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集合論
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'''集合論'''(しゅうごうろん、{{lang-de|mengenlehre}}、{{lang-en|set theory}})は、[[集合]]とよばれる数学的対象をあつかう[[数学]][[理論]]である。 == 概要 == 通常、「集合」はいろいろな数学的対象の集まりを表していると見なされる。これは日常的な意味でのものの集まりやその要素、特定のものが入っているかいないか、という概念を包摂している。現代数学の定式化においては集合論がさまざまな数学的対象を描写する言葉をあたえている。([[論理学|論理]]や[[述語論理]]とともに)集合論は数学の公理的な基礎付けをあたえ、数学的な対象を形式的に(無定義語の)「集合」と「帰属関係」によって構成することが可能になる。また、集合論の[[公理]]として何を仮定するとどんな体系が得られるか、といった集合それ自体の研究も活発に行われている。 集合論における基本的な操作には、あたえられた集合の[[べき集合]]や[[直積集合]]をとる、などがある。また二つの集合の元同士の関係([[二項関係]])を通じて定義される[[順序関係]]や[[写像]]などの概念が集合の分類に重要な役割を果たす。集合論では二つの集合はそれぞれの集合の元の間に一対一の対応がつく([[全単射]]とよばれる写像が存在する、と定式化できる)とき同等なものと見なされる。[[選択公理]]とよばれる公理を仮定すると[[濃度 (数学)|濃度]]とよばれる一系列の「めやす」([[メトリック|メトリクス]])によってすべての集合を全単射の限りで完全に分類できることが導かれる。 == 素朴集合論と公理的集合論 == 集合論の初期の段階では、集合は「普通の意味での」ものの集まりとして導入され考察された。この見方を現在では'''素朴集合論'''(そぼくしゅうごうろん、<em lang="en">naive set theory</em>)という。 これは集合を理解する上で最もわかりやすい考え方であるが、べき集合などの強力な操作によって[[パラドックス]]とも言える状況が現れてしまう。 パラドックスの有名なものとしては、以下のものがあげられる。 ;カントールのパラドックス :全ての集合を含む集合を考えると、そのべき集合はカントールの定理によってより大きな濃度を持つはずだが、一方もとの集合に含まれるのだから、濃度は小さいはずである。 ;[[ブラリ=フォルティのパラドックス]] :全ての順序数からなる集合 ''O'' はそれ自体順序数であり、''O'' ∈ ''O'' から ''O'' < ''O'' となって矛盾 ;[[ラッセルのパラドックス]] :''X'' = {''x'' | ''x'' ∉ ''x''} という集合を考える。''X'' ∈ ''X'' でも ''X'' ∉ ''X'' でも矛盾を生じる。 ;[[カリーのパラドックス]] :''X'' = {''x'' | ( ''x'' ∈ ''x'' ) → ''Y''} という集合を考える。いかなるYも真となるため、結果として矛盾を生じる。 ;[[リシャールのパラドックス]] その後にパラドックスを解消すべく建設された[[公理的集合論]] {{lang|en|(axiomatic set theory)}} では集合や帰属関係の概念はそれらの性質を取り出した記号論理学的な公理系によって間接的に定義される。この捉え方においては集合と帰属関係は[[ユークリッド幾何学]]の[[点]]や[[線]]のような根源的な概念で、それ自体は他のものを用いて定義されることはない。 なお、実際には数学を行う上では、集合を素朴集合論の立場で理解しておけば十分なことが多い。実際、集合論を学び始めるときは、パラドックスには目をつぶりつつ素朴集合論から始めることが普通である。 == 集合論の歴史 == [[ゲオルク・カントール]]による[[フーリエ級数]]の研究において、実直線上の級数がよく振る舞わない点を調べる過程で集合の概念が取り出された。彼はやがて有理数や代数的数のなす集合が可算であるという結果を得て、それを[[リヒャルト・デーデキント]]との書簡の中で伝えている。 そこでは実数についてもこれが成り立つかという問題に取り組んでいること、どうやらそうではないらしいことが述べられている。それからわずか数週間で、彼は実数が可算でないということについての証明を得る([[カントールの対角線論法]])。その後、彼は数直線 R と平面 R<sup>2</sup>の間に全単射があるかという問題に取り組んで、3年にわたる研究の結果、それらの集合の間に全単射が存在することを示した。彼はその証明を伝えたデーデキントへの(ドイツ語の)書簡の中で、有名な {{lang|fr|"Je le vois, mais je ne le crois pas"}}「私にはそれが見えるが、しかし信じることができない」という(フランス語の)言葉を書き残している。<!-- この後彼は理論を発展させ、濃度、順序数、整列集合等の概念を得ていった。 are these really by Cantor? --> 実数集合の持つ超越的な性格は同時代の数学者の一部のあいだに揺籃期の集合論そのものに対する拒否反応を巻き起こした。カントールの師[[レオポルト・クロネッカー]]による否定(カントールの人格までも否定したほどだった)はカントールに影響を与えることになった。 ツェルメロによって選択公理とその帰結としてすべての集合上に整列順序関係が入るということがはっきりさせられた。選択公理の意味するところやその[[妥当性]]については[[アンリ・ルベーグ|ルベーグ]]とボレル、ベールの間の議論などに代表されるように数学者たちによる活発な議論の的となった。 一方で、カントールが頭を悩ませつづけた[[連続体仮説]]:「実数集合(自然数集合のベキ集合との間に全単射がある)は自然数集合の次に大きい集合であるか?」は、[[クルト・ゲーデル]]と[[ポール・コーエン (数学者)|ポール・コーエン]]の業績によって(ZFCそれ自体が矛盾を含まない限り)ZFC公理系からは証明も反証もできないことがわかった。 == 数学にあたえた影響 == 集合論以前の数学は、数であるとか[[方程式]]であるとかあらかじめ与えられた数学的対象の性質を研究する、という性格が強いものだった。集合論以降は問題にしている数学的な現象をよく反映するような「構造」を積極的に記号論理によって定義し、その構造を持つ集合について何がいえるかを調べる。という考え方が優勢になった。とくに20世紀に入ってからの[[抽象代数学]]や[[位相空間]]論では様々な新しい数学的対象が集合の道具立てを用いて積極的に構成され、研究された。このパラダイムは[[ニコラ・ブルバキ]]による「数学原論」においてその頂点に達したと見なされている。 一方で、さまざまな数学の問題に対応した構造を理解するときには、個々の対象が具体的にどんな集合として定義されたかということよりも、類似の構造を持つほかの数学的対象との関係性の方がしばしば重要になる。この関係性は対象間の写像のうちで「構造を保つ」ようなもの(しばしば[[準同型]]と呼ばれる)によって定式化される。このような考え方を扱うために[[圏論]]が発達した。集合論の著しい特徴は集合間の写像たちまでが再び集合として実現できることだが、こういった性質を圏論的に定式化することで集合論の圏論化・幾何化ともいうべき[[トポス (数学)|トポス]]の概念がえられる。 == 参考文献 == * {{Cite book|和書|title=公理論的集合論 |author=倉田令二朗|coauthors=篠田寿一|location= |publisher=河合出版|year=1996|id=ISBN 4879999679}} * {{Cite book|和書|title=集合論入門|author=赤摂也 |location=|publisher=培風館|year=1959 |edition=増補版|id=ISBN 4563003018}} * {{Cite book|和書|title=集合・位相入門 |author=松坂和夫|publisher=岩波書店 |year=1968|id=ISBN 4000054244}} == 関連項目 == * [[集合の代数学]] * [[数理論理学]] * [[論理演算]] * [[ベン図]] * [[オイラー図]] * [[グロタンディーク宇宙]] {{数学}} {{集合論}} {{DEFAULTSORT:しゆうこうろん}} [[Category:集合論|*]] [[Category:数学に関する記事]]
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