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[[ファイル:Transparent frame specimen 2 (Trachurus japonicus).jpg|thumb|180px|[[マアジ]]の透明骨格標本]] '''透明骨格標本'''(とうめいこっかくひょうほん)は、生物の骨格を観察するため様々な染色法を用いて作成される標本。 一般に[[アルシアンブルー]]と[[アリザリンレッドS|アリザリンレッド]]が用いられる。 解剖による乾燥状態での[[骨格標本]]作製が難しい小型の動物や[[胚]]に対して有効な観察手段である。 主に[[分類学]]や[[比較解剖学]]、[[発生学]]などの研究分野で広く用いられてきた。 == 概要 == [[脊椎動物]]の分類学的研究や比較解剖学的研究などにおいて、[[骨格]]の形態比較は欠かせない検討要素のひとつである。骨格を観察するためには、古くから物理的に骨格以外の軟組織を除去して作製した骨格標本が用いられてきた。しかし、小型の魚類や発生途上の胚では骨格標本の作製は困難である。骨格間の立体的配置、骨化の進んでいない[[軟骨]]組織、微細な骨格要素を損なうことが避けられないからである。微細な骨格の観察には[[X線|軟X線]]による写真撮影も使用されるが、立体構造の観察に難があるし、軟骨の観察も困難である。 透明骨格標本は、一般に[[硬骨]]をアリザリンレッドで[[染色_(生物学)|染色]]、[[軟骨]]をアルシアンブルーで染色、または二重染色をほどこしたのち軟組織を透明化したものである。透明な肉質の中に鮮やかに染色された骨格が、生時の立体配置で観察でき、前述の難点を克服することができる。 なお、組織の透明化は骨格標本に限らず、[[免疫染色]]など様々な手法の標本や蛍光を用いた観察などで普通に用いられる。 == 手法 == [[ファイル:Transparent frame specimen.jpg|thumb|120px|[[ジンドウイカ]]のアルシアンブルー染色標本。特定の構造が染まらず、全体が青く染まっている。]] 透明骨格標本を作製するにはいくつかの手法・試薬があるが、代表的なものを下記に示す。 === 固定・染色 === まず標本の[[タンパク質]]を[[ホルマリン]]で[[固定 (組織学)|固定]]して、しっかりと[[分子]]間の[[架橋]]を形成させる。次に、[[アルシアンブルー]]で軟骨を染色する。アルシアンブルーは、酸性[[多糖類]]の[[硫酸基]]と結合する性質を持った青い色素で、軟骨に多く含まれる[[コンドロイチン硫酸]]と結合する。このため軟骨部分が特に著しく青く染まることになる。ただし、ムコ多糖類は必ずしも軟骨にのみ局在しているわけではないため、試料によっては一見非特異的な染色になることがある。 次に、[[アリザリンレッドS]]で硬骨を染色する。アリザリンレッドSは紫色の色素であるが、[[金属]][[イオン]]と結合して赤く発色する。硬骨には燐酸カルシウム([[燐灰石]])の[[結晶]]が沈着しているため、これとアリザリンレッドSが結合し、硬骨が赤く染色されるわけである。アルシアンブルー同様、アリザニンレッドはあくまで金属イオンと結合するため、カルシウム沈着した魚鱗なども強く赤色で染色される。 === 透明化 === 染色が終わった標本は[[水酸化ナトリウム]]や[[水酸化カリウム]]のような強[[アルカリ]]の[[水溶液]]や[[プロテアーゼ]]の水溶液の中で、タンパク質の[[ペプチド結合]]を[[加水分解]]してやる。タンパク質分子の間は、既に[[側鎖]]の[[アミノ基]]の部分でホルマリンの[[ホルムアルデヒド]]によって架橋されているため、この分子間架橋のネットワークが残存し、組織は外形を残しつつ適度にすかすかになる。最後にこの標本の中の[[水分]]を[[グリセリン]]で置換してやると、軟組織はほぼ完全に透明化し、赤く染まった硬骨と青く染まった軟骨が外部から容易に観察できるようになる。 この方法では体内に[[脂肪組織]]の発達した比較的大型の動物を透明化することは困難であるが、[[キシレン]]による[[脱脂]]で透明化を実現できる。 なお、[[ヤツメウナギ]]などいくつかの動物では特にアルシアンブルーによる軟骨染色がうまくいかないことが多い。 == 参考文献 == *Dingerkus G, Uhler LD.(1977) Enzyme clearing of alcian blue stained whole small vertebrates for demonstration of cartilage.Stain Technol. 52(4):229-232. {{デフォルトソート:とうめいこつかくひようほん}} [[Category:解剖学]] [[Category:標本]]
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