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金枝篇
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[[Image:Golden bough.jpg|thumb|right|300px|『金枝』([[ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー|J.M.W. Turner]])、[[アイネイアス]]神話の一場面。『金枝篇』の口絵として用いられた。]] 『'''金枝篇'''』(きんしへん、{{lang-en-short|''The Golden Bough''}})は[[イギリス]]の[[社会人類学]]者[[ジェームズ・フレイザー]]によって著された[[未開社会]]の[[神話]]・[[呪術]]・[[信仰]]に関する集成的研究書である。金枝とは[[ヤドリギ]]のことで、この書を書いた発端が、[[イタリア]]のネミにおける宿り木信仰、「祭司殺し」の謎に発していることから採られた。 完成までに40年以上かかり、フレイザーの半生を費やした全13巻から成る大著である。 == 出版 == フレイザーは[[人類学]]者[[エドワード・タイラー]]の著作に影響を受けて本格的に[[宗教学]]や[[民俗学]]・[[神話学]]を研究するようになり、その成果として[[1890年]]に2巻本の『金枝篇』初版を刊行した。その後も増補が繰り返され、[[1900年]]には3巻本の第二版、[[1911年]]に決定版として第三版が11巻本としてまとめられた。しかしその後にも研究は続けられており、更に[[1914年]]には索引・文献目録、[[1936年]]には補遺が追加され、この2巻を合わせた全13巻の決定版が完成した。 この著書はあまりにも大部で浩瀚に過ぎるため、一般読者にも広く読まれることを望んだフレイザー自身によって、[[1922年]]に理論面の記述を残して膨大な例証や参考文献を省略した全1巻の簡約本が刊行されている。 == 内容・評価 == 本書には[[ヨーロッパ]]のみならず[[アジア]]、[[アフリカ]]、[[アメリカ州|アメリカ]]など世界各地で見られる様々な[[魔術]]・[[呪術]]、[[タブー]]、慣習など、フレイザーが史料や古典記録、あるいは口伝から収集した夥しい例が示されている。未開社会における[[アニミズム|精霊信仰]]、宗教的権威を持つ王が弱体化すればそれを殺し新たな王を戴く「[[王殺し]]」の風習や[[類感呪術]]、[[感染呪術]]などの信仰の神話的背景を探った民俗学・神話学・宗教学の基本書として高く評価される。 フレイザーの研究姿勢は書斎における文献調査による事例収集が中心であったため、実際に現地に入り混じって人類学などの研究に従事する[[フィールドワーク]]研究者からは、「[[書斎]]の学問」「[[安楽椅子]]の人類学」として批判を浴びている。また、未開社会と[[文明]]社会の間に序列を設けるような文化[[進化論]]的思考法も時代的制約とはいえ批判の対象となっている。しかしながら、[[古代]]信仰・呪術に関するこれだけの膨大な事例を広く蒐集・総合した例は他にほとんど絶無であり、それだけでも非常に高い資料的価値を持つ。 == 金枝 == イタリアのネミの村には、ネミの湖と呼ばれる聖なる湖と、切り立った崖の真下にある[[アリキア]]の木立とよばれる聖なる木立があり、木立には聖なる樹(ヤドリギ)が生えていた。この樹の枝(金枝)は誰も折ってはならないとされていたが、例外的に逃亡奴隷だけは折る事が許されていた。 ディアナ・ネモレンシス(森の[[ディアーナ|ディアナ]])神をたたえたこれらの聖所には、「森の王」と呼ばれる祭司がいた。逃亡奴隷だけがこの職につく事ができるが、「森の王」になるには二つの条件を満たさねばならなかった。第一の条件は金枝を持ってくる事であり、第二の条件は現在の「森の王」を殺す事である。 == 日本語訳 == *永橋卓介訳 『金枝篇』、[[岩波文庫]]全5巻:簡約本の訳。 *神成利男訳、石塚正英監修 『金枝篇‐呪術と宗教の研究』 ([[国書刊行会]]、全10巻別巻、[[2004年]]から順次刊行、[[2012年]]に第6巻を刊行)、第3版13巻本の完訳。 *吉川信訳 『初版 金枝篇』([[ちくま学芸文庫]] 全2巻、2003年) *吉岡晶子訳 『図説 金枝篇』([[東京書籍]]→[[講談社学術文庫]] 全2巻、2011年)、S・マコーマックが第3版を要約し、挿絵を付けたもの。 == 参考文献 == * 山田仁史「金の枝を手折りて−−フレイザーが遺したもの」 **『印度学宗教学会 論集』34: 213−237頁、2007年 * [[富士川義之]]『英国の世紀末』[[新書館]]1999年 **第一章「黄金の枝」を中心に、世紀末文学の視点で読む。 == 関連項目 == *[[T・S・エリオット]] - 本書の聖杯伝説を骨格として『荒地』を執筆。 *[[地獄の黙示録]] - カーツ大佐の愛読書の一冊。 *[[交響詩篇エウレカセブン]] - ホランド・ノヴァク、デューイ・ノヴァク大佐の愛読書。 {{DEFAULTSORT:きんしへん}} [[Category:1890年代の書籍]] [[Category:イギリスの書籍]] [[Category:文化人類学書]] [[Category:神話学]] [[Category:民俗学]]
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