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'''走査型プローブ顕微鏡''' (そうさがたプローブけんびきょう、'''Scanning Probe Microscope'''; SPM) は、先端を尖らせた[[探針]]を用いて、物質の表面をなぞるように動かして[[表面]]状態を拡大観察する[[顕微鏡]]の種類である。 実際の例としては、表面を観察する際、微少な[[電流]](トンネル電流)を利用する[[走査型トンネル顕微鏡]](STM)、[[原子間力]]を利用する[[原子間力顕微鏡]](AFM)をはじめ、数多くの種類がある。 ==特徴== 基本的な構成は、測定対象を固定し移動させる試料ステージと、試料表面に近づけ局所的な相互作用を検出する[[探針]]、そしてこれらを制御するコントローラからなる。これに加えて、試料に[[電場]]や[[磁場]]を印加したり光を照射、または冷却・加熱により試料温度を変化させる機構、[[真空]]用の[[チャンバー]]・[[ポンプ]]などが目的に応じて付設される。 光の波長に依存する[[光学顕微鏡]]に比べて空間[[分解能]]が非常に高く、超高[[真空]]中では、[[原子間力顕微鏡|AFM]]や[[走査型トンネル顕微鏡|STM]]は[[原子]]以下のレベルの表面凹凸を観察できる。また、大気中での測定を目的としたものは[[電子顕微鏡]]などに比べて装置が特に小型で、机上に設置できるものもある。実際の場面では、簡便に測定できて安価な、超高[[真空]]を必要としない装置も広く用いられており、表面形状のみの測定には[[原子間力顕微鏡|AFM]]が使われる事が多い。 試料ステージには[[ナノメートル|nm]]レベルでステップを制御できるピエゾステージが主に用いられており、この場合の試料の測定可能領域は数十µm以下、高さは10µm以下である。モータステージなどを組み合わせ4インチウェーハ内の数十µm領域を測定できる装置もある。 ==歴史== 最初の走査型プローブ顕微鏡は、[[IBM]]で[[ゲルト・ビーニッヒ]](Gerd Binnig)により開発された[[走査型トンネル顕微鏡|STM]]とされる。しかしSTMはトンネル電流を利用するため、[[絶縁体]]の観察を行うことが出来ない。そのため、同じく[[ゲルト・ビーニッヒ|ビーニッヒ]]により原子間力を利用するAFMが開発され(1986年)、測定対象が広がった。また、これらをベースに表面形状だけでなく、様々な局所的な表面物性を評価するSPMが開発された。 現在では、[[原子間力顕微鏡|AFM]]は[[磁気ディスク]]の表面粗さ(ひょうめんあらさ)測定、[[DVD]]ディスクのスタンパーなど0.1[[マイクロメートル|µm]]前後の凹凸を測定する用途には不可欠な測定機器となっている。また、絶縁性の試料、水分を含んだ生体試料などの評価にも用いられる。 ==SPMの種類== [[原子間力顕微鏡|AFM]]、[[走査型トンネル顕微鏡|STM]]以外のSPMとして以下のようなものがある。 #磁気的な局所物性評価SPM #;[[磁気力顕微鏡|走査型磁気力顕微鏡]](MFM) : [[強磁性]][[探針]]と試料間の磁気力から磁区構造を評価する。 #;走査型SQUID顕微鏡 : [[超伝導量子干渉計]](SQUID)をプローブとし、試料表面の[[磁束]]を評価する。 #;走査型[[ホール効果|ホール素子]]顕微鏡(SHPM) : [[ホール効果|ホール素子]]をプローブとし、試料表面の[[磁場]]を検出する。 #電気な局所物性評価SPM #;[[ケルビンプローブフォース顕微鏡|走査型ケルビンプローブフォース顕微鏡]](KFM) : 電圧を印加して表面電位を評価する。 #;走査型マクスウェル応力顕微鏡(SMM) : プローブに交流電圧を印加し、表面電位を評価する。 #;静電気力顕微鏡 : [[パルス]]電圧を印加し、静電気力を評価する。 #;走査型圧電応答顕微鏡(PFM) : 試料に交番[[電界]]を印加した時の微小な変形から[[圧電]]特性を評価する。 #;走査型非線形誘電率顕微鏡(SNDM) : プローブに[[共振回路]]を接続し、試料に交番[[電界]]を印加した時の[[共振]][[周波数]]の変化から非線形[[誘電率]]を評価する。 #光学的な局所物性評価SPM #;[[走査型近接場光顕微鏡]](SNOM) : プローブ先端から[[エバネッセント場|近接場光]]を印加して複素透過率を評価する。 ==関連項目== *[[表面物理]] *[[走査型トンネル顕微鏡]] *[[原子間力顕微鏡]] *[[ケルビンプローブフォース顕微鏡]] *[[磁気力顕微鏡]] *[[スピン偏極STM]] == 外部リンク == *[http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/spm/01_mokuji.htm 特許庁標準技術集「表面構造の原子領域分析」] {{DEFAULTSORT:そうさかたふろうふけんひきよう}} [[category:顕微鏡]] [[category:ナノテクノロジー]]
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