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蝋
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{{出典の明記|date=2012年5月20日 (日) 11:32 (UTC)}} {{特殊文字}} {{記事名の制約|蠟}} '''蝋'''('''ろう'''、'''ワックス''')は狭義に特定の一群の化学物質を指すときは[[脂肪酸|高級脂肪酸]]と一価または二価の[[アルコール|高級アルコール]]との[[エステル]]を指す[[融点]]の高い[[油脂]]状の物質('''ワックス・エステル''')で、広義には実用上、これとよく似た性状を示す[[中性脂肪]]や高級脂肪酸、[[炭化水素]]なども含める。多くの場合、[[室温]]では軟らかく滑らかな[[固体]]で、[[水]]の[[沸点]](100℃)より低い[[融点]]を持ち、[[気体]]はよく燃焼する。ワックスエステル以外の広義の蝋はこうした性質の脂肪や炭化水素などを含めるが、天然のワックス・エステルの中には[[とりもち]]のように室温で粘質の性状を示したり、[[マッコウクジラ]]油などのように室温で液体のものもある。ワックス・エステルは一般に中性脂肪よりも比重が小さく、化学的に安定している。 ==概要== 広義の蝋は、主に動物の油脂、植物の油脂などから採取されるが、近年は[[石油]]の[[原油]]を[[分留]]して得られる蝋質の炭化水素である[[パラフィン]]系のワックスが主に用いられる。狭義の蝋であるワックス・エステルは、化学的にも合成されている。 広義の蝋は室温で固体であるために扱いやすく、加熱すると比較的低い温度で[[融解]]し、気化すると容易に[[燃焼]]することから、古来[[ろうそく|蝋燭(ろうそく)]]として[[照明]]に用いられてきた。さらに水分を弾く事や潤滑性がある事などから、蝋燭以外にも様々な用途に用いられている。 また、動物の油脂の中でも[[シーラカンス]]などの[[深海魚]]や同様に深海性のマッコウクジラの肉にも油脂としてワックスは含まれるが、ワックスは体内で消化できない為、これらの肉を食べると[[下痢]]になる恐れがあり、そういった魚のうちの[[バラムツ]]と[[アブラソコムツ]]は日本国内では[[食品衛生法]]によって販売が禁止されている。''[[深海魚#深海魚の利用]]も参照。'' なお、金属同士の接合に使う合金の「ろう」は「鑞」と表記される。こちらについては[[ろう接]]を参照。 == 主な蝋・ワックス == ここでは実用上蝋と呼ばれている、広義の蝋を紹介する。便宜上、古来[[日本]]でも用いられて日本文化になじんだ動植物由来のものを[[日本語]]([[漢語]])の「蝋」、近現代になって日本社会に登場し、古くからの日本文化とのなじみの薄い[[鉱物]]・石油等由来の物を[[英語]]由来の[[外来語]]である「ワックス」としたが、英語では全て"wax"である。 === 植物系蝋 === ==== 木蝋(生蝋) ==== ; ハゼ蝋 : [[ハゼノキ]]の果実から作られる蝋。主として果肉に含まれるものであるが、果肉と種子を分離せずに抽出したものでは種子に含まれるものとの混合物となる。伝統的には[[蒸篭]]で蒸して加熱した果実を大きな鉄球とこれがはまり込む鉄製容器の間で圧搾する[[玉締め法]]が、近代工業的には[[溶剤]][[抽出]]法が用いられる。日本では主に[[島原半島]]などの[[九州]]北部や[[四国]]で生産されている。[[和蝋燭]]や木製品のつや出しに用いられる。日本以外では"Japan wax"と呼ばれ、[[明治]]・[[大正]]時代には有力な輸出品であった。[[21世紀]]初頭の現在において海外で人気が復活しているが、日本国内での生産量は減少の一途で、特に良質の製品が得られる玉締め法を行っている生産者は[[長崎県]][[島原市]]にわずかに残るのみである。[[木蝋]]の主成分はワックス・エステルではなく、化学的には中性脂肪である。 : 主成分は[[パルミチン酸]] CH<sub>3</sub>(CH<sub>2</sub>)<sub>14</sub>COOH の[[トリグリセリド]]。 ; ウルシ蝋 : ハゼノキと近縁な[[漆|ウルシ]]の果実からもハゼ蝋と性質のよく似た木蝋が得られる。ハゼ蝋に押され、現在の日本ではほとんど生産されていない。[[漆]]も参照。なおハゼ・ウルシともにウルシ科の植物である。 : 主成分はハゼ蝋と同じパルミチン酸グリセリド。 ==== その他植物系 ==== ; [[カルナウバ蝋]](カルナバ蝋) : [[ブラジルロウヤシ]] ''Copernicia prunifera'' の葉の表面を覆う蝋。[[大理石]]のような光沢を呈するが、非常に堅く天然のワックス・エステルを主成分とする蝋では最も[[融点]]が高い部類に属する。この性質を緩和する場合は、蜜蝋など他の蝋と混ぜて使われる。[[錠剤]]のコート剤やカーワックスの主原料として知られる。主産地は[[ブラジル]]。凝固点は82℃。 : 主成分は、セロチン酸ミリシル CH<sub>3</sub>(CH<sub>2</sub>)<sub>24</sub>COO(CH<sub>2</sub>)<sub>29</sub>CH<sub>3</sub> と[[脂肪族アルコール|ミリシルアルコール]]。 ; サトウキビロウ : [[サトウキビ]]の葉や茎の表面を覆っている蝋で、[[砂糖]]の生産に際し、茎から糖分を絞った後のかすから抽出される。 : 主成分は蜜蝋と同じパルミチン酸ミリシル CH<sub>3</sub>(CH<sub>2</sub>)<sub>14</sub>COO(CH<sub>2</sub>)<sub>29</sub>CH<sub>3</sub> ; パーム蝋 : [[アブラヤシ]]の幹から採取される無臭、固体の蝋。[[アンデス山脈|アンデス]]地方、特に[[コロンビア]]で生産されている。[[凝固点]]は100℃と高い。 : 主成分はパルミチン酸ミリシルであり、不純物が少ない。 ; [[カンデリラ蝋]] :主にメキシコに産するカンデリラ ''Euphorbia antisyphilitica'' の茎から分離した油脂を精製して得られる蝋。 === 動物系蝋 === ; 蜜蝋(ビーズワックス) : [[ミツロウ|蜜蝋]]は[[ミツバチ]]が巣を作る際、腹部腹板にある蝋腺という器官から分泌する蝋。ミツバチの巣の主成分で、これを加熱・融解して得られる。精製すると無臭になるが、精製前には[[蜂蜜]]のような甘い香りがする。絵具や化粧品、クリーム、蝋燭、石鹸の材料となる。融点は61度-66℃。不飽和脂肪酸をほとんど含まない。ヨウ素価は5-13と狭義の蝋のなかでも最も低い。 : 主成分は、セロチン酸 CH<sub>3</sub>(CH<sub>2</sub>)<sub>24</sub>COOH と、パルミチン酸ミリシル。 ; 鯨蝋 : [[マッコウクジラ]]の頭部に有る鯨蝋器官内の脳油から、鯨油を分離した残りの無臭の固体蝋。捕鯨禁止までは蝋燭や化粧品の材料などとして用いられた。英語で“spermaceti”(クジラの[[精子]])と呼ばれているのは脳油の外見からの誤解に由来する。代表的な液体蝋である。他の蝋と比べて、構成する蝋を構成する脂肪酸の分子量が小さく([[鹸化価]]は118-135)、さらに不飽和脂肪酸の比率は最も低い(ヨウ素価は3.9-9.3)。凝固点は42-52℃。 : 主成分はパルミチン酸セチル CH<sub>3</sub>(CH<sub>2</sub>)<sub>14</sub>COO(CH<sub>2</sub>)<sub>15</sub>CH<sub>3</sub> ; マッコウクジラ油 : マッコウクジラ頭部に含まれる液体蝋。鯨蝋とは異なり、不飽和脂肪酸の比率が蝋としてはもっとも高い(ヨウ素価71-86)。成分構成は他の蝋と比べ複雑である。[[オレイン酸]]、[[アルコール|セチルアルコール]]、まっこう酸、パルミチン酸などを含む。 ; 鯨蝋(ツチクジラ油) : [[ツチクジラ]]から取れる蝋。マッコウクジラ油とは異なり、固体蝋(凝固点-18度)である。脂肪酸の分子量はマッコウクジラ油以下で、鹸化価は200に達する。成分の構成は[[アルコール|オレイルアルコール]]やセチルアルコールなど。 ; イボタ蝋 : [[カイガラムシ]]の一種・[[イボタロウムシ]]([[イボタノキ]]など[[モクセイ]]科の樹木に寄生する)の雄幼虫がイボタノキの枝の周囲に群生して分泌した棒状の蝋塊より得られる蝋。固く融点が高い。木製品や[[生糸]]のつや出し、[[襖]]や[[障子]]の滑りをよくするためなど。[[掛軸]]や[[巻物]]の裏側にすり込んで巻き取りやすくしたり、微粉末として古いSP[[レコード]]の再生を助けるためにも用いられる。 ; 羊毛蝋 : [[ウール|羊毛]]の表面を覆う脂質に含まれる無臭の蝋成分。セリルアルコールやミリスチン酸からなる。凝固点は30-40℃。 === 鉱物系ワックス === 狭義の蝋ではない。 ; モンタンワックス : [[褐炭]]より溶剤抽出で作られる。他と異なり長鎖エステル、遊離高級脂肪酸、アルコール、レジン質等が主成分の複雑な組成となっている。プラスチックの滑剤、[[カーワックス]]の乳化剤などとして用いられる。 === 石油系ワックス === 狭義の蝋ではない。 ; [[パラフィン]]ワックス : 原油から精製される直鎖状[[炭化水素]](ノルマルパラフィン)が主成分。20世紀以降、上記の動植物由来の蝋に替わって広く用いられている。原油からは主に減圧蒸留留出油から分離精製される。 ; マイクロワックス : マイクロクリスタリンワックスともいう。パラフィンワックスと同じく原油から精製されるが分岐炭化水素(イソパラフィン)が主成分で飽和環状炭化水素も含む。パラフィンワックスは名前の通り結晶が微細であり、炭素数も多くより高融点である。このためパラフィンワックスと異なる特性を持ち用途も異なる。原油からは主に減圧蒸留留出油の重質留分や残渣油から分離精製される。 === 合成ワックス === ==== 炭化水素系 ==== 狭義の蝋ではない。炭化水素を化学合成して作られる。 ; FTワックス : [[フィッシャー・トロプシュ法]]を介して[[天然ガス]]等から得られる。パラフィンワックスと同じ直鎖状炭化水素で同様の用途で利用されている。また天然ガスから液体燃料などを作り出す[[GTL]]の原料などとしても利用されている。 ; [[ポリエチレン]]ワックス・[[ポリプロピレン]]ワックス : [[エチレン]]の[[重合]]・[[熱分解]]などで作られる。 ==== その他 ==== 天然由来の原料を化学合成したもので常温で固体のものを合成ワックスと称する事がある。脂肪酸エステル・アミン、[[硬化油]]などの一部。 == 主な用途 == * [[ろうそく]] * [[ろうけつ染め]] * つや出し * [[潤滑剤]] *造形([[蝋人形]]や [[ロストワックス]][[鋳造]]の原型など) == 外部リンク == * [http://www.seiro.co.jp/w_museum/wax_m.htm 日本精蝋「ワックス博物館」] {{自動車部品}} {{DEFAULTSORT:ろう}} [[Category:生物材料]] <!--[[Category:化成品]] 合成品を含めるなら--> [[Category:燃料]] [[Category:塗料]] [[Category:彫塑材料]]
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