-30|publisher=社団法人日本建築学会|journal=日本建築学会計画系論文集|volume=362|number=|naid=110004085744|pages=142-149|ref={{Harvid|三浦|1986年}}}}

'''サイト'''
* {{Cite web|url=http://21coe.kokugakuin.ac.jp/db/jinja/190101.html|author=|title=香取神宮（下総国香取郡）|work=|publisher=國學院大學21世紀COEプログラム「神道・神社史料集成」|date=|accessdate=2014-1-26|ref={{Harvid|神道・神社史料集成}}}}

== 関連項目 ==
[[File:JS Katori in Pearl Harbor, -1 Jul. 1991 a.jpg|thumb|200px|right|<center>[[かとり (練習艦)|かとり]]（海上自衛隊練習艦）</center><small>平成10年（1998年）に退役。神宮境内にはその[[錨]]が奉納されている。</small>]]
* [[国宝一覧]]
* [[香取神社]]
* [[香取海]]
* [[天真正伝香取神道流]]
** [[飯篠家直]]（長威斎） - 神道流始祖。墓が境内近くにある。

* 神宮に由来
** [[香取 (戦艦)]]
** [[香取 (練習巡洋艦)]]
** [[かとり (練習艦)]]

== 外部リンク ==
{{Commonscat|Katori-jingu}}
* [http://www.katori-jingu.or.jp/ 香取神宮]（公式サイト）
* [http://www.city.katori.lg.jp/05sightseeing/kyouiku/bunkazai/b05a.html#Vol-001 香取神宮]（香取市ホームページ「香取遺産」）
* [http://www.katorishi.com/place/s_katori.html 香取神宮]（香取市商工観光課）
* [http://www.kanko.chuo.chiba.jp/kanko/3583/ 香取神宮]（千葉県ホームページ「ちばの観光まるごと紹介」）
* [http://www.jinja.ne.jp/ycDB/Board.cgi/001/db/ycDB-pc-jinja_detail.html?mode:search=1&search:method=1&search:field=jinja_id&search:expr=^$&search:word=7038 香取神宮]（千葉県神社庁監修「神社のひろば」）
* [http://21coe.kokugakuin.ac.jp/db/jinja/190101.html 香取神宮]（國學院大學21世紀COEプログラム「神道・神社史料集成」）

{{神道 横}}
{{DEFAULTSORT: かとりしんくう}}
[[Category:千葉県の神社]]
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