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養豚
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{{出典の明記|date=2010年8月}} {{農業}} '''養豚'''(ようとん) とは、[[家畜]]として[[ブタ|豚]]を飼育することである。 == 歴史 == [[Image:Landsvin-gris.JPG|250px|right|thumb|飼育されている豚(ランドレース種)]] 養豚が始まった時期ははっきりしない。これは遺物として見つかる骨が野生種のものか、飼育種のものかを判別するのが難しいからである。一方、地域的な分布は分かりやすい。最も古い骨は現在の中国南部から見つかった紀元前8000年ごろのものである。ついで[[メソポタミア]]の紀元前4000年、[[エジプト]]の紀元前3000年ごろの骨が古い。ヨーロッパの養豚の歴史は古く、イギリス諸島においても紀元前4000年の骨が見つかっている。インド東部、東南アジア、中央アジア南部にも養豚が広がった。これ以外の地域では養豚の証拠が見つかっていない。例えばアフリカ大陸ではエジプト以外の地域には養豚が普及しなかった。中国では農耕の開始とほぼ同時期に養豚が始まったと考えられているが、メソポタミアでは農耕開始後、5000年もの時間差がある。 == 生産 == [[国際連合食糧農業機関]] (FAO) が発表した統計資料 (FAO Production Yearbook 2002) によると、2002年時点の全世界における豚の頭数(飼育されているもの)は9億4102万頭であり、そのうち半数が[[中華人民共和国]]で飼育されている。中国は頭数の伸びも著しく、2002年までの10年間に1億頭も増加した。 # 中国 4億6470万頭 (49.4%) # [[アメリカ合衆国|アメリカ]] 5907万頭 (6.3%) # [[ブラジル]] 3000万頭 (3.2%) # [[ドイツ]] 2596万頭 (2.8%) # [[スペイン]] 2386万頭 (2.5%) ついで、[[ベトナム]]、[[ポーランド]]、[[インド]]、[[メキシコ]]、[[ロシア]]である。以上の上位10カ国で、全世界の頭数の3/4を占める。 === 豚肉の生産量 === 豚皮は有用ではあるが、豚はほぼすべて食肉生産のために飼育されていると言える。FAOの統計資料によると、2002年の全世界における[[豚肉]](ポーク)の生産量は9419万トンであり、頭数と同様、中国が半数を占める。 # 中国 4460万トン (47.4%) # アメリカ 894万トン (9.5%) # ドイツ 412万トン (4.4%) # スペイン 299万トン (3.2%) # [[フランス]] 235万トン (2.5%) ついで、ブラジル、[[カナダ]]、[[デンマーク]]、ポーランド、ベトナムである。以上の上位10カ国で全世界の豚肉の生産量のうちやはり3/4を占める。頭数と生産量を比較すると、生豚の貿易の影響が読み取れる。すなわち、ブラジルは輸出国、フランスは輸入国である。 === 他の食肉との比較 === 世界的に有力な食肉源は、[[ウシ|牛]]、[[ブタ|豚]]、山羊を含む[[ヒツジ|羊]]である。2002年時点では、牛肉の5788万トン、羊肉の1155万トンを豚肉の生産量が大きく引き離している。食肉の約6割が豚肉ということになる。 生産地の偏りにも違いがある。牛肉、羊肉、豚肉の順に偏りが大きくなっていく。牛肉はアフリカ州とオセアニア州を除くすべての州でほぼ均等(各州で2割から2割強のシェア)に生産されている。羊肉はアジア州(4割)、アフリカ州(2割強)が有力だが、残りの州ではほぼ均等に生産されている。一方、豚肉はアジア州(約6割)に大きく偏り、ヨーロッパ州(約2割)以外の生産量は少ない。 === 日本国内の生産と消費 === 飼育される豚は、主に食肉用として用いられる。飼育期間は6ヶ月程、体重110kg程度で出荷される。[[牛海綿状脳症|BSE]]および[[トリインフルエンザ|鳥インフルエンザ]]の影響もあり、[[豚肉]]の消費は拡大している。一方で国内の生産高は減少傾向にあり、[[2004年]]度には88.4万トンであった。輸入豚肉は増加傾向で、[[2004年]]度には86.2万トンと国内生産にほぼ並んだ。 == 品種 == 養豚に用いられる品種は日本国内においては6品種である。養豚で重視される性質は産肉能力、強健性、繁殖能力の3つ。養豚では、食肉用の子豚は、繁殖能力が高い品種と強健性の高い品種を掛け合わせ、さらに産肉能力の高い品種と合わせるなどの交配操作を行うことによって得られている。大ヨークシャー(W)の雄とランドレース(L)の雌の間に出来た雑種の雌豚(LW)にデュロック(D)の雄を掛け合わせて得られる「LWD」が一般的である。 *大ヨークシャー - 6品種中もっとも歴史の古い品種。ランドレースについで繁殖能力に優れる。体色は白。デュロック、ランドレースと並ぶ大型種であり、生後1年で180 kg前後、成豚では380 kgに達する。アルファベットによる略称は「W」。 *デュロック - 最も産肉能力の高い品種。強健性と繁殖能力も高い。体色は赤褐色。デュロックとランドレースは耳が寝ている。略称は「D」。別名赤豚。 *ランドレース - 最も繁殖能力が高い品種。胴体が長い分産肉能力も高い。日本国内では最も頭数が多い。体色は白。略称は「L」 *バークシャー - 体色は黒。腹部は小豆色。頭や四肢の先に白い部分があるので見分けやすい。ハンプシャー、ヨークシャーと並び比較的小型の品種。生後1年で150 kg、成豚では250 kgから300 kgである。[[黒豚]]は、バークシャー同士の交配の純粋種である。略称は「B」。 *ハンプシャー - デュロックについで産肉能力が高い。体色は黒だが、肩から前足にかけては帯状に白い。略称は「H」。現在は希少種。 *ヨークシャー - 大ヨークシャーに対して「中ヨークシャー」とも呼ばれる。他の品種とは異なり、顔が平面的である。体色は白。略称は「Y」。現在は希少種。 == その他の品種 == *[[イベリコ豚]] - 全身黒色毛。希少種。 *ブリティッシュ・サドルバック - ハンプシャーに似るが耳が垂れている。希少種。 *タムワース - 茶色毛。希少種。 *ラージブラック - 全身黒色毛。希少種。 *梅山豚 - 中国原産。腹部が地面に着く程に垂れている。極めて多子多産である。希少種。 *金華豚 - 中国原産。希少種。 この他に[[ハンガリー]]の[[マンガリッツァ]]、[[ベトナム]]の[[ブタ#ミニブタ|ポットベリーピッグ]]など、様々な品種が存在する。 == 経営の集中化 == [[ファイル:Saitama Domestic Pigs In Pasture 1.jpg|250px|thumb|right|豚小屋で飼育されている豚]] かつては郊外の田園地帯の中に「豚小屋」と呼ばれる養豚場が見受けられたものであるが、最近ではめっきり見られなくなった。[[環境問題]]で立ち退きを余儀なくされただけではなく、国内養豚家そのものが減少しつつあり、その最大の要因は[[悪臭]]等の環境問題と後継者難である。[[1991年]]度の4万戸から[[2010年]]度には6千戸にまで減少した。一方、飼育されている豚の頭数は2割減にとどまっており、大規模な養豚業者への集中をみてとれる。既に養豚家戸数の中で27%以上が、千頭を越える飼育規模を持つ大規模な業者である([[2004年]]度)。大規模業者の多くは種豚の生産を自前で行うだけでなく、専属の[[獣医師]]を[[雇用]]して[[治療]]や[[予防接種]]も自前で行うことが多い。種豚の生産を専門とする養豚場は種豚場と呼ばれる。 なお、こうして[[水田]]地帯と養豚場が地理的に切り離されることにより、[[日本脳炎]]の罹患者数が激減したことは特記すべきであろう。日本脳炎の媒介者は水田を繁殖地とする[[コガタアカイエカ]]であり、コガタアカイエカが好んで吸血する動物は豚、さらに日本脳炎の[[ウイルス]]は豚に感受性が高く不顕性感染により発病せずにウイルスが豚でよく増殖する。かつては都市近郊に水田と養豚場が共存したことが、日本脳炎の流行が繰り返された大きな要因であった。 == 飼料 == 養豚にどのような飼料を用いるかは、その地の文化と密接な関係がある。 例えば現代日本の養豚では[[輸入]][[穀物]]を主体とした飼料を用いているが、古代以来、伝統的には養豚に用いられる飼料は、[[東アジア]]では人[[糞]]、[[ヨーロッパ]]では[[ドングリ]]が主体であり、これに残飯が補助的に用いられた。[[西アジア]]ではその後[[イスラム教]]の広まりによってほとんどの地域で養豚が廃絶したため、伝統的な飼料体系がいかなるものであったかは不明な点が多い。 === 東アジアの伝統的な養豚 === 東アジアでは[http://future.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/NWS3-nishitani1.htm 『山地住民の生業における山の垂直利用とその変化』(西谷 大(国立歴史民俗博物館))]にあるように、人間の生活圏から発生する生ゴミや人糞をそのまま養豚に用いることが伝統的な養豚法であった([[糞#飼料・食糧としての利用]]参照)。 豚を不潔な動物とする見方は、この点によるのかもしれない。しかし、[[食糞]]を行うのは豚に限らない。またヒトは雑食動物であるが、[[ウマ|馬]]に見るように[[盲腸]]・[[大腸]][[発酵]]によって食物繊維をエネルギー源に転換する草食動物としての性質をもっており、大腸に常在する多数の[[嫌気性細菌]]が、小腸までで消化吸収されなかった[[セルロース]]や[[ヘミセルロース]]などの[[多糖類]]を発酵させてエネルギー源となる[[酪酸]]や[[プロピオン酸]]といった短鎖[[脂肪酸]]を生産している。こうした発酵の場は牛や羊などの反芻をする動物では胃の直前に位置しており、短鎖脂肪酸を吸収するだけでなく増殖した細菌や原生動物を胃に流し込んで消化吸収し、タンパク質などを回収している。ところがヒトやウマといった盲腸・大腸発酵を行う動物の消化器官は増殖した[[腸内細菌]]の菌体を消化吸収できず、糞として捨てざるを得ない。従って、人糞は細菌の菌体が主成分であり、この形でタンパク質などの栄養素を豊富に含んでいる。 東アジアでの養豚はこうしたタンパク質に富んだ人糞を豚に食わせ、それによって集落の衛生を保つと共に生きた豚の形で[[タンパク質]]や[[脂肪]]をストックし、必要に応じて[[屠畜]]、人間の食料として回収するシステムとして発達した。日本の本州、四国、九州およびその周辺島嶼では食用家畜を飼育する文化が[[朝廷]]の[[仏教]]政策の影響で衰退し、人糞は発酵させて農地の[[肥料]]として利用する文化が発達したのでこうした養豚は行われなかった(或いは行われなくなった)が、中国文化の影響が強く、日本の朝廷からは独立した[[琉球王国]]の支配下にあった[[南西諸島]]では、こうした東アジア一帯に普遍的に見られる人糞養豚が行われ、豚肉食文化が発達した。 人糞養豚は上記のように優れた[[リサイクル]]システムではあるが、危険な[[寄生虫]]である[[有鉤条虫]]の感染サイクルを形成してしまうという問題点もあった。南西諸島では戦後、このリスクの危険視や、[[高等教育]]を受けた人々が中国由来の不潔な奇習であるとの偏見を持ったことによる人糞養豚廃絶運動が行われ、[[日本列島]]での人糞養豚は姿を消した。その過程では、[[八重山諸島]]でこの運動の先頭に立った高等教育を受けた女性の家の中に嫌がらせとして人糞がぶちまけられるなどの激しい軋轢が生じたことが記録されている。 === ヨーロッパの伝統的な養豚 === 農業生産性に乏しく、人糞養豚の文化を持たない北西ヨーロッパでは、一年を通して豚の畜群を維持するだけの飼料(にとどまらず人間の食用としての農作物)を確保できず、夏に生まれた子豚を秋に[[ナラ]]の森に放してドングリを食べさせて十分成長させて肥育し、来年の繁殖用の親豚に使う個体のみを残して冬の初めにまとめて屠畜、[[塩漬け肉]]や[[ハム]]、[[ソーセージ]]、[[ベーコン]]、[[ラード]]といった保存食品に加工して次の年の秋の終わりまで食いつなぐ(農作物が収穫できる春までは豚肉のみで食いつなぐ)という養豚システムが行われていた。しかし[[16世紀]]に[[新大陸]]から[[ジャガイモ]]や[[トウモロコシ]]といった寒冷な痩せた土地でも大きな収穫が得られる作物が導入されるようになった。これらが次第に普及していくと、人間が食用にする以上の余剰収穫が確保できるようになり、これが豚の飼料に当てられ、一年中生きた豚の形で動物性のタンパク質や脂肪をストックできるようになった。こうして「ジャガイモとソーセージ」に象徴される[[ドイツ料理|ドイツ食]]に代表されるような、新大陸産の新来作物と豚肉加工食品の組み合わせによる近代以降の北西ヨーロッパの食文化が成立したのである。 === 現代の養豚 === [[ファイル:Saitama Domestic Pig In Pigpen 1.JPG|250px|thumb|right|現代の養豚の例(母豚舎、自動給餌器付き)。]] 現代の養豚では[[トウモロコシ]]を主体とし、[[大豆]]カスや[[コムギ|小麦]]を加えた[[飼料]]を用いているが、日本では原料の多くを[[輸入]]に頼っており、[[安全保障]]上の問題になっている。更に、輸入された飼料のタンパク質、アミノ酸に由来する窒素化合物はその一部が豚の屎尿の、またその他の一部は畜産物を食べた人間の糞尿や生ごみの形で、土壌に過剰蓄積されて陸上[[生態系]]に対して、また降水による水循環や下水によって河川や沿岸海域に過剰供給されて河川生態系や海洋生態系に対して、重大な影響を与えている。つまり、[[アメリカ合衆国]]などの飼料作物生産国の工業的[[窒素固定]]によって生成した窒素化合物が、飼料輸入国である日本などの国土や周辺海域に一方的に蓄積していき、富栄養化という形で生態系の異常を引き起こすという物質循環の異常を引き起こしている。同様のことはリン酸などのリン化合物に関しても言える。 また、国土内での物質循環を完結させて、国土の過剰な富栄養化とそれによる生態系の破壊を防ぐためには生ごみなどの食品廃棄物を飼料として活用することが解決法のひとつとなるが(1970年代まで小規模な場合には残飯を餌として与えていたことが多かった)、[[食品廃材]]としての[[屑肉]]を飼料に用いる場合は、[[旋毛虫]]感染([[旋毛虫症]])が問題になる。近年、生ゴミや食品の残渣を飼料の原料にする研究がなされ、現代社会に要求される安全性を確保した上で、飼料の[[自給率]]向上と[[還元型社会]]への再接近を図っている。 == 関連項目 == * [[畜産]] * [[豚の雄臭]] * [[豚の屠殺]] * [[猪]] == 外部リンク == *[http://www.hummingpig.jp/ Humming Pig] *[http://www.maff.go.jp/lin/ 農林水産省畜産部] *[http://youton.ac.affrc.go.jp/ 日本養豚学会] *[http://www.jppa.biz/ 日本養豚生産者協議会(JPPA)] {{DEFAULTSORT:ようとん}} [[Category:畜産]] [[Category:豚]] {{agri-stub}} <!--[[en:Family farm hog pen]][[en:Intensive pig farming]]-->
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